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アクシデント
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バラバラに広げたピースから、まず、四辺の角と直線部分のピースを拾いだす。
色が同じなので縦も横も上下左右もわからない。
根気よく、合わせながら少しずつ枠を組んでいく。
姉が部屋をのぞきこんで「手伝おうか?」と声をかけてくれたけど
「オレが頼まれたことだから」と言って断った。
期限を決められていたわけではなかったけれど
なるべく早くおばさんに渡したかったので、毎日まっすぐ帰ってパズルに取り組んでいた。
ネモフィラの花畑は段々仕上がっていく。
あの日、花の前ではしゃいでいたハルトの顔を思い出しながら、ひとつひとつピースをはめて組み上げていった。
「あれ?」
あと少しで完成というところになって、ピースがひとつ足りないことに気が付いた。
ど真ん中の、ちょうど花一輪分のピースが欠けているのだ。
始める前に十分に注意してとりかかったつもりだった。
家族にも完成するまで部屋に入らないでとお願いもした。
いつも一緒に寝たがるネコの健太にも我慢してもらった。
「母さん!オレが学校いってる間、部屋の掃除した?」
「してないわよ?」
「健太は?」
「自分でドア開けられないのに入れるわけないでしょ?」
必死になってベッドの下や机の裏、カーテンの後ろも探したけれど、
出てきたのは、健太が以前、転がして失くしていた消しゴムばかりで、肝心のピースは見つからなかった。
市販のパズルなら、メーカーに請求すれば代わりを送ってもらえるサービスがある。
でも、オリジナルのパズルの場合は?
いや、そもそもハルトがどの業者に頼んだのかもわからないし、「お母さんへのサプライズプレゼント」と言ってたから、おばさんが知ってる可能性も低い。
「ハルト…どうしよう…」
パズルの前で途方に暮れていると母から事情を聞いたらしい姉が部屋に入ってきた。
「ふーん…ちょっと待ってて」
姉はスマホを取り出し、欠けたピースの回りごと写真にとると、慣れた手つきでアプリを操作し始めた。
周辺の画像をコピーして欠けている箇所に貼り付けて、不自然に見えないようになじませる。
ものの5分もかからないうちに、どこが欠けていたのかわからない画像が仕上がっていた。
「すごいよお姉ちゃん!これをプリントして、ピースの形に切った厚紙に貼れば!」
「まあ、紙質とか色とか完全には無理かもしれないけど」
「いや、大丈夫だよ!少しくらいならなんとか…」
『ごまかせる』…そういいかけて、はっとした。
色が同じなので縦も横も上下左右もわからない。
根気よく、合わせながら少しずつ枠を組んでいく。
姉が部屋をのぞきこんで「手伝おうか?」と声をかけてくれたけど
「オレが頼まれたことだから」と言って断った。
期限を決められていたわけではなかったけれど
なるべく早くおばさんに渡したかったので、毎日まっすぐ帰ってパズルに取り組んでいた。
ネモフィラの花畑は段々仕上がっていく。
あの日、花の前ではしゃいでいたハルトの顔を思い出しながら、ひとつひとつピースをはめて組み上げていった。
「あれ?」
あと少しで完成というところになって、ピースがひとつ足りないことに気が付いた。
ど真ん中の、ちょうど花一輪分のピースが欠けているのだ。
始める前に十分に注意してとりかかったつもりだった。
家族にも完成するまで部屋に入らないでとお願いもした。
いつも一緒に寝たがるネコの健太にも我慢してもらった。
「母さん!オレが学校いってる間、部屋の掃除した?」
「してないわよ?」
「健太は?」
「自分でドア開けられないのに入れるわけないでしょ?」
必死になってベッドの下や机の裏、カーテンの後ろも探したけれど、
出てきたのは、健太が以前、転がして失くしていた消しゴムばかりで、肝心のピースは見つからなかった。
市販のパズルなら、メーカーに請求すれば代わりを送ってもらえるサービスがある。
でも、オリジナルのパズルの場合は?
いや、そもそもハルトがどの業者に頼んだのかもわからないし、「お母さんへのサプライズプレゼント」と言ってたから、おばさんが知ってる可能性も低い。
「ハルト…どうしよう…」
パズルの前で途方に暮れていると母から事情を聞いたらしい姉が部屋に入ってきた。
「ふーん…ちょっと待ってて」
姉はスマホを取り出し、欠けたピースの回りごと写真にとると、慣れた手つきでアプリを操作し始めた。
周辺の画像をコピーして欠けている箇所に貼り付けて、不自然に見えないようになじませる。
ものの5分もかからないうちに、どこが欠けていたのかわからない画像が仕上がっていた。
「すごいよお姉ちゃん!これをプリントして、ピースの形に切った厚紙に貼れば!」
「まあ、紙質とか色とか完全には無理かもしれないけど」
「いや、大丈夫だよ!少しくらいならなんとか…」
『ごまかせる』…そういいかけて、はっとした。
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