日の出が祝福する時

ふつうのひと

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1章

11話 特進クラス選抜試験 〜閉幕〜

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──空間というものはどこにでも存在している。
空、水の中、宇宙にも物体が存在し、現象の起こりうる場所として空間は存在している。

「──そういった空間を、圧縮、変形するっていうのがこの力ですよ」

「空間の圧縮と変形...。単にテレポートとかじゃないのは分かってたけど、なるほどな」
場面は俺が翔庭さんの力について少しだけ理解した気でいた少し後。翔庭さんは戦っていくうちに次第に動きが鈍くなっていった。
動きが鈍くなってもなお目に見えないほど早い翔庭さんの一瞬の隙をつき、翔庭さんに炎を当てた所だ。

「はい、でもこの力は常識の範囲を出れなくて...真空空間とか酸素が薄い状態とか、歪ませる元素?物質とかが多くなってたりすると力の使用が困難になるんです。ちゃんと空気として元素だったりが釣り合ってる状態でないと使えないんです。だから人間とかも空間を圧縮させる対象にするのは難しいですね...」
翔庭さんは顎に手を当てて難しい顔をしながら自身の力について俺でも分かるようにゆっくりと話してくれる。

「そうなのか...でも十分強いと思うよ。」
だが俺はあまり意味がわからずに曖昧な返事をしてしまう。

「えぇ、この力。解明するのなかなか難しかったんですよ?」
いつもの翔庭さんが薄く微笑んで俺に力について話してくれる。

「あ、そういえば賢くんの腹部、大丈夫ですか?」
ふと、翔庭さんは何かに気付いた素振りを見せてから俺の腹部を強く刺激したのを思い出したのか、少し困り顔で俺を心配してくれる。

「あ、あぁ、大丈夫だよ。ありがとう」

「そうですか...よかったぁ」

あぁ、やっぱり翔庭さんだ。人を本気で心配してくれる本物の善人。

「さて、試験の残り時間もあと10分です。賢くんにここまで私の力の事を教えてあげたんです。もちろん戦ってくれますよね?」

「ああ、そうだな。」

「──今度こそはお互い本気でいこう。」

俺たちは互いに距離を取り、向かい合う。
最後の舞台。俺は全力をぶつけてみせる。

「通常手、出力最大:低炎」
俺の背中から人5人分ほどもあるサイズの炎の塊が背後に出現する。
俺は右手首を左手で掴み、右手を開き、翔庭さんに向ける。

「虚空の結び、狭間の回帰、内界力の制限解除。出力最大:空間進走くうかんしんそう
対して翔庭さんの周りの空間が歪み、そこだけ絵をぐちゃぐちゃに濁したかのように翔庭さんの頭上に立方体の歪んだ空間が現れる。

「今から力で圧縮され、無理やり放出した空間を賢くんにぶつけます。避けるのは不可能です。覚悟してください、賢くん」

「覚悟?それは翔庭さんがすべきじゃないかな」
俺は少しだけ口角を上げ、翔庭さんに煽り言葉を返す。

「私の覚悟は既に決めているので」
だが挑発が翔庭さんにいとも簡単に断ち切られる。

「賢くん、どっちが負けても恨みっこ無しですよ?」

「あぁ、分かってる。」

互いの出力最大の力が放出され、ぶつかり合う。


──翔庭真名の力は、常識の域を出ない。空気に含まれている物質が通常より多く含まれている場合、空気を空間と認識できない状態だと力の継続、使用が困難になる。

そして、それに同じく賢も炎の解釈をただ"酸素が無くても燃え続ける炎"と仮定するだけだった。
炎は、酸素を利用して燃料を酸化させ、その結果として二酸化炭素を発生させる。つまり、賢の炎は賢が力を解除しない限り二酸化炭素を生み続ける炎となっていた。

時に、"不完全"は相手の思惑を破り、勝利へと導く事がある。

賢の炎は二酸化炭素を生み続け、空間に二酸化炭素を大量に作り出していた。

──空間を圧縮するこの力は、しっかりと空間として元素が釣り合っている状態でないと使用、継続が困難。

翔庭真名の常識の範疇を出ない力、という設定がここで裏目に出る。

翔庭真名の空間圧縮の使用が増え続ける二酸化炭素によって中断され、空間進走は崩壊した。

「.....お見事です、賢くん。」
彼女は賢に優しく微笑みかけ、握りしめていた拳の力を抜く。そのまま彼女は、大技の押し合いに勝った炎に飲み込まれていった。

​───────​───────​───────
翔庭さんの体が緑色の膜に包まれ、救助テントへ転送されたのを確認し、俺はようやくへたり込む。

一応右腕のディスプレイを見て、人数を確認する。
1人、になっていた。もう1人いたはずだが、その人は....あぁ、翔庭さんがもう倒したのか。

出力最大の低炎を出し、内界力が完全に切れてその反動によって吐き気と倦怠感で動けなくなっていると、突然賢の体を緑色の膜が包む。
この膜に包まれた俺は、体の傷が癒え、内界力も一気に回復するような心地よい感触を味わっていた。

俺はそのまま意識が薄れ、落ちていく。

これにて、特進コース選抜試験Aブロックの幕は今、閉じた。

​───────​───────​───────
白で統一された清潔感のある部屋。家具は少なく、最低限の家具しかない。そこに女と男が、女は椅子に座り、男は立って目の前にある大きな問題について言い合っている。

──どうするの?‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪

──この子を‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪しまった以上俺たちの責任だ。

──でも、だからって.....

──君が育てられないというのなら俺が責任を持って育てるよ。君がそんな重荷を抱‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪必要は無い。

──じゃあ、‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪はどうなるの?

──さぁ、俺は人里離れた山奥でこの‪✕‬‪‪と一緒に生きていくかな。

──そんなの、ダメよ。やっぱり私もこの‪✕‬‪‪を育てる。

──いいのかい?だってこの‪✕‬‪‪は.....

──関係ありません。見て、頬っぺがスベスベで....こんなに可愛い‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪の‪✕‬‪‪よ?

──...そうだな。じゃあ、この話は終わりにして、さっさと夕飯を作ろうか。

──えぇ、そうしましょう。今日は鍋にでもしましょうか

2人の話し合いが終わり、女は席を立ち、キッチンへ向かう。
男が抱えている‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪の頬を指でなぞり、可愛がる。

──大丈夫だ。いつか才能は花開く。そしたら、その時は、誰かを、迷いなく助けてやるんだぞ。約束だ。

‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪と男が指切りげんまんで約束を交わす。
‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪‪✕‬‪‪はそれの意味も分からずおもしろがっているようだ。

そこで視界が暗転し、プツリと意識がシャットダウンする。



顔を触られている感触がする。そして耳元で何かを囁かれているような...もう少しで、聴こえるのに...あと少し声量を大きくしてくれればその言葉も聴こえるのに。
それに応じるように、声は音量を上げる。

『生きろ。生きて、生きて....そしていつの日か、此方を彼の世へと送る立派な英雄となるのだ。』

聴こえたのはそれだけだった。



「──くん!賢くん!大丈夫ですか!」
不意に脳内に声が届き、意識が覚醒してから俺は目を開ける。目に眩しい光が入ってきてしばらく光に慣れなかった。
光に慣れ、目を開けると俺の顔を覗き込んで俺の顔を両手で挟み込んでる翔庭さんの姿があった。

「あ、え、翔庭さん?」

「はい、翔庭真名です。」
そうだ、俺は翔庭さんに勝って、試験で最後の一人になったんだ。

「....ここは?」
俺は起き上がり、場所を確認する。

「ここは実行高専の保健室です。賢くんは2時間ほどここで寝込んでいました。」

「保健室...なるほど」

「はい、体も異常が無さそうですね、良かったです。これから式典が始まるので、準備して行きましょう、賢くん。」

式典...?そうか、それもあるのか。

「ん、分かった。一緒に行こう」

「はい!」

俺は準備をして、式典に参加すべく体育館へむかった。
​───────​───────​───────
静かな空間に不意にハウリングの音が響き渡り、数秒の沈黙があった後に会場を轟かせる大きい声が響き渡る。
「これより、特進クラス選抜試験閉幕式を始める!!」

全校生徒が注目する中、ステージ上に置かれている机の前に立つ校長が今より試験の閉会式の開会を行うと宣言する。

「まずは、みんな。きっと善戦をできたと思う。それは成長の糧となり大いなる力となるだろう。」

校長は「それから──」と長い話を続ける。

6分ほど長話が続いた後、校長はやっと本題に入る。

「では、此度の特進コース出願生徒選抜試験にて、見事合格した生徒を発表する。」
一気に会場が湧き上がるのを聞き、俺は緊張がより高まる。

俺は舞台裏におり、表彰される時の準備をしている。

周りには生徒が10人ほどおり、俺がAブロックだったように他の所でも試験は行われていたらしい。

そしてそこには.....

「よっ、賢。話すのは自己紹介以来かな?改めてよろしくね!」

「あ、あぁ。よろしく」
そこには、俺の横に当然と言わんばかりにニコニコと深い笑みを見せている朝日成宮が立っていた。

「やっぱり賢は残ったね。うんうん、きっとそうだと思ってたよ、思ってたさ」
彼はセンター分けの前髪をかきあげ、何回も頷きながらいけしゃあしゃあとそう言う。


「それでは、選抜試験Aブロック合格者、淡生賢。そして、力の応用、内界力の計算、出力調整などの観点と矢羽根凪の推薦から、翔庭真名。壇上へ」
え?翔庭さん?

今、翔庭さんって.....

俺と壇上へ上がった翔庭さんは、少し照れくさそうに頬を赤らめている。そして校長から表彰状を受け取り、俺にアイコンタクトをして歪な動きで舞台裏へ戻って行った。
....翔庭さんもいたのか。

俺も表彰状を貰い、緊張でロボットのような動きで舞台裏へ行った。すると、翔庭さんの姿はなく代わりに案内する先生がいて教室まで案内してくれた。

──実行高専3階、特進クラス
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