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揺れる気持ち
しおりを挟む模擬戦の翌日、学院の中庭。
木漏れ日の下、私はひとり杖を磨いていた。
昨日の戦いの余韻がまだ抜けず、胸が落ち着かない。
「……やっぱり、君はすごいよ」
ふいに声をかけられ、振り向くとレオンが立っていた。
真剣な眼差しがまっすぐに私を射抜く。
⸻
「模擬戦で分かった。君と並んで戦うと、どんな困難も越えられる気がする」
「れ、レオン……」
彼は一歩、私の方へ踏み出した。
「だから、君の隣に立ちたい。婚約者がいるのは分かってる。でも俺は、君を好きになってしまった」
空気が止まる。
心臓が跳ね、呼吸が苦しくなる。
(好き……って、私に?)
⸻
返事をしようとしたけれど、喉がつまる。
私の頭の中には、昨日助けに来たサフィール先生の姿がよみがえっていた。
あの余裕の笑みと、真剣な眼差し。
どちらも忘れられない。
「わ、私……」
声が震える。
「そんなこと言われても困る。どうしたらいいのか」
レオンは静かに頷いた。
「答えは急がなくていい。俺は待つよ」
そう言い残して去っていく。
⸻
ひとり残された私は胸を押さえた。
(……なんで。なんでこんなに心が揺れるの……?)
その時──
「んまぁ♡ 青春してるわねぇ」
「ひゃあっ!?」
植え込みの影からひょっこり顔を出したのは、サフィール先生。
扇子をパタパタしながら、にやにや笑っている。
「せ、先生! い、いつから聞いてたの!?」
「最初からぜ~んぶ♡」
顔が一気に真っ赤になる。
「ちょ、ちょっと! 盗み聞きなんて最低!」
「盗み聞きじゃないわぁ。大事な婚約者が告白されてるんだから、確認しなきゃ♡」
「~~~~っ!」
叫び声を飲み込み、私はその場から走り去った。
⸻
背後で先生の楽しげな笑い声が追いかけてくる。
でも私の胸の中には、それ以上に強烈な動悸が残っていた。
(……本当にどうしたらいいのよ、私……!)
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