女だからって舐めないで

意識しすぎて

　告白騒ぎから数日。
　私はどこか落ち着かないまま授業を受けていた。

「──はい、そこ。魔力の流れを意識して♡」

　サフィール先生の声が響く。
　いつも少し離れたところから、声をかけるだけなのに、今日はやけに近い。
いや、近すぎだ。
「ちょ、先生!?　そんなに顔を寄せなくても！」
「んまぁ、細かいところを見てあげてるだけよぉ」

　耳元で囁かれて、思わず跳ね上がる。
　周りの生徒たちが「仲いいなぁ」「婚約者だものね。」とひそひそ笑っているのが聞こえて、余計に顔が熱くなった。

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　放課後。
　研究室に呼ばれ、内心びくびくしながら入る。

「今日は調子が良かったわね♡」
「……別に、普通よ」
「ふふ、強がりさん。ちゃんと成長してるのは分かってるわ」

　そう言って、先生は紅茶を差し出してきた。
　香り高い茶葉、丁寧に淹れられた一杯。

　──いつもなら適当にお菓子をつまんで終わりなのに。
　なんだか、特別扱いされているみたいで落ち着かない。

「どうしたのかしら、お嬢様。顔が真っ赤よ？」
「なっ……そ、そんなことない！」

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　視線を逸らしても、心臓はバクバクとうるさい。
　レオンに告白されたばかりだからか、余計に、先生の行動を意識してしまう。

（な、なんで……。先生なんかに意識してる場合じゃないのに！）

　けれど先生は楽しそうに微笑むだけ。
　何もかも見透かしているようなその目に、ますます混乱する。

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　帰り際、扉を出ようとした私の背中に声がかかった。
「ねぇ、お嬢様」

　振り向けば、先生は珍しく真剣な表情をしていた。

「誰に何を言われても……あなたはあなたのままでいいのよ」

　一瞬、時間が止まったように感じた。
　それはからかいではなく、本気の声音。
　胸の奥にじん、と熱が広がる。

「……っ！」
　返事ができないまま、私は走り出していた。

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（だめだ……。これじゃ、本当に意識しちゃう……！）

　頬を押さえて夜道を駆けながら、自分の心の変化を誤魔化すことしかできなかった。