女だからって舐めないで

仮面の囁き

　月明かりの下、塔の頂に立つ仮面の影は、私を真っ直ぐに見下ろしていた。
　冷たい視線を浴びた瞬間、背筋が粟立つ。

「……誰なの」
堪らえようとしてもこえが震えてしまう。
　それでも問いかけると、仮面の人物はゆっくりと笑った。

「血脈の継承者……やはり生きていたか」

　血脈。
　その言葉を聞いただけで、胸の奥がざわめいた。
何度も先生がの匂わせていたこと。
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「あなたが……学院を襲ったの？」
　思わず前に出ようとすると、肩を押さえられる。

「下がれ、リディア！」
　レオンの声が鋭く響いた。

　けれど私の心は抑えきれなかった。
（私を……狙っている？　どうして……？）

⸻

「フフ……無垢な瞳。だが、その力は隠せはしない。
　いずれ選ばされるだろう──誰のものとなるのか、な」

　仮面の人物が片手を掲げると、夜空が揺らぎ、影の群れが一斉に引いていく。
　その姿はまるで舞台の幕が下りるように、音もなく闇に溶けた。

　残されたのは、凍りついた沈黙だけ。

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「……リディア、大丈夫か」
　レオンが肩を抱く。
　その温もりに少し安心したけれど、胸の中のざわめきは収まらない。

　すると先生がゆっくりと近づいてきた。
「血脈……ね」
　扇子で口元を隠しながらも、真剣な瞳を向けてくる。

「リディア。あなた、本当に“普通の娘”だと思っているの？」
今更のように言われる。
　問いかけに、息が止まった。

⸻

　その夜、私は眠れなかった。
　仮面の影の声が耳に残って離れない。

（血脈……私の力……。いったい、私は……何者なの？）