女だからって舐めないで

学院総力戦

　その朝、空は鉛色に曇っていた。
　胸騒ぎとともに、結界の警鐘が鳴り響く。

「敵襲──！！」

　轟音と共に、学院の結界が砕け散った。
　押し寄せてくるのは黒い魔獣の群れ。そしてその背後に、仮面の男の姿。

「王家の血脈よ。今度こそ逃がさん」

　声が全身を凍らせる。だが、逃げる気はなかった。

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　学院の中庭に、生徒たちと教師が陣を張る。
　剣を抜いたレオンが隣に立つ。
「行くぞ、リディア。今度こそ負けない」

「ええ。守るために戦うのよ」

　魔術陣が輝き、学院総力戦が始まった。

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　魔獣の咆哮が轟き、矢が飛び交い、火と雷の魔術が空を裂く。
　私は風の刃を放ち、迫る魔獣を薙ぎ払った。
　以前よりも力強く、正確に。

　だが、数が多すぎる。
「くっ……！」
　汗が滲み、魔力が軋む。

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「下がってなさいな♡」

　先生が扇子をひらりと広げる。
　舞うような仕草から、眩い光の矢が降り注ぎ、魔獣の群れを穿った。

「今日の私は本気よ。お嬢様に格好悪いところなんて見せられないもの」

　ふざけた調子なのに、瞳は鋭く燃えていた。
　その姿に思わず見とれる。

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　だが、仮面の男が闇を叩きつけた。
　黒い奔流が学院の防衛陣を切り裂き、生徒たちが次々と吹き飛ばされる。

「甘い。力を制御できぬ未熟者に、血脈は扱えぬ」

「そんなこと……ない！」

　私は一歩踏み出す。
　胸の奥で血脈が燃える。風と光が渦を巻き、指先に集まっていく。

「私はもう、誰にも守られるだけじゃない！
　学院を、仲間を、私が守るの！」

　叫びと共に、巨大な光の竜巻が仮面の男に襲いかかった。

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　轟音。
　衝撃波で大地が割れ、建物が揺れる。
　魔獣の群れが一掃され、空に穴が開いたように光が広がる。

　その光景に、生徒たちが息を呑む。
「リディアが……」
「すごい……！」

　だが──。
　煙の中から、仮面の男の笑い声が響いた。

「それでこそ。王家の血脈よ」

　次の瞬間、彼の仮面に亀裂が走った。