女だからって舐めないで

佐藤なつ

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迫り来る影

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学院の大広間に、生徒や教師たちが集められていた。
 戦いの爪痕はまだ生々しく残っている。石造りの壁に刻まれたひび、焦げ跡、そして不安に満ちた視線。

 学院長が重々しい声で告げる。
「結界の修復は完了した。しかし──敵は必ず再び来るだろう」

 ざわめきが広がる中、私は無意識に拳を握っていた。
(あの仮面の男……必ず止めなくちゃ)



 夜。
 私は訓練場でひとり、魔力の制御を繰り返していた。
 光と風を編み合わせ、暴走せずに留める練習。
 額から汗が滴り落ちる。

「無茶はおやめなさいな♡」

 背後から先生の声。
 振り返ると、月光を浴びたその瞳は、柔らかさと鋭さを併せ持っていた。

「明日が本番よ。身体を壊しては元も子もないわ」

「でも……負けたくないんです」
 私の声は震えていた。
「私が弱ければ、誰かが傷つく。だから──」

 先生はそっと近づき、私の頭に手を置いた。
「大丈夫。あなたには守る理由がある。それが何よりも強い力になるの」

 心臓が跳ねる。
 その言葉は甘い慰めではなく、確信に満ちていた。



 一方その頃──。

 学院の外れ。黒い霧の中に、仮面の男が佇んでいた。
 膝をつく魔導師たちに、低く冷たい声を響かせる。

「次で終わらせる。王家の血脈を必ず手に入れろ」

 仮面の奥の瞳がぎらりと光り、闇が学院を包むように広がっていった。



 寮に戻った私は、窓辺に立って夜空を見上げる。
 胸の奥がざわめいていた。
 まるで血脈そのものが、嵐の前触れを告げているかのように。

「……明日が決戦」

 小さく呟いた声が震えた。
 でも、目は逸らさない。
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