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決戦前夜の揺らぎ
しおりを挟む戦いの余韻が、学院に重く残っていた。
崩れた校舎の一部では魔術師たちが修復の術を施し、負傷者は治癒班に運ばれていく。
だが、幸い死者は出なかった。──私が守れたから。
胸にまだ、熱の残り火が疼いている。
風と光に包まれた瞬間、確かに感じた。
(私には……戦える力があるんだ)
⸻
夜。
学院の中庭に出ると、月明かりの下でレオンが剣を磨いていた。
「レオン……」
「リディア」
彼は顔を上げ、少し困ったように笑う。
「危ない真似をするなって、言いたいところだ。でも……正直、すごかった」
その眼差しには尊敬と、何かもっと深い感情が宿っていた。
私は胸が熱くなるのを誤魔化すように、そっぽを向いた。
「当たり前よ。あなたに守られてばかりなんて嫌だもの」
「……そこが、君らしい」
レオンが呟き、ふと手を伸ばしかけて──けれど、途中で拳を握りしめた。
言葉にならない想いが、月の下で揺れている。
⸻
そのとき、背後から軽やかな声が降ってきた。
「あらあら♡ 恋人同士の逢瀬を邪魔しちゃったかしら?」
先生が扇子を片手に現れた。
薄紫の光を帯びた瞳は、いつもより真剣で──でもどこか寂しげでもある。
「先生……」
「今日のあなた、とっても輝いていたわ。
ただの“守るべき子供”じゃなくて、ひとりの戦士として」
扇子で口元を隠しながら、先生は一歩近づく。
甘い香りが風に混ざり、胸の鼓動が乱れる。
「私はね、職務としてあなたを守ってきた。
でも……それだけじゃなくなってしまったの。
あの時、風を纏ったあなたを見て……心ごと奪われたのよ」
レオンが息を呑むのがわかる。
先生の告白は、冗談めかした調子ではなかった。
真剣で、痛々しいほどに。
⸻
私は返事をできずに立ち尽くす。
レオンの沈黙、先生の視線h。
張り詰めた空気が、夜を支配していた。
(どうして……どうして二人とも、そんなふうに……)
心が揺れる。
けれど、その時ふと──遠くで警鐘の音が響いた。
決戦の時が、近づいている。
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