王家契約の鍵は、婚約破棄された令嬢でした

佐藤なつ

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新しい未来へ(完)

夜。
王宮では、守護獣との契約を祝う宴が開かれていた。

慣れない、華やかな場に、ロゼリアはバルコニーに逃げてきた。

あんなに、あざ笑っていたのに、掌を返したみたいに皆がにこやかに接してくる。
これが貴族社会なんだと改めて思う。

ロゼリアの肩にはモフモフが乗ったままだ。
まだ、うつらうつらしている。
それを撫でて気持ちを宥める。

「こんな所にいた。」
アルヴィンが現れた。
「うん。慣れなくって。」
心配そうな顔で、上着をかけてきてくれる。
「疲れたのか?身体を冷やすぞ。何か飲み物を・・・。」
矢継ぎ早に言われる言葉。
どれも自分を心配してくれるんだと思うと、胸が温かくなる。
なんでちょっと前まで、鬱陶しさを感じてたんだろうって不思議に思う。

「大丈夫。ちょっと疲れただけだから。」

「そうか!でも・・。」
アルヴィンは落ち着かない様子だった。
「どうしたの?」
ロゼリアが聞くと、
「ロゼにはすまない事をしたと思っている。出来る限り危険に巻き込みたくないって思って・・たが、結局、危ない目に遭わせてしまって。」
「そうね!囮にもしたしね!」
冗談を言ったつもりなのにアルヴィンは言い返して来ない。
「ぐっ。それは、その。」
なんてモゴモゴしている。
「仕方なかったって事はわかってるから!」
そういうとホッとした顔をするアルヴィン。

ウツラウツラしていたはずの守護獣がパチリと目を開けた。
クァと小さくアクビをすると、二人の間をふよふよ飛び始めた。

二人はしばらくその様子を見ていた。
「ねぇ。」
「なんだ。」
「王家保護下ってどういうこと?」
「う・・ん。まぁ、王家っていうか、俺の保護下っていうか。」
アルヴィンがまたモゴモゴ言う。
いつものアルヴィンらしく無い。

「それって父さんみたいに、直属の部下になるってこと?」
「ちがう!」
すぐ否定された。

「違うの?じゃあ何するの?・・・・はっきり言って。」
ロゼリアの言葉にアルヴィンは真顔になった。

「俺の、婚約者。いや、妻として側に居て欲しい。ずっと、ずっと。」
思った以上のストレートな言葉に、頬が熱くなった。
「後、兄じゃなくって、アルって呼んで欲しい。」
「それは・・ちょっと難しいかな・・。」
ロゼリアの言葉に、アルヴィンは苦虫を噛み潰したような顔になった。
それから大きな溜息をついて、
「もう、随分待ったからな。今更焦らないさ。」
と、言った。
「うん。ありがと。」
アルヴィンが手を出す。
ロゼリアは黙ってその手にエスコートされる。
ちょっと強引で、それでいて絶対守ってくれる、離さない。
安心させられる手。
パーティに戻りながら、ロゼリアは意地悪く言った。
「ねぇ、アル兄っていつから、私のことそんな目でみてたの?私が子供の時からだったら、結構な変態なんだけど・・ねぇ・・ねぇ!」

ロゼリアの追及にアルヴィンは
「うるさい!」
顔を赤らめて言い返してきた。

見つめ合って、二人は噴き出した。
その間もアルヴィンの手は、離れない。

小さな頃から、ずっと繋いでくれていた手。
一度は離してしまった手。

ロゼリアは、ほんの少し力を込めて手を握り返した。
反応が返ってくる。
今までは守られていた、引っ張ってくれていた。
10歳の年の差は変わらない。
身分も、能力も劣ってしまっている。
怯む気持ちが湧き上がってくる。

その時、守護獣が、くるると鳴いた。
今までと違う、甘く優しい祝福の声だ。

呼応するように、夜空に星が瞬く。

後押しされるように、ロゼリアは口を開いた。

「ねぇ。”アル”。」
初めの呼び名。

アルヴィンが息を呑む。
その音に、胸が高鳴る。
アルヴィンの思いが伝わってきて。

「今まで、ありがとう。」
子供だったロゼリアを見守ってくれて。
ロゼリアを選んでくれて。

「これからは、私も・・・一緒に」
その言葉は最後まで言えなかった。
アルヴィンの胸に、強く抱き寄せられたからだ。

子供の頃から何度も抱きしめられた胸。
いつだって余裕に見えたアルヴィンの激しい鼓動が伝わってくる。

ロゼリアと同じ速度で。
同じ、思いを持ってくれているんだと嬉しくなった。

「く・・苦しい。」
パッと腕が緩んだ。
「すまない!」
慌てる彼がおかしい。
ロゼリアは宥めるように改めて、その手を握った。

「さぁ、行きましょう。」
クイと引っ張る。

「そうだな。」
アルヴィンが頷く。
繋いだ手に同じ力が返る。

二人は、一歩を踏み出した。

意図せずとも息ぴったりに。

その後を、守護獣が静かに見守っていた。
感想 1

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みんなの感想(1件)

ちぃ
2026.03.01 ちぃ

え?これで終わりですか?
完結してるように思えないのですが、、、、

2026.03.01 佐藤なつ

ちぃ様

ご指摘ありがとうございます。
設定の操作にまだ不慣れで、誤って完結設定にしてしまいました。
物語はあと数話で完結予定ですので、引き続きお付き合いいただけましたら嬉しいです

解除

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