神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ

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初依頼!?

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 新作

『極悪奴隷商の悪役息子に転生したので、奴隷は売らずに大切に育てます』

『転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件』
 を新作連載しました。

 こちらも爽快で、主人公最強の冒険ファンタジーとなっておりまして、テンポよく1話1500字で毎日更新していきます。
 是非読んで見てください。
 


 冒険者になることを決めて、家族からの了承を得てからおよそ10日が経った。

 了承を得てからすぐに冒険者として活動しなかったのには理由があった。

 その理由はというと、アイシャが俺が旅に出ることを分かっていても、すぐに俺が出て行ったら、悲しむだろうとのことだ。

 可能であるならばアイシャも一緒に俺の冒険に連れて行ってあげたいと思うほどアイシャとの時間を大切に思っているので、俺はすぐには出発せずにしばらくの間は家にいることにしたのだ。

 その間、ただただアイシャと戯れるだけではなく、チユキを通じて冒険者に関する学習をしたり、自分の力に慢心せずに剣の鍛錬、及び、魔法の鍛錬に精を出した。

 冒険者としての仕事内容には様々なものがある。いわば、何でも屋みたいな感じだ。

 一般的には採集依頼、魔物の討伐依頼、そして、商人や貴族たちの護衛依頼がある。
 
 他にも迷子を探したりだったり、犬の散歩をしたりする仕事もあって、冒険者としての仕事の種類は多岐にわたる。

 冒険者になるためには冒険者ギルドで冒険者登録をする必要があるということだ。
 登録をするとギルドカードというものが与えられて、それは身分証としても、加えて通帳みたいにお金を預けたり、引き出したりできるということだ。

 そして、冒険者にはランクというものが存在して、下からF、E、D、C、B、A、Sというランクが存在するらしい。

 Fが冒険者見習いで、安全性の高い依頼を受けて、冒険者について学ぶ。
 そのあとEは新人冒険者、そして、1番冒険者数が多いのがDランク、そのあとのCランク冒険者はベテランの冒険者が多くを占め、そのあとB、A、Sは順番に、凄腕、超人、人外という具合になるらしい。
 俺の母さんは一応Sランクであり人外認定されている。

 さらに、Aランク冒険者には男爵に相当する権力が与えられ、Sランク冒険者になると伯爵と同じくらいの権力が与えられるらしい。

 ランクに関して付け加えると、かなりの実力を持った新人でも、この世界では例外もなく、Fランクから始まるらしい。

 昇格に関しても厳重なようで、ぴょんぴょんと飛び級などの処置も一切ないということだ。
 
 この方針は冒険者たちの死亡率を少しでも下げるためにあるらしい。
 
 高ランクになればなるほど、実践における経験値が必要となり、加えて、依頼を真面目にコツコツ受ける誠実な性格、および信頼が求められているということだ。
 
 俺は冒険者についての知識をある程度身につけて、とうとう出発の時が来た。
 
「じゃあ、行ってきますね」

 俺は家族に向けて、別れを告げる。
 父さんと母さんも笑顔で見送ってくれて、

 肝心なアイシャはというと、

「にーにー! 頑張ってね~!」

 あのブレスレットをあげたおかげで悲しむ様子はなく、いつも以上に可愛い笑顔をこっちに向けて手を振ってくれた。
 
 連絡を必ずすることと、新たな街についたら転移で一緒に回るなどの約束をしたのも効果があったのだろう。

 なぜだか見送りの際に1番別れを悲しんでいるのは、俺の専属のメイドであるサーニャだった。

「サーニャ、そんなに泣かないでよ。2度と会えなくなるわけじゃないんだしさ……」

「カイン様……、私も一緒にカイン様と旅をしたかったですぅー……」

 と、いつもはピンと立っている尻尾が今はかなり垂れ下がってしまっていて、かわいい耳までもがぺったんとしていた。

「まぁ、この家にはサーニャは必要だしね……もう少し俺が大きくなったら、一緒に旅でもしよう!」

「はい……わかりました……約束ですからね……」

 ステータスからしても、サーニャはこの家の中では父さんと母さんを除いてはトップの実力なので、この屋敷の最終防衛ラインであると考えられる。

 そのことはサーニャも充分に分かっているようで、何が何でも俺についていくといった感じには駄々をこねたりはしなかった。

 さすがに何もしないのはかわいそうだなと思った俺はアイシャと同じ機能を付与したイヤリングを渡した。


 俺は家族皆に別れを済ませて、ようやく冒険に出るべく家を後にした。


 ⭐︎⭐︎

 家を出てから数分のところで、俺は冒険者として活躍していくために、一通りのない裏路地ににて姿を変えることにした。

 身長は178センチ、髪色は前世と同じ黒髪。
 そして、眼だけは金色のままにして、派手な紋様だけを消すことにした。
 ステータスの方も、変更ができるようで、歳は希望通りの18歳にして名前は前世と同じ、ケントにすることにした。

(よし、こんな感じでいいかな? って、誰だよ? このイケメンは!)

 俺は鏡に映った自分の姿をみて、あまりの自分のイケメンぶりに驚いてしまうのであった。

『まぁ、マスターはなんたっても神様ですからねぇー。姿を変えようがイケメンであることは変えられないですよぉー』

 チユキがそんなことを言ってくる。
 俺は裏通りから表通りへと移動し、グロービル伯爵領にある冒険者ギルドへと向かう。
 
 しばらくチユキに案内してもらいながら歩いていくと、

「すっげぇぇぇ! 流石にこれは圧巻だなぁ!」

 俺の目の前に剣と盾をモチーフにしたエンブレムが掲げられた大きな建物があった。

『ふふふ、マスターが子供みたいにはしゃいでますね! そう、これこそがあの、ファンタジーお決まりの、冒険者ギルドですっ!」

 チユキもどことなくテンションが高めでそんなことを言ってきた。

 俺はこの建物を見ていたらいても立ってもいられなくなって、冒険者の扉を勢いよく開けた。
 
 扉を開けた先には、アニメや漫画で見たような冒険者ギルドの光景がそこにはあった。

 防具に身を包んだ人たちで溢れ、掲示板のところには依頼らしきものが貼り出され、ギルド内は居酒屋のようにもなっていて、数名の男達が昼間から飲んでいてワイワイと騒いでいた。

 奥の方に目を向けると、受付嬢らしき綺麗な女性たちが事務作業をしていた。

(やばい! どうしよう! ワクワクが止まらないんだけど……
てか、本当に受付嬢って美人な人が多いんだね)
 
『はいはい、マスターの気持ちはよーく分かりますよー、さっそく、登録しに行きましょう!』

 俺は冒険者登録を行うべく、受付へと向かう。

「すみません、冒険者登録をしたいんですけど~」

「は、は、はい。ぼ、冒険者登録でいいんですね?」

 綺麗というより可愛いらしい女の子が俺の対応してくれた。
 なぜだか俺の顔を見た彼女の顔がすごく赤くなっているが、今は気にしないことにしよう。

「はい、よろしくお願いしますね!」

「はい! では、こちらの水晶に手をかざしてもらってもいいですか?」
 
「はい、わかりました」

 受付嬢に言われたまま、俺は水晶に手をかざす。

 受付嬢が言うには、この水晶はステータスを調べるものではなく、犯罪履歴があるのかどうかを調べる魔道具だということだ。

「大丈夫みたいですね、では、登録をするためには銀貨3枚が必要なんですが、大丈夫でしょうか?」

 冒険者登録の際には、ギルドカードの発行手続き料金として、銀貨3枚が必要になるとのことだ。
 この世界で銀貨3枚はおよそ、3000円くらいなので、それほど大した額ではない。
 
 ここで貨幣について説明をしておくと、順に、
 鉄貨=1 フェス
 銅貨=10 フェス
大銅貨=100 フェス
 銀貨=1,000 フェス
大銀貨=10,000 フェス
 金貨=100,000 フェス
大金貨=1,000,000 フェス
白金貨=10,000,000 フェス
黒金貨=100,000,000 フェス
虹金貨=1,000,000,000 フェス

 となり、1フェス=1円くらいの価値である。

「はい、手持ちはかなりありますので」

 俺は大銀貨を1枚払って、お釣りとして銀貨7枚を受け取った。

「では、次にこの用紙に名前、年齢、および、戦闘タイプや使用する武器。恩恵などの記入をお願いします。もし、字が書けないという場合であれば代筆致しますがどうされますか?」

 この世界では日本ほどの識字率はないみたいで、代筆を頼む人も多いらしい。
 俺は一応貴族なので、文字の読み書きも問題なく出来るので、

「あ、自分で書けますので大丈夫です。それと、戦闘タイプとか恩恵って必ず書かないとダメなんでしょうか?」

 用紙にはいろいろなプライベートな質問が多数あるので、そのことを受付嬢の子に聞いてみると、

「書きたくないという場合であれば、未記入で構いません。それと、未記入であっても、冒険者として不利になることはないので、安心してください」

「はい、わかりました。じゃあ、これでお願いします」

 俺は名前はケント、年齢18。
 戦闘タイプは剣と魔法の両方。
 そして、恩恵は魔法剣士として用紙に記入した。

 その用紙を見た受付嬢はというと、

「ケントさんっていうんですね! って、す、すごい、ま、ま、魔法剣士なんですか? 私、初めて見ました!」

 興奮気味で用紙を眺めていた。
 ルイーゼが魔法剣士であったが、魔法剣士という恩恵はこの世界では、珍しくさらに、上位の恩恵であるので、受付嬢が驚くのも無理もない。
 けれど、そんなに俺も目立ちたくはないので、

「あのー。冒険者登録の続きをしてもらってもいいですか?」

「あ、あ、すみません……受付である、私が興奮してしまって……」

 恥ずかしそうな顔を赤くして、申し訳なさそうにしていた。

「では、これがケントさんのギルドカードとなります。ギルドカードについて説明いたしましょうか?」

「ある程度は知ってるので、説明は大丈夫ですよ!」

「そ、そうですか…… 最初はFランクからとなりますが、コツコツと依頼をこなしてランクを上げていってくださいね!」

 俺はある程度、チユキのおかげで分かっているので、結構ですと言うと心なしか受付の子がしょんぼりとしていた。

「ところで依頼はどうしたら受けれるんですか?」

「あ! 依頼ですね! はい、私がお教えしましょうっ! まず、依頼は自分の冒険者ランク一つ上まで受けることができます。たとえばDランクの冒険者ならCランクの依頼までは受けることができます。
 そして、依頼の受け方はというとあそこにある掲示板に紙が貼ってあります。
 あの紙は依頼書と言って、依頼内容や報酬が書かれています。その中で、気に入ったものがあれば、それを剥がして、こちらの受付まで持ってきてください。
 それを私たち受付嬢が受理することで依頼を受けることができます。
 依頼に関しては早いもの順ですので、いい依頼を希望するなら朝早く来ることをお勧めします。
 また、掲示板にはゴブリン討伐や薬草採取などの常駐依頼がございますが、それは受付にに持って来なくとも、いつでも、誰でも、受けることができるので、そこのところは注意してください。
 と、ここまでで依頼に関しては以上になりますが、質問はありますか?」
 
「いえ、かなりわかりやすく説明していただいたので、特に質問はありません。ありがとうございました」

 ひとまずのところ冒険者登録については完了した。

「いえいえ、これがわたしの仕事ですからね。ところで、さっそく、依頼の方を受けていかれますか?」

「そうだなぁ。さっそく何か受けてみようかな? 何かいいのあるかな?」

 受付嬢はさっそく俺に見合ったものを探してくれて、

「3つ程選んだんですが、こんなのはどうでしょうか? まだ登録したばかりですし、これくらいがちょうどいいと思いますが——」
 

 提示された依頼の内容はというと、

————————————————
依頼内容:薬草を採取を求む
種類:薬草採取
依頼ランク:F
報酬: 採取回復草、魔力草、万能草の3種、それぞれ1束につき300フェス

備考:状態の良し悪しによって報酬は変わる。

場所:ヴァッカの森付近
————————————————


————————————————
依頼内容:ポチを探して欲しい。
種類:迷子の捜索
依頼ランク:F
報酬:依頼受注で5000フェス。捜索に成功すれば、50000フェスの追加。

備考:どうかわたしの可愛いポチをよろしくお願いします。

場所:未定
————————————————


————————————————
依頼内容:スライムゼリーの入手。
種類:討伐依頼
依頼ランクF
報酬:スライムゼリーひとつにつき500フェス。

備考:特になし

場所:ヴァッカの森、ヴァッカ平原
————————————————

 この3つである。
 薬草採取はポーション作りの材料となる物をとにかく集めておけばいいとのことで、迷子の捜索はとりあえず依頼を受けておいて、そのポチちゃんのことを意識するだけでもいいということだ。
 見つけたら見つけたで、追加報酬がある。
 
 さらにスライムゼリーというのはスライムを討伐した時に出てくるドロップ品で、生活の中ではあらゆるものに利用されている。

 科学知識のないこの時代では、スライムゼリーは石鹸の材料であったり、貴婦人の美容液としても利用されているということだ。

 また、何故かはわからないのだが、スライムとダンジョンの魔物に限り、ドロップ品が落ちてくるということだ。

「じゃあ、この3つを受けてみてもいいですか?」

「はい、じゃあ、依頼を受理致しますのでギルドカードを出してもらってもいいですか?」

 俺はギルドカードを受付嬢に渡し、冒険者デビューとして、この3つの依頼を受けることにした。

 依頼を受付嬢に受理してもらった後はさっそく依頼に向かうべく、ヴァッカ平原方面に向かう。
 冒険者ギルドを出ていく際に、受付嬢たちがキャーキャー騒いでいたのだが、きっと自分のことではないと決めつけて足早に外へと出ていくのであった。

 って、出たのはいいものの、ヴァッカ平原ってどこにあるの?
 さっきのうちに聞いとけばよかったなぁ……
 と、そんなところ俺の頼れるパートナーが場所を教えてくれるみたいで、

『やっと、わたしの出番ですねー! そこを右に曲がって、大通りに出てそのまま東の方にまっすぐ行くと門がありますので、そこを出ればそこから先がヴァッカ平原ですよー! そして、ヴァッカ平原の奥に見えるのがヴァッカの森です』
 
(さすが俺の相棒チユキだな! じゃあ、さっそく行くか!)

『……俺のなんてぇ~! マスター、私今ものすごく嬉しいですぅー』

 脳内で悶えだすチユキは放っておいて、早速東へと向かう。

 チユキの言う通り大きな門があって、そこに検問のための兵士がいた。
 一応この兵士はグロービル領の兵士であるので、顔は知っているのだが、今の俺の姿は相手にはわからないようで、

「外に出るのか? じゃあ、とりあえず身分証を出してくれるか?」

 俺はギルドカードを出して、

「なんだ、冒険者だったのか。身なりがあまりにもきれいだったからな。よし、じゃあ確認できたから進んでいいぞ。くれぐれも無茶だけはするなよ」

 優しい門兵に後押しされながら、門の外に出た。

 門を出た先にはそヴァッカ平原が広がっていて、その奥には森のようなものがあった。

「チユキ、あれがヴァッカの森なんだよね?」

『はい、それであってますよ!』

「よし、じゃあ、さっそく冒険を始めようか!」

 俺の冒険が幕を開けた。

 しばらく平原を歩いていると、今回の依頼の目的でもあり、ファンタジーにおいての大定番である、ヤツがその姿を現した。
 
 にょろにょろ。ぴょんぴょん。

 不定形の生き物、スライムが不規則に動いていた。
 俺とエンカウントしても、何故かこのスライムは襲う様子はなかった。
 だがそれでも依頼のためだと思って、スライムに向かって米粒サイズのファイアボールをぶつけた。

 この世界では弱肉強食が当たり前であり、俺という強者の前にスライムの体が光の粒子になりスライムゼリーだけをこの世界に残して行った。

 よし、これでようやく一つか、と俺はスライムゼリーを無限収納《インベントリ》にしまい、再びスライムを探すべく歩き出した。

 一見、順調そうに見えたのだが、

『マスター!! なに、本当に冒険者見習いみたいなことをしているんですか? せっかくマスターにはすんばらしいチート能力があるというのに、これでは宝の持ち腐れですよ?』

 のろのろと平原を彷徨い歩いていたら、チユキに怒らてしまった。

(確かにそうだよね…… じゃあ、なんかチユキにはいい案があるのかな?)

『はい、ありますとも! では、提案させていただきますね! まず初めに、マスターは神眼をもっと使ってください。マップ機能がありますので、検索をかければそのもの位置がわかります。さらに、敵対関係にあるものや、マスターに害意を持つものは赤色で表示され、自動的にマーキングがされます。また、味方は青色で、そのほかは、緑色となります。魔物に関しては白色で表示されます。表示を解除すればいらない情報は私の方で遮断します。と、ここまでいいですか?』

 チユキが神眼のマップ機能についてを説明してくれた。
 俺はその内容から察して、

(なるほどね。要するにチユキが言いたいことはこのマップ機能をつかって、目的の場所まで、最短で行けってことが言いたいんだね)
 と、俺が言うと、

『マスター…………マスターって正真正銘、生粋のおバカさんか何かですか?
それと、人の話は最後まで聞きましょうね! と、お説教はここまでにしておいて、私の提案はここからです。マスターはスライムゼリーの入手には二つの方法があるのを知っていますか?』

(えっ? スライムゼリーって倒す以外にも他に入手方法があるの? だとしたら、さっきのスライムさんには申し訳なしことをしたなぁ…… で、他にどんな方法があるの?)

『それはですねぇ~。スライムをテイムすることです。スライムゼリーはいわばスライムの体の一部であり、老廃物です。ですので、スライムをテイムした後は定期的にスライムゼリーが手に入るようになります。ですが、スライム入手の方法は、この方法は一般ではありません。それはまず、魔物をテイムできるテイマーの恩恵をもった人が少ないこと、とスライムゼリーに関する情報があまり普及していないことに原因があります』

(なるほどね。でも、なんだか、そんな理由で殺傷されるスライムたちがなんだかかわいそうだよ。じゃあ、さっそくスライムたちをテイムしに)

『だぁかぁらぁ! 人の話は最後まで来てください! スライムをテイムする方針はいいのですが、マスターは別にここから動かなくても良いです』

(えっ!? 俺が動かなくても、今回の依頼は達成できるっていうこと?)

『そうですよ! さっきまでいい一生懸命動いてましたが無駄でしたね。プププ。
まあ、マスターを馬鹿にするのは置いといて、方法について説明しましょう』

 チユキによる説明が始まった。
 その案はさすが智慧神だけはあるといった感じで、

・まず、最初に【インポート】という魔法を作る。
 この魔法は空間魔法の応用で任意のものをこちらに引き寄せることができるとのことだ。
 これも神の恩恵のせいで、EX化してしまったため、制限がなくなってしまい、あらゆる次元から、サイズも関係なく取り寄せることができるとのことだ。
 それに付随した形で、【エクスポートEX】というも物が手に入った。

・次に【眷属化】というユニークスキルを作り出した。このスキルはテイムの上位互換であるらしく、テイムした魔物と相互に思念伝達、および感覚共有が可能になるとのことだ。
 これも、神の恩恵のおかげで、EX化を果たし、数にも制限がなくなり、対象にも制限がなくなってしまった。

・そして、今しがた作成したスキル魔法を使って、近くにいるスライムたちをこの場に引き寄せ、眷属化。

・そして、そののちスライムたちをエクスポートで薬草が群生している場所に送り込み、回収させる。ある程度回収が済んだら、再びインポートで引き寄せて終了。
 
 といった感じだ。

 今度こそ説明は終わりみたいで、さっそく俺は作業に取り掛かる。

「よし! まずは神眼のマップ機能を使用して、この周辺にいるスライムをマーキングしてっと。そのあとは、それぞれに【インポート】の魔法をかける」

インポート!

「って、これは多すぎるだろっ!?」

 俺がインポートの魔法を発動すると、ヴァッカの森、平原全域に魔法が発動してしまったみたいで、数万のスライムが俺のもとに集結した。

 俺は大量のスライムに埋もれながらも、集まったスライムたちを次々に眷属化した。

 ⭐︎⭐︎


 俺が数万のスライムに埋もれている時に、俺の近くを通りかかった冒険者パーティのメンバーたちが、

「みんな、あれ見てよ!? スライムに誰か飲み込まれてる!!」

 と、弓を持った茶髪の女性が。

「げっ!? なんだあれ、さすがにもう助けに行っても遅いだろ?」

 と、剣を抱えた男が。

「ってか、なんであんなにスライムが集まってるんだ? 普通、あんなことあるのか?」

 と、ローブを纏い、眼鏡をつけた男が。

「まぁ、見なかったことにしましょう……きっと、厄介事に巻き込まれてしまいますわ」

 と、同じくローブを纏った、長い耳をした女性が。

 と、希有なものを見たと言った感じで俺の近くを通り過ぎ去っていった。

 ⭐︎⭐︎

 スライムの眷属化に成功した俺は、再びマップを使用して薬草の群生地へとスライムを飛ばした。

「ふぅ~~。と、こんな感じでいいんだよね?」

『はい、これでかなり効率が良くなりましたね! っと、その間にポチちゃんもインポートして置きましょう』

 俺が受けた依頼にはポチの捜索もあったので、神眼のマップ機能で捜索した。

 俺はマップでポチを探して見たところ、ポチはヴァッカの森で瀕死状態になっていた。

 俺はすぐさまポチをインポートした。

 インポートしてみると分かったのだが、ポチは犬……では、なかった……

 なんと、ポチは犬ではなく、猫だったのだ。

 俺はそんなツッコミは置いといて、瀕死のポチに回復魔法を掛けた。
 
 回復魔法を掛けるとみるみる、傷が塞がっていき、ポチが目を覚ました。

 毛についた血は回復魔法ではどうにもならないみたいで、俺はクリーンを掛けて綺麗にしてあげた。

 ミャオ~~~♪

 自分が助かったのは俺のおかげとわかったのか、ポチが俺に近寄って頬擦りをしてくる。

 人の家の猫であるがあまりにも可愛らしいので、しばらくはポチと戯れて過ごした。

 あまりにも夢中になっていたせいか、送り出したスライムのことを忘れてしまっていた。

 慌てて俺はスライムたちをインポートして、引き寄せた。

 スライムたちには特に怪我というか、異常状態は見当たらなくて、俺は安堵の息を吐いたのだが—————

『マスター、薬草の群生マップを確認してください————』

 と、俺はチユキに言われるがまま、マップを確認してみると、

「あれ!? なんで!? なんで!? 薬草が全部なくなってるの?」

 さっきまであったはずの薬草は完全になくなってしまっていて、マップには一切薬草の場所が映らなかった。

「もしかして—————」

 スライムたちの方を見てみると、やってやりました! と、言わんばかりに自慢気な様子だった。

「なんてことを……」

『まぁ、マスターが悪いんですよ? ポチちゃんとずっと遊んでばっかいるんですから!』

 確かに俺がスライムたちから目を離したのが悪かった。

 けれど、このままでは薬草がこの周辺に一本もないという状態になってしまうので、それを避けるべく、俺は一つの魔法を創り上げた。

【世界創生魔法:薬草発生】

 俺は薬草があった場所に、新たに薬草を生やして元通りにした。

 そのあとはあまりに多すぎるスライムたちに一つになってもらった。

 一つになったスライムは初めはとても大きかったのだが、ちっちゃくなーれと念じてあげると、1体分の大きさになった。

 スライムが回収をしてくれた薬草を無限収納《インベントリ》にしまいこみ。
 
 右肩にスライムを、そして、左肩にポチを乗せて、俺は領内に戻っていった。

 と、途中であることに気付いてしまった。

 それは———

 最初から薬草とスライムゼリーを創ればよかったんじゃね!? 

 ということを。


 その考えにチユキはというと、

『まぁまぁ、マスターにしてはなかなかやりますね!』

 と、言っていた。

 無事に依頼を全て終わった俺は、依頼達成の報告するために冒険者ギルドへと向かっていくのであった。

————————————————
本日の依頼の成果

スライムゼリー:35,000 個
  回復草:100,000 束
上級回復草:1,000 束
  魔力草:80,000 束
上級魔力草: 500 束
  万能草:200,000 束
上級万能草:2,000 束
  霊薬草:3 束
 奇跡の花: 5本

  ポチの発見、ポチに懐かれる

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