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第3章 はじめてのダンスレッスン!
(2)初心者執事と貧乏お嬢さま
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……なんて、思ったんだけどね。現実は、そううまくいかない。
「あああっ、ごめんロゼ!」
「平気よ、気にしないで。……いたた」
ロゼが眉を寄せて、それでもわたしを気づかって笑顔を浮かべる。ほんとごめん……!
ダンスはダンスでも、夜会で踊るのは、いわゆる社交ダンスってものだった。ふたりで手を取り合って踊る、お城みたいな校舎にふさわしいダンスだ。でもわたし、こんなダンスしたことがないんだよ。つぎは、どっちの足を出すんだっけ。右? 左……!?
なんて混乱して、わたしは何度もロゼの足を踏んでいた。
「リリイ、すこし休みましょうか」
「ありがとう……。あーあ、こんなに踊れてないの、わたしだけだよね……」
「最初はみんな、こんなものよ。踊れるようになるまで、一緒に練習しましょう?」
ロゼは「飲み物もらってくるわね」と、ぱたぱた走っていった。……呪いとか怖いこと言うけど、普段のロゼは結構やさしいんだよね。
(お嬢さまに飲み物を持ってこさせるなんて、執事としてどうなんだろう)
だけど、わたしはクタクタで動けそうにない。うう、なさけないよ。
『あらあら、見た目はかっこよくても、やっぱり人間はだめみたいね』
『ダンスくらいマナーでしょう』
『魔法も使えないみたいだし、どうしてこの学校に入学したのかしらねえ』
ふと聞こえた、お嬢さまたちのこそこそ話。……これ、わたしのことだよね?
『使い魔の代わりに、入学したんだものね。所詮、代打ってことよ』
胸がひやりとした。所詮、代打……。たしかにわたしは魔法を使えないし、マナーもわからない、へなちょこ執事だけど。そんな言われ方、傷つくんですけど!
「リリイ、お待たせ。あら、暗い顔をして、どうかしたの?」
ロゼが帰ってきた。でも、お嬢さまたちのこそこそ話はつづく。
『人間を使用人なんかにしたロゼさんも、どうなのかしら』
『特別入学できるくらい頭がいいのは、すごいと思うけれど。貧乏じゃあ、やっぱりね』
そのとき、ロゼの顔色が、急に変わった。さっと顔が青くなったんだ。
(……そっか。たぶんロゼは、貧乏だってことを気にしてるんだ)
入学前、「自分はお嬢さまじゃない」って打ち明けてくれたときも、言いづらそうだった。悪魔の中に人間のわたしがいることが気まずいみたいに、ロゼだって、お金持ちの学校で自分ひとりが貧乏だってことを、気にしてるのかもしれない。
(だったら――、放っておけないね)
わたしのことを悪く言われるのは、最悪、我慢できる。でもロゼが悲しむのは、嫌だな。それは我慢できないし、したくない。わたしは、お嬢さまたちのもとに、つかつかと歩いていった。
「ねえ、ロゼのこと悪く言うのはやめて。……ください!」
危ない、敬語忘れてた。執事はお嬢さまたちに敬語を使うのがマナーなんだって。
突然話しかけられてぽかんとするお嬢さまたちを、わたしは、キッと見すえた。
「ロゼは頭いいし、魔法だって先生にほめられてる。悪く言われる筋合いはないはずです」
ときどき怖いことも言うけど、ロゼはやさしいんだよ。努力して入学したロゼが、貧乏だからって理由だけで悪く言われるのは、嫌だ。こそこそと悪口を言うお嬢さまたちにも、むかつくし。だから。
「これ以上、ロゼにひどいこと言わないで! ……くださいね! ロゼ、いこ」
わたしの反撃に驚くお嬢さまたちを置いて、ロゼの背をおして歩きだす。
「あああっ、ごめんロゼ!」
「平気よ、気にしないで。……いたた」
ロゼが眉を寄せて、それでもわたしを気づかって笑顔を浮かべる。ほんとごめん……!
ダンスはダンスでも、夜会で踊るのは、いわゆる社交ダンスってものだった。ふたりで手を取り合って踊る、お城みたいな校舎にふさわしいダンスだ。でもわたし、こんなダンスしたことがないんだよ。つぎは、どっちの足を出すんだっけ。右? 左……!?
なんて混乱して、わたしは何度もロゼの足を踏んでいた。
「リリイ、すこし休みましょうか」
「ありがとう……。あーあ、こんなに踊れてないの、わたしだけだよね……」
「最初はみんな、こんなものよ。踊れるようになるまで、一緒に練習しましょう?」
ロゼは「飲み物もらってくるわね」と、ぱたぱた走っていった。……呪いとか怖いこと言うけど、普段のロゼは結構やさしいんだよね。
(お嬢さまに飲み物を持ってこさせるなんて、執事としてどうなんだろう)
だけど、わたしはクタクタで動けそうにない。うう、なさけないよ。
『あらあら、見た目はかっこよくても、やっぱり人間はだめみたいね』
『ダンスくらいマナーでしょう』
『魔法も使えないみたいだし、どうしてこの学校に入学したのかしらねえ』
ふと聞こえた、お嬢さまたちのこそこそ話。……これ、わたしのことだよね?
『使い魔の代わりに、入学したんだものね。所詮、代打ってことよ』
胸がひやりとした。所詮、代打……。たしかにわたしは魔法を使えないし、マナーもわからない、へなちょこ執事だけど。そんな言われ方、傷つくんですけど!
「リリイ、お待たせ。あら、暗い顔をして、どうかしたの?」
ロゼが帰ってきた。でも、お嬢さまたちのこそこそ話はつづく。
『人間を使用人なんかにしたロゼさんも、どうなのかしら』
『特別入学できるくらい頭がいいのは、すごいと思うけれど。貧乏じゃあ、やっぱりね』
そのとき、ロゼの顔色が、急に変わった。さっと顔が青くなったんだ。
(……そっか。たぶんロゼは、貧乏だってことを気にしてるんだ)
入学前、「自分はお嬢さまじゃない」って打ち明けてくれたときも、言いづらそうだった。悪魔の中に人間のわたしがいることが気まずいみたいに、ロゼだって、お金持ちの学校で自分ひとりが貧乏だってことを、気にしてるのかもしれない。
(だったら――、放っておけないね)
わたしのことを悪く言われるのは、最悪、我慢できる。でもロゼが悲しむのは、嫌だな。それは我慢できないし、したくない。わたしは、お嬢さまたちのもとに、つかつかと歩いていった。
「ねえ、ロゼのこと悪く言うのはやめて。……ください!」
危ない、敬語忘れてた。執事はお嬢さまたちに敬語を使うのがマナーなんだって。
突然話しかけられてぽかんとするお嬢さまたちを、わたしは、キッと見すえた。
「ロゼは頭いいし、魔法だって先生にほめられてる。悪く言われる筋合いはないはずです」
ときどき怖いことも言うけど、ロゼはやさしいんだよ。努力して入学したロゼが、貧乏だからって理由だけで悪く言われるのは、嫌だ。こそこそと悪口を言うお嬢さまたちにも、むかつくし。だから。
「これ以上、ロゼにひどいこと言わないで! ……くださいね! ロゼ、いこ」
わたしの反撃に驚くお嬢さまたちを置いて、ロゼの背をおして歩きだす。
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