54 / 60
第8章 すてきな夜会!
(1)かわいいドレス、いいな
しおりを挟む
月末の、金曜日。あたりが暗くなったころ。待ちに待った夜会が、もうすぐはじまろうとしていた。
長い道のりだったよ。ダンスの練習とか、魔犬のトラブルとか、いろいろあったもんね。ここまでこれて、本当によかった!
「リリイ。このドレス、どうかしら? 変じゃない……?」
がちゃっと、寮のドアが開いて、ロゼが出てきた。
「うわあ、ロゼ似合ってるよ! すごくかわいい!」
ロゼは真っ赤なドレスを、ふわりとなびかせて、はずかしそうにほほ笑んでいた。ロゼのひとみと同じ、バラ色のドレスだ。それから、まとめた髪にはバラの花かざり。
「すごいねロゼは。天使みたいに、かわいいよ」
まあ、悪魔だけどね!
「もう、また王子みたいなこと言うんだから。でもリリイもすてきよ。かっこいいわ!」
「……ありがとう」
ドレス姿のロゼに対して、わたしはピシッとした黒のタキシード。光沢のある赤いリボンを首に結んでいるから、いつもの執事服より華やかだ。わたしも照れくさくて、笑っちゃった。
最近、かっこいいって言われるのも、なんだか嫌じゃなくなってきた気がする。ロゼの執事としてかっこよくいられたら、うれしいかな、って。うん、わたしは執事! ロゼのために、今日はとびっきりかっこよくいこう!
「あ、でもリリイ。最後の仕上げをしなきゃ。よいしょっと……、はい、これで完成よ!」
ロゼは、わたしの胸ポケットにユリの花かざりをさした。
「わたしとおそろい! すてきよ、リリイ!」
にこっとほほ笑むロゼの髪で揺れる、バラの髪かざり。わたしは自分のユリの花を見て、なんだか、こそばゆい感じがした。
「さあ、行きましょう! 今日は思いきり楽しまなくちゃ!」
目指すのは、ガラス張りのダンスホール。月明かりとキャンドルの光に照らされて、ぱっと明るく幻想的な雰囲気に包まれていた。
「すごい、きらきらだ……。しかもみんなドレス! かわいい! いいなあ!」
集まっているお嬢さまたちは、それぞれ色鮮やかなドレスを着ていた。
「リリイも、ドレスがよかった?」
あ、やば! 声に出してた!?
「う、ううん! わたしは男役だし、タキシードで十分だよ!」
「そう……? でもリリイって、かわいいものが好きよね?」
……へ? ば、ばれてる!?
「い、いやそんなことないよ!」
「うそね。リリイ、わかりやすいもの」
……言い訳は通用しないっぽい。
ずっと、かわいいものが好きだってことは、隠してた。キャラじゃないって言われるし。
(でもロゼは、そんなこと、言わないのかもなあ……)
「……うん、かわいいもの、いいなあって思うよ」
小さな声で言うと、ロゼは首をかしげた。
「どうして隠そうとするの?」
「わたし、王子っぽいってよく言われるから。かわいいもの好きだと、みんな、がっかりしたり、似合わないって言ったりするんだよね」
「たしかにリリイはかっこいいけれど……、あっ! もしかして、執事って嫌だった?」
ロゼがしゅん、と眉を下げた。うーん……、たしかに、かわいい制服を着たかったなあ、ってがっかりした。でも。
「わたしは、ロゼの執事になれてよかったよ。これは本当!」
いまなら、胸を張って言える。執事として、ここにいられてよかったって!
「そう……、ありがとう、リリイ!」
長い道のりだったよ。ダンスの練習とか、魔犬のトラブルとか、いろいろあったもんね。ここまでこれて、本当によかった!
「リリイ。このドレス、どうかしら? 変じゃない……?」
がちゃっと、寮のドアが開いて、ロゼが出てきた。
「うわあ、ロゼ似合ってるよ! すごくかわいい!」
ロゼは真っ赤なドレスを、ふわりとなびかせて、はずかしそうにほほ笑んでいた。ロゼのひとみと同じ、バラ色のドレスだ。それから、まとめた髪にはバラの花かざり。
「すごいねロゼは。天使みたいに、かわいいよ」
まあ、悪魔だけどね!
「もう、また王子みたいなこと言うんだから。でもリリイもすてきよ。かっこいいわ!」
「……ありがとう」
ドレス姿のロゼに対して、わたしはピシッとした黒のタキシード。光沢のある赤いリボンを首に結んでいるから、いつもの執事服より華やかだ。わたしも照れくさくて、笑っちゃった。
最近、かっこいいって言われるのも、なんだか嫌じゃなくなってきた気がする。ロゼの執事としてかっこよくいられたら、うれしいかな、って。うん、わたしは執事! ロゼのために、今日はとびっきりかっこよくいこう!
「あ、でもリリイ。最後の仕上げをしなきゃ。よいしょっと……、はい、これで完成よ!」
ロゼは、わたしの胸ポケットにユリの花かざりをさした。
「わたしとおそろい! すてきよ、リリイ!」
にこっとほほ笑むロゼの髪で揺れる、バラの髪かざり。わたしは自分のユリの花を見て、なんだか、こそばゆい感じがした。
「さあ、行きましょう! 今日は思いきり楽しまなくちゃ!」
目指すのは、ガラス張りのダンスホール。月明かりとキャンドルの光に照らされて、ぱっと明るく幻想的な雰囲気に包まれていた。
「すごい、きらきらだ……。しかもみんなドレス! かわいい! いいなあ!」
集まっているお嬢さまたちは、それぞれ色鮮やかなドレスを着ていた。
「リリイも、ドレスがよかった?」
あ、やば! 声に出してた!?
「う、ううん! わたしは男役だし、タキシードで十分だよ!」
「そう……? でもリリイって、かわいいものが好きよね?」
……へ? ば、ばれてる!?
「い、いやそんなことないよ!」
「うそね。リリイ、わかりやすいもの」
……言い訳は通用しないっぽい。
ずっと、かわいいものが好きだってことは、隠してた。キャラじゃないって言われるし。
(でもロゼは、そんなこと、言わないのかもなあ……)
「……うん、かわいいもの、いいなあって思うよ」
小さな声で言うと、ロゼは首をかしげた。
「どうして隠そうとするの?」
「わたし、王子っぽいってよく言われるから。かわいいもの好きだと、みんな、がっかりしたり、似合わないって言ったりするんだよね」
「たしかにリリイはかっこいいけれど……、あっ! もしかして、執事って嫌だった?」
ロゼがしゅん、と眉を下げた。うーん……、たしかに、かわいい制服を着たかったなあ、ってがっかりした。でも。
「わたしは、ロゼの執事になれてよかったよ。これは本当!」
いまなら、胸を張って言える。執事として、ここにいられてよかったって!
「そう……、ありがとう、リリイ!」
10
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。
しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。
そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。
そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる