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桜餅と花の精
(十八)
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両親と千代に挨拶を済ませて家を出ると、穂乃花たちはそのまま電車に乗って、今度は穂乃花の地元に訪れた。目指したのは、穂乃花の両親の墓。ここに来るのは、久しぶりだ。花を活けて、線香をたく。雪斗と並んで手を合わせた。
――お母さん、ごめんね。
長い間病気と闘っていたと叔母に聞いたけれど、実家に帰らず連絡も取らなかった当時の穂乃花は、なにも知らなかった。それでも、穂乃花が独り立ちするまで、母は生きてくれていた。もしかしたら穂乃花が大人になるまでは、と命を必死でつないでいたのかもしれない。自分勝手な解釈ではあるけれど。そうだといいなと思った。
それに、離れて暮らすようになってからも、母は穂乃花を心配していたのだと叔母が言っていた。
穂乃花は鞄から写真を取り出して、胸に抱きしめた。叔母からもらった、一枚の家族写真。
――ありがとう、お母さん。
ずいぶん長い間、目を閉じていたと思う。さて、と目を開けてとなりを見れば、雪斗はまだ手を合わせていた。
「雪斗さん、母さんたちになにを話してたんですか」
やっと顔を上げた雪斗に聞く。
「穂乃花さんと結婚させていただきますって報告と、自己紹介。ふたりとも俺のこと知らないから不安だろうし。俺はこういう人間で、穂乃花さんのことどう思っていて……って全部話そうとすると長くなるでしょう」
「うわー、私が聞いたら恥ずかしくなるやつですね」
「聞きたいなら、いつでも聞かせてあげるよ」
「いいです、遠慮します」
ぶんぶん首を振ると、雪斗は笑って穂乃花の頭に手を置く。
「そろそろ、南風岡に帰ろうか。龍神さまも家で待ってるし」
「そうですね」
立ち上がって、墓に背を向ける。歩き始めてみたけれど、途中で足が止まった。振り返る。両親との想い出が、ひとときに頭によみがえった。
今度は、写真も想い出も大事にする。
叔母とも、もう一度会いたい。写真のお礼を言って、両親の話をしよう。
「――行ってきます。お母さん、お父さん」
雪斗に手を伸ばす。彼の指と絡めて、微笑んだ。
「よし。帰りましょうか」
雪斗とふたり並んで、今度こそ歩き出した。
――お母さん、ごめんね。
長い間病気と闘っていたと叔母に聞いたけれど、実家に帰らず連絡も取らなかった当時の穂乃花は、なにも知らなかった。それでも、穂乃花が独り立ちするまで、母は生きてくれていた。もしかしたら穂乃花が大人になるまでは、と命を必死でつないでいたのかもしれない。自分勝手な解釈ではあるけれど。そうだといいなと思った。
それに、離れて暮らすようになってからも、母は穂乃花を心配していたのだと叔母が言っていた。
穂乃花は鞄から写真を取り出して、胸に抱きしめた。叔母からもらった、一枚の家族写真。
――ありがとう、お母さん。
ずいぶん長い間、目を閉じていたと思う。さて、と目を開けてとなりを見れば、雪斗はまだ手を合わせていた。
「雪斗さん、母さんたちになにを話してたんですか」
やっと顔を上げた雪斗に聞く。
「穂乃花さんと結婚させていただきますって報告と、自己紹介。ふたりとも俺のこと知らないから不安だろうし。俺はこういう人間で、穂乃花さんのことどう思っていて……って全部話そうとすると長くなるでしょう」
「うわー、私が聞いたら恥ずかしくなるやつですね」
「聞きたいなら、いつでも聞かせてあげるよ」
「いいです、遠慮します」
ぶんぶん首を振ると、雪斗は笑って穂乃花の頭に手を置く。
「そろそろ、南風岡に帰ろうか。龍神さまも家で待ってるし」
「そうですね」
立ち上がって、墓に背を向ける。歩き始めてみたけれど、途中で足が止まった。振り返る。両親との想い出が、ひとときに頭によみがえった。
今度は、写真も想い出も大事にする。
叔母とも、もう一度会いたい。写真のお礼を言って、両親の話をしよう。
「――行ってきます。お母さん、お父さん」
雪斗に手を伸ばす。彼の指と絡めて、微笑んだ。
「よし。帰りましょうか」
雪斗とふたり並んで、今度こそ歩き出した。
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