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ー第1話ー 拝啓本日俺は鬼神憑きに・・・・て、何それ?
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ふんっ!ふんっ!ふっ!。いつもの日課と言って良い朝早くからの竹刀の素振り。
まだ寒さが残る季節であるが、一時間以上も体を動かし続ければ汗も流れ出てくる。
俺の名は泰童秀。一応高校二年になる。と言うのも学校からちょっと前に「もう来なくて良い。」と言われ、
それから学校に行っていない。因みになんでそうなったかは解らない。(注:ちゃんと確認していない)
そう言えばその頃だったか、じいちゃんが死んだのは・・・。
俺に親はいない。じいちゃんの話しだと幼い頃に交通事故だか何だかで死んだとか。(注:ちゃんと聞いていない)
だから僕にとって親はじいちゃんだった。
じいちゃんは厳しい人で、剣道、柔道を中心とした様々な武術の鍛練。
そして生活に必要な技術や知識も本当に厳しく叩き込まれた。
子供心にそんなの必要ある?。と思った事もある。
事実鍛練の方もその厳しさから「辞めたい。」って何度思ったか。
でも今はじいちゃんに感謝している。
じいちゃんが死んで約一ヶ月。あの厳し日々のお陰で今俺は何の問題も無く生活出来ている。
ただ不思議な事もある。
じいちゃんの葬式の時、じいちゃんの関係者だと言う人がびっくりする位の人数で現れたんだけど。
現在、その人達はその後一度も姿を見せていない。あれは一体なんだったのやら?。
そしてもう一つ。お金だ。
現在じいちゃんの銀行通帳の金を生活費として使わせてもらっている。
勿論使う以上減る訳だが、謎の入金があり、逆に増えている。うん、謎だ。(注:やっぱりちゃんと確認していない)
そう言う訳でこれからも問題無く生活は出来る。そう思っていたけど・・・・・。
「すみません、未成年の方が保護者の同意も無く一人暮らしというのを認める訳にはいかないので・・・。」
どうやら、そうはいかないらしい。でも、俺みたいにそもそも親がいない場合はどうなるんだと思ったが。
「その場合は施設に行くか、里親を探すかになります。ただ、施設は原則18歳までなので、
18歳まで一年そこそこしかない泰童君の場合、里親を探す事になります。」
あれ?。それを聞いて未成年でも18歳になれば好きにして良いのか?、と思うけど。
その事ではっきりとした答えは返って来なかった。
で、その里親。見付かるのに時間が掛かる事もあるという事だったが。結構あっさりと見付かった。
後はその当事者と対面して、最終的には俺が決める。そういう事らしい。
「初めまして。秀君で良いかしら。」
そして俺の里親になってくれる人との対面。正直ちょっと緊張している。
相手の名は鬼頭彩華。耳元までの黒のストレートが良く似合う可愛らしい感じの女性。
年齢は42歳との事だが、そうは思えない程若く見える。うん、二十代でも通るんじゃないだろうか。
「はい、こちらこそ初めまして、こんな若い女性(かた)とは思ってもなく、緊張しています。」
「あらっ。お上手ね。しかも言葉使いもちゃんとしていて、感心します。」
そうくすくすと笑う彩華さん。やっぱり可愛い位に若く見える。これで子持ちとか、なんか恐ろしいな。
「それは祖父の躾の賜物です。お陰で何不自由なくここまで生きてこれました。」
「そうですか、それはお祖父様に感謝ですね。」
なんか良い雰囲気になっている。この女性(ひと)なら良いと思えるな。
「決めました。秀君が良ければ、是非家の子になってくれませんか?。」
「いえ、こちらこそ。俺で良ければ宜しくお願いします。」
そういう訳で俺の里親が決まった・・・・までは良かった。すぐその後に唖然となってしまうが。
彩華さんの家、厳密にはアパートに着く。外から見ても判る古い造り。それは中に入っても同じ・・・・・て、狭っ!。
玄関先で全貌が解ってしまう程狭い。
部屋割りはテーブルのあるキッチンにどう見ても一人用の部屋×2に風呂とトイレ。
見た目も古いが、家電等の設備全体も古く、つい使えるのか?と確認したくなる。
じいちゃんの家も古かったが、設備等は気を付けていて、わりと新しいのが揃っていたからなあ。
で、玄関での物音を聞いてか一人の女の子が出て来る。話しに聞いていた彩華さんの娘さんだな。
「挨拶しなさい沙奈。貴女のお兄ちゃんになる秀君だよ。」
すぐに彩華さんに近寄った女の子にそう言うけど、恥ずかしいのか彩華さんの後ろに隠れる女の子、沙奈ちゃん。
確認するまでも無く母娘だと判る。全体的に彩華さんをそのまま小さくした様な見た目でよく似ている。
彩華さんと違って肩下まで髪を伸ばしているけど、癖毛なのか少しぼさぼさしている感じだ。
13歳の中学生らしいけど、見た目の幼さと今の態度で小学生でも通りそうだ。
てっ。ちょっと待てよ。俺はロリコンじゃないからな!。間違っても。
と、そうじゃなくて聞くべき事があるよな。
「ご免なさいね、うち貧乏で、色々と不便はあると思うけど。」
そう考えているうちに彩華さんからの言葉。聞きたかった事ではないけど思わずえっ?てなる。
ちょっと待って、なら何で里子なんて取ったのか?、娘一人でも大変だろうに。
「という訳で、うちへの補助金の為にうちの子になってね秀君。」
・・・・・・・。なんか考えてるうちに答えの方から勝手にやって来る感じか?。
しかし何だかな。やけに黒い答えを聞く事になったんだが。そんなに良いのかその補助金とやらが。
まあ、俺も役所でどうのこうので銀行の通帳を取り上げられたから。彩華さんがそれで良いならだが・・・・。
と、いけない。聞かなきゃいけない事があったんだ。
「俺の部屋は何処になりますか?。」
「ああ、ご免なさい秀君。貴方は彩奈と同じ部屋になるから、宜しくね。」
えっ?。今なんて言ったこの彩華(ひと)。正気か?。
「ちょっと待って下さい。俺と沙奈ちゃんが同じ部屋っておかしいでしょ!。」
「あら、そうなの?。もしかして秀君は私と同じ部屋が良かったかしら。
でもダメよ、食べるなら私じゃなくて沙奈じゃないと、ねっ。」(注:卑猥な意味で、です。)
・・・・・なんかこっちの頭がおかしくなりそうだ。何でこうこの彩華(ひと)はこうもヤバい事をポンポンと言えるのか。
「何言ってるんですかっ!。そこは彩華さんと沙奈ちゃんが同じ部屋じゃないですか?。」
「あらそう、残念ね。けど気が変わったらいつでも言ってね。」
一応・・・危険な事態は避けらたな。・・・しかし、たったこれだけの事でどっと疲れた。
実はとんでもない所に来たんじゃないかと今更ながらに思う・・・手遅れだけど。
その後、時間というのもあって夕食となった。勿論俺も手伝ったが。
で、その後も彩華さんとは色々と話したが、沙奈ちゃんの方は・・・避けられてるな。
多分人見知りだと思う。彩華さんの言う事はともかく、あれで一緒の部屋って無理だと思うが。勿論しないが
そして翌日。
「お早う母さん。」
「はいお早うお兄ちゃん。」
昨日のうちに決めた事。いつまでも彩華さんというのもおかしいので俺は彩華さんを”母さん”と呼ぶ事にした。
俺としては人生初の「母さん。」嬉しいけど、恥ずかしくもある。別の意味での不安もあるが。
そして沙奈ちゃんは・・・やっぱり避けられてるな。
今は朝食の時間。俺と母さんはわりと距離も近く、話しながら食べている。
一方の沙奈ちゃんはテーブルが小さいので限度があるが、目一杯距離を取って黙々と食べている。
「もうぉ、二人共仲良くしてよね。なんなら既成事実を作ったて良いんだから。」
・・・・・なんでこの人はこう余計な事まで言葉にするのやら。しかもヤバい方向のヤツを。
そして母さんとの話しの中で俺がまた学校に行く事になったと伝えられる。以前とは別の学校のようだが。
「良いんですか?。お金とか苦しいのに。」
「勿論よ。気にしないで行ってきなさい。
それに娘の将来の相手が低学歴なんて、格好付かないから頑張ってもらわないとね。」
・・・・・何でこの人は良い事言った後に黒いものを放り込むかなぁ。
と言うよりもっと自分の娘を大事にすべきかと思うんだが。(貞操とか尊厳とか。)
で、少し遅れての高校二年のスタート。幸い四月もまだ半ばに差し掛かっていない。そう致命的な遅れではないのは有難い。
だが学校が変わる以上知り合いはいない事になる。尤も前の学校で親しい奴はいなかったが。
校門に入り、昇降口前に先生らしき大人の男性。聞いていた通りのようだ。
「君が泰童君?。」
「はい。」
「まずは職員室に案内するよ、付いて来て。」
と言う訳で職員室まで移動。と、この辺りからというよりはもっと前から周りの視線が俺に集まる。
俺だけ私服だからなあ。で・・・・。
「こんな形で申し訳ない。これが君の制服だよ。別室を用意してあるからそこで着替えて。」
と、ここで制服を渡される。このまま私服か?と思っていたので一安心。
もうすでに他の生徒を見ていたので確認は不用だがこの学校では制服はブレザーか。
前のは学ランだったからな、て、意味はないよな。
で、制服に着替えた後、担任教師の紹介。
「芳川碧です。宜しくね。」
どうやら担任は若い女性のようだ。ボーイッシュではないが、短くそろえた淡く染めた髪色が印象的な人だ。
なんかここのところ可愛い感じの女性が続くなぁ。まあ良い事かもだけど。
そして状況の説明。どうやら俺は編入生という扱いらしい。そう紹介されると。
高校生になって転校生だのなんだので騒がれるのはそうないとは思う。だがある程度は好奇心の目を向けられる。
実際ホームルームの後何人かに質問攻めにされた。(疲れた。)
そしてここに来ての初めての授業の後。
「さっきは大変だったね。」
特にやる事も無く、そのまま自分の席にとしていると何時の間にか一人の女子生徒が俺の前にたっている。
「ああ、けど仕方ない・・・だろ?。」
「うん、そうだね。」
取り敢えず返す俺に笑顔で反応する女子生徒。
肩までのサラサラとした感じの黒のロングストレートの髪。爽やかな顔立ちは大和撫子のようで・・・。
うわぁ、もろ好みのタイプと気付いて緊張してしまう。
「何かあったら言って。力になるから。」
「うん、ありがと。君、良い人だね。」
「あっ!、うん。」
ここまでのやり取りで顔を赤らめる彼女。おっ、俺もギザが過ぎたか・・・。
「えっと、泰童君だっけ?。」
「うん、そうだよ。君は?。」
「私は鳴海蛍子。宜しくね、泰童君。」
「ああ、宜しく鳴海さん。」
と、この辺で自分の席に戻って行く鳴海さん。
まだ話したいところたが、しつこくして嫌われのも善くない。仕方ないとしよう。
しかしその後、鳴海さんは忙しい身なのか、接点を作れずにその日は終わった。
で、放課後。部活は?、と考えてこれまでの活動から剣道部は?と考えている。
「剣道部が有るかも確認してないな。」
そう思い職員室へと向かう事としたところでスマホが鳴る。
俺は必要ないと思ったが彩華さんから強制的に持たされたやつだ。
で、そのスマホのディスプレイを見てみるとその彩華さんからだ。
「はい。」
「秀君?。」
「ええ、そうです。」
「もう、今度から名乗って返事をしてね。」
「すみません。」
「と、本題。秀君、申し訳ないんだけど、今日は真っ直ぐ帰って来てくれないかしら。」
「あっ、はぁ。」
「お願いね。」
何か唐突だなとも思える展開・・・が、いいか。部活は明日探せば良いし。
という訳で真っ直ぐ帰る事に・・・で家の玄関先から入った辺りてで急に体に力が入らなくなる。
「なっ・・・!。」
訳も解らずそのまま前に倒れる。何が起きてる?。どうして体は動かない?。
「御免なさいね秀君。」
誰かが近付いて来るのが足音で判ってはいたが、聞こえて来る声で彩華さんだと理解する。
「どうして?。」と聞きたいが声も出ない。ただかろうじて彼女の姿が目に映る。
「本家の命令でね。若い男の子を引き取って鬼神憑きにしろって。
そしたらちょうど良い男の子が見つかって、それが秀君で・・・。」
なんか、勝手に話し出したな、この人。しかし鬼神憑きだのなんか訳の分からない事を・・・。
「それで娘を使って誘惑しようとしたんだけど。秀君全然乗ってくれなくて。
だから強行手段を取らせてもらったわ。悪いけどね、鬼神の餌になってね。」
そして黒い事言い出すわけか・・・てっ、餌?、喰われる?。何?。マジか?。
そう考えているうちに彩華さんが俺の胸に両手を置いてくる。
制服越しなので彼女の手が小さい位にしか伝わるものはないがって、そんな事考えている場合じゃあないっ!。
しかしそんな余裕、時間は無かった。急に視界が回転するかのように感じ、次の瞬間には真っ暗になった。
「何だ。」
あっ、喋れる。て、だから何?だが・・・・。
どうにも地に足が付いていないと感じる。黒以外見える存在(もの)がないのでどうしようもないが。
「ほう・・・餓鬼か。」
唐突に野太く、威圧感のある声が聞こえて来る。
「誰だっ!!。」
「ふんっ・・・好奇心か、ただの蛮行か・・・だが良い・・・。」
声は聞こえるが姿は見えない・・・と思っていると突然何かの姿が見える。
灰色の肌。背は俺よりも高い。俺が180cm強で、こいつは2m位か。
体格は見れば分かるレベルで逞しくゴツゴツとしている。鍛えている・・か?。
その有り様はどう見ても人間じゃあない。頭に角みたいのが有るが、小さ過ぎて判別出来ない。
ただ気みたいなものが伝わって来て、こいつを怖いとは感じる。
「さあ、恐れよ小僧っ!。儂こそ鬼神皇臥。貴様を喰らう存在(もの)よっ!。」
「喰らう?。だと・・・。」
伝わって来る力というのか、確かにこいつならそれが可能だと思えてくる。
「そうよっ!、貴様の魂を喰らいっ、体(うつわ)は儂のものとしてくれようぞ。」
「なっ!!。」
ここで彩華さんの言っていた事に得心する。鬼神憑きって、そういう事か・・・。
「さて・・・・二百年かそこらぶりの人の世か。
ふむ、まずは女(おなご)を喰らうのも悪くないが、奈ぶり通してから、というのも良いな・・・。」
奴の考えている事なのだろうか、何か映像の様なものが見える。
内容はこの皇臥という奴が、
時代劇に出てくる様な服装の女性を・・・・・。(注:内容がRー18指定に触れる為省きます。)
恐らく奴が二百年ぶりと言ったところのだろう、そういう服装のイメージになっているのは。
しかしそこで俺は鳴海さんの事を考えてしまう。それが迂闊な事だとすぐに気付く。
「ほうぉ小僧、好いている女(おなご)がおるか、これが今の世というものか・・・・。」
と、また映像が伝わって来る。間違いない、こいつがイメージしているものが伝わって来ているんだ。
当然内容は鳴海さんが霰のない姿で・・・。(注:以下同文)
「心配なぞ必要ないからな小僧。ぬしに代わって儂が心欲までその女(おなご)を、味わってやるぞ。
体も、血も、肉も、その全てをなぁ・・・良き事であろう・・・なぁ?。」
明らかに相手を下に見た言い様。確かに奴からすれば俺はそういう存在なんだろうな。
けど思ったより俺の感情は静かなようだ・・・・いやっ、これは違うな。
「ふぅざあけるなあぁーーーーーっ!!!。」
ああ・・・そうだ。キレただけだ・・・・・・。
「ぐうぅ、なかなか強い意志・・・だが。」
なっ・・・強い。これが鬼神か・・・だがぁっ!!。
「くっう!何っ!。なかなか・・・鍛練を積んでいるようだな・・・しかし人ごときにぃっ!。」
ぐっう・・・・精神のぶつかり合いの中で相手の強さを嫌という程に感じる。しかし・・・・。
「彼女は俺の人(もの)だーーーーっ!!!。」
「よく言う、接吻(キスの事)もまだだいうのにっ!。」
「それでもだぁーーーーっ!!。」
なんだろう、なんか俺が圧している気がする。
「なあ、まて小僧。こういうのはどうだ?。儂があの女(おなご)を喰らう時にだ。
貴様と感覚を共有してやろう。そうすれば満足であろう、な?。」
どうやら・・・気のせいではないようだ。俺が押している・・・ならっ!。
「冗談じゃないっ!。彼女は俺自身が喰らいたいんだっ!。」(注:本音だだ漏れ)
「ははは・・・よく言う。清純を語っておきながらなんと邪(よこしま)なっ!。」(注:ある意味正論)
奴に焦りを感じる・・・まさに好機!。
「うおおぉーーっ!!まけぇるうぅ、ものかぁっーっ!!。」(今だけCV草尾 毅)
「おのれぇーーっ!。この儂が人間ごときに負けるとは・・・・・・。」
・・・・奴が消えた・・・勝ったのか?。
と、そこでまた視界が変な事に・・・・・・。
*
「え~~とぉ。鬼神さまぁ?。」
はっきりとしだした視界に彩華さん?。というか膝枕されてる?。
「鬼神様っ!、目覚められたんですねっ!。」
なんか頭はずきずきするし、体もだるい感じな俺を他所に一人ではしゃぐ彩華さん。
「違います。俺です。」
取り敢えず頭痛いのとか我慢しながらそう言うと案の定彩華さんの動きが止まる。
「えっ・・・・とぉ、違うの?。」
「はい。」
「鬼神様は?。」
「倒しました。」
だと思う。な感じで言った俺。一方の彩華さんはなんか落ち着かない感じだ。
「えっ・・・・嘘・・・そんなっ・・・。」
パニックて奴か、おろおろとして落ち着かない彩華さん。
そして不意に右手を俺の胸に当ててくる。
「ふぅ・・・・良かったわ。鬼神様の精神支配から逃れて、一時的に封じただけのようね。
たいした精神力だけど。よく考えてみれば人間ごときが鬼神様を倒すなんてね・・・・。」
人間ごときって・・・他に言い様は無いのかねこの人は・・・・・・。
「あのっ・・・・そろそろ膝枕止めてもらっても?。」
「あっ、ああ、そうね。」
体調が戻って来てるのもあったが、ここまでにそれなりに時間が経過していたのだろう。
多分俺が意識を失っている内に帰って来たのでは?と思える沙奈ちゃんの存在に気付いて恥ずかしくなったのもある。
現在位置の玄関先から沙奈ちゃんが座ってこっちを見ているキッチンまではすぐそこだ。
俺としても何故気付かなかっただが。まあ、仕方ないかもか・・・・。
「ねぇ秀君。お願いがあるんだけど。」
取り敢えず上半身だけを起こした俺に唐突に言ってくる彩華さん。何だ?。
「何か?。」
「貴方が制御下にしてしまった鬼神様だけど。今すぐに解放してもらえないかしら。」
「えっ、何で?。」
「勿論鬼神様に暴れて、蹂躙してほしいからよ。」
・・・・・今更かもだが、何でこの人はとんでもなく物騒な事をとんでもなく軽いノリで言うだろうな。
「お断りします。」
取り敢えず当たり前と思える返答をする。
「え~~~っ!何でよぉっ。その為に貴方を引き取って、上の指示通りにしたのにぃ。」
・・・・・なんか黒い事実発覚したぁ・・・知りたくもなかった事実が・・・・。
「その上とは?。」
「勿論私達鬼導師の上の人達よ。うちみたいな弱小地位の鬼導師なんてね。
上からの援助無しじゃあ生活すらままならないんだからね。」
なんかべらべらとしゃべってくれるなこの人。尤もその”鬼導師”というのが解らないんだがな。
が・・・その懸念は杞憂に終わった。そこからの彩華さんはしゃべる事を止めない状態となった。
鬼導師と仙導師という存在との争い。それが”妖怪(あやかし)”と言う今となってはお伽噺の存在との戦いの歴史だと。
しかも驚いた事に妖怪は未だに存在していて、その戦いも続いているという。
「因みにだけど秀君。貴方一応鬼神憑きになっているから、今なら妖怪とか見えるようになってるよ。」
あっ、そうなのか?・・ってちょっと待て。”鬼神憑き”って何?。どういう事。
で、そこも勝手に説明された。鬼神憑きとは人の体に鬼神という存在を憑依させたもの。
強大な力にはなるが、制御が難しく、暴走するのが殆どで、俺の様なケースは希との事。
そこまで聞いて、青ざめた感覚になる。彩華さん実はヤバい事をしたのではと。
「あの、彩華さん?。」
「何かしら?。」
どうやら本人は気付いていないようなので説明する事にする。
通常人での制御が難しい存在をこんな狭い場所で召喚した事。
その為に家族等関係無い人を巻き込んだ危険性があった事を。
「えっ・・・・えっとぉ。」
「そんな事したら沙奈ちゃんに危険が及ぶとは考えなかったので?。」
「だってぇ~言う通りにすればお金が貰えるんだし、ねぇ。」
・・・・大事なのそこ?。流石に呆れておくところか。
しかし、もうちょっと周りが見えてほしいところだ、危なっかしい。
ただ、その後確認してみると彩華さんも混乱していて考えがまとまらない状態だと判った。
「御免なさいねえ、私、そんな危ない事を・・・・・。」
と、状況が飲み込めると彩華さんは俺や沙奈ちゃんに謝っていた。
「けどぉ・・・お金とか、家も貧乏だし、仕方ないよねぇ。」
・・・・・と思ったけど。この人全然反省してねぇ。
「後、いつでも沙奈を秀君の女にして良いからね。」
またそこかっ!。しつこいなって・・・沙奈ちゃんもそんな目で俺を見ないで、そんな事しないからっ!。
そうしてなんとも疲れる一日が終わった・・・・事は何も終わってないが・・・・・・。
*
「・・・起きろ小童っ!・・・・。」
・・・ん?・・・何だ五月蝿いって、へ?。
そして翌朝色々と事実を知る。
まずは鬼神。彩華さんの言った通り倒した訳ではなかったようで。現在頭の中で五月蝿い。「
「・・・数百年ぶりの表世ぞ。騒ぐ他に何があろか、のう小童よ。」
知るかよ。そして五月蝿い。いちいち頭の中がこうである為、実に煩わらしい。
「あら、一人言?。」
と聞いて来る彩華さん。鬼神(やつ)の声が俺にしか聞こえないからだ。
そして沙奈ちゃんは・・・警戒されてるよな。
「誰が奴だと。儂の名は皇臥ぞ。昨日(さくじつ)名乗ったであろう。覚えるが良い童よ。」
ほんとに五月蝿いな。お前の名前なんてどうでも良いんだよったく・・・。
「なにぃっ!。誰がお前だと人間ごときがっ!。一度勝った位で良い気になるなっ!。」
ぐっ・・・しまった。思った事が聞こえるという事の様だ。厄介だ。
*
そして学校へ・・・正直この状態で行きたくはなかったが、じゃあどう説明を、で困る事に。
それで一応来た訳だが・・・・・・。
「おぉ・・・こうも人間が集まる所が?。
なんと!、今の世の女(おなご)はなんと肉付き良いのがこうも多いか・・・・良い、良いぞぉ・・・・。」
・・・・・やっぱり来るべきじゃなかったかと後悔。もう遅いが・・・・。
これがどこかで落ち着けばまあ良かったが、そんな訳は無く・・・・・。
「なんともよ・・・・また随分と人の趣向が変わった様たが・・・うむ、これはこれでも良いかの。
なんとも犯し、喰らい甲斐のある女がこう多いとこう・・・目移りするのぉ。」
思考。考えている事を共有しているというのは実に厄介で。
俺自身が迂闊に何かを考えるのも筒抜けだし、それは奴も同じで・・・。
しかもこうなって初めて分かったが、想像しているものも共有しているようで。
奴の卑猥な言葉と同時に考えているであろう事の映像みたいな物まで見えてしまう。(やけに雰囲気が古臭いが)
これがなかなか厄介で、慣れる必要を感じ。奴と口論しながら慣れる事を心掛けた。
尤も、時折それが口や仕草に出ている事があり、それらも含めて気を付けてねばだが・・・・。
そしてこの日、鳴海さんと話す機会は全くなかった。原因は言うもがな・・・・。
「ほうぉ、良い娘じゃのう・・・なぁ童よ。」
「おいよっ!、これだけ女がおるのじゃから、一人位犯(や)らんか?。良いじゃろっ。」
この鬱陶しいと言える糞ジジイの対処に追われからだ、全く。
「うぬっ!、誰が糞ジジイだと!。全く人間ごときがっ!愚かなものよ。」
うるせぇ糞ジジイ。だったら黙ってろよ。
「うぬぬぬ・・・・おのれぇ・・一度儂に勝った位で良い気になりおって!。」
またそれか、いい加減うんざりだった。これが一日終始間も無く続けばそうもなる。
そしてそのせいかやけに体がだるいな全く。
「おいっ!それは儂のせいではないぞ。光陣(こうじん)の破に当てられたからぞ。」
は?。何だそれ。
「どうやら儂らの身近に陰陽師が居るようじゃの。然程難しい術でもないしの。
そして構築しておけば、勝手に敵となる存在(もの)を攻撃する、便利な術じゃからな。」
なんだそのお伽噺みたいなのはって、今の俺もそうか・・・・。
「えええいっ!全て事実ぞ。つまり身近に敵がおるのだ。心せよ童。」
敵?。それって仙導師とか言うのじゃなかったか?。
「そこまで知らぬわ。兎に角気を付けよ。向こうは儂らに気付いておるかも知れぬからな。」
何か面倒臭い事になったなと思いながら帰路に着く。すると・・・・・・・。
「何だ?。」
街中に入った辺りで空中に何かが有るのが見える。(注:常人には見えません。)
「えっ!。」
その正体に気付いて思わず驚く。人だっ!、しかも二人。どちらも神社の巫女の様な服装をしている。
そしてそれが俺のほぼ真上にいたからもう一つの事に気付く。
袴を着ていると思っていたそれは袴の様なスカートで、下から見ていたからパっ・・パンっていかんいかん。
「・・・・ふんっ以前にも言ったが女の下履きくらいで狼狽えるでないっ。」
五月蝿い。相手に失礼だろ。しかし、となると上の二人は女の子なのか?。
そう思っているとその二人が俺の所に降りて来るって・・・・・。
「鳴海さん?。」
巫女服姿の二人。茶髪のショートヘアの方は見覚えはなかったが、もう一人の方は間違いなく鳴海さんだった。
「変な気配を感じたんだけどって。泰童君?。」
「ほう・・・思わぬところに陰陽師(敵)がおったの・・・・・これは面白い。」
何が面白いんだよ。ったく。
実に面倒な事になった。それは予感でもあったが、間違いなく事実となる予感だった。
まだ寒さが残る季節であるが、一時間以上も体を動かし続ければ汗も流れ出てくる。
俺の名は泰童秀。一応高校二年になる。と言うのも学校からちょっと前に「もう来なくて良い。」と言われ、
それから学校に行っていない。因みになんでそうなったかは解らない。(注:ちゃんと確認していない)
そう言えばその頃だったか、じいちゃんが死んだのは・・・。
俺に親はいない。じいちゃんの話しだと幼い頃に交通事故だか何だかで死んだとか。(注:ちゃんと聞いていない)
だから僕にとって親はじいちゃんだった。
じいちゃんは厳しい人で、剣道、柔道を中心とした様々な武術の鍛練。
そして生活に必要な技術や知識も本当に厳しく叩き込まれた。
子供心にそんなの必要ある?。と思った事もある。
事実鍛練の方もその厳しさから「辞めたい。」って何度思ったか。
でも今はじいちゃんに感謝している。
じいちゃんが死んで約一ヶ月。あの厳し日々のお陰で今俺は何の問題も無く生活出来ている。
ただ不思議な事もある。
じいちゃんの葬式の時、じいちゃんの関係者だと言う人がびっくりする位の人数で現れたんだけど。
現在、その人達はその後一度も姿を見せていない。あれは一体なんだったのやら?。
そしてもう一つ。お金だ。
現在じいちゃんの銀行通帳の金を生活費として使わせてもらっている。
勿論使う以上減る訳だが、謎の入金があり、逆に増えている。うん、謎だ。(注:やっぱりちゃんと確認していない)
そう言う訳でこれからも問題無く生活は出来る。そう思っていたけど・・・・・。
「すみません、未成年の方が保護者の同意も無く一人暮らしというのを認める訳にはいかないので・・・。」
どうやら、そうはいかないらしい。でも、俺みたいにそもそも親がいない場合はどうなるんだと思ったが。
「その場合は施設に行くか、里親を探すかになります。ただ、施設は原則18歳までなので、
18歳まで一年そこそこしかない泰童君の場合、里親を探す事になります。」
あれ?。それを聞いて未成年でも18歳になれば好きにして良いのか?、と思うけど。
その事ではっきりとした答えは返って来なかった。
で、その里親。見付かるのに時間が掛かる事もあるという事だったが。結構あっさりと見付かった。
後はその当事者と対面して、最終的には俺が決める。そういう事らしい。
「初めまして。秀君で良いかしら。」
そして俺の里親になってくれる人との対面。正直ちょっと緊張している。
相手の名は鬼頭彩華。耳元までの黒のストレートが良く似合う可愛らしい感じの女性。
年齢は42歳との事だが、そうは思えない程若く見える。うん、二十代でも通るんじゃないだろうか。
「はい、こちらこそ初めまして、こんな若い女性(かた)とは思ってもなく、緊張しています。」
「あらっ。お上手ね。しかも言葉使いもちゃんとしていて、感心します。」
そうくすくすと笑う彩華さん。やっぱり可愛い位に若く見える。これで子持ちとか、なんか恐ろしいな。
「それは祖父の躾の賜物です。お陰で何不自由なくここまで生きてこれました。」
「そうですか、それはお祖父様に感謝ですね。」
なんか良い雰囲気になっている。この女性(ひと)なら良いと思えるな。
「決めました。秀君が良ければ、是非家の子になってくれませんか?。」
「いえ、こちらこそ。俺で良ければ宜しくお願いします。」
そういう訳で俺の里親が決まった・・・・までは良かった。すぐその後に唖然となってしまうが。
彩華さんの家、厳密にはアパートに着く。外から見ても判る古い造り。それは中に入っても同じ・・・・・て、狭っ!。
玄関先で全貌が解ってしまう程狭い。
部屋割りはテーブルのあるキッチンにどう見ても一人用の部屋×2に風呂とトイレ。
見た目も古いが、家電等の設備全体も古く、つい使えるのか?と確認したくなる。
じいちゃんの家も古かったが、設備等は気を付けていて、わりと新しいのが揃っていたからなあ。
で、玄関での物音を聞いてか一人の女の子が出て来る。話しに聞いていた彩華さんの娘さんだな。
「挨拶しなさい沙奈。貴女のお兄ちゃんになる秀君だよ。」
すぐに彩華さんに近寄った女の子にそう言うけど、恥ずかしいのか彩華さんの後ろに隠れる女の子、沙奈ちゃん。
確認するまでも無く母娘だと判る。全体的に彩華さんをそのまま小さくした様な見た目でよく似ている。
彩華さんと違って肩下まで髪を伸ばしているけど、癖毛なのか少しぼさぼさしている感じだ。
13歳の中学生らしいけど、見た目の幼さと今の態度で小学生でも通りそうだ。
てっ。ちょっと待てよ。俺はロリコンじゃないからな!。間違っても。
と、そうじゃなくて聞くべき事があるよな。
「ご免なさいね、うち貧乏で、色々と不便はあると思うけど。」
そう考えているうちに彩華さんからの言葉。聞きたかった事ではないけど思わずえっ?てなる。
ちょっと待って、なら何で里子なんて取ったのか?、娘一人でも大変だろうに。
「という訳で、うちへの補助金の為にうちの子になってね秀君。」
・・・・・・・。なんか考えてるうちに答えの方から勝手にやって来る感じか?。
しかし何だかな。やけに黒い答えを聞く事になったんだが。そんなに良いのかその補助金とやらが。
まあ、俺も役所でどうのこうので銀行の通帳を取り上げられたから。彩華さんがそれで良いならだが・・・・。
と、いけない。聞かなきゃいけない事があったんだ。
「俺の部屋は何処になりますか?。」
「ああ、ご免なさい秀君。貴方は彩奈と同じ部屋になるから、宜しくね。」
えっ?。今なんて言ったこの彩華(ひと)。正気か?。
「ちょっと待って下さい。俺と沙奈ちゃんが同じ部屋っておかしいでしょ!。」
「あら、そうなの?。もしかして秀君は私と同じ部屋が良かったかしら。
でもダメよ、食べるなら私じゃなくて沙奈じゃないと、ねっ。」(注:卑猥な意味で、です。)
・・・・・なんかこっちの頭がおかしくなりそうだ。何でこうこの彩華(ひと)はこうもヤバい事をポンポンと言えるのか。
「何言ってるんですかっ!。そこは彩華さんと沙奈ちゃんが同じ部屋じゃないですか?。」
「あらそう、残念ね。けど気が変わったらいつでも言ってね。」
一応・・・危険な事態は避けらたな。・・・しかし、たったこれだけの事でどっと疲れた。
実はとんでもない所に来たんじゃないかと今更ながらに思う・・・手遅れだけど。
その後、時間というのもあって夕食となった。勿論俺も手伝ったが。
で、その後も彩華さんとは色々と話したが、沙奈ちゃんの方は・・・避けられてるな。
多分人見知りだと思う。彩華さんの言う事はともかく、あれで一緒の部屋って無理だと思うが。勿論しないが
そして翌日。
「お早う母さん。」
「はいお早うお兄ちゃん。」
昨日のうちに決めた事。いつまでも彩華さんというのもおかしいので俺は彩華さんを”母さん”と呼ぶ事にした。
俺としては人生初の「母さん。」嬉しいけど、恥ずかしくもある。別の意味での不安もあるが。
そして沙奈ちゃんは・・・やっぱり避けられてるな。
今は朝食の時間。俺と母さんはわりと距離も近く、話しながら食べている。
一方の沙奈ちゃんはテーブルが小さいので限度があるが、目一杯距離を取って黙々と食べている。
「もうぉ、二人共仲良くしてよね。なんなら既成事実を作ったて良いんだから。」
・・・・・なんでこの人はこう余計な事まで言葉にするのやら。しかもヤバい方向のヤツを。
そして母さんとの話しの中で俺がまた学校に行く事になったと伝えられる。以前とは別の学校のようだが。
「良いんですか?。お金とか苦しいのに。」
「勿論よ。気にしないで行ってきなさい。
それに娘の将来の相手が低学歴なんて、格好付かないから頑張ってもらわないとね。」
・・・・・何でこの人は良い事言った後に黒いものを放り込むかなぁ。
と言うよりもっと自分の娘を大事にすべきかと思うんだが。(貞操とか尊厳とか。)
で、少し遅れての高校二年のスタート。幸い四月もまだ半ばに差し掛かっていない。そう致命的な遅れではないのは有難い。
だが学校が変わる以上知り合いはいない事になる。尤も前の学校で親しい奴はいなかったが。
校門に入り、昇降口前に先生らしき大人の男性。聞いていた通りのようだ。
「君が泰童君?。」
「はい。」
「まずは職員室に案内するよ、付いて来て。」
と言う訳で職員室まで移動。と、この辺りからというよりはもっと前から周りの視線が俺に集まる。
俺だけ私服だからなあ。で・・・・。
「こんな形で申し訳ない。これが君の制服だよ。別室を用意してあるからそこで着替えて。」
と、ここで制服を渡される。このまま私服か?と思っていたので一安心。
もうすでに他の生徒を見ていたので確認は不用だがこの学校では制服はブレザーか。
前のは学ランだったからな、て、意味はないよな。
で、制服に着替えた後、担任教師の紹介。
「芳川碧です。宜しくね。」
どうやら担任は若い女性のようだ。ボーイッシュではないが、短くそろえた淡く染めた髪色が印象的な人だ。
なんかここのところ可愛い感じの女性が続くなぁ。まあ良い事かもだけど。
そして状況の説明。どうやら俺は編入生という扱いらしい。そう紹介されると。
高校生になって転校生だのなんだので騒がれるのはそうないとは思う。だがある程度は好奇心の目を向けられる。
実際ホームルームの後何人かに質問攻めにされた。(疲れた。)
そしてここに来ての初めての授業の後。
「さっきは大変だったね。」
特にやる事も無く、そのまま自分の席にとしていると何時の間にか一人の女子生徒が俺の前にたっている。
「ああ、けど仕方ない・・・だろ?。」
「うん、そうだね。」
取り敢えず返す俺に笑顔で反応する女子生徒。
肩までのサラサラとした感じの黒のロングストレートの髪。爽やかな顔立ちは大和撫子のようで・・・。
うわぁ、もろ好みのタイプと気付いて緊張してしまう。
「何かあったら言って。力になるから。」
「うん、ありがと。君、良い人だね。」
「あっ!、うん。」
ここまでのやり取りで顔を赤らめる彼女。おっ、俺もギザが過ぎたか・・・。
「えっと、泰童君だっけ?。」
「うん、そうだよ。君は?。」
「私は鳴海蛍子。宜しくね、泰童君。」
「ああ、宜しく鳴海さん。」
と、この辺で自分の席に戻って行く鳴海さん。
まだ話したいところたが、しつこくして嫌われのも善くない。仕方ないとしよう。
しかしその後、鳴海さんは忙しい身なのか、接点を作れずにその日は終わった。
で、放課後。部活は?、と考えてこれまでの活動から剣道部は?と考えている。
「剣道部が有るかも確認してないな。」
そう思い職員室へと向かう事としたところでスマホが鳴る。
俺は必要ないと思ったが彩華さんから強制的に持たされたやつだ。
で、そのスマホのディスプレイを見てみるとその彩華さんからだ。
「はい。」
「秀君?。」
「ええ、そうです。」
「もう、今度から名乗って返事をしてね。」
「すみません。」
「と、本題。秀君、申し訳ないんだけど、今日は真っ直ぐ帰って来てくれないかしら。」
「あっ、はぁ。」
「お願いね。」
何か唐突だなとも思える展開・・・が、いいか。部活は明日探せば良いし。
という訳で真っ直ぐ帰る事に・・・で家の玄関先から入った辺りてで急に体に力が入らなくなる。
「なっ・・・!。」
訳も解らずそのまま前に倒れる。何が起きてる?。どうして体は動かない?。
「御免なさいね秀君。」
誰かが近付いて来るのが足音で判ってはいたが、聞こえて来る声で彩華さんだと理解する。
「どうして?。」と聞きたいが声も出ない。ただかろうじて彼女の姿が目に映る。
「本家の命令でね。若い男の子を引き取って鬼神憑きにしろって。
そしたらちょうど良い男の子が見つかって、それが秀君で・・・。」
なんか、勝手に話し出したな、この人。しかし鬼神憑きだのなんか訳の分からない事を・・・。
「それで娘を使って誘惑しようとしたんだけど。秀君全然乗ってくれなくて。
だから強行手段を取らせてもらったわ。悪いけどね、鬼神の餌になってね。」
そして黒い事言い出すわけか・・・てっ、餌?、喰われる?。何?。マジか?。
そう考えているうちに彩華さんが俺の胸に両手を置いてくる。
制服越しなので彼女の手が小さい位にしか伝わるものはないがって、そんな事考えている場合じゃあないっ!。
しかしそんな余裕、時間は無かった。急に視界が回転するかのように感じ、次の瞬間には真っ暗になった。
「何だ。」
あっ、喋れる。て、だから何?だが・・・・。
どうにも地に足が付いていないと感じる。黒以外見える存在(もの)がないのでどうしようもないが。
「ほう・・・餓鬼か。」
唐突に野太く、威圧感のある声が聞こえて来る。
「誰だっ!!。」
「ふんっ・・・好奇心か、ただの蛮行か・・・だが良い・・・。」
声は聞こえるが姿は見えない・・・と思っていると突然何かの姿が見える。
灰色の肌。背は俺よりも高い。俺が180cm強で、こいつは2m位か。
体格は見れば分かるレベルで逞しくゴツゴツとしている。鍛えている・・か?。
その有り様はどう見ても人間じゃあない。頭に角みたいのが有るが、小さ過ぎて判別出来ない。
ただ気みたいなものが伝わって来て、こいつを怖いとは感じる。
「さあ、恐れよ小僧っ!。儂こそ鬼神皇臥。貴様を喰らう存在(もの)よっ!。」
「喰らう?。だと・・・。」
伝わって来る力というのか、確かにこいつならそれが可能だと思えてくる。
「そうよっ!、貴様の魂を喰らいっ、体(うつわ)は儂のものとしてくれようぞ。」
「なっ!!。」
ここで彩華さんの言っていた事に得心する。鬼神憑きって、そういう事か・・・。
「さて・・・・二百年かそこらぶりの人の世か。
ふむ、まずは女(おなご)を喰らうのも悪くないが、奈ぶり通してから、というのも良いな・・・。」
奴の考えている事なのだろうか、何か映像の様なものが見える。
内容はこの皇臥という奴が、
時代劇に出てくる様な服装の女性を・・・・・。(注:内容がRー18指定に触れる為省きます。)
恐らく奴が二百年ぶりと言ったところのだろう、そういう服装のイメージになっているのは。
しかしそこで俺は鳴海さんの事を考えてしまう。それが迂闊な事だとすぐに気付く。
「ほうぉ小僧、好いている女(おなご)がおるか、これが今の世というものか・・・・。」
と、また映像が伝わって来る。間違いない、こいつがイメージしているものが伝わって来ているんだ。
当然内容は鳴海さんが霰のない姿で・・・。(注:以下同文)
「心配なぞ必要ないからな小僧。ぬしに代わって儂が心欲までその女(おなご)を、味わってやるぞ。
体も、血も、肉も、その全てをなぁ・・・良き事であろう・・・なぁ?。」
明らかに相手を下に見た言い様。確かに奴からすれば俺はそういう存在なんだろうな。
けど思ったより俺の感情は静かなようだ・・・・いやっ、これは違うな。
「ふぅざあけるなあぁーーーーーっ!!!。」
ああ・・・そうだ。キレただけだ・・・・・・。
「ぐうぅ、なかなか強い意志・・・だが。」
なっ・・・強い。これが鬼神か・・・だがぁっ!!。
「くっう!何っ!。なかなか・・・鍛練を積んでいるようだな・・・しかし人ごときにぃっ!。」
ぐっう・・・・精神のぶつかり合いの中で相手の強さを嫌という程に感じる。しかし・・・・。
「彼女は俺の人(もの)だーーーーっ!!!。」
「よく言う、接吻(キスの事)もまだだいうのにっ!。」
「それでもだぁーーーーっ!!。」
なんだろう、なんか俺が圧している気がする。
「なあ、まて小僧。こういうのはどうだ?。儂があの女(おなご)を喰らう時にだ。
貴様と感覚を共有してやろう。そうすれば満足であろう、な?。」
どうやら・・・気のせいではないようだ。俺が押している・・・ならっ!。
「冗談じゃないっ!。彼女は俺自身が喰らいたいんだっ!。」(注:本音だだ漏れ)
「ははは・・・よく言う。清純を語っておきながらなんと邪(よこしま)なっ!。」(注:ある意味正論)
奴に焦りを感じる・・・まさに好機!。
「うおおぉーーっ!!まけぇるうぅ、ものかぁっーっ!!。」(今だけCV草尾 毅)
「おのれぇーーっ!。この儂が人間ごときに負けるとは・・・・・・。」
・・・・奴が消えた・・・勝ったのか?。
と、そこでまた視界が変な事に・・・・・・。
*
「え~~とぉ。鬼神さまぁ?。」
はっきりとしだした視界に彩華さん?。というか膝枕されてる?。
「鬼神様っ!、目覚められたんですねっ!。」
なんか頭はずきずきするし、体もだるい感じな俺を他所に一人ではしゃぐ彩華さん。
「違います。俺です。」
取り敢えず頭痛いのとか我慢しながらそう言うと案の定彩華さんの動きが止まる。
「えっ・・・・とぉ、違うの?。」
「はい。」
「鬼神様は?。」
「倒しました。」
だと思う。な感じで言った俺。一方の彩華さんはなんか落ち着かない感じだ。
「えっ・・・・嘘・・・そんなっ・・・。」
パニックて奴か、おろおろとして落ち着かない彩華さん。
そして不意に右手を俺の胸に当ててくる。
「ふぅ・・・・良かったわ。鬼神様の精神支配から逃れて、一時的に封じただけのようね。
たいした精神力だけど。よく考えてみれば人間ごときが鬼神様を倒すなんてね・・・・。」
人間ごときって・・・他に言い様は無いのかねこの人は・・・・・・。
「あのっ・・・・そろそろ膝枕止めてもらっても?。」
「あっ、ああ、そうね。」
体調が戻って来てるのもあったが、ここまでにそれなりに時間が経過していたのだろう。
多分俺が意識を失っている内に帰って来たのでは?と思える沙奈ちゃんの存在に気付いて恥ずかしくなったのもある。
現在位置の玄関先から沙奈ちゃんが座ってこっちを見ているキッチンまではすぐそこだ。
俺としても何故気付かなかっただが。まあ、仕方ないかもか・・・・。
「ねぇ秀君。お願いがあるんだけど。」
取り敢えず上半身だけを起こした俺に唐突に言ってくる彩華さん。何だ?。
「何か?。」
「貴方が制御下にしてしまった鬼神様だけど。今すぐに解放してもらえないかしら。」
「えっ、何で?。」
「勿論鬼神様に暴れて、蹂躙してほしいからよ。」
・・・・・今更かもだが、何でこの人はとんでもなく物騒な事をとんでもなく軽いノリで言うだろうな。
「お断りします。」
取り敢えず当たり前と思える返答をする。
「え~~~っ!何でよぉっ。その為に貴方を引き取って、上の指示通りにしたのにぃ。」
・・・・・なんか黒い事実発覚したぁ・・・知りたくもなかった事実が・・・・。
「その上とは?。」
「勿論私達鬼導師の上の人達よ。うちみたいな弱小地位の鬼導師なんてね。
上からの援助無しじゃあ生活すらままならないんだからね。」
なんかべらべらとしゃべってくれるなこの人。尤もその”鬼導師”というのが解らないんだがな。
が・・・その懸念は杞憂に終わった。そこからの彩華さんはしゃべる事を止めない状態となった。
鬼導師と仙導師という存在との争い。それが”妖怪(あやかし)”と言う今となってはお伽噺の存在との戦いの歴史だと。
しかも驚いた事に妖怪は未だに存在していて、その戦いも続いているという。
「因みにだけど秀君。貴方一応鬼神憑きになっているから、今なら妖怪とか見えるようになってるよ。」
あっ、そうなのか?・・ってちょっと待て。”鬼神憑き”って何?。どういう事。
で、そこも勝手に説明された。鬼神憑きとは人の体に鬼神という存在を憑依させたもの。
強大な力にはなるが、制御が難しく、暴走するのが殆どで、俺の様なケースは希との事。
そこまで聞いて、青ざめた感覚になる。彩華さん実はヤバい事をしたのではと。
「あの、彩華さん?。」
「何かしら?。」
どうやら本人は気付いていないようなので説明する事にする。
通常人での制御が難しい存在をこんな狭い場所で召喚した事。
その為に家族等関係無い人を巻き込んだ危険性があった事を。
「えっ・・・・えっとぉ。」
「そんな事したら沙奈ちゃんに危険が及ぶとは考えなかったので?。」
「だってぇ~言う通りにすればお金が貰えるんだし、ねぇ。」
・・・・大事なのそこ?。流石に呆れておくところか。
しかし、もうちょっと周りが見えてほしいところだ、危なっかしい。
ただ、その後確認してみると彩華さんも混乱していて考えがまとまらない状態だと判った。
「御免なさいねえ、私、そんな危ない事を・・・・・。」
と、状況が飲み込めると彩華さんは俺や沙奈ちゃんに謝っていた。
「けどぉ・・・お金とか、家も貧乏だし、仕方ないよねぇ。」
・・・・・と思ったけど。この人全然反省してねぇ。
「後、いつでも沙奈を秀君の女にして良いからね。」
またそこかっ!。しつこいなって・・・沙奈ちゃんもそんな目で俺を見ないで、そんな事しないからっ!。
そうしてなんとも疲れる一日が終わった・・・・事は何も終わってないが・・・・・・。
*
「・・・起きろ小童っ!・・・・。」
・・・ん?・・・何だ五月蝿いって、へ?。
そして翌朝色々と事実を知る。
まずは鬼神。彩華さんの言った通り倒した訳ではなかったようで。現在頭の中で五月蝿い。「
「・・・数百年ぶりの表世ぞ。騒ぐ他に何があろか、のう小童よ。」
知るかよ。そして五月蝿い。いちいち頭の中がこうである為、実に煩わらしい。
「あら、一人言?。」
と聞いて来る彩華さん。鬼神(やつ)の声が俺にしか聞こえないからだ。
そして沙奈ちゃんは・・・警戒されてるよな。
「誰が奴だと。儂の名は皇臥ぞ。昨日(さくじつ)名乗ったであろう。覚えるが良い童よ。」
ほんとに五月蝿いな。お前の名前なんてどうでも良いんだよったく・・・。
「なにぃっ!。誰がお前だと人間ごときがっ!。一度勝った位で良い気になるなっ!。」
ぐっ・・・しまった。思った事が聞こえるという事の様だ。厄介だ。
*
そして学校へ・・・正直この状態で行きたくはなかったが、じゃあどう説明を、で困る事に。
それで一応来た訳だが・・・・・・。
「おぉ・・・こうも人間が集まる所が?。
なんと!、今の世の女(おなご)はなんと肉付き良いのがこうも多いか・・・・良い、良いぞぉ・・・・。」
・・・・・やっぱり来るべきじゃなかったかと後悔。もう遅いが・・・・。
これがどこかで落ち着けばまあ良かったが、そんな訳は無く・・・・・。
「なんともよ・・・・また随分と人の趣向が変わった様たが・・・うむ、これはこれでも良いかの。
なんとも犯し、喰らい甲斐のある女がこう多いとこう・・・目移りするのぉ。」
思考。考えている事を共有しているというのは実に厄介で。
俺自身が迂闊に何かを考えるのも筒抜けだし、それは奴も同じで・・・。
しかもこうなって初めて分かったが、想像しているものも共有しているようで。
奴の卑猥な言葉と同時に考えているであろう事の映像みたいな物まで見えてしまう。(やけに雰囲気が古臭いが)
これがなかなか厄介で、慣れる必要を感じ。奴と口論しながら慣れる事を心掛けた。
尤も、時折それが口や仕草に出ている事があり、それらも含めて気を付けてねばだが・・・・。
そしてこの日、鳴海さんと話す機会は全くなかった。原因は言うもがな・・・・。
「ほうぉ、良い娘じゃのう・・・なぁ童よ。」
「おいよっ!、これだけ女がおるのじゃから、一人位犯(や)らんか?。良いじゃろっ。」
この鬱陶しいと言える糞ジジイの対処に追われからだ、全く。
「うぬっ!、誰が糞ジジイだと!。全く人間ごときがっ!愚かなものよ。」
うるせぇ糞ジジイ。だったら黙ってろよ。
「うぬぬぬ・・・・おのれぇ・・一度儂に勝った位で良い気になりおって!。」
またそれか、いい加減うんざりだった。これが一日終始間も無く続けばそうもなる。
そしてそのせいかやけに体がだるいな全く。
「おいっ!それは儂のせいではないぞ。光陣(こうじん)の破に当てられたからぞ。」
は?。何だそれ。
「どうやら儂らの身近に陰陽師が居るようじゃの。然程難しい術でもないしの。
そして構築しておけば、勝手に敵となる存在(もの)を攻撃する、便利な術じゃからな。」
なんだそのお伽噺みたいなのはって、今の俺もそうか・・・・。
「えええいっ!全て事実ぞ。つまり身近に敵がおるのだ。心せよ童。」
敵?。それって仙導師とか言うのじゃなかったか?。
「そこまで知らぬわ。兎に角気を付けよ。向こうは儂らに気付いておるかも知れぬからな。」
何か面倒臭い事になったなと思いながら帰路に着く。すると・・・・・・・。
「何だ?。」
街中に入った辺りで空中に何かが有るのが見える。(注:常人には見えません。)
「えっ!。」
その正体に気付いて思わず驚く。人だっ!、しかも二人。どちらも神社の巫女の様な服装をしている。
そしてそれが俺のほぼ真上にいたからもう一つの事に気付く。
袴を着ていると思っていたそれは袴の様なスカートで、下から見ていたからパっ・・パンっていかんいかん。
「・・・・ふんっ以前にも言ったが女の下履きくらいで狼狽えるでないっ。」
五月蝿い。相手に失礼だろ。しかし、となると上の二人は女の子なのか?。
そう思っているとその二人が俺の所に降りて来るって・・・・・。
「鳴海さん?。」
巫女服姿の二人。茶髪のショートヘアの方は見覚えはなかったが、もう一人の方は間違いなく鳴海さんだった。
「変な気配を感じたんだけどって。泰童君?。」
「ほう・・・思わぬところに陰陽師(敵)がおったの・・・・・これは面白い。」
何が面白いんだよ。ったく。
実に面倒な事になった。それは予感でもあったが、間違いなく事実となる予感だった。
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