青の時間

高宮 摩如(たかみや まこと)

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ー最終部ー 本当の繋がりと想いを共に

ー第13話ー 変わりゆく事

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「さむっ。」
春先の朝、慣れないだろうなと思える寒さが僕の中に残る眠気を容赦無く削ぎ落とす。
新天地で始まる高校三年。正直なところ今までとそう変わらないのでは?。そう思っていた。
げど気の持ち様というのか、それだけでこうも変わったように感じたのは驚きだった。
色んな事に目を向け、考える事があれば考えていく。
たったそれだけで見えてくるものがこうも変わるとは思ってもみなかった。
他人に目を向け、人として見てく。今までしてこなかったものの一つだけど。
目を向ける事で僕も自分勝手な価値観でいた事を思い知った。
当然他にもある。周りを見て知り、叔母を教えられ、ふと気付く事もある。その多くが実に驚きと言えるものだった。
でも、そこで止まってしまう。それが今までの僕で、まだ変われていない僕だから・・・・・・・。
「なら、小さいのでも良いから目標を立てていくってのはどうだい?。」
「目標?。」
「うん。目標を立てて、達成して。で、また目標を立てて、また達成していく。
 それを繰り返していくんだ。地味に見えると思うけど、人生ってそんなもんだよ。」
現状を不安に思えたた僕は叔母に相談した。けど返って来た答えはより僕を不安にさせた。
「何を目標にすれば良いか、それが解らない・・・・。」
「あちゃぁ、そうだね、まずは友達を作る、それを目標にしてみなよ。今のあんたには大事な事になると思うよ。」
「友達・・・・・・。」
「うん。それと自分が何をしたいのか、それも探してみな。どっちも大事な事だよ。」
大事な事・・・・。実感がどうしても湧かない。今までやってこなかったから?。
そしてどうすれば目標を達成出来るのか、それすら解らないだった。
「言っといてなんだけど、明確な正解ってないんだよ。その時その時によって、何が正しいかが変わるからね。」
再度した僕の質問に困った様に答える叔母。
そんな曖昧な事を目標に?。どうして?。なんで大事なの?。
「難しいと思うけど、それが生きるって事だよ。」
叔母のその言葉は答えになっていない。僕にはそう思えた。
けど同時に思い知る。もし叔母の言っている事が正しいのなら、かつての僕は生きる事さえ諦めていた事になる。
それは僕の両親が僕に強要していた事が大きく原因としてある。
だとしたら僕の親は僕をどう生かしたかったのか、ずっとそうだけど、全く理解出来ない事だった。
見つからない答え、焦りというよりは苛々している、そんな感じだった。
新しい学年が始まって一週間を過ぎようとしている。
けど僕は何も変われていないと思える。それが僕を苛々させていた。
「そう簡単に人ってもんが変われたら苦労はしないよ。焦りたいのは分かるけど、じっくりいきな。時間を掛けてね。」
「でも・・・・・。」
「焦っても、焦っただけという事にしかならないよ。
 それにただ考えるだけってのも駄目だ、誰でも良いから話し掛けてみる。そういうスタートも大事だよ。」
確かに、考えているだけで一つも行動というのはしてこなかった。
けど、それは今だ僕にとって怖いと感じるものだった。
行動する事で誰かと関わり、その結果酷い目に逢う。どうしてもそう繋がってしまう。
だから誰とも距離を取る。僕はまだそれを続けていた。
一人が好きだ、それが両親のせいというのもあったけど、僕が誰かと関わる事から逃げていた証明でもあった、
だけど一人でいる事は良くはない、それは理解出来始めていて、意識もしている。
けど叔母の言った通り、この問題の解決にはまだ時間が掛かるのかもしれない。
でも、簡単に変化している。そう感じる事もあった。
三年になって初めて真剣に勉強をするようになった。
両親に強要されてっというのに嫌気がさして手を抜く事を考え続けた以前とは違う。
勉強というものにやり甲斐を感じ、今は手を抜く理由を失っている。
ただ、どうして、何の為に勉強を?。となると弱い。そんな現状がある。
元々趣味なんてものは無く、それを勉強で代用しているのかもしれない、だった。
叔母もその事は不安視をしている様だった。
「うん、趣味はあった方が良いよ。人生の充実感が全然違うからね。」
と言う叔母もこれといった趣味は持っていなかったように思う。その事を指摘すると。
「うっさい!。あたしの事は良いんだよ。今はもっと自分の事を考えなっ!。」
て、逆ギレって感じに怒らた。で、良いのかな?。
幸いと言うのか、両親と違って叔母は必要と判ればそれを提供してくれる。
食事等は勿論。その他の物も。お陰で今生まれて初めてインターネットという手段に触れる事が出来ている。
最初は当然戸惑った。これどうやって使うの?だった。でも慣れてくると便利なものだと知る。
けどさらに慣れると便利過ぎて返って不便だと気づく。
それでもインターネットが僕にとって大事な手段の一つなのは理解している。
まだ至らない事が多くある。正直焦りたい気持ちもある。
けど反面、自分の中に意識としての余裕が有る事に気付く。
強要では無いという事実もあるとは思う。でも教えてくる人がいる、支えてくる人がいる。
それが僕のなかで余裕になっているのだと思う。
学校という環境の中では久しぶりに静かな時間を過ごせている。
やっぱりこの状況は好きだし、それが悪いとは今でも思わない。
ただ、一緒に過ごす誰かが居れば、か・・・。
不意に一人の少女の姿が思い浮かぶ。駄目だ、彼女はもういない、友達にはなれない。
これもどうして?、だった。時折意味も無く彼女の姿が頭に浮かぶ事がある。
何で?。何度も考えたけど、これも答えは出ていない。
だからだと思う。僕にとって、彼女は一体何だったんだろうか?と、意味の無い事を考える事があるのは。
すごくもやもやとする未だに正体の解らない感情。そのせいで僕は彼女を忘れられないでいる。
この感情は正しいのか?。また僕を悪夢へと叩き落とすものではないのか。
色々と不安は確かにある。新天地に変わって消えた不安もある。
けど同時に残る不安もまたある。結局、ずぐには出ない答えが多くにある。
それが不安の正体の一つでもある。そして厄介なのは正体すら解らない不安があること。
尤も、”それ”を不安と表現して良いのか、そういう意味での正体不明さもある。
でも一つ。だからと言ってもう屋上に逃げたりはしない。
どっちにしても前の学校とは違い普段鍵が掛かっているので入れないけど。
知らない事、解らない事は今だ多い。当然出来ない事も。
でも同時に知る事も、解らない事を解決していく事も、出来ない事を出来るようにする事もまた可能だと知った。
時間は掛かるかもしれない。でもやっていこうという思いが今はある。
その結果どうなるかなんて判らない。それも不安ではある。
だからと言って止まる気も無い。変わりゆく事。それは僕も望んでいる事。
だから進んでいきたい。怖いと、例えそう思っても。
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