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おまけ
幸福の園②
しおりを挟むそのうち貴方が死に、子孫の中に貴方と瓜二つの見た目をした子が生まれても、彼らもその瞳に最愛以外を映す事はなかった。
ふふっ、きっと貴方が壊れてしまったあの瞬間に、わたくしも同じように壊れてしまったのかもしれないわね。
貴方が狂い死に、その子孫も同じように壊れていく中で、女神となったわたくしに出来る事はただその姿を水盆から眺めるだけ。
そう、たったそれだけしか出来ない自分が、どうしようもなく歯痒くてならないの。
「ねえ、エドワード。わたくしまた、貴方の子ども達を救う事が出来なかったわ。貴方はこんな不出来な友人をどう思うのかしらね?」
もうそこにはいない、愛しい相手に向けわたくしは小さく呟いた。
そしてゆっくりと笑みを浮かべ、側に控える相手へと言葉を紡ぐ。
「愛というものは酷く複雑で歪よね。それでいてとても儚いの。そうは思わない?エド」
わたくしは傍に控えている新米天使へ向けそう投げかけた。
静かに控えている彼の表情に変化はない。ただいつもと同じだというだけ。
彼に変化がなくとも、魂の方はどうかしら?
まあ、それを知っているのはわたくしだけなのだけれど。
「アルテナ様、そろそろ」
「分かっているわ」
眺めていた水盆から目を離し、ゆっくりと席を立つ。
この後は各地に配置している部下からの報告会議があるから、そろそろわたくしも仕事に戻らなくてはいけないわね。
ふと踏み出した足を止め、後方の水盆を振り返る。
(今回もまた幸せにしてあげられなかった……)
「ごめんなさいね、エドワード。不甲斐ないわたくしを許してちょうだいね」
誰にも届く事がない程の小さな声で呟き、わたくしは会場の方へと歩みを進める。
だからきっと誰も気付かない。
わたくしがこの状況を心から楽しんでいる事も、わたくしが作り出す微笑みの意味も、何もかも。
彼らが狂えば狂う程、わたくしが幸福で満たされていく事も……。
神となった者は自分が決めた方法から力を得る事が許される──。
だからわたくしは、愛する貴方の子孫が壊れていく事で力を得るようにしたのよ。
わたくしは今でも貴方を愛してる。だから間違っても貴方の血筋を途絶えさせたりなどしないわ。
愛する貴方の為に、貴方が愛した国を同じように想い続け、今日もわたくしはあの世界を守護するの。
全ては愛する貴方の為に……。
わたくしは女神と呼ばれる唯一無二の存在。
わたくしが幸福を感じれば感じる程、世界は満たされ、そして平和になっていく。
でも世界が平和になる、その為には──、
「あなた達が壊れていなければならないのよ」
今回の結末もとても素晴らしいものだったわ。
さあ、次の物語はどんな結末でわたくしを楽しませてくれるのかしら?
end.
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