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本編
第四十話 王都での日々②ー3
しおりを挟むその後はノアと他愛のない会話をしているうちに、気付けばあっという間に目当ての雑貨屋に着いてしまった。
(寂しい)
まるで心にぽっかり穴が開いたような感覚を覚え、私は咄嗟にその感情から目を逸らし、私は他の人には見えていないノアと共に店内に入っていく。
初めて来る店だったけれど、入口からして既に私好みの自然溢れる、可愛らしい雰囲気の店だった。
店の入口には様々な植物が植えられ、入口の少し離れた場所には木の立て看板にこの店の名前、【ジャルダン・フェーリック】と彫られていた。その看板は矢印のような形で入口を指している。そして入口の両端にはランプが垂れ下がっており、淡い色合いの光に自然と心が暖かくなる感覚がした。
(懐かしいわ……)
私はその光景を見て幼い頃読んだ一冊の絵本を思い出した。
まるでその絵本に出て来る、森の奥深くに住んでいる魔女の隠れ家を思い出させる佇まいだった。
思わず絵本の中に迷い込んだ錯覚を起こした私は、店内が気になりそのままゆっくりと足を踏み入れた。
店に足を踏み入れると、私の目の前には本当にここが王都だとは思えない光景が広がっていた。
天井から床まで様々な色や大きさの花や木で彩られており、店内にあるいくつかの柱には蔓が巻かれていた。
さらに可愛いのが、あちこちに小さな木の切り株もある事だった。
大人が座れそうなものから小さな子供用のものまで。
まるで森の中に迷い込んでしまったような……そんな造りになっていた。
そして切り株の上や半分だけになっている木の上には、鳥の人形や小動物の置物が置かれており、その場にいるだけでも楽しめる店だった。
「いらっしゃいませ!ようこそ、ジャルダン・フェーリックへ」
「こんにちは。エプロンを探しているのですが何着か見せていただけますか?」
「エプロンですね、こちらへどうぞ」
ぴょこっと店の奥から顔を覗かせて笑顔でこちらへ掛けてきたのは、私とそこまで変わらない年齢だと思われる一人の少女だった。
「気になる色味などはありますか?」
「いえ、まだ何も決めていないんです」
「そうなんですね!んー、そうですねぇ。お客様は肌が透き通るように白いのでこちらのブルーのお色のものが似合うと思いますよ!」
「とても素敵だわ」
「でしょう?このエプロン、昨日入荷したばかりなのでまだ誰も持ってないんですよ♪」
そう笑顔で教えてくれた彼女からエプロンを受け取り、私は鏡に向かって自分の体にそっと当てがってみた。
(確かに可愛いけれど、私には少し可愛すぎるのではないかしら?)
一人で鏡の前で悩んでいると、横から聞き慣れた優しい声が聞こえてきた。
『そのエプロン、アリアに良く似合ってる。あと、そこにかかってるピンクのエプロンも似合うと思う』
「……あ、あの私」
「はい!どれか気になったものがありましたか?」
「……私このエプロンと、そこにあるピンクのエプロンにします」
本当に我ながら分かりやすい性格だなと思う。
ノアに似合ってると言われたからって、即決するなんて、単純すぎる。
「ありがとうございます!すぐにお包みしますので良かったら店の中でも見てお待ち下さいね!!」
品物を包んでもらう間、店内をゆっくり見て回る。
棚の上にも小さな動物の置物が置いてあり、凄く内装に拘っているのが伝わってくる。
『アリアはこういう雰囲気が好きなのか?』
「ええ、そうね。王都の、しかもお店でこういった自然を感じられるのは斬新だし、こんなに楽しいと感じたお買い物は初めてだわ」
ノアに内緒話をするように話し掛けると、彼は花が綻んだように微笑んだ。
男性に対して花が綻ぶなんて表現は普通はしないけど、ノアの笑顔は触れてはいけない魅惑の花のようだと思う。
(その花に一度でも触れたらきっと後は堕ちていくだけ)
ふとそんな風に感じ、気付けば私は自然とノアに向けて手を伸ばしていた。
「お客様、大変お待たせ致しました!!」
「――っ!?」
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