都立図書館の地下には『人の生』が集約する

お嬢

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ビブライオの仕事

新米司書は頑張る

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「まずは基本的な仕事だ、お前も本くらい借りたことあんだろ?」
「は…はい。」

リャオルは、スパルタ先輩ハルによって、貸出カウンターに連れてこられていた。
リャオルもよく利用していた場所であるが、本日はカウンターの向こう側で視点がいつもと違い真新しい。

ここは児童書のコーナーだ。
アドニア王国内で出版された本はもちろん、他の小国などで出版された本はすべて揃えられている。
なぜこの児童書コーナーで説明を受けているかというと、手続きが他のジャンルに比べて煩雑ではなく、ある程度の話声が認められているからだ。

児童書コーナーは基本的に年齢制限などもなく、誰でもどんな本でも読むことができる。
もちろん年齢によっては少し過激な表現があるものもなくはないのだが、概ね誰が読んでも恐怖心を抱かないものだけが選ばれているのだ。
児童書に分類されている物であっても、そういった読む人を選ぶような本は別のコーナーに置かれている。

そして他のジャンルと大きく異なるのが、読み聞かせコーナーがあることだろう。
ここでは大人が子供に対して本を読み聞かせることができる。
小さなブースによって区切られた箇所が100か所ほどあり、その他にも子どもが50人ほど座っても余裕のある広いスペースと、その反対には同じくらいのスペースでたくさんのおもちゃがある場所が準備されているのだ。
この読み聞かせコーナーのブース1つ1つの壁、そして読み聞かせコーナー自体に『消音サイレンス』の魔術がかけられてあり、どれだけ子供が騒いだとしても外に音が漏れることはない。
本に退屈した子供はおもちゃで遊ぶこともでき、退屈することもないのだ。

「おねーさん!これ貸してください!」

リャオルがハルの説明を聞いていると、金の髪をおさげにした4歳くらいの子供がカウンターに寄ってきた。
その腕には3冊ほどの絵本が抱えられている。

「あ、いらっしゃいアリサちゃん。今日も来てくれたのね。」

リャオルは驚いた。
さきほどまで自分に向けられていた冷徹な瞳、淡々とした声とは打って変わって、ハルはにこやかにアリサと呼ばれた少女に対応しているのだ。

「この3冊でいいのかな?」
「うん、お願いします!」
「はーい、じゃあ手をかざしてね。」

にこやかに対応しながらも、モニターにいくつかの文字列を打ち込んでいく。
カウンターの手元にある魔法陣に本をかざすと、カウンターの反対側、つまり少女のいる側の魔法陣が光を放つ。
それはリャオルが総合案内で手をかざしたものと同じ、淡い白いものだ。

本来は、カウンターの机の上に利用者用の魔法陣が用意されているのだが、この児童書コーナーは大人だけではなく子供がよく利用する。
そのため、背の小さな子供が利用しやすいように低い位置にも魔法陣が用意されているのだ。
アリサが手をかざすと、やはり白い光は青のものに変わる。
これは貸出手続きが滞りなく終了した証でもある。

「ありがとうおねーさん!またね!」
「気をつけて帰ってね。」

少女が本を手にしハルに手を振ると、ハルもそれに手を振り返す。
なるほど、こんな表情もできたのかとリャオルは心の中で思った。

「基本的に本を借りる場合は私たちがカウンターで手続きをする。本を手元でスキャンし、客があちら側に手をかざせば魔力パターンから客情報が導き出されるんだ。それくらいは知ってるよな?本のレーティング、つまり年齢制限や嗜好情報などから本の貸出が問題ない場合は貸出が可能だ。」

リャオルに口をはさませることなく、ハルは説明を続ける。

「魔法陣に手をかざせば、客側とこちら側から出力される光の色が変わる。そのパターンは覚えておけよ。」

そういうとハルは、リャオルにメモをとるように促す。

「青色は貸出可能だ。ほとんどの場合は青色が出力されるからお前もこの色しか見たことないかもしれないな。黄色は貸出することができるが、いくつか注意点があるからそれを必ず伝えろ。注意点はモニターに書かれているからそれを伝えるだけでいい。赤は貸出不可能だ。」

そこまで言うとハルは一息つく。
色のパターンはそれほど多くないため覚えること自体はそれほど難しくなさそうな印象だ。
それに面倒そうな『黄色』の場合はモニターに注意書きが表示されているのだから、色にさえ注意していればいい。

「ただし、黒が表示された場合は、1。必ず私か、レベル5以上の職員、つまり青、藍、紫のバッジを付けた職員を呼べ。」

そういうハルの襟元には青色をした、本の形のバッジが光っている。
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