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可愛い双子の愛が激しすぎる(後編)

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「ンッ――」

 ある感覚にピクリと猫耳が反応し、目を開けると、目の前にはスヤスヤと幸せそうな顔で眠るレナートの顔があった。反対側を首だけなんとか回して見ると、そちらでは同じように幸せそうな顔のレオーネの姿が見える。

(そっか――私二人と……)

 途端、先ほどの行為を思い出し、恥ずかしさに顔が真っ赤に染まっていくのが分かった。

(う、うわあぁ……ヤッちゃった――しかも、結局最後の方はバックで入れたまま目の前のアレを口でとか…………そ、そもそも、何回シた? えっと、十回くらいまでは覚えてるけど、その後は……う、うわあぁぁ――ハズイ、恥ずかしい!! しかも、今、全裸☆ じゃん、シーツあるけど、生まれたままの姿じゃん!!)

 同じく全裸の双子にギュウギュウと抱きしめられた状態。色々と恥ずかしいそんな状態の中、音も立てずに彼がたたずんでいた。私はチラリと目線だけそちらに送る。

 長い金髪を後ろで緩く結び、その鋭くも綺麗な金色の瞳を闇の中で輝かせ、その青年はそこにいた。嫌味なほど長い手足に、綺麗な顔つき。いつものような変態要素はなく、ただ、静かに新世校しんせいこうにいた時と同じく黒い軍服せいふくに身を包んだ彼がまるで執事のように立っていた。

「シェ、ロン――?」

 かすれた声で彼の名を呼ぶと、彼は少し寂しげに瞳を揺らした。その時、ふと双子が身じろぎしたような気がしてビクリと反応してしまう。

「双子には寝ててもらうように魔力を流したから――安心して」

 コツリと靴音を立て、私の顔を覗き込むように近づいてきたシェロンに、ジクジクと心臓が嫌な痛みを発する。

「ルチアは――双子を選んだってことで良いのかな?」

「う――ん、そう、私は双子――レオーネとレナートが好き」

 その言葉に、シェロンが私の両横で寝息を立てる双子に殺気を込めた目を向けたため、咄嗟にこちらも殺気と回復した魔力を全開放する。私はベッドに仰向けになっているので少々真剣さに欠けるような格好ではあるが、それでも彼が攻撃してきたら全力で応戦できる状態だ。

「手を出したらシェロンでも許さない」

 地を這うような低い声が自分の喉から出たことに驚いたが、彼はそれをニコリと笑ってかわす。

「殺したいほど苛立ってはいるけど、ルチアが嫌がることはしないよ。俺は君の下僕でいられれば――傍にいれさえすれば、それでいいし」

 彼の忠誠心の厚さ、私への想いの重さ――その全てが伝わり胸が痛くなる。

「シェロンは――それでいいの? 私はもう――」

 私の言葉を遮るように、彼はチョンッと私の唇に人差し指を置いた。彼の顔が逆さまに見える体勢だが、彼の悲しげな金色の瞳はしっかりと私を見つめている。

「俺のことは心配しなくていいから……もちろん、謝罪なんかもいらない。俺は君が幸せならそれで充分なんだ。この先、何十年、何百年時を重ねようとも、俺はずっと君を想い続け、君の傍に居続けるだけ。ただ、それだけは変わらないし、変えられない」

 彼が私の唇から手を離し、愛おしげに私を見つめてくる。その視線に応えられない私は、思わずその金の瞳から逃れたくなった。

「私なんかほっぽって……別の誰かに行けば良いのに――」

「ごめん……俺は君が良いんだ。君以外――いらないんだ」

 そういって優しく微笑む彼に、余計に罪悪感が沸く。

(どうして――?)

 私は双子を選んだからどうすることもできないのに、思わずそんな言葉を言いそうになってしまうが、なんとか心の中だけにとどめておく。

「私は――双子だけしか見ないよ」

「もちろん、それでいいよ。それで君が幸せになるんなら――俺は、それでいい」

「バッッッカじゃないの」

「ハハッ、俺も――そう思うよ」

 寂しげに笑う彼に心が揺れ動かなかったという嘘はつけない。でも、私は双子を選び、彼は友達――いや、従者以上恋人未満という状態から上へと昇格はしなかった。だから、私が彼にかけられる言葉はこれ以上ない。

「ルチア――俺は君を一人の女性として愛してる」

 彼が私の黒髪をそっとすくい、チュッと音を立ててそれに口付けを落とす。

「シェロン――私はあなたを従者として大切だと思ってる」

 私の言葉に、彼はやはり悲しげに笑う。

「ずっと、傍に居させてくれる?」 

「……あんたが飽きるまで――居ればいいよ」

 その悲しげな瞳から決して目を離さないようにしながら、私は甘く残酷な夢を与えてしまう。私が彼を選ぶことはもう決してないのに……。

「じゃあ、ずっとだ――ありがとう、ルチア」

 そう言って部屋から音もなく姿を消した彼の嬉しそうな微笑みが、脳裏に焼き付いて消えない。

(どっかに行ってしまえ、お前なんかいらないって言えればいいのに――)

「「ねぇ、ルチア?」」

「あ――れ?」

 いつの間にか、彼らが起きて私をしっかりと拘束していた。

「ボクらを選んでくれたのはすごく良く分かったよ」

「でも、隙が多すぎるのは考えものだね?」

「結局、アイツも諦めてないし――」

「正直、アイツ、邪魔――」

 左をガッチリとレナートが固め、右をガッチリとレオーネが固め、本気マジで身動きがとれない。

「……えっと、二人共――寝てたんじゃ?」

「あんなの、アイツがテキトー言ってボクらがそれに乗っただけだよ」

「ルチアの本心知りたかったし」

「は? じゃあ、今までのは――狸寝入り?」

「「うん」」

 私の言葉に頷く双子に頭を抱えたくなる。今は、猫の獣人なのに狸寝入り? なんていう軽いツッコミすら出せないくらい、頭が痛い。

 だって考えてもみてよ……この双子、自分達以外のこと考えたんじゃないかって思っただけ(実際私が考えていたのは双子のこと)で私に噛みついてきた(比喩でもなんでもなく)んだよ?

 その双子が私の傍にシェロンが居続けることをよしとはしな――

「「ねぇ、ルチア――」」

「ふぁい!!」

(……返事すら噛んだああぁぁ!!)

 つーか、双子さん、不穏な空気を纏っててちょいと怖いよ?

 既に怪力は戻ってきてるが、さすがに愛する双子に怪我を負わせたくはないので本気は出せない。この不穏な空気をどうやって切り抜けるんだ、私!?

「「ルチアはボクらの――だよね?」」

「は、はい、そうです……ね?」

「「でも、自覚が足りないよね」」

「え、いや――自覚は充分ですが?」

 私の言葉虚しく、彼らはスリスリと私の身体に頬を摺り寄せながら不穏な言葉を紡いでいく。

「やっぱりまだボクらの愛が注ぎ足りてないんじゃない?」

「うんうん、ボクらまだまだ頑張らないとね?」

「い、いやいやいや! 充分すぎるほどですよンッ――!?」

 レナートに唇を奪われ、クチュクチュと口内を貪られ、レオーネが身体中にこれでもかってほどに双子に付けられた魔力痕キスマークに上塗りするように、さらに新しい魔力痕キスマークを残していく。

「ちょっと待って、二人共、も、もう、マジでム――ンンンッ!!!」

 再び魔力を根こそぎ奪われていく感覚に、サアッと血の気が引いてくる。

「「さあ、第二ラウンドとイこうか、ルチア?」」

 妖艶に笑う双子らを見て、彼らの愛の重さと激しすぎる行為に今後の自分の身体が心配になったのは、まあ、察してくださいますよね――?

 ちょっと前々から思ったんですけどね、この双子――ちょっとヤンデレ入ってません!? 私、大丈夫なの!? 今後ちょっとしたことで私以外のみんなを殺戮END☆ とか、監禁END♪ とかゴメンだからね――!!!
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