平穏な日常に悪魔はいらない

雪音鈴

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3魔 ☆ 俺様、何様、ミカゲ様!?③

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 洋館に入ってきた時よりも強い衝撃と、舞い上がる砂埃を吸い込んだ事により、ゴホゴホと咳き込んでしまう。またもや視界が奪われてしまっているが、きっと地下に落とされたのであろう。

『俺は紳士的に物事を進めたいのに……チッ……逆らう貴様が悪い!』

(紳士的? どこが? っていうか結局俺のせいなのか……)

 砂埃が落ち着いてきて、次第にクリアになってくる視界の中で、俺は必死に目を凝らす。しかし、そこにはまだ明かりが灯っていないようで、ぼんやりとしか分からない。それがまたひどく不安を煽る。

(このままじゃ埒が明かない……とりあえず、立とう)

 そう思い、手をついた瞬間、まるで油に火でもつけたかのように、勢いよく光が走っていった。その光は、俺が手をついた所から何かの模様を紡ぐように部屋全体に広がる。

 いきなり溢れ出た光にしばらくの間目を開けていられなくなったが、少し経つと、光が幾分か弱まった感じがした。恐る恐る目を開き、チカチカする視界を何度も瞬きする事で抑えると、ようやく部屋全体の様子が分かるようになった。

 さっき走った光は、現在は淡い紫色をしていて、何かのレリーフのような模様をこの部屋全体に描いている。そして、驚くべきことに、床や壁、天井の至る所からアメジストのような綺麗な石らしき物が突き出ていたのだった。それも大人ぐらいの大きさのものがゴロゴロと……

 淡い紫色の光を受けキラキラと輝く様は、心が奪われる程綺麗ではあったが、石の奥にある濃い紫色の部分がとても妖美で、どこか危うい――そうやってしばらく呆けていると、再び頭の中に声が響いてくる。

『おい、いつまで呆けている気だ? そっちではなく、後ろを見ろ』

「え……?」

 心ここに有らずと言う状態で、言葉通り後ろを見る。すると、そこには端正でまるで彫刻のように思える顔立ちの男がいた。男は長いまつ毛を伏せていて、眠っているように見える。パッと見、男の俺すらドキッとするような美形である事は分かったが、いくつか見逃せない点があった――

 胸ぐらいまである艶やかな黒髪の間からひょっこり伸びだした二本の角と、下向きに生えている尖がった黒い耳。背中にある大きな黒い翼。ドラキュラをほうふつとさせるような黒く長いマント……そして極めつけは、その男の体が大きなアメジストのような硬い石の中に入っているという事――

 思わず石に触ってみるが、ひんやりしていてとても硬い。まるで美術品のようにそこにあるソレ……どこか妖しい美しさを秘めたソイツは、静かに言う。

『俺の名はミカゲだ』

「ミカゲ……?」

『貴様の名は何と言う?』

 今までとは違い、ゆっくりと囁くように頭の中に響く声……俺はその声に誘われるように口を開く。

真壁まかべひさし……」

『マカベ、ヒサシ…… 真壁まかべひさしーーか』

 ミカゲが名前を呼応した瞬間、しまったと思ったが、時すでに遅し――

 淡い紫色の光が溢れ、目を瞑った瞬間、カツンッという音がこだまする。
 光が弱まり、目を開くと、目の前の大きな石が消え、ミカゲがたたずんでいた。

 ゆっくりと目を開くミカゲ。その両目は、底冷えするような鮮やかなあか色をしていた。危険なのにその瞳を美しいと感じる。目を逸らさなければ呑まれてしまいそうなのに――逸らせない。

 そうやって呆然としている俺に、ミカゲはにんまりと笑う。

「永、貴様を我が主と認めてやる。この俺が主と認めたんだ。大いに感謝しろ!!!」

「…………は?」

 ミカゲに高らかに宣言され、さっきまでの呪縛から解き放たれるように疑問が口をつく。

「何を呆けている? この俺が、貴様ごときの下等な人間を主と認め、貴様の一生が終わるまで貴様を幸せにしてやると言っているのだ! 嬉しいだろう? 泣いて喜べ!! 歓喜しろ!!!」

 堂々と胸を張って言うミカゲに徐々に頭が鮮明になってくる。

「それって……まさか、俺に一生付きまとうって事か?」

「そういう言い方も出来るな! ……って、それでは俺がまるでストーカーみたいではないか!?」

(……のりツッコミ?)





 疑問はいろいろあるが、ミカゲ……こいつと話していて1つだけ確実に分かった事がある。

 こいつは――相当な俺様だ。




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