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8魔 ☆ 人間の心は難解②
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(人間の考え――もとい、心というものは難しくてよくわからん……やはり、もう少し情報を収集する必要があるようだな)
永が普通にレジをすませ商品を袋に入れようとした時、俺が使い魔を使って入れようとしたら、また怒鳴られた。人前で妙な力を使うな……と。しかも、レジ袋なるものを持ったまま永に蹴り飛ばされ、外へと出されていた。永はスーパーの近くに点在している店を回っているようで、俺はここで待っているのだが……なんだか、釈然としない。俺は人間という生き物を甘く見すぎていたのかもしれない。
(やはり、長年外に出ていなかった分、認識などに偏りがあるようだな。早々にこのブランクを埋めるためにも、情報収集を――)
考えを巡らしている途中で、足元に何かがあたった。
「?」
見ると、そこにはオレンジ色の何かが転がっていた。
(これは……みかん?)
確か、先ほどのスーパーで売っていたものだ。一つ手にとったところで、再びコロコロと複数のみかんが転がってきた。
「???」
とりあえず、全部のみかんを拾っていく。
「ああ、すみません。ありがとうございます」
ついで、妙齢の婦人が二輪車――いや、確か自転車というのだったな……を置き、こちらへとかけよってきた。
◇ ◇ ◇
(まったく……ミカゲのせいで余計に疲労が……)
全ての買い物を終え、ようやく外へと出る。もちろん、山歩きしやすいよう、買った物のほとんどはリュックの中だ。
(さて、諸悪の根源のミカゲは――)
「あらヤダ、ミカゲちゃんったらお世辞が上手いんだからあ!」
(そうそう、ミカゲちゃんは――って、は?)
俺は目の前の光景に呆然とした。俺の買い物中、邪魔をしてほしくがないために外で待たせていたミカゲ――そのミカゲが、なぜかおば様達に囲まれていた。
「世辞なんかではない。お前達のように生き生きした魂はそうそういないぞ? それこそ、死神も裸足で逃げ出すほどだ。老い先が短いなんて言うのはお前達自身に失礼だ」
「もう、ミカゲちゃんってば! でも、ありがとう。そうね、老い先短いなんて言うのはダメね。これからも元気で頑張るわ!」
開いた口が塞がらないとは、こういう状況の事を言うのだろう。
(いったいどうしてこうなった……? 誰か、説明をしてくれ――)
「あら、もうこんな時間!」
おば様達の一人が慌てたような声を発した。
「そろそろ行かなくちゃ、昼食作るの間に合わないわ」
「ああ、そうか。時間というものはあっという間に過ぎ去ってしまうな。また次の機会に話を聞かせてくれ」
ミカゲがおば様達にそんなことを言い、おば様たちも口々にミカゲへと言葉をかけ、去っていってしまった。
「ああ、永、もう買い物は終わったのか?」
「え? あ、ああ」
ミカゲが俺に気付き、こちらへと歩いてくる。先程の光景があまりにも衝撃的すぎて、俺の反応は少し遅れてしまった。
(こいつ、何を考えているんだ? そもそも、おば様達と何を話して――)
「永、その荷物、俺が持ってやろう」
「は?」
考えを巡らせている間に、ミカゲは俺が持っていた袋と背負っていたリュックを無理やり取り、さっさと歩いて行ってしまった。
「あ、え? おい!」
俺は急いでミカゲを追いかける。
「てか、いったい、何の話してたんだよ」
ミカゲへと追いついた俺は小声で奴へと話しかけた。
「世間話だ。永との会話で人間という生き物が難解だということがよく分かったからな。今の世の人間という生き物をもう少し知ろうと思ったのだ。いわゆる情報収集というやつだ」
「まあ、変なことしようとしたわけじゃないなら良いけど……何かあらぬ誤解を招くようなこと言ってないだろうな」
「別段変なことは言ってないぞ? ただ、永はよく怒鳴るとは言ったが――」
「何気に俺の近所評判落とすなよ! そのせいで、『ああ、あの子がミカゲちゃんの言うキレやすい子ね』って感じで見られたらどうするんだよ!」
「永がキレやすいのは事実ではないか。現に今、こうして怒っているだろう」
「それはお前が……はあ、もう良い。それよりも、その荷物返せ」
「俺がきちんと屋敷まで運んでやる。人間にはこの荷物も重いのであろう?」
「いいから返せ。俺は入学式まで体力つける必要があるんだから。いらないおせっかいだ。家出る時にも言っただろ?」
「ああ、そうだったな。人間とは、やはり難儀なものだな」
そう言って、ミカゲは荷物を返してくれた。たぶん、荷物を運ぶという行為もミカゲの優しさ(?)だったのだと思う。それは分かったのだが、ついつい嫌な言い方をしてしまった。
(ちょっと言いすぎたかな……)
心の中で反省しながらも、今更『ありがとう』や『優しさだけはもらっとく』などと言うのも気恥ずかしくて、帰り道は終始無言で歩いてきてしまった。
ほんと、変なところで素直になれない自分が嫌になるよ……。
ミカゲじゃないけど、人間……特に心というやつは――難解だ。
永が普通にレジをすませ商品を袋に入れようとした時、俺が使い魔を使って入れようとしたら、また怒鳴られた。人前で妙な力を使うな……と。しかも、レジ袋なるものを持ったまま永に蹴り飛ばされ、外へと出されていた。永はスーパーの近くに点在している店を回っているようで、俺はここで待っているのだが……なんだか、釈然としない。俺は人間という生き物を甘く見すぎていたのかもしれない。
(やはり、長年外に出ていなかった分、認識などに偏りがあるようだな。早々にこのブランクを埋めるためにも、情報収集を――)
考えを巡らしている途中で、足元に何かがあたった。
「?」
見ると、そこにはオレンジ色の何かが転がっていた。
(これは……みかん?)
確か、先ほどのスーパーで売っていたものだ。一つ手にとったところで、再びコロコロと複数のみかんが転がってきた。
「???」
とりあえず、全部のみかんを拾っていく。
「ああ、すみません。ありがとうございます」
ついで、妙齢の婦人が二輪車――いや、確か自転車というのだったな……を置き、こちらへとかけよってきた。
◇ ◇ ◇
(まったく……ミカゲのせいで余計に疲労が……)
全ての買い物を終え、ようやく外へと出る。もちろん、山歩きしやすいよう、買った物のほとんどはリュックの中だ。
(さて、諸悪の根源のミカゲは――)
「あらヤダ、ミカゲちゃんったらお世辞が上手いんだからあ!」
(そうそう、ミカゲちゃんは――って、は?)
俺は目の前の光景に呆然とした。俺の買い物中、邪魔をしてほしくがないために外で待たせていたミカゲ――そのミカゲが、なぜかおば様達に囲まれていた。
「世辞なんかではない。お前達のように生き生きした魂はそうそういないぞ? それこそ、死神も裸足で逃げ出すほどだ。老い先が短いなんて言うのはお前達自身に失礼だ」
「もう、ミカゲちゃんってば! でも、ありがとう。そうね、老い先短いなんて言うのはダメね。これからも元気で頑張るわ!」
開いた口が塞がらないとは、こういう状況の事を言うのだろう。
(いったいどうしてこうなった……? 誰か、説明をしてくれ――)
「あら、もうこんな時間!」
おば様達の一人が慌てたような声を発した。
「そろそろ行かなくちゃ、昼食作るの間に合わないわ」
「ああ、そうか。時間というものはあっという間に過ぎ去ってしまうな。また次の機会に話を聞かせてくれ」
ミカゲがおば様達にそんなことを言い、おば様たちも口々にミカゲへと言葉をかけ、去っていってしまった。
「ああ、永、もう買い物は終わったのか?」
「え? あ、ああ」
ミカゲが俺に気付き、こちらへと歩いてくる。先程の光景があまりにも衝撃的すぎて、俺の反応は少し遅れてしまった。
(こいつ、何を考えているんだ? そもそも、おば様達と何を話して――)
「永、その荷物、俺が持ってやろう」
「は?」
考えを巡らせている間に、ミカゲは俺が持っていた袋と背負っていたリュックを無理やり取り、さっさと歩いて行ってしまった。
「あ、え? おい!」
俺は急いでミカゲを追いかける。
「てか、いったい、何の話してたんだよ」
ミカゲへと追いついた俺は小声で奴へと話しかけた。
「世間話だ。永との会話で人間という生き物が難解だということがよく分かったからな。今の世の人間という生き物をもう少し知ろうと思ったのだ。いわゆる情報収集というやつだ」
「まあ、変なことしようとしたわけじゃないなら良いけど……何かあらぬ誤解を招くようなこと言ってないだろうな」
「別段変なことは言ってないぞ? ただ、永はよく怒鳴るとは言ったが――」
「何気に俺の近所評判落とすなよ! そのせいで、『ああ、あの子がミカゲちゃんの言うキレやすい子ね』って感じで見られたらどうするんだよ!」
「永がキレやすいのは事実ではないか。現に今、こうして怒っているだろう」
「それはお前が……はあ、もう良い。それよりも、その荷物返せ」
「俺がきちんと屋敷まで運んでやる。人間にはこの荷物も重いのであろう?」
「いいから返せ。俺は入学式まで体力つける必要があるんだから。いらないおせっかいだ。家出る時にも言っただろ?」
「ああ、そうだったな。人間とは、やはり難儀なものだな」
そう言って、ミカゲは荷物を返してくれた。たぶん、荷物を運ぶという行為もミカゲの優しさ(?)だったのだと思う。それは分かったのだが、ついつい嫌な言い方をしてしまった。
(ちょっと言いすぎたかな……)
心の中で反省しながらも、今更『ありがとう』や『優しさだけはもらっとく』などと言うのも気恥ずかしくて、帰り道は終始無言で歩いてきてしまった。
ほんと、変なところで素直になれない自分が嫌になるよ……。
ミカゲじゃないけど、人間……特に心というやつは――難解だ。
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