魔法使いの愛しの使い魔

雪音鈴

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☆ Familiar7☆ 悪夢

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 ああ、これは夢だ……
 それも、とびきりの悪夢だ――。




 私には先天性の能力で【夢見】というものが備わっている。魔法は後天性で魔力さえ供給できれば誰にでも使用できるが、この先天性の能力は生まれ持った性質で、半ば発作のように起こるため制御ができず、下手をすると死に至る病気のようなものだ。

 【夢見】という能力名だけ聞くと可愛らしいが、身近な誰か(経験上、クラスメイトや親類など、関わり合いが深い人物)の強い想いに反応して夢に見るのがこの能力の本質だ。その時、これが私の夢であり、誰かの現実であることが分かる。そして、私は――その誰かの現実の一場面を【体験】する。それがたとえ死の場面であったとしても……。

『苦、しッ――』

 目の前で笑う【誰か】に魔法の縄で首を絞められ、【私】は持ち上げられていた。【私】の手足は力なく垂れ下がり、口からは枯れた声と唾液が漏れる。私の心の声なのか夢見で同調してしまった相手の心の声なのかは分からないが、先程から痛い、苦しい、止めてという思考がグルグルと回る。

 肝心な首を絞めている【誰か】の声は聞こえないし、顔は見えない。どうやら、同調相手は【誰か】への心を閉ざすことでこの時間が過ぎるのを待っているようだ。そのことが伝わったのか、【誰か】が唾を飛ばしながら何かを言っている。やがて【誰か】が何か禍々しい水晶を持ち出し――

『…………助けて……』

「ナタリア!」

「ッ――カハッゴホゴホゴホッ――ハア、ハア、ハア?」

「ナタリア、大丈夫か!」

「グレッ――ス?」

「ああ、無理に話さなくていい。【夢見】だろ……」

 グレイスの言葉にコクリと頷くと、彼は私以上に苦しそうに顔を歪めた。

「なんで――俺じゃなく、お前が苦しい目に合わなくちゃいけないんだ……全て肩代わりできたら、どんなにッ――」

 私の両肩に置かれた彼の手に、グッと力が加わる。私を大切に思ってくれる彼の心が痛いほど伝わり(わりと本気で肩も痛い)、心が温かくなる。思わずその衝動のままグレイスに抱きつき、彼の強張った背をポンポンと優しく叩く。

「??? ナタリア?」

(こんな能力を持っているのが私で良かったよ……グレイス。グレイスにこんな苦しみを負わせたくないのは、私だって同じなんだから)

 喉は痛いし、あの今にも消え入りそうな助けを求める想いもまだ頭の中にこびりついて離れない。先程の夢から伝わってきた孤独と不安が入り混じった感情のせいで、後から後から涙が溢れ出てしまい止まらない。

(怖かった――あれが現実だなんて思いたくない。ずっと、知らないままでいたかった)

 体の震えが止まらない。あれは私が見てはいけない世界だったのかもしれない。

 でも……私にはあの子の心の声が聞こえた。あの子の気持ちが伝わった。あの子が苦しんでいることを――助けを求めていることを知った。

 だから……このまま知らないふりはできない。見て見ぬふりは――できない。
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