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☆ Familiar14 ☆ 悪夢は終わらない
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ピピピピ、ピピピピ、ピピピピッッ――
「ハッ! 敵襲だ!」
眠りかけていた私の耳に届いた音に反応し、顔をあげると、バシッと良い感じに頭を叩かれた。
「ナタリア=クライシスウゥゥ」
地を這うような低い声に、頬が引きつる。
ピピピピ、ピピッ――ゴキャ――メキ――
無情にも魔法によって出現した黒い蛇に締め潰されたひよこ型の魔法具が、コロンと机に転がる。
「きょ、今日もご機嫌麗しゅうございますです。ベルデアンヌ先生」
「ナタリア=クライシス、次はあなたがこうなりますよ?」
キッと最後に強く睨まれ、私は頭がクラクラするほど高速でその言葉に頷いた。それ以降は先程のアラームも気になり、居眠りはしなかった。
「ナタリア、大丈夫?」
「びっくりしたけど、大丈夫……それからね、ようやく奴を捕まえたわよ!」
「奴――?」
困惑するリリアンを半ば引きずるように下駄箱へと連れていくと、床に散らばった黒い紙の上でモゴモゴと動く大きな白い繭があった。
この繭こそ、私が早朝から仕掛けておいた魔法トラップだ。ニヤリと笑い、繭の先端をガシッと掴む。
「さあ、シリル、観念しなさい!」
そのまま繭をベリッと破ると、高級そうな黒い革靴が出てきた……。
しばしの(気まずい)沈黙の後、気を取り直してもう一方の先端を破ると、ようやくもさもさした茶髪が見えた。
「は? 茶髪? あんた誰よ? まさか、シリルの使い魔?」
プハッと顔を出した青年に思わずガンを飛ばすと、彼は身を縮こまらせた。プルプルと震える青年を見ていると、まるで私が悪者のように見えて気にくわないが、筋は通さなくてはいけない。どうしたものかとため息をついた時、一緒にいたリリアンが「あれ?」と声を上げた。
「あなた――もしかして、アルテナ様の……?」
「リリアン、こいつのこと知ってるの?」
「知り合いではないけど……この人の胸のリボンについている月の家紋が――」
「ももも、申し訳ありませんでしたああぁぁ!!!」
白い繭に包まれた体のまま、器用に額を地面にこすり付けて土下座のようなポーズをとった茶髪男が、震える声をあげながら何度も床に額をぶつける。
「すみません。すみません。すみ――」
「やめんかい!」
魔力で編んだ縄で男を縛り、頭をあげさせる。もっさりした髪のせいで男の目は見えないが、怯えた雰囲気でこちらを見つめているのが分かった。
「あんた、アルテナが部屋に閉じ込めてるっていう使い魔?」
「閉じ込めてるなんて、そんな! ご主人様は、ぼぼぼ、僕のために――」
「ああ、うん。それはいいから、名前となんでこんなことしたのか教えなさい」
「……な、名前はカイン=ロマグレン――で、です。あの、こここ、これは、僕の意思でやったことで、ご主人様は関係なくって……僕は、ただ、ご、ご主人様の望みを叶えてあげたくて、笑ってほしくって……」
「は?」
「だ、だって、あなたはいつもグレイス様と一緒だし、その、だから、少しでも、は、離れてくれれば、ご主人様が望むように、お、お茶会に参加してくれるかもって……」
「お茶会?」
「うん、ご、ご主人様の選んだ服を着て、甘いお菓子においしい紅茶を飲んで、ご主人様の話を聞いて――」
「はああああ……そんな理由で――」
「そんな理由? そそそ、それこそが僕の生きる理由なんです! ご主人様の願いを叶えることで、初めて僕の存在が肯定されるんです! ああ、そう! 僕のすべてはご主人様のために!!!」
恍惚とした表情(前髪のせいでよくは見えないが、おそらくそう)を浮かべて熱く語るカインのパートナーへの依存度具合に少々引きながらも、私は決意した。
「ああ――もう、分かった。アルテナの願いとやら、私からもグレイスに頼んであげる。だから、もう、こんな脅迫状まがいのことやめてちょうだい」
「い、良いんですか!?」
「誰かのためにっていう気持ちは分かるから……ね。ただ、もう、アルテナのために暴走するのはこれっきりにしてね? あんた鈍臭そうだし、温室育ちすぎて世間知らずっぽいし、今回のやり口もただのイタズラレベルというか――」
「ナ、ナタリア、もう、それくらいでやめてあげたら? カイン様のライフが……」
リリアンの制止の声にカインを見ると、彼はいつの間にか「ぼ、僕なんて……」と言いながら、めそめそと泣いていた。
(やっぱり、お願いなんて聞かずに制裁を加えるべきだったかな……正直、こいつ、面倒くさい――)
★ ★ ★
ようやく放課後になり、うーんと伸びをする。今日のホームルームが早く終わってしまったため、グレイスの迎えに出るにはまだ少し早い。
(それにしても、犯人捕まえられて良かったなあ。まあ、グレイスへの報告とか、アルテナのお茶会があるから憂鬱ではあるけど……あーあ、グレイス、お茶会出てくれるかな?)
グレイスが社交的なところを想像できず、思わず苦笑がもれてしまう。そんな時、ポンッと誰かに肩を叩かれる。
「シリル様が今、学校へ来るようです。急な連絡で私も少々戸惑っておりますが、貴方達も気をつけて下さい」
スッと音もなく離れていくアローナの後ろ姿を見つめながら、彼女の助言に感謝する。
「ね、ねぇ、ナタリア……」
「あ、リリアン――って、顔色悪いけど、大丈夫?」
「う、ん……ちょっと、まだ本調子じゃないみたいで――あのね、今日はなんだかすごく嫌な予感がするの……だから、ナタリア、あなたは早く帰――」
リリアンのか細い声をかき消すように響いた爆発音に、残っていた生徒達が騒ぎ出す。何事かと窓の外を見れば、魔法使いの学校の方から黒い煙が上がっているのが見えた。
「グレイスッ!」
慌てて駆け出そうとすると、グニャリと空間が歪んだ。何事かと辺りを見回すと、黒く塗りつぶされていく視界の端に驚くリリアンの顔があった……。
「ここ……どこ?」
目の前にあるのは暗闇だけ――しかし、先程の感覚は分かっている。あの魔法は空間移動だ。しかも、感知できた魔力量からそれほど遠くには来ていないことが分かる。
「倉庫か何かかな……」
光の差さない闇の中で、自分が目を開けているのかさえ分からなくなってくる。とりあえず、明かりが必要だ。短く呪文を呟き、魔法で光の球を形成する。その瞬間、背後に誰かの気配を感じ、バッと振り返る。
振り返った瞬間、目の前にあった白い狐面に驚いていると、顔に何かスプレーをかけられ、一気に眠気が増す。最後の力を振り絞り、狐面に向けて攻撃を仕掛けようとするが、魔力が上手く流れず、狐面の喉元をひっかくような形になった。
赤い何かが舞い、首元の縄の締め痕と黒い首輪のような呪術の刻印が目に焼き付く。私は眠りの淵へと落ちていきながら、そっと涙をこぼした。どうせ眠るのなら――夢など見ないほど、深く深く眠ってしまいたかった……。
「ハッ! 敵襲だ!」
眠りかけていた私の耳に届いた音に反応し、顔をあげると、バシッと良い感じに頭を叩かれた。
「ナタリア=クライシスウゥゥ」
地を這うような低い声に、頬が引きつる。
ピピピピ、ピピッ――ゴキャ――メキ――
無情にも魔法によって出現した黒い蛇に締め潰されたひよこ型の魔法具が、コロンと机に転がる。
「きょ、今日もご機嫌麗しゅうございますです。ベルデアンヌ先生」
「ナタリア=クライシス、次はあなたがこうなりますよ?」
キッと最後に強く睨まれ、私は頭がクラクラするほど高速でその言葉に頷いた。それ以降は先程のアラームも気になり、居眠りはしなかった。
「ナタリア、大丈夫?」
「びっくりしたけど、大丈夫……それからね、ようやく奴を捕まえたわよ!」
「奴――?」
困惑するリリアンを半ば引きずるように下駄箱へと連れていくと、床に散らばった黒い紙の上でモゴモゴと動く大きな白い繭があった。
この繭こそ、私が早朝から仕掛けておいた魔法トラップだ。ニヤリと笑い、繭の先端をガシッと掴む。
「さあ、シリル、観念しなさい!」
そのまま繭をベリッと破ると、高級そうな黒い革靴が出てきた……。
しばしの(気まずい)沈黙の後、気を取り直してもう一方の先端を破ると、ようやくもさもさした茶髪が見えた。
「は? 茶髪? あんた誰よ? まさか、シリルの使い魔?」
プハッと顔を出した青年に思わずガンを飛ばすと、彼は身を縮こまらせた。プルプルと震える青年を見ていると、まるで私が悪者のように見えて気にくわないが、筋は通さなくてはいけない。どうしたものかとため息をついた時、一緒にいたリリアンが「あれ?」と声を上げた。
「あなた――もしかして、アルテナ様の……?」
「リリアン、こいつのこと知ってるの?」
「知り合いではないけど……この人の胸のリボンについている月の家紋が――」
「ももも、申し訳ありませんでしたああぁぁ!!!」
白い繭に包まれた体のまま、器用に額を地面にこすり付けて土下座のようなポーズをとった茶髪男が、震える声をあげながら何度も床に額をぶつける。
「すみません。すみません。すみ――」
「やめんかい!」
魔力で編んだ縄で男を縛り、頭をあげさせる。もっさりした髪のせいで男の目は見えないが、怯えた雰囲気でこちらを見つめているのが分かった。
「あんた、アルテナが部屋に閉じ込めてるっていう使い魔?」
「閉じ込めてるなんて、そんな! ご主人様は、ぼぼぼ、僕のために――」
「ああ、うん。それはいいから、名前となんでこんなことしたのか教えなさい」
「……な、名前はカイン=ロマグレン――で、です。あの、こここ、これは、僕の意思でやったことで、ご主人様は関係なくって……僕は、ただ、ご、ご主人様の望みを叶えてあげたくて、笑ってほしくって……」
「は?」
「だ、だって、あなたはいつもグレイス様と一緒だし、その、だから、少しでも、は、離れてくれれば、ご主人様が望むように、お、お茶会に参加してくれるかもって……」
「お茶会?」
「うん、ご、ご主人様の選んだ服を着て、甘いお菓子においしい紅茶を飲んで、ご主人様の話を聞いて――」
「はああああ……そんな理由で――」
「そんな理由? そそそ、それこそが僕の生きる理由なんです! ご主人様の願いを叶えることで、初めて僕の存在が肯定されるんです! ああ、そう! 僕のすべてはご主人様のために!!!」
恍惚とした表情(前髪のせいでよくは見えないが、おそらくそう)を浮かべて熱く語るカインのパートナーへの依存度具合に少々引きながらも、私は決意した。
「ああ――もう、分かった。アルテナの願いとやら、私からもグレイスに頼んであげる。だから、もう、こんな脅迫状まがいのことやめてちょうだい」
「い、良いんですか!?」
「誰かのためにっていう気持ちは分かるから……ね。ただ、もう、アルテナのために暴走するのはこれっきりにしてね? あんた鈍臭そうだし、温室育ちすぎて世間知らずっぽいし、今回のやり口もただのイタズラレベルというか――」
「ナ、ナタリア、もう、それくらいでやめてあげたら? カイン様のライフが……」
リリアンの制止の声にカインを見ると、彼はいつの間にか「ぼ、僕なんて……」と言いながら、めそめそと泣いていた。
(やっぱり、お願いなんて聞かずに制裁を加えるべきだったかな……正直、こいつ、面倒くさい――)
★ ★ ★
ようやく放課後になり、うーんと伸びをする。今日のホームルームが早く終わってしまったため、グレイスの迎えに出るにはまだ少し早い。
(それにしても、犯人捕まえられて良かったなあ。まあ、グレイスへの報告とか、アルテナのお茶会があるから憂鬱ではあるけど……あーあ、グレイス、お茶会出てくれるかな?)
グレイスが社交的なところを想像できず、思わず苦笑がもれてしまう。そんな時、ポンッと誰かに肩を叩かれる。
「シリル様が今、学校へ来るようです。急な連絡で私も少々戸惑っておりますが、貴方達も気をつけて下さい」
スッと音もなく離れていくアローナの後ろ姿を見つめながら、彼女の助言に感謝する。
「ね、ねぇ、ナタリア……」
「あ、リリアン――って、顔色悪いけど、大丈夫?」
「う、ん……ちょっと、まだ本調子じゃないみたいで――あのね、今日はなんだかすごく嫌な予感がするの……だから、ナタリア、あなたは早く帰――」
リリアンのか細い声をかき消すように響いた爆発音に、残っていた生徒達が騒ぎ出す。何事かと窓の外を見れば、魔法使いの学校の方から黒い煙が上がっているのが見えた。
「グレイスッ!」
慌てて駆け出そうとすると、グニャリと空間が歪んだ。何事かと辺りを見回すと、黒く塗りつぶされていく視界の端に驚くリリアンの顔があった……。
「ここ……どこ?」
目の前にあるのは暗闇だけ――しかし、先程の感覚は分かっている。あの魔法は空間移動だ。しかも、感知できた魔力量からそれほど遠くには来ていないことが分かる。
「倉庫か何かかな……」
光の差さない闇の中で、自分が目を開けているのかさえ分からなくなってくる。とりあえず、明かりが必要だ。短く呪文を呟き、魔法で光の球を形成する。その瞬間、背後に誰かの気配を感じ、バッと振り返る。
振り返った瞬間、目の前にあった白い狐面に驚いていると、顔に何かスプレーをかけられ、一気に眠気が増す。最後の力を振り絞り、狐面に向けて攻撃を仕掛けようとするが、魔力が上手く流れず、狐面の喉元をひっかくような形になった。
赤い何かが舞い、首元の縄の締め痕と黒い首輪のような呪術の刻印が目に焼き付く。私は眠りの淵へと落ちていきながら、そっと涙をこぼした。どうせ眠るのなら――夢など見ないほど、深く深く眠ってしまいたかった……。
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