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☆ Familiar21 ☆ 愛しい想い
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「はあああぁぁぁ、ようやくお家だあ」
ボフンとソファーにダイブすると、それを見計らったかのようにキーンという音が鳴る。
「セシリア様からの通信のようだな」
魔鏡を確認したグレイスの声に渋々と起き上がり目をこする。
「お母様から?」
「今回は学校側にも迷惑をかけたからな。もしかしたら、その関係での連絡かもしれない」
「お母様がそんなことを考えるかしら? きっとまたお父様がどうのって話に決まってるわ」
「なら、通信に出ないで寝るか?」
「…………出る。眠いけど」
私の返答にグレイスは「そう言うと思った」とでも言いたげに優しく目を細めた。
通信を繋げると、銀の髪を緩く巻き、赤い目を輝かせる母が映った。
「ああ、ナタリアちゃん、グレイスちゃん、元気にしてたかしら?」
ニコニコ笑う母の言葉に思わず苦笑してしまう。
「ねぇ、お母様、そろそろグレイス『ちゃん』はやめない? グレイスも大きくなったんだし」
「いくら大きくなってもあなた達は私にとっての大切な子供よ。それはずーっと変わらないわ」
優しく笑う母に押され負けてしまう。
さすが母と言わざるを得ない。
「そうそう、ナタリアちゃん、実は秘境に行っていたターナーから写真が届いたの!!」
「ああ、やっぱりお父様絡みなのね」
「ほら、見て! シンシアが撮ってくれたみたいなの!!」
太陽に透けた金色の髪に、金色の瞳を輝かせながら大きな卵を抱えるお父様の元気すぎる姿に、思わず笑みがこぼれる。
銀色に金の星のような模様が散りばめられた卵は、図鑑でも見たことがない。新たな発見にテンションMAXのお父様の姿が容易に想像できるが、成人男性サイズの卵を上に掲げるようにポーズを決めている別の写真に、おっちょこちょいなお父様がウッカリ卵を落としてしまわなかったか心配になったのは――うん……日頃のそそっかしさのせいだから仕方ないだろう。
その他にもたくさんの写真があったが、全てお父様の写真ばかりだった。お父様の使い魔であるシンシア様は、写真を撮ることに専念していたようだ。
(お父様は夢中になると周りが見えなくなっちゃうからなあ……今度、シンシア様のことをもっと気に掛けるように言わなくちゃ! まあ、でも――)
「お父様もシンシア様も元気そうで何よりだわ。あ、そう言えば、今回はクラウス様にたくさん迷惑かけちゃったから、今度お土産持ってそっちに行くね」
「うふふ、ありがとう。実は今ね、たくさん頑張ってくれたクラウスのために料理を作ってるの」
「お母様、それは逆効果じゃ――って、あれ? 調理器具は?」
(クラウス様との約束で教えてなかったはずだけど……)
「ああ、そうなのよ~。実は見当たらなくてね、仕方ないから今は工具を使っているの」
「工具ッ!?」
「ああ、心配しなくても大丈夫よ。念入りに錆を落として、抗菌加工もバッチリにしたからとっても衛生的よ☆」
「待って、色々待って! まず、調理器具なきゃ諦めるか新しいの買うとかあるでしょ!?」
「貴女もだけど、私も諦めが悪くって挑戦するのが大好きなのよ。良い経験になったわ。以外と美味しそうに出来そうよ? あ、良かったら今度貴女達にも――」
ドゴンッ――ガ、ガガガ――
「ああ、ちょうどできたみたいね♪」
「いやいやいや、今の料理完成の音じゃなかったよね!? もはや器物破損の音だったよね!?」
「ッ――セシリア!? またか!? またなのか!?」
私のツッコミに被さるように、帰宅したらしいクラウス様の焦った声が遠くで聞こえ、頭を抱えたくなる。
「クラウスも帰ってきたみたいだから、これから夕飯にするわね。それじゃあ、また近いうちに☆ ああ、それから、私の愛しい愛しいナタリアちゃんにグレイスちゃん、体には充分気をつけてね!」
プツンッ――と消えた鏡面の母の姿に、思わず遠い目をしてしまう。
(お母様、たぶん夕飯にありつけるのはまだ先のようよ)
「相変わらずセシリア様は元気だな」
「そうね、クラウス様の苦労を思うと心苦しいほどに……ね」
「親父のことは気にするな。所詮、使い魔は魔法使いに使われることで生きている意味を見いだせる存在だ」
「グレイス」
「……すまん、今のは失言だった」
私の低い声にグレイスが罰の悪そうな顔をした。グレイスが私の願いを叶えるために魔法使いと使い魔が肩を並べて歩ける未来を作ろうとしているのは知っていた。
でも、それでも……やはり、彼の口から隷属的な意味合いの言葉が漏れでてきたことに胸が痛む。
「使い魔が独自に考えて動けるのは魔法使いに効率よく使われるためじゃないわ。魔法使いだとか使い魔だとかは関係ない。体を動かすエネルギー源がちょっと違うだけで私もグレイスも同じよ。だから――」
彼の考えを根本から全て変えるのはまだ無理だが、少しでも私の気持ちを伝えたい。今まで怖くて言えなかった言葉――それを紡ごうと決意を固め、震える手でグレイスの服の裾をキュッと握る。
「恋愛も自由……私はグレイスが大大大っっっ好きだけど、グレイスに好きな人がいるなら、想う相手がいるなら――私のこと、振っても良いんだよ? だからさ、もう悲しい顔で笑わないでよ。無理に応えようとしなくて良いよ」
彼の瞳を真っ直ぐと見つめる。私は上手く笑えているだろうか?
「魔法使いと使い魔の絆がたとえ切れてなくても、私はグレイスを束縛したくない」
グレイスの瞳が揺れる。
私の覚悟と想いは少なからず伝わったらしい。
やがてゆっくりと息を吐き出した彼が掠れた声を発した。
「お前の【好き】は魔法使いと使い魔の絆から来る依存性によるものだ」
「最初はそうだったかもしれないわ……でも、今は違う。たとえこの絆が切れても私は――」
「まやかしだ。切れた途端に夢は覚める」
冷たく突き放す言葉に、苛立ちと悲しみが込み上げてくる。
「私の想いまで否定しないで!!! なんでちゃんと向き合ってくれないの!?」
「向き合えば――」
急に距離を詰めてきたグレイスの鼻先が目の前に迫り、ドキリとする。
「もう逃がしてやれなくなる」
いつの間にか捕まれていた手首が熱い。
「ナタリア、今、お前の想いに応えてしまえば、俺は後戻りできなくなる。きっとお前が嫌がろうとお前を束縛してしまう。たとえ絆が切れようと――いや、切れてしまえばより一層歯止めがきかずにお前をがんじがらめに捕らえて逃がせなくなる。だから……」
初めはグレイスの言葉の意味が分からず、ただただ間近に迫ったその端正なお顔を見つめてしまっていたが、ようやく内容が飲み込めてきた。
理解が追い付いてきたのに同調するように鼓動が速くなり、頬が熱くなっていく。
(つまり――つまりはッ――)
「グレイス!」
私は衝動を押さえきれず、飛び付くようにして彼の唇を奪った。勢い余って微妙に歯がぶつかった気がしたが気にしてられない。
「両想い!? これって両想いなんだよね!?」
「ナタリア、俺の話を聞いてたか?」
「聞いてたよ!! グレイス、グレイス! 私はグレイスになら束縛されても良いよ!! がんじがらめでも、なんなら檻の中でも!!! まあ、退屈で抜け出しちゃう時はあるかもだけど、ちゃんと帰ってくるし、うん!」
私の反応にグレイスは深いため息をついた。
(なぜにその反応?)
「お前は分かっていない。俺の執着を」
「分かってッ――」
意地になって言い返そうとした途端、顎をクイッと上げられ口を塞がれた。
「ンッ――」
さっきの事故みたいな一瞬とは違うグレイスからのキスに、体が沸騰したように熱くなる。
「ンッ!? ンンンンンッ――!!」
続く第二撃、第三撃に呼吸が苦しくなってきて、足元がふらつく。
第四撃、第五撃あたりになると、足腰が完全に立たなくなり、グレイスに抱えられた状態で必死に空気を求めて水泳の息継ぎよろしくアップアップ。
第六撃、第七撃ではもはや成されるがまま意識だけは手放すまいと頑張った。
そうしてようやく解放された時、グレイスが生理的に溢れた私の涙をすくった。
「お前は何も分かっちゃいない。お前の好きと俺の好きは根本的に違う。だから煽るな」
濡れた唇が妖艶に輝き、濡れた瞳が熱くこちらを見つめる。
グレイスの色気だだ漏れ状態を近距離で浴びた私は、息も絶え絶えで謝った。
「はひ、すみまへんでひた」
その後、生まれたての小鹿のように足がプルプルの私をグレイスはベッドまで楽々と運んでくれた。ベッドの上で一人になると、あのキスは幻だったかのように思えてきたが、唇の感触と立たない足腰があれが現実であったことを証明している。
「うぅ、グレイスの意地悪」
確かに私の好きはグレイスのそれに比べたらまだまだ幼稚かもしれない。でも――
「今日は色々あってはぐらかされちゃったけど、両想いだってのは分かったし、今後は遠慮なんかしないでガンガン攻めていくもんね! 見てなさいよ、グレイス!! こんなことぐらいじゃ諦めないんだから!!! そう、こんな、こんな――うぅ、グレイスめ、なんであんなに手慣れてんのよ!?」
~グレイス視点~
(やってしまった……)
ナタリアをベッドまで運んだ後、俺はリビングで明日の朝食の準備をしながら反省していた。
まだ熱をもった唇にそっと触れれば、ナタリアの感触を思い出してしまう。
慣れないキスに必死に応えてくれる彼女の姿が可愛すぎてやめ時が分からずついついその感触を貪ってしまった。
(伝わってしまった……ナタリアへの想いが)
そのことが嬉しいと思ってしまう自分に苛立ちを感じる。
(本当に俺は使い魔失格だ。パートナーの為ではなく、いつも俺自身のことばかりで……だが――)
「ナタリア、こんな俺でもお前を愛して良いだろうか? お前の愛に応えて良いのだろうか?」
こうして今日も魔法使いは愛しい使い魔のことを想い、使い魔も愛しい魔法使いのことを想う。
ボフンとソファーにダイブすると、それを見計らったかのようにキーンという音が鳴る。
「セシリア様からの通信のようだな」
魔鏡を確認したグレイスの声に渋々と起き上がり目をこする。
「お母様から?」
「今回は学校側にも迷惑をかけたからな。もしかしたら、その関係での連絡かもしれない」
「お母様がそんなことを考えるかしら? きっとまたお父様がどうのって話に決まってるわ」
「なら、通信に出ないで寝るか?」
「…………出る。眠いけど」
私の返答にグレイスは「そう言うと思った」とでも言いたげに優しく目を細めた。
通信を繋げると、銀の髪を緩く巻き、赤い目を輝かせる母が映った。
「ああ、ナタリアちゃん、グレイスちゃん、元気にしてたかしら?」
ニコニコ笑う母の言葉に思わず苦笑してしまう。
「ねぇ、お母様、そろそろグレイス『ちゃん』はやめない? グレイスも大きくなったんだし」
「いくら大きくなってもあなた達は私にとっての大切な子供よ。それはずーっと変わらないわ」
優しく笑う母に押され負けてしまう。
さすが母と言わざるを得ない。
「そうそう、ナタリアちゃん、実は秘境に行っていたターナーから写真が届いたの!!」
「ああ、やっぱりお父様絡みなのね」
「ほら、見て! シンシアが撮ってくれたみたいなの!!」
太陽に透けた金色の髪に、金色の瞳を輝かせながら大きな卵を抱えるお父様の元気すぎる姿に、思わず笑みがこぼれる。
銀色に金の星のような模様が散りばめられた卵は、図鑑でも見たことがない。新たな発見にテンションMAXのお父様の姿が容易に想像できるが、成人男性サイズの卵を上に掲げるようにポーズを決めている別の写真に、おっちょこちょいなお父様がウッカリ卵を落としてしまわなかったか心配になったのは――うん……日頃のそそっかしさのせいだから仕方ないだろう。
その他にもたくさんの写真があったが、全てお父様の写真ばかりだった。お父様の使い魔であるシンシア様は、写真を撮ることに専念していたようだ。
(お父様は夢中になると周りが見えなくなっちゃうからなあ……今度、シンシア様のことをもっと気に掛けるように言わなくちゃ! まあ、でも――)
「お父様もシンシア様も元気そうで何よりだわ。あ、そう言えば、今回はクラウス様にたくさん迷惑かけちゃったから、今度お土産持ってそっちに行くね」
「うふふ、ありがとう。実は今ね、たくさん頑張ってくれたクラウスのために料理を作ってるの」
「お母様、それは逆効果じゃ――って、あれ? 調理器具は?」
(クラウス様との約束で教えてなかったはずだけど……)
「ああ、そうなのよ~。実は見当たらなくてね、仕方ないから今は工具を使っているの」
「工具ッ!?」
「ああ、心配しなくても大丈夫よ。念入りに錆を落として、抗菌加工もバッチリにしたからとっても衛生的よ☆」
「待って、色々待って! まず、調理器具なきゃ諦めるか新しいの買うとかあるでしょ!?」
「貴女もだけど、私も諦めが悪くって挑戦するのが大好きなのよ。良い経験になったわ。以外と美味しそうに出来そうよ? あ、良かったら今度貴女達にも――」
ドゴンッ――ガ、ガガガ――
「ああ、ちょうどできたみたいね♪」
「いやいやいや、今の料理完成の音じゃなかったよね!? もはや器物破損の音だったよね!?」
「ッ――セシリア!? またか!? またなのか!?」
私のツッコミに被さるように、帰宅したらしいクラウス様の焦った声が遠くで聞こえ、頭を抱えたくなる。
「クラウスも帰ってきたみたいだから、これから夕飯にするわね。それじゃあ、また近いうちに☆ ああ、それから、私の愛しい愛しいナタリアちゃんにグレイスちゃん、体には充分気をつけてね!」
プツンッ――と消えた鏡面の母の姿に、思わず遠い目をしてしまう。
(お母様、たぶん夕飯にありつけるのはまだ先のようよ)
「相変わらずセシリア様は元気だな」
「そうね、クラウス様の苦労を思うと心苦しいほどに……ね」
「親父のことは気にするな。所詮、使い魔は魔法使いに使われることで生きている意味を見いだせる存在だ」
「グレイス」
「……すまん、今のは失言だった」
私の低い声にグレイスが罰の悪そうな顔をした。グレイスが私の願いを叶えるために魔法使いと使い魔が肩を並べて歩ける未来を作ろうとしているのは知っていた。
でも、それでも……やはり、彼の口から隷属的な意味合いの言葉が漏れでてきたことに胸が痛む。
「使い魔が独自に考えて動けるのは魔法使いに効率よく使われるためじゃないわ。魔法使いだとか使い魔だとかは関係ない。体を動かすエネルギー源がちょっと違うだけで私もグレイスも同じよ。だから――」
彼の考えを根本から全て変えるのはまだ無理だが、少しでも私の気持ちを伝えたい。今まで怖くて言えなかった言葉――それを紡ごうと決意を固め、震える手でグレイスの服の裾をキュッと握る。
「恋愛も自由……私はグレイスが大大大っっっ好きだけど、グレイスに好きな人がいるなら、想う相手がいるなら――私のこと、振っても良いんだよ? だからさ、もう悲しい顔で笑わないでよ。無理に応えようとしなくて良いよ」
彼の瞳を真っ直ぐと見つめる。私は上手く笑えているだろうか?
「魔法使いと使い魔の絆がたとえ切れてなくても、私はグレイスを束縛したくない」
グレイスの瞳が揺れる。
私の覚悟と想いは少なからず伝わったらしい。
やがてゆっくりと息を吐き出した彼が掠れた声を発した。
「お前の【好き】は魔法使いと使い魔の絆から来る依存性によるものだ」
「最初はそうだったかもしれないわ……でも、今は違う。たとえこの絆が切れても私は――」
「まやかしだ。切れた途端に夢は覚める」
冷たく突き放す言葉に、苛立ちと悲しみが込み上げてくる。
「私の想いまで否定しないで!!! なんでちゃんと向き合ってくれないの!?」
「向き合えば――」
急に距離を詰めてきたグレイスの鼻先が目の前に迫り、ドキリとする。
「もう逃がしてやれなくなる」
いつの間にか捕まれていた手首が熱い。
「ナタリア、今、お前の想いに応えてしまえば、俺は後戻りできなくなる。きっとお前が嫌がろうとお前を束縛してしまう。たとえ絆が切れようと――いや、切れてしまえばより一層歯止めがきかずにお前をがんじがらめに捕らえて逃がせなくなる。だから……」
初めはグレイスの言葉の意味が分からず、ただただ間近に迫ったその端正なお顔を見つめてしまっていたが、ようやく内容が飲み込めてきた。
理解が追い付いてきたのに同調するように鼓動が速くなり、頬が熱くなっていく。
(つまり――つまりはッ――)
「グレイス!」
私は衝動を押さえきれず、飛び付くようにして彼の唇を奪った。勢い余って微妙に歯がぶつかった気がしたが気にしてられない。
「両想い!? これって両想いなんだよね!?」
「ナタリア、俺の話を聞いてたか?」
「聞いてたよ!! グレイス、グレイス! 私はグレイスになら束縛されても良いよ!! がんじがらめでも、なんなら檻の中でも!!! まあ、退屈で抜け出しちゃう時はあるかもだけど、ちゃんと帰ってくるし、うん!」
私の反応にグレイスは深いため息をついた。
(なぜにその反応?)
「お前は分かっていない。俺の執着を」
「分かってッ――」
意地になって言い返そうとした途端、顎をクイッと上げられ口を塞がれた。
「ンッ――」
さっきの事故みたいな一瞬とは違うグレイスからのキスに、体が沸騰したように熱くなる。
「ンッ!? ンンンンンッ――!!」
続く第二撃、第三撃に呼吸が苦しくなってきて、足元がふらつく。
第四撃、第五撃あたりになると、足腰が完全に立たなくなり、グレイスに抱えられた状態で必死に空気を求めて水泳の息継ぎよろしくアップアップ。
第六撃、第七撃ではもはや成されるがまま意識だけは手放すまいと頑張った。
そうしてようやく解放された時、グレイスが生理的に溢れた私の涙をすくった。
「お前は何も分かっちゃいない。お前の好きと俺の好きは根本的に違う。だから煽るな」
濡れた唇が妖艶に輝き、濡れた瞳が熱くこちらを見つめる。
グレイスの色気だだ漏れ状態を近距離で浴びた私は、息も絶え絶えで謝った。
「はひ、すみまへんでひた」
その後、生まれたての小鹿のように足がプルプルの私をグレイスはベッドまで楽々と運んでくれた。ベッドの上で一人になると、あのキスは幻だったかのように思えてきたが、唇の感触と立たない足腰があれが現実であったことを証明している。
「うぅ、グレイスの意地悪」
確かに私の好きはグレイスのそれに比べたらまだまだ幼稚かもしれない。でも――
「今日は色々あってはぐらかされちゃったけど、両想いだってのは分かったし、今後は遠慮なんかしないでガンガン攻めていくもんね! 見てなさいよ、グレイス!! こんなことぐらいじゃ諦めないんだから!!! そう、こんな、こんな――うぅ、グレイスめ、なんであんなに手慣れてんのよ!?」
~グレイス視点~
(やってしまった……)
ナタリアをベッドまで運んだ後、俺はリビングで明日の朝食の準備をしながら反省していた。
まだ熱をもった唇にそっと触れれば、ナタリアの感触を思い出してしまう。
慣れないキスに必死に応えてくれる彼女の姿が可愛すぎてやめ時が分からずついついその感触を貪ってしまった。
(伝わってしまった……ナタリアへの想いが)
そのことが嬉しいと思ってしまう自分に苛立ちを感じる。
(本当に俺は使い魔失格だ。パートナーの為ではなく、いつも俺自身のことばかりで……だが――)
「ナタリア、こんな俺でもお前を愛して良いだろうか? お前の愛に応えて良いのだろうか?」
こうして今日も魔法使いは愛しい使い魔のことを想い、使い魔も愛しい魔法使いのことを想う。
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