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コーヒーの苦み……小瀬さん、あなたは――
しおりを挟む「す、すみません。ご迷惑をおかけしてしまって……」
小瀬が箒を動かしながら再度謝ってくる。
現在、僕達は小瀬の研究室に散らばったコーヒー豆を片付けているところである。小瀬に気にしないで下さいと、軽く返しながら、高杉と別れた後の事を思い出す。
屋上を後にした僕達は、研究棟の方に行こうと階段を下りていた。
しかし、そこへ小さな悲鳴と何かが割れる音が聞こえ、何事かと急いで小瀬の研究室を覗いてみると……この状況。そう、小瀬がコーヒー豆のビンを割ってしまっていたのである。
(ここまで来たのに見捨てるわけにもいかないしね)
「そういえば、新井さんの件は進んでいますか?」
小瀬がせわしなく箒を動かしながら聞いてくる。
「残念ながら成果は出ていません」
僕の言葉に、そうですかと呟く小瀬は、何となくホッとしているように見えた。
「まあ、新井と関係あるかは知らないが、貴様が見たと言う白い物体と、あの幼馴染みが見たという屋上の女は何か関係があるのかもしれないな!」
椅子に腰かけたアルが、テーブルの上に一つだけ置かれていた空のカップを手でいじりながら言う。
その言葉に、小瀬がピタリと動きを止めた。
「え? 橘さんに話をうかがったんですか?」
「うん……ちょうど、会ったから」
レイが気怠げにソファへと横になりながら答える。
「そう、ですか…………あ、あの、非常にぶっちゃけた話をすると、俺、新井さんが嫌いなんですよね」
温厚そうな小瀬がいきなりそんなことを言い出したので、思わず僕は動揺してしまった。
「え? ど、どうしてですか?」
「新井さんは何でもそつなくこなすし、いつもたくさんの人に囲まれています。そう、あの人も……」
「あの人?」
「と、とにかく、彼は俺が欲しいモノを全て持っているんです。俺がどんなに――どんなに足掻いても掴めないモノを……」
小瀬は僕の問いかけには答えず、一呼吸置いてそんな言葉を吐き出した。
「小瀬さん…………」
「それに、彼はあの人からお金を――」
奥歯を噛み締めながら小声でそうつぶやいた尾瀬は、そこでハッと我に返ったらしく、すみませんと謝りながら、決まりが悪そうに頬を掻いたのだった。
(小瀬さんと新井さんの間に何があったんだろう……?)
そこはすごく気にはなる。しかし、今はそれよりも……ちらりと横を見やると、まるで家にいる時のようにくつろいでいるアルとレイの姿が見てとれる。
(まったく、この二人は自由と言うかなんというか……とりあえず、さっさと掃除を終わらせよう)
呆れと諦めを込めたため息をつき、ブルーシートの上に大量にのってしまったコーヒー豆を払う。その時、不意にブルーシートで覆いきれなかった部分が見える。
(え? これ……もしかして、滑車に付いてた運送用の箱? どうしてこんな所に? 小瀬さんがわざわざ持ってきたってこと?)
そこに置いてあった運送用の箱には、所々に紅い痕が付いていた。
(この紅い痕……もしかして、小瀬さんが……)
背筋に冷たい汗が流れる。
(いや、でも、そんな……)
僕が嫌な考えを巡らしていると、誰かが僕の肩へと手を置いた。驚いてそちらを振り返ると、強張った表情の小瀬が立っていた。
「な、ななな鳴海さん。そ、そっちはもう大丈夫ですよ! そそそそれに、後はもう自分で片付けられるのでッ――!!」
僕が何か言葉を発する前に小瀬が焦ったようにそんな事を言い、僕達は小瀬によって乱暴に外へと追いやられたのだった。
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