名無し村の人狼悪夢

雪音鈴

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最初の犠牲者

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 夜、自室にて今日一日のことをそれとなく日記に連ねていると、突然視界が黒い霧に覆われた。

(なんだろう、これ? なんだか、眠……く――)

 霞んできた視界に必死に目をこすりながら、私は眠気に抗おうとしたが、その抵抗虚しく、私は机の上に突っ伏して寝てしまった……。

「ここ……は?」

 私はゆらゆらと揺れる黒い霧の中にいた。

『夢の中さ――』

 どこからともなく声がした。男なのか女なのかも分からない。老人なのか子供なのかも分からない……その、コロコロと変わる不思議な声に、私は恐怖を覚えた。

「また、悪夢なの?」

『ああ、そうかもね。でも、考えようによっては変わるかもしれない。だからそう、悲観的に捉えなくてもいいんじゃないかな?』

「考えようねぇ……もう、人狼の悪夢はごめんよ」

 黒い霧に向かい、私は苦しげに言った。あの少女ほどではないが、私だって人狼は怖い。

『悪いけど、そうも言ってられないよ。だって、君達は今からゲームに参加してもらうんだから』

「ゲーム……」

 その言葉に、私は昨日見た悪夢を思い出した。赤い目の人狼がこちらを――

『そのゲームに人狼は不可欠だ。君も、もう気付いているんだろう?』

「――ッ」

『ああ、そんなに息を乱して……怖いのかい?』

「……怖いに決まってるじゃない」

『そう、素直なのはいいことだ。まあ、怖いからといって棄権は認められないんだけどね』

「……」

『ああ、そんな怖い顔しないでよ。生き残る方法もあるんだから』

 霧の中の声に、私は希望ではなく、絶望を感じた。

(生き残る――つまり、ゲームの負けは死を意味するってことよね……)

『これから説明するルールをしっかりと聞いて、見事ゲームに勝利する。君が生き残るにはそれしかない。もちろん、他の人達も条件は同じ。各勝利条件を満たすことでしか生き残れない。だから……存分に頑張ってね?』



 ★ ★ ★



「――ッ」

 目が覚め、私は頭を抱えたくなった。あの声の最後の言葉を信じたくない。

(最初の犠牲者は――)

「うあああああ――」

 向かいの教会から聞こえてきた叫び声に、意識が覚醒する。私は、昨日の服のまま外へと飛び出した。

 外に行くと、おじさんが寝巻きのまま飛び出してきたところだった。私と同じで叫び声を聞きつけたらしい。おじさんの家は私の隣なので、ほぼ同じタイミングで駆けつけることができたようだ。私達は互いに頷き合い、教会の扉を押し開けた。教会は礼拝者のためにいつも鍵が掛かっていない。

 中に入ると、いつもは固く閉じられている奥の部屋へと続く扉が開いていた。先におじさんが駆け出し、その中へと入り、私もすぐさま後に続いたが……私はおじさんの背に勢いよくぶつかってしまった。

「見るな」

 呆然と立ち尽くすおじさんにそう言われたが、制止の声は少し遅かった。だって、私には見えてしまったのだ……血だまりの中、少年が〝何か〟を抱えて泣きじゃくる姿を――

 むせ返る吐き気をもよおす匂いに、私は耐え切れずその部屋に背を向けた。

「おい、赤髪の嬢ちゃん、至急村の皆をこの教会に集めろ。人狼が出た――」
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