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人狼の悪夢
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私はすぐさま村の人々を教会へと集めたが、あと三人見つけることができなかった。そのため、ここには……生存者8人が集まっていた。
「ちょっと、人狼ってどういうことよ!?」
娼婦が顔を真っ青にしながら金切り声を上げたのを見て、老婆はため息をついた。
「落ち着きなさいな、見苦しい。それに、あんた病気の治療でこの村に来たんだろう? そんなにヒステリーを起こしていたらそのうち死んじまうよ」
「そうだな。今は落ち着くことと現状の確認が先決だ」
娼婦が老婆に何か言う前に、茶髪の青年が二人の間に入った。その瞬間、娼婦の顔色は真っ青から真っ赤に変わった。
「な、な、何よ! なんでそんなに落ち着いてられるのよ! 頭おかしいんじゃないの!? だいたい――」
「皆さん、温かいハーブティーをどうぞ。これで少し落ち着きましょう」
娼婦の言葉を遮り、シスターがトレーに乗せたカップを運んできた。
「そ、そうです……ね。皆さん一度、お、おち、落ち着いて――」
シスターからカップを受け取り、女学生がカタカタと震える手でハーブティーを飲んだ。
「お前こそ、もう少し落ち着けって」
「ブッ――ゲホッ――ッ……その、すみません……」
おじさんが女学生の背中を軽く叩いた瞬間、女学生が盛大に吹き出してしまい、服にジワリと血のように赤いシミが広がった。
「いや、こっちこそすまん、まさか吹き出すと――」
「あああア゛ァああァァぁぁッ――!!!」
おじさんの言葉を遮るように、少年の絶叫が響いた。少年は血に染まった服のまま、かつて少女だったモノを抱きしめていた。元々小さかった少女は、更に小さく変わり果てた姿となっていて、私には少女が着ていたネグリジェに包まれた何かの塊にしか見えなかった。
見かねたシスターとおじさんが少年を毛布に包んでいたが、絶叫と共に激しく頭を振ったため、頭にかけられていた毛布がずり落ちてしまった。
少年の顔には、こびりついた赤黒い跡があり、その瞳は暗い色をしていた。目に溜まった涙は、少年が動くたびに床へと飛び散った。その姿に、娼婦がヒッと短い声を上げ、青年の後ろに引っ込んだ。
「おい、坊主、落ち着けって。おい――」
「はい、そこまでです」
少年の動きを止めたのは、戸惑うおじさんではなく、開けっ放しだった教会の扉から入ってきた薬師だった。
「う゛ァぁぁあ゛ああああ――ッ!!!」
「はあ、まるで手負いの獣ですね」
薬師が少年を抑えながらため息をついた。薬師の後ろには、先程私が見つけられなかった2人もいた。
「へぇ、こりゃ興味深い。人間の精神状態が崩壊するとこんなになるのか。イヒヒヒ、いやあ、面白いねぇ」
この状況にも関わらずニタニタと笑うオカルトオタクの男と、心配そうに少年と薬師を交互に見つめる若い農夫――
「3人とも無事だったんだ……」
私がホッとして息を吐くと、薬師は少し困ったように微笑んだ。
「心配をおかけしたようで申し訳ありません。実は、あの夢が本当かどうか確かめようかと思いまして……ちょっと村の外れまで出かけていたのです。皆さんも見たのでしょう? あの悪夢を――」
★ ★ ★
状況を整理すると、私達はこの村から出られなくなっているらしい。というのも、少年と薬師を除いた全員で再度村の外れを見に行き、私達は見たのだ。村の外れで陸も空も全てが消滅しているという理解不能な現象を……。そんな意味不明な状況の中、出た答えは一つだった。そう、私達にはこのゲームを続ける以外に道は残されていないのである。そこで、私達はそろってルールの確認をすることにした。
◇◇◇◇◇◇
《人狼ゲームのルール》
人狼ゲームとは、村人・人狼・妖狐における互いの生存をかけたゲームである。昼のターンで話し合いをして殺す人を決め、それぞれの勝利のために尽力する。夜のターンでは役職や人狼の力が発動する。
※昼のターンに殺すことを『吊る』とも言う。
○村人陣営○ 合計8人
(現在の生存者は7人)
勝利条件:人狼をすべて吊る
【村人】 5人
(少女死亡により現在の生存者は4人)
何も能力を持たない村人陣営のプレイヤー。できることは、推理と吊る人を決める投票のみ。
【占い師】 1人
夜のターンで、誰か1名を指定して人狼か否かを知ることができる。知ることができるのは人狼であるか、そうでないかの2択で、占い先が役職持ちであったとしても、村人としか分からない。
(狂人・狩人・霊能者を占っても村人とだけ出る)
【霊能者】 1人
夜のターンに、前日の昼のターンに吊られた人が人狼だったか、それ村人だったかを知ることができる。占い師同様、役職待ちであったとしても村人としか分からない。
【狩人】 1人
夜のターンで、誰か1名を人狼の襲撃から守ることができる。狩人が守っている人を人狼が襲撃した場合、襲撃は失敗し、翌日犠牲者は発生しない。自分を守ることはできない。
●人狼陣営● 合計3人
勝利条件:人狼の数と村人の数が同数になる
【人狼】 2人
人の皮をかぶった狼。夜のターンで村人を1名襲撃して食い殺す。『噛む』とも言う。ただし、人狼となった者は夜に自身の影が人狼となり、選んだ相手を襲撃するため、朝、犠牲者が見つかるまで襲撃が成功したかどうかわからない。
【狂人】 1人
素性は村人だが、人狼に加担している人狼崇拝者。人狼陣営が勝利することで勝利となる。占い師に占われても村人と判断され、人数カウントも村人としてカウントされる。誰が人狼なのかを知ることはできず、人狼も狂人が誰なのかは分からない。
☆妖狐陣営(第三勢力)☆ 合計1人
勝利条件:ゲーム終了時に生き残っている
【妖狐】 1人
仲間を持たない単独の勢力。村人陣営か人狼陣営のどちらかが勝利した瞬間に生き残っていることが勝利条件。その場合、勝ったはずの村人や人狼はゲーム上は負けとなる。
人狼に襲撃されても死なないが、占い師に占われると死んでしまう。
また、占った占い師には村人と判定が出る。
※現在の生存者……11人
◇◇◇◇◇◇
「ちょっと、人狼ってどういうことよ!?」
娼婦が顔を真っ青にしながら金切り声を上げたのを見て、老婆はため息をついた。
「落ち着きなさいな、見苦しい。それに、あんた病気の治療でこの村に来たんだろう? そんなにヒステリーを起こしていたらそのうち死んじまうよ」
「そうだな。今は落ち着くことと現状の確認が先決だ」
娼婦が老婆に何か言う前に、茶髪の青年が二人の間に入った。その瞬間、娼婦の顔色は真っ青から真っ赤に変わった。
「な、な、何よ! なんでそんなに落ち着いてられるのよ! 頭おかしいんじゃないの!? だいたい――」
「皆さん、温かいハーブティーをどうぞ。これで少し落ち着きましょう」
娼婦の言葉を遮り、シスターがトレーに乗せたカップを運んできた。
「そ、そうです……ね。皆さん一度、お、おち、落ち着いて――」
シスターからカップを受け取り、女学生がカタカタと震える手でハーブティーを飲んだ。
「お前こそ、もう少し落ち着けって」
「ブッ――ゲホッ――ッ……その、すみません……」
おじさんが女学生の背中を軽く叩いた瞬間、女学生が盛大に吹き出してしまい、服にジワリと血のように赤いシミが広がった。
「いや、こっちこそすまん、まさか吹き出すと――」
「あああア゛ァああァァぁぁッ――!!!」
おじさんの言葉を遮るように、少年の絶叫が響いた。少年は血に染まった服のまま、かつて少女だったモノを抱きしめていた。元々小さかった少女は、更に小さく変わり果てた姿となっていて、私には少女が着ていたネグリジェに包まれた何かの塊にしか見えなかった。
見かねたシスターとおじさんが少年を毛布に包んでいたが、絶叫と共に激しく頭を振ったため、頭にかけられていた毛布がずり落ちてしまった。
少年の顔には、こびりついた赤黒い跡があり、その瞳は暗い色をしていた。目に溜まった涙は、少年が動くたびに床へと飛び散った。その姿に、娼婦がヒッと短い声を上げ、青年の後ろに引っ込んだ。
「おい、坊主、落ち着けって。おい――」
「はい、そこまでです」
少年の動きを止めたのは、戸惑うおじさんではなく、開けっ放しだった教会の扉から入ってきた薬師だった。
「う゛ァぁぁあ゛ああああ――ッ!!!」
「はあ、まるで手負いの獣ですね」
薬師が少年を抑えながらため息をついた。薬師の後ろには、先程私が見つけられなかった2人もいた。
「へぇ、こりゃ興味深い。人間の精神状態が崩壊するとこんなになるのか。イヒヒヒ、いやあ、面白いねぇ」
この状況にも関わらずニタニタと笑うオカルトオタクの男と、心配そうに少年と薬師を交互に見つめる若い農夫――
「3人とも無事だったんだ……」
私がホッとして息を吐くと、薬師は少し困ったように微笑んだ。
「心配をおかけしたようで申し訳ありません。実は、あの夢が本当かどうか確かめようかと思いまして……ちょっと村の外れまで出かけていたのです。皆さんも見たのでしょう? あの悪夢を――」
★ ★ ★
状況を整理すると、私達はこの村から出られなくなっているらしい。というのも、少年と薬師を除いた全員で再度村の外れを見に行き、私達は見たのだ。村の外れで陸も空も全てが消滅しているという理解不能な現象を……。そんな意味不明な状況の中、出た答えは一つだった。そう、私達にはこのゲームを続ける以外に道は残されていないのである。そこで、私達はそろってルールの確認をすることにした。
◇◇◇◇◇◇
《人狼ゲームのルール》
人狼ゲームとは、村人・人狼・妖狐における互いの生存をかけたゲームである。昼のターンで話し合いをして殺す人を決め、それぞれの勝利のために尽力する。夜のターンでは役職や人狼の力が発動する。
※昼のターンに殺すことを『吊る』とも言う。
○村人陣営○ 合計8人
(現在の生存者は7人)
勝利条件:人狼をすべて吊る
【村人】 5人
(少女死亡により現在の生存者は4人)
何も能力を持たない村人陣営のプレイヤー。できることは、推理と吊る人を決める投票のみ。
【占い師】 1人
夜のターンで、誰か1名を指定して人狼か否かを知ることができる。知ることができるのは人狼であるか、そうでないかの2択で、占い先が役職持ちであったとしても、村人としか分からない。
(狂人・狩人・霊能者を占っても村人とだけ出る)
【霊能者】 1人
夜のターンに、前日の昼のターンに吊られた人が人狼だったか、それ村人だったかを知ることができる。占い師同様、役職待ちであったとしても村人としか分からない。
【狩人】 1人
夜のターンで、誰か1名を人狼の襲撃から守ることができる。狩人が守っている人を人狼が襲撃した場合、襲撃は失敗し、翌日犠牲者は発生しない。自分を守ることはできない。
●人狼陣営● 合計3人
勝利条件:人狼の数と村人の数が同数になる
【人狼】 2人
人の皮をかぶった狼。夜のターンで村人を1名襲撃して食い殺す。『噛む』とも言う。ただし、人狼となった者は夜に自身の影が人狼となり、選んだ相手を襲撃するため、朝、犠牲者が見つかるまで襲撃が成功したかどうかわからない。
【狂人】 1人
素性は村人だが、人狼に加担している人狼崇拝者。人狼陣営が勝利することで勝利となる。占い師に占われても村人と判断され、人数カウントも村人としてカウントされる。誰が人狼なのかを知ることはできず、人狼も狂人が誰なのかは分からない。
☆妖狐陣営(第三勢力)☆ 合計1人
勝利条件:ゲーム終了時に生き残っている
【妖狐】 1人
仲間を持たない単独の勢力。村人陣営か人狼陣営のどちらかが勝利した瞬間に生き残っていることが勝利条件。その場合、勝ったはずの村人や人狼はゲーム上は負けとなる。
人狼に襲撃されても死なないが、占い師に占われると死んでしまう。
また、占った占い師には村人と判定が出る。
※現在の生存者……11人
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