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人狼は誰?
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ゲームの内容を整理して紙へと書き、皆の反応をうかがう。少年は叫び声をあげたり暴れたりしなくなったが、その瞳はやはり虚ろだった。
(当然……よね。だって、あの少女はもう――)
「イヒ、イヒヒヒ、やっぱり、このゲームとやらはボク達に対する罰なのかもな。みんなもそうは思わないか? これは神がボク達に与えた罰――いや、もしかしたら救済なのかもしれないって!」
オカルトオタクが楽しそうに連ねる言葉に、その場にいる全員が答えられなかった。
「だって、この村はそういう場所だろう? 俗世で犯した罪から逃げてボク達はここにやってきた。だからこの村では名前を名乗ってはいけない、素性を詮索してはいけないというルールがある! 君達だって、いつかは来るであろう罰を理解して――」
「だまんなさい、若造」
老婆の静かな声に、オカルトオタクの言葉は止まった。そう、それほどまでに老婆を纏う空気――いや、殺気だろうか……が重かったのだ。
「確かに理解はしていたさ。どんな死に方をしたって仕方ないことだってしてきた……けど、それを誰かに面白おかしく語られるいわれもないだろうよ。私は惨めでも意地汚くても、ここまで必死に生きてきたんだ。そして――この生き方に後悔もしていない」
老婆の言葉に薬師が頷いた。
「いいですね、その心意気。惚れ惚れしますよ。まあ、理由はどうあれ、この村ではほとんどの人が他人との関わり合いに慣れていません。その状況でこのゲームは少々キツく感じられますが、私は負けたくありません――そう、生き残りたいのです。皆さんも気持ちは同じなのではありませんか?」
その言葉に、皆の顔つきが変わった。
(生き残る――)
「……皆さん、いい表情になりましたね。そうでなくてはいけません。あの夢でも言われたのを覚えていますか? これは夢の中――そう、つまり自分の陣営が勝てば夢から覚め、生き残れる可能性があるのです」
「じゃあ……こいつも――?」
少年の虚ろな瞳が薬師を見つめた。
「ええ、悪夢から目覚められるかもしれません」
「でも、それは可能性だろ? だって、こいつはもう――」
毛布の中、少年は震えながらギュッと少女の残骸を抱きしめた。
「イヒヒヒ、目覚める可能性はあるぞ、少年。薬師が言いたいこと、ボクも理解した」
先程まで意気消沈していたオタクが、目を輝かせ始めた。
「いやあ、そうかそうか、今ボク達がいるここがもう既に夢の中ってことなんだろう?」
オタクの言葉に、薬師はニッコリと笑い頷いた。
「じゃあ、現実世界では……コイツがまだ生きている可能性がある?」
「坊主、まだ諦めるには早いってことだな」
おじさんが、毛布の上から少年の髪をわしゃわしゃとなでた。少年は、嗚咽を漏らしながら下を向き、涙を流していた。
「それじゃあ、さっそくで悪いが、昼の話し合いをしたいと思う。いいだろうか?」
茶髪の青年の言葉に、その場にいた全員が頷いた。
「まず【占い師】という役職の人に占い結果を教えてもらいたいと思う。占い師は妖狐を消すために必要な職だから、人狼も最初から殺しに行くことはないはずだ。そんなわけで、怖がらずにきちんと出てきてほしい」
青年の言葉を聞き、私はバッと手を挙げた。
「占い師です」
その一言を言うだけでも、心臓がドクドクと嫌な音を立てる。役職持ち……できればそんな大役などやりたくなかった。
(私は目立たず静かに暮らしていたかったのに――)
「私が本物の占い師です」
その言葉に、私の思考が停止し、心臓が一瞬止まりそうになった。
「え――」
見ると、シスターが静かに手を挙げていた。
「占い師が……二人? どちらかが偽物?」
若い農夫の言葉に、茶髪の青年が渋い顔で頷いた。
「まあ、そうなるだろうな……とりあえず、最初に手を挙げた赤髪のお嬢さんから占い結果をどうぞ」
「あ、うん。おばあさんを占ったら村人でした」
「ちなみに、占ったのはなんで?」
私の言葉に、元気を取り戻しつつある少年が質問を重ねた。
「その……昨日、私あなた達の会話を聞いてしまったのよ。だから、人狼はいるって話すおばあさんを一番に占ってみたの」
「ああ、あの時のか。人狼がいるって言うばあさんが、あんたには怪しく見えたんだな」
おじさんが顎をさすり、納得するように何度も頷いていた。
「理由はもっともらしいけど、シスターの占い結果はどうだったのよ?」
娼婦の言葉に、シスターは初めて困った顔をした。
「どうも後出しばかりが続いてしまいますが、老婆を占いました。結果は村人でした」
「どっちも村人判定? じゃあ、おばあさんは完全な村人? でも、シスターはどうしておばあさんを――?」
若い農夫の言葉に、シスターは一度目を閉じた。
「神の導きのままに決めました」
「神の導き――ねぇ。イヒヒヒ、ボクとしてはオカルトチックな内容は大歓迎だけどなあ……。今そんなふざけたこと抜かしてると、さっきのボクみたいに痛い目みるだけだって分かってる?」
オタクがニタニタと笑いながらシスターを見据えると、シスターは再び困った顔をして頭を下げた。
「すみません、でもそれ以外には何も言えないのです。私はずっとこの礼拝堂にいました。皆の声はここでしか聞けません。しかし、村の誰も礼拝堂には来ないではないですか。私にはあなた達の誰かが怪しいなどと疑えるような材料はゼロに等しいのです。その中でただ勘を頼り選んだにすぎません」
「……とりあえず状況を整理しましょうか。まず、おばあさんは完全に村人ということが分かりました。そして、ここで考えてほしいのは、今晩、狼が狙うのは誰かという問題です」
薬師の問いに、娼婦が得意げな顔をする。
「狼が狙う相手は当然ババアだろうね。何せ完全な白だろう? 占い師のどっちかが死んだ時点で残りが本物だって分かっちまうし、まだ判定が出てないグレーゾーンの中に隠れるなら、そいつらは多いほうがいいに決まってる」
「占い師のどちらかが死んだ時点で残りが本物と決め付けるのは早すぎるんじゃないか?」
「はあ? なんでよ!?」
おじさんの言葉に、娼婦は早くも喧嘩腰になっていた。
「だって、考えても見ろよ。人狼側には【狂人】っていう協力者がいるんだろう? 占い師のどちらかが狂人の可能性もある。人狼側も賭けに出て――」
「おじさん、賭けに出るのは得策とは言えないんじゃないかしら。だって……この中にはまだ【妖狐】がいるんでしょ?」
私の言葉に、少年が頷く。
「そっか、妖狐を退治できるのは会議の決議だけじゃなく、占い師にもできる……じゃあ、人狼はババアを狙う?」
思わず皆で老婆の方を見ていると、茶髪の青年が声を上げた。
「それじゃあ、【狩人】におばあさんを守ってもらえばいいんじゃないか? 妖狐がいる限り人狼だって、本物の占い師にいなくなってもらいたくないだろうし、もし偽物占い師が人狼だったらそれこそ本物を殺しにくい。まあ、その場合は偽物占い師狂人説を出していく可能性が高いが……」
「でも、現状はそれがいい? 完全に村人の人に引っ張っていってほしいし?」
若い農夫の言葉に、老婆が苦笑した。
「引っ張っていって――か。さっきから私は議論に参加できてないがのう」
「議論への参加……ですか。そう言えば、先程から一度も話していない人がいますね」
薬師の言葉に、皆の視線が女学生へと集まる。
「え? あ、あの……その――」
「今回、私は占い師のお二方と完全に白のおばあさんを除外したグレーゾーンの人々の中から犠牲者を選ぼうと思っています。議論に参加しないのは、村人側としては勝つためにも避けてもらいたい行為です。そう、たとえあなたが本当に村人であったとしても、意見を出せない、考えられないのであれば邪魔でしかありません」
「――ッ」
「キツイ事を言うようですが、私は生き残りたいのです」
「あ……いや、私も考えてはいて――」
「イヒヒヒ、そろそろタイムリミットみたいだ」
オタクの言葉に、私達も異変に気付き、全員で教会の外へと出た。
「夕日……?」
「確か、タイムリミットは日没まで。イヒヒヒ、さあ、楽しい楽しい投票タイムの始まりだ」
夢の中の時間だから、一日の時間も短い――ということだろう。それにしたって、夕日がまるで早送りでもしているかのように沈んでいく異常な光景には慣れられそうもない。
「最後に聞いていいか。女学生――お前、何か役職はないな?」
「え――私――?」
茶髪の青年が言いたいことに気付いた女学生が、小刻みに震えながら涙をボロボロとこぼしていた。
「い、嫌――わ、私、死にたく、ない……」
「おい、ちょっと待て。殺すなら俺に――」
おじさんが何か言いかけた瞬間、無情にもサイレンの音が鳴り響いた。驚いて声を上げようとしたが、サイレンの音以外何も聞こえなかった。サイレンの音が終わると、耳にあの夢の声が届いた。
『今日の犠牲者はだ~れ? 君の一票は誰に入れる? さあ、せーので指をさそう。せ~の!』
ふざけた言葉に急かされるように指を動かす。
音が戻ってきたのは、今日の犠牲者が決定した瞬間だった……
「あ――」
女学生には9票入っていた。残りの2票は、女学生→薬師、おじさん→オカルトオタクとなっていた。
「その……おじさん、ありがとう。最後、嬉しかったよ? それから、私――ただの村人だか……ら――がんば――」
女学生は涙ながらに微笑んだ。その体はどんどん薄れ、キラキラと輝く粒子になっていった。最後の方は上手く聞き取れなかったけど……その想いは伝わった。涙を流すおじさんの背中を見ながら、なんとも後味の悪い空気に、私はいたたまれない気持ちになった。
「薬師の意見は当然だ。あいつのためにも村陣営は勝たなきゃな!」
おじさんは二カリと笑った。
「すみません……」
「謝んなよ。それよりも、夢で言われた通り、自宅に帰って寝るぞ。夜の時間が始まるんだろう?」
「はい……その、皆さん、聞いてください。夜の時間が終わって目覚めたら、またこの礼拝堂に集まってもらいたいのです。いちいち犠牲者の確認をしていては昼の会議時間が短くなってしまいます。それを避けるためにも、ここに来ないということは今回の犠牲者だったという結論付けをし、さっさと議論を進める必要があるかと思います」
薬師の意見に、皆で頷き合い、私達は各自自宅へと戻っていった。薬師のことを非情だという人は誰もいなかった。だって、全員、生き残りたいと思っているのだから――。
※現在の生存者……10人
(当然……よね。だって、あの少女はもう――)
「イヒ、イヒヒヒ、やっぱり、このゲームとやらはボク達に対する罰なのかもな。みんなもそうは思わないか? これは神がボク達に与えた罰――いや、もしかしたら救済なのかもしれないって!」
オカルトオタクが楽しそうに連ねる言葉に、その場にいる全員が答えられなかった。
「だって、この村はそういう場所だろう? 俗世で犯した罪から逃げてボク達はここにやってきた。だからこの村では名前を名乗ってはいけない、素性を詮索してはいけないというルールがある! 君達だって、いつかは来るであろう罰を理解して――」
「だまんなさい、若造」
老婆の静かな声に、オカルトオタクの言葉は止まった。そう、それほどまでに老婆を纏う空気――いや、殺気だろうか……が重かったのだ。
「確かに理解はしていたさ。どんな死に方をしたって仕方ないことだってしてきた……けど、それを誰かに面白おかしく語られるいわれもないだろうよ。私は惨めでも意地汚くても、ここまで必死に生きてきたんだ。そして――この生き方に後悔もしていない」
老婆の言葉に薬師が頷いた。
「いいですね、その心意気。惚れ惚れしますよ。まあ、理由はどうあれ、この村ではほとんどの人が他人との関わり合いに慣れていません。その状況でこのゲームは少々キツく感じられますが、私は負けたくありません――そう、生き残りたいのです。皆さんも気持ちは同じなのではありませんか?」
その言葉に、皆の顔つきが変わった。
(生き残る――)
「……皆さん、いい表情になりましたね。そうでなくてはいけません。あの夢でも言われたのを覚えていますか? これは夢の中――そう、つまり自分の陣営が勝てば夢から覚め、生き残れる可能性があるのです」
「じゃあ……こいつも――?」
少年の虚ろな瞳が薬師を見つめた。
「ええ、悪夢から目覚められるかもしれません」
「でも、それは可能性だろ? だって、こいつはもう――」
毛布の中、少年は震えながらギュッと少女の残骸を抱きしめた。
「イヒヒヒ、目覚める可能性はあるぞ、少年。薬師が言いたいこと、ボクも理解した」
先程まで意気消沈していたオタクが、目を輝かせ始めた。
「いやあ、そうかそうか、今ボク達がいるここがもう既に夢の中ってことなんだろう?」
オタクの言葉に、薬師はニッコリと笑い頷いた。
「じゃあ、現実世界では……コイツがまだ生きている可能性がある?」
「坊主、まだ諦めるには早いってことだな」
おじさんが、毛布の上から少年の髪をわしゃわしゃとなでた。少年は、嗚咽を漏らしながら下を向き、涙を流していた。
「それじゃあ、さっそくで悪いが、昼の話し合いをしたいと思う。いいだろうか?」
茶髪の青年の言葉に、その場にいた全員が頷いた。
「まず【占い師】という役職の人に占い結果を教えてもらいたいと思う。占い師は妖狐を消すために必要な職だから、人狼も最初から殺しに行くことはないはずだ。そんなわけで、怖がらずにきちんと出てきてほしい」
青年の言葉を聞き、私はバッと手を挙げた。
「占い師です」
その一言を言うだけでも、心臓がドクドクと嫌な音を立てる。役職持ち……できればそんな大役などやりたくなかった。
(私は目立たず静かに暮らしていたかったのに――)
「私が本物の占い師です」
その言葉に、私の思考が停止し、心臓が一瞬止まりそうになった。
「え――」
見ると、シスターが静かに手を挙げていた。
「占い師が……二人? どちらかが偽物?」
若い農夫の言葉に、茶髪の青年が渋い顔で頷いた。
「まあ、そうなるだろうな……とりあえず、最初に手を挙げた赤髪のお嬢さんから占い結果をどうぞ」
「あ、うん。おばあさんを占ったら村人でした」
「ちなみに、占ったのはなんで?」
私の言葉に、元気を取り戻しつつある少年が質問を重ねた。
「その……昨日、私あなた達の会話を聞いてしまったのよ。だから、人狼はいるって話すおばあさんを一番に占ってみたの」
「ああ、あの時のか。人狼がいるって言うばあさんが、あんたには怪しく見えたんだな」
おじさんが顎をさすり、納得するように何度も頷いていた。
「理由はもっともらしいけど、シスターの占い結果はどうだったのよ?」
娼婦の言葉に、シスターは初めて困った顔をした。
「どうも後出しばかりが続いてしまいますが、老婆を占いました。結果は村人でした」
「どっちも村人判定? じゃあ、おばあさんは完全な村人? でも、シスターはどうしておばあさんを――?」
若い農夫の言葉に、シスターは一度目を閉じた。
「神の導きのままに決めました」
「神の導き――ねぇ。イヒヒヒ、ボクとしてはオカルトチックな内容は大歓迎だけどなあ……。今そんなふざけたこと抜かしてると、さっきのボクみたいに痛い目みるだけだって分かってる?」
オタクがニタニタと笑いながらシスターを見据えると、シスターは再び困った顔をして頭を下げた。
「すみません、でもそれ以外には何も言えないのです。私はずっとこの礼拝堂にいました。皆の声はここでしか聞けません。しかし、村の誰も礼拝堂には来ないではないですか。私にはあなた達の誰かが怪しいなどと疑えるような材料はゼロに等しいのです。その中でただ勘を頼り選んだにすぎません」
「……とりあえず状況を整理しましょうか。まず、おばあさんは完全に村人ということが分かりました。そして、ここで考えてほしいのは、今晩、狼が狙うのは誰かという問題です」
薬師の問いに、娼婦が得意げな顔をする。
「狼が狙う相手は当然ババアだろうね。何せ完全な白だろう? 占い師のどっちかが死んだ時点で残りが本物だって分かっちまうし、まだ判定が出てないグレーゾーンの中に隠れるなら、そいつらは多いほうがいいに決まってる」
「占い師のどちらかが死んだ時点で残りが本物と決め付けるのは早すぎるんじゃないか?」
「はあ? なんでよ!?」
おじさんの言葉に、娼婦は早くも喧嘩腰になっていた。
「だって、考えても見ろよ。人狼側には【狂人】っていう協力者がいるんだろう? 占い師のどちらかが狂人の可能性もある。人狼側も賭けに出て――」
「おじさん、賭けに出るのは得策とは言えないんじゃないかしら。だって……この中にはまだ【妖狐】がいるんでしょ?」
私の言葉に、少年が頷く。
「そっか、妖狐を退治できるのは会議の決議だけじゃなく、占い師にもできる……じゃあ、人狼はババアを狙う?」
思わず皆で老婆の方を見ていると、茶髪の青年が声を上げた。
「それじゃあ、【狩人】におばあさんを守ってもらえばいいんじゃないか? 妖狐がいる限り人狼だって、本物の占い師にいなくなってもらいたくないだろうし、もし偽物占い師が人狼だったらそれこそ本物を殺しにくい。まあ、その場合は偽物占い師狂人説を出していく可能性が高いが……」
「でも、現状はそれがいい? 完全に村人の人に引っ張っていってほしいし?」
若い農夫の言葉に、老婆が苦笑した。
「引っ張っていって――か。さっきから私は議論に参加できてないがのう」
「議論への参加……ですか。そう言えば、先程から一度も話していない人がいますね」
薬師の言葉に、皆の視線が女学生へと集まる。
「え? あ、あの……その――」
「今回、私は占い師のお二方と完全に白のおばあさんを除外したグレーゾーンの人々の中から犠牲者を選ぼうと思っています。議論に参加しないのは、村人側としては勝つためにも避けてもらいたい行為です。そう、たとえあなたが本当に村人であったとしても、意見を出せない、考えられないのであれば邪魔でしかありません」
「――ッ」
「キツイ事を言うようですが、私は生き残りたいのです」
「あ……いや、私も考えてはいて――」
「イヒヒヒ、そろそろタイムリミットみたいだ」
オタクの言葉に、私達も異変に気付き、全員で教会の外へと出た。
「夕日……?」
「確か、タイムリミットは日没まで。イヒヒヒ、さあ、楽しい楽しい投票タイムの始まりだ」
夢の中の時間だから、一日の時間も短い――ということだろう。それにしたって、夕日がまるで早送りでもしているかのように沈んでいく異常な光景には慣れられそうもない。
「最後に聞いていいか。女学生――お前、何か役職はないな?」
「え――私――?」
茶髪の青年が言いたいことに気付いた女学生が、小刻みに震えながら涙をボロボロとこぼしていた。
「い、嫌――わ、私、死にたく、ない……」
「おい、ちょっと待て。殺すなら俺に――」
おじさんが何か言いかけた瞬間、無情にもサイレンの音が鳴り響いた。驚いて声を上げようとしたが、サイレンの音以外何も聞こえなかった。サイレンの音が終わると、耳にあの夢の声が届いた。
『今日の犠牲者はだ~れ? 君の一票は誰に入れる? さあ、せーので指をさそう。せ~の!』
ふざけた言葉に急かされるように指を動かす。
音が戻ってきたのは、今日の犠牲者が決定した瞬間だった……
「あ――」
女学生には9票入っていた。残りの2票は、女学生→薬師、おじさん→オカルトオタクとなっていた。
「その……おじさん、ありがとう。最後、嬉しかったよ? それから、私――ただの村人だか……ら――がんば――」
女学生は涙ながらに微笑んだ。その体はどんどん薄れ、キラキラと輝く粒子になっていった。最後の方は上手く聞き取れなかったけど……その想いは伝わった。涙を流すおじさんの背中を見ながら、なんとも後味の悪い空気に、私はいたたまれない気持ちになった。
「薬師の意見は当然だ。あいつのためにも村陣営は勝たなきゃな!」
おじさんは二カリと笑った。
「すみません……」
「謝んなよ。それよりも、夢で言われた通り、自宅に帰って寝るぞ。夜の時間が始まるんだろう?」
「はい……その、皆さん、聞いてください。夜の時間が終わって目覚めたら、またこの礼拝堂に集まってもらいたいのです。いちいち犠牲者の確認をしていては昼の会議時間が短くなってしまいます。それを避けるためにも、ここに来ないということは今回の犠牲者だったという結論付けをし、さっさと議論を進める必要があるかと思います」
薬師の意見に、皆で頷き合い、私達は各自自宅へと戻っていった。薬師のことを非情だという人は誰もいなかった。だって、全員、生き残りたいと思っているのだから――。
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