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第2章 深海の檻が軋む時
第20変 変態さんはやっぱり変態さんだった(後編)
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刺すような金色の光が掻き消え、もう一度目を開き、何度か瞬きをすると、ようやくニッコリと笑う彼が先程と同じようにそこに立っているのが確認できた。
彼の首にはまるで首輪のようにトゲトゲした茨のような黒い痣が浮き出ている。彼はスッと長い指先で色っぽくその痣をなぞり、一瞬だけ熱っぽい視線をこちらへと送ってきた。混乱する頭の中、反射的に頬が赤く染まってしまう。
「ちょうどこの間、呪術学の講義で習ったんだ」
急にいつものように嬉しそうに頬を染める彼に戻り、私は顔を真っ赤にしたまま開いた口が塞がらない状態になってしまった。
「ば、ばばば、バッッッカじゃないの!!! だからって、なんで、なんで――【服従契約】なんか……」
伝承学の時間に取り扱った童話を思い出し、思わず頭を抱える。心を閉ざした姫巫女へと愛を語り続け、騎士としてその傍らに寄り添った龍王。姫巫女はやがて心を開き、その龍王と――
その話の流れを考えてしまった途端、頬がさっきよりもさらに赤く染まる。
「俺は君と離れたくない」
「ッ――」
スッと胸に右手を置き、頬を染めた状態ではあるが真剣な表情へと変わった彼に、今度は言い募りたい言葉が出てこなくなる。
(こ、このイケメンめ!!!)
暴言なのかただの褒め言葉なのか何だか分からない言葉を胸の内でツッコミ、心の平穏を取り戻そうと頑張る。そう、このイケメン特有のキラキラオーラに急に変わるのがいけないんだ。
「でも、君を怖がらせたくもない。なら、君が俺の手綱を握ってしまえば、君は怖くないし、俺も君から離れなくてすむ。それに……」
潤んだ瞳で見つめられ、思わずドキッとする。先ほどまで荒んでいた心が――嫌な音を鳴らしていた心臓が――ドキドキと違う意味で早くなる。
「これで晴れて――君の下僕になれる」
肝心なところで、本っっっ当に大事なところで、両手で胸を押さえ、上気した頬のままハアハア言い始めてしまえる彼に、私の頭がいつものごとく痛くなった。
「ああ、うん。そう言えば、あんたは変態だったわ」
こめかみを押さえて唸る私に、彼はさらに嬉しそうな顔をする。
「うん、ありがとう」
「別に褒めてないからね!!!」
「うん! これからもよろしくね、俺のご主人様!!」
彼が元気よく言う姿にため息をつきそうになったが、それが安堵のため息だったのか、疲れからきたため息なのかは分からない。
でも、この時には、私の震えはもう収まっていた。
まあ、後でよくよく考えたら【私はいつ部屋着に着替えたんだ?】とか【そもそもなんで寝る時はこれを着るって知ってたんだ?】とか【アイツが私のフルネームを知っていたのはなんでだ?】とかいうことにゾッとしたのは言うまでもないことだけど……ね。
え、あ、何? いい話風じゃなくホラー風に終わるなって?
だって、正直な話、部屋着についてはもう目を瞑るとして(時には目をそらすことも大事だよね……)――種族調べんなって言ってるこの新世校で、種族が獣人だって直ぐに分かっちゃう私のファミリーネームがバレちゃってるなんて、めっちゃ怖いじゃん? 流通ルートどこって話だよ、まったく……。
こうやって、勝手に私のことを調べるのはもちろんやめてもらいたいし、ストーカーだってやめてほしい――けど、それでも、最近はアイツと一緒にいるのに慣れてきたみたいで、妙な安心感があるんだよねぇ……長く一緒にいるって怖いね。相手が近すぎて見えなくなってきちゃうっていうか……。
まあ、長くとはいっても本当のところずっと一緒に過ごしたっていう期間は(シェロンが衝撃的な告白をしてからちょうど)二週間とちょっと程度だ。寝るときやお風呂、伝承学の授業中以外ずっと傍にいられたせいで慣れてしまったが、順応能力の高い自分に感心するよりも洗脳を受けているような気分になり、薄ら寒気がするような気がするのは――うん。気のせいだと思いたい。
あ、でも、洗脳されてきててもちゃんと分かってるよ? アイツが正真正銘の変態さんだってことは……。皆さんも、変態さんにはご用心を――。
ああ、あとね、どんなに慌てている時でもアパートには鍵だけじゃなく、ちゃーんと、ドアチェーンもかけること!!! でないと、うっかりがあるかもしれないから……ね。
彼の首にはまるで首輪のようにトゲトゲした茨のような黒い痣が浮き出ている。彼はスッと長い指先で色っぽくその痣をなぞり、一瞬だけ熱っぽい視線をこちらへと送ってきた。混乱する頭の中、反射的に頬が赤く染まってしまう。
「ちょうどこの間、呪術学の講義で習ったんだ」
急にいつものように嬉しそうに頬を染める彼に戻り、私は顔を真っ赤にしたまま開いた口が塞がらない状態になってしまった。
「ば、ばばば、バッッッカじゃないの!!! だからって、なんで、なんで――【服従契約】なんか……」
伝承学の時間に取り扱った童話を思い出し、思わず頭を抱える。心を閉ざした姫巫女へと愛を語り続け、騎士としてその傍らに寄り添った龍王。姫巫女はやがて心を開き、その龍王と――
その話の流れを考えてしまった途端、頬がさっきよりもさらに赤く染まる。
「俺は君と離れたくない」
「ッ――」
スッと胸に右手を置き、頬を染めた状態ではあるが真剣な表情へと変わった彼に、今度は言い募りたい言葉が出てこなくなる。
(こ、このイケメンめ!!!)
暴言なのかただの褒め言葉なのか何だか分からない言葉を胸の内でツッコミ、心の平穏を取り戻そうと頑張る。そう、このイケメン特有のキラキラオーラに急に変わるのがいけないんだ。
「でも、君を怖がらせたくもない。なら、君が俺の手綱を握ってしまえば、君は怖くないし、俺も君から離れなくてすむ。それに……」
潤んだ瞳で見つめられ、思わずドキッとする。先ほどまで荒んでいた心が――嫌な音を鳴らしていた心臓が――ドキドキと違う意味で早くなる。
「これで晴れて――君の下僕になれる」
肝心なところで、本っっっ当に大事なところで、両手で胸を押さえ、上気した頬のままハアハア言い始めてしまえる彼に、私の頭がいつものごとく痛くなった。
「ああ、うん。そう言えば、あんたは変態だったわ」
こめかみを押さえて唸る私に、彼はさらに嬉しそうな顔をする。
「うん、ありがとう」
「別に褒めてないからね!!!」
「うん! これからもよろしくね、俺のご主人様!!」
彼が元気よく言う姿にため息をつきそうになったが、それが安堵のため息だったのか、疲れからきたため息なのかは分からない。
でも、この時には、私の震えはもう収まっていた。
まあ、後でよくよく考えたら【私はいつ部屋着に着替えたんだ?】とか【そもそもなんで寝る時はこれを着るって知ってたんだ?】とか【アイツが私のフルネームを知っていたのはなんでだ?】とかいうことにゾッとしたのは言うまでもないことだけど……ね。
え、あ、何? いい話風じゃなくホラー風に終わるなって?
だって、正直な話、部屋着についてはもう目を瞑るとして(時には目をそらすことも大事だよね……)――種族調べんなって言ってるこの新世校で、種族が獣人だって直ぐに分かっちゃう私のファミリーネームがバレちゃってるなんて、めっちゃ怖いじゃん? 流通ルートどこって話だよ、まったく……。
こうやって、勝手に私のことを調べるのはもちろんやめてもらいたいし、ストーカーだってやめてほしい――けど、それでも、最近はアイツと一緒にいるのに慣れてきたみたいで、妙な安心感があるんだよねぇ……長く一緒にいるって怖いね。相手が近すぎて見えなくなってきちゃうっていうか……。
まあ、長くとはいっても本当のところずっと一緒に過ごしたっていう期間は(シェロンが衝撃的な告白をしてからちょうど)二週間とちょっと程度だ。寝るときやお風呂、伝承学の授業中以外ずっと傍にいられたせいで慣れてしまったが、順応能力の高い自分に感心するよりも洗脳を受けているような気分になり、薄ら寒気がするような気がするのは――うん。気のせいだと思いたい。
あ、でも、洗脳されてきててもちゃんと分かってるよ? アイツが正真正銘の変態さんだってことは……。皆さんも、変態さんにはご用心を――。
ああ、あとね、どんなに慌てている時でもアパートには鍵だけじゃなく、ちゃーんと、ドアチェーンもかけること!!! でないと、うっかりがあるかもしれないから……ね。
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