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第2章 深海の檻が軋む時
第24変 人魚の猛毒は全身に(裏)
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~シアン視点~
『泣きたいだけ泣いて? シアンの全部、ドーンと受け止めるからさ』
彼女の言葉に、嬉しさで胸が苦しくなった。
『あり、がとう……』とその時出てきたあの言葉も僕の本心だ――だけど……心のどこかでもう一人の自分が呟くんだ。
――本当に僕の全てを受け入れてくれるの?――
(僕の過去や体質の全てを知って、ルチアーノまで僕を嫌ったら?)
どす黒い気持ちが心の隅から隅まで広がっていくこの感じが気持ち悪い……。期待を――希望を――裏切られるのなんか慣れっこだったはずなのに、せっかく、せっかく――初めて見つけられた本当の光が消えてしまうのが……どうしようもなく怖い――。
(ルチアーノに――嫌われるのが怖い……)
変わろう――そう思ったはずなのに……過去なんか捨てて新しい自分になろうとそう思ったのに……。僕の本質は変わらなくって、過去は変えられなくって――やっぱり僕の邪魔ばかりをする。
(ルチアーノは僕の存在を肯定してくれたけど、それは僕の本質を知らないからじゃないの? あの崖での一件が――ルチアーノが死にかけた原因が……僕だって分かったら――彼女は?)
そこまで考えた瞬間、血の気が引いた。彼女と繋いでる手だけが熱くて、それ以外の体温が感じられない。
そこにあるのは、ただの――純粋な恐怖だけ。
変わろうと思えたのは彼女がいたからで、彼女がいなければ僕はまた、光を失う……変わりたいのに、諦めたくないのに……
(彼女がいなければ、僕はまたッ――)
カタカタと体が震え、息が乱れる。僕の研究室はもう、すぐそこだ――泣いてしまった理由を適当にごまかして、僕の過去には触れないようにする? いや、人魚というのを知られた時点で【呪い子】のことがいつか分かってしまうかもしれない……。
どうしたら……諦めたくないんだ――
どうしたら……離したくないんだ――
どうしたら……離れたくないんだ――
どう、したら――
ソレナライッソ、カノジョヲ閉ジコメテ、僕ダケノ光ニシテシマオウヨ?
物騒な考えが頭をよぎり、ハッとする。
いや、そんなことできるわけ――
ココニ来ルマデ誰ニモ見ツカッテナイヨネ?
イイヤ、僕ガ見ツカラナイヨウニ、カノジョを誘導シタンダヨネ?
いや、でも、彼女の傍にいるあの金髪の男が――
ソンナノ僕の毒で殺シテシマエバイイ
「シアン?」
「ッ――」
彼女に名前を呼ばれ、ようやく物騒な思考が止まる。
「ごめん、私じゃ研究室のドア開けられないから、頼んでもいいかな?」
「あ、うん……」
研究室のドアに手を当てて軽く魔力を流すと、僕の魔力の性質を感知したドアが淡く青く光り、ロックが解除される。そのスライド式のドアを開け、彼女を中へと誘導し、それとなく内側から鍵をかける。
彼女と僕の分の黒い丸椅子を用意し、彼女との距離が遠のかないよう、机などの障害物を間に置かない状態で互いに向き合うように座る。
片手は今だに頭から被っている彼女の上着の端を握り、もう片手は軍服の内側に隠していた麻酔針を準備する。後は、彼女の身体に触れさえすれば……
(ごめん、ルチアーノ……僕は君に拒絶されたら――)
ソウ、ダカラ、カノジョ二知ラレル前二――
僕の心に毒が回る。
カノジョニ拒絶サレル前二――
解毒の方法なんか分からない猛毒が心を蝕んでいく……
カノジョ――ヲ……
~シアン視点END~
『泣きたいだけ泣いて? シアンの全部、ドーンと受け止めるからさ』
彼女の言葉に、嬉しさで胸が苦しくなった。
『あり、がとう……』とその時出てきたあの言葉も僕の本心だ――だけど……心のどこかでもう一人の自分が呟くんだ。
――本当に僕の全てを受け入れてくれるの?――
(僕の過去や体質の全てを知って、ルチアーノまで僕を嫌ったら?)
どす黒い気持ちが心の隅から隅まで広がっていくこの感じが気持ち悪い……。期待を――希望を――裏切られるのなんか慣れっこだったはずなのに、せっかく、せっかく――初めて見つけられた本当の光が消えてしまうのが……どうしようもなく怖い――。
(ルチアーノに――嫌われるのが怖い……)
変わろう――そう思ったはずなのに……過去なんか捨てて新しい自分になろうとそう思ったのに……。僕の本質は変わらなくって、過去は変えられなくって――やっぱり僕の邪魔ばかりをする。
(ルチアーノは僕の存在を肯定してくれたけど、それは僕の本質を知らないからじゃないの? あの崖での一件が――ルチアーノが死にかけた原因が……僕だって分かったら――彼女は?)
そこまで考えた瞬間、血の気が引いた。彼女と繋いでる手だけが熱くて、それ以外の体温が感じられない。
そこにあるのは、ただの――純粋な恐怖だけ。
変わろうと思えたのは彼女がいたからで、彼女がいなければ僕はまた、光を失う……変わりたいのに、諦めたくないのに……
(彼女がいなければ、僕はまたッ――)
カタカタと体が震え、息が乱れる。僕の研究室はもう、すぐそこだ――泣いてしまった理由を適当にごまかして、僕の過去には触れないようにする? いや、人魚というのを知られた時点で【呪い子】のことがいつか分かってしまうかもしれない……。
どうしたら……諦めたくないんだ――
どうしたら……離したくないんだ――
どうしたら……離れたくないんだ――
どう、したら――
ソレナライッソ、カノジョヲ閉ジコメテ、僕ダケノ光ニシテシマオウヨ?
物騒な考えが頭をよぎり、ハッとする。
いや、そんなことできるわけ――
ココニ来ルマデ誰ニモ見ツカッテナイヨネ?
イイヤ、僕ガ見ツカラナイヨウニ、カノジョを誘導シタンダヨネ?
いや、でも、彼女の傍にいるあの金髪の男が――
ソンナノ僕の毒で殺シテシマエバイイ
「シアン?」
「ッ――」
彼女に名前を呼ばれ、ようやく物騒な思考が止まる。
「ごめん、私じゃ研究室のドア開けられないから、頼んでもいいかな?」
「あ、うん……」
研究室のドアに手を当てて軽く魔力を流すと、僕の魔力の性質を感知したドアが淡く青く光り、ロックが解除される。そのスライド式のドアを開け、彼女を中へと誘導し、それとなく内側から鍵をかける。
彼女と僕の分の黒い丸椅子を用意し、彼女との距離が遠のかないよう、机などの障害物を間に置かない状態で互いに向き合うように座る。
片手は今だに頭から被っている彼女の上着の端を握り、もう片手は軍服の内側に隠していた麻酔針を準備する。後は、彼女の身体に触れさえすれば……
(ごめん、ルチアーノ……僕は君に拒絶されたら――)
ソウ、ダカラ、カノジョ二知ラレル前二――
僕の心に毒が回る。
カノジョニ拒絶サレル前二――
解毒の方法なんか分からない猛毒が心を蝕んでいく……
カノジョ――ヲ……
~シアン視点END~
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