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第3章 呪縛で歪む愛故に
第48変 精霊のお茶会(前編)
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新世校の3000mほど上空(下の景色を見た感じではおそらくそれくらい)にまるでラ〇ュタのように浮かんでいる庭園には、色とりどりの様々な形の花々が穏やかな陽の光の元、その美しさを輝かせていた。
庭園の大きな赤薔薇のアーチをくぐり抜けた先には、アンティーク調の白い丸テーブルとそれに合うような職人芸が目立つ繊細な白い椅子が用意されていた。
辺りでは小さな妖精達が軽やかに舞い、キラキラと美しいピンク色の光を降らせ、花々の蔦で作られた両手のひらサイズの小さなステージ上では、綺麗に整列している別の妖精達がクラシック調の美しい曲を奏でてくれている。
小さな妖精指揮者が懸命に背伸びしながら指揮をする姿はなんとも微笑ましい。ステージ全体に空気振動増強効果の魔力を付加しているようで、小さな楽器から流れる音なのに耳障りではない程度に、だがしっかりと聞こえる。
音楽以外の音は普通に聞こえていることからも、魔力式の技術力の高さがうかがえる。
魔力式は魔力を継続的に使う場合に必要な式だ。
それを使うには魔力を込めた魔力文字を使用するのだが、この文字を書くときの魔力の微調整が非常に難しい。特に私は魔力が不安定なので、よく魔力爆発を起こしてしまう。そう、文字通りの爆発を起こし、使用しようとしていた物質まで壊す始末……そのせいで入学早々にクラッシャーの名がついて泣きたくなったのは苦い思い出だ。
私の頭上を妖精があっちへヒラヒラ、こっちへヒラヒラと舞う。そのたびに舞うピンクのキラキラとした粉は、よくよく見ると光の粒子のようなもので、蝶の鱗粉のようなものではないことが分かった。その粒子は綺麗なだけでなく、ふんわりと薔薇の香りがして、なんとなくゴージャスな雰囲気まで感じられる。
ぶっちゃけ、薔薇の花びらを浮かべた風呂に入ってる気分だ。まあ、実際やったことがないけど……前世ではほら、薔薇の香りの入浴剤とかあったし、それに浸かってる気分だよ、うん。小さな妖精達の可愛らしさも相まって、本当にやすらぐわー。
妖精達の大きさは人差し指程度で、人間と同じような姿形に透明な4枚の羽(トンボのようなと言えば失礼だとは思うが、それに近い気がする……まあ、たまに蝶々のような羽の妖精もチラホラ見えるが)、クリクリとした大きな瞳に尖った耳、まるで花びらのようにヒラヒラと揺れる可愛らしいノースリーブのワンピースをそのスレンダーな体で着こなしている。
私の想像する妖精そのものだ。とても可愛すぎて、やはりついつい目で追ってしまう。
……うん、猫の獣人である本能で目が追いかけてしまうわけではない――と思いたい。
そんなメルヘンな情景の中、どこぞの令嬢のように優雅なお茶会……まるで夢のようだ。
(ああ、本当に夢だったら良かったのに……)
「さあ、遠慮しないで食べてね?」
目の前に用意されているのは宝石のように輝く小さなケーキ達、焼きたてのスコーン、種類豊富なマフィン(おそらく香りから察するに一つ一つ違う紅茶の茶葉で味付けされている)、形が可愛らしいクッキーというお菓子の数々と、小さな花々と妖精の青い影絵が施された白い芸術的なティーカップに注がれた優しい香りのする紅茶……。
そう言ってそれらを勧めてくるのは、私の目の前に座っているキュートな笑顔がまぶしい精霊王様……。
(なぜこうなった?)
伝承学の講義の後、私は精霊王様に連れられてここにきてしまった。
うん、全力で拒否したかったけど、周囲のお姉様達が怖すぎて泣く泣くついていきました……はい。
それでも周囲のお姉様達の視線がやっぱり痛いっていうね、この理不尽すぎる状況……きっと、私がどういう反応を返してもお姉様達は精霊王様と関わった時点で眉をつり上げるのだろう。
思わずため息が出た。
(うん、とりあえず、本題に入ろう)
「ところで、フェル様。私はどうしてここに呼ばれたのでしょうか?」
私の態度が気に入らなかったのか、精霊王――フェル様の後ろに控えていた少々きつめの印象の金髪美少女様(親衛隊の中で一番小柄でスレンダーなボディのため、年齢的には美女でも見た目からの印象で美少女と呼ばせてもらいたい)が眉根を跳ね上げ、その黄緑色の瞳に鋭い光を宿して一歩前に出た。思わずこちらも臨戦態勢に入るが、フェル様がサッと片手を上げ、彼女を後ろに下げる。
「そうだね。いきなり呼び出したら誰でも警戒してしまう。でも、このテーブルに出した物に毒なんかは入ってないから安心して。あと、これを食べたからといって君に不利になるようなことも何もないよ。だから、まずは紅茶が冷める前に飲んだらどうかな?」
彼の物言いに、金髪の美少女様が機嫌を損ねた理由が分かる。彼女はフェル様が出した物を警戒しながら話を進めようとしたことに怒ったのだ。
「あ、はい……その、すみません」
申し訳なく思いながら、白い湯気が漂うロイヤルな香りがする紅茶(ふだん、紅茶なんていう優雅な物を口にしないから、これが何の種類だかはまったく分からない)をグイッと飲む。
「ゥアッチィィ!!!」
(動揺のあまり自分が猫舌なの忘れてたッ――)
「ああ、ごめんごめん。熱いのは苦手だったかな?」
そう言い、爽やかに笑う彼を見て、謀ったな!? と言いたくなったが、舌がヒリヒリして痛すぎて何も言えない。思わず、ニコニコと微笑む彼――いや、ニヤニヤと笑う精霊王を涙目で睨みつけてしまう。
おそらく、フェルは完全に知っていてやっている。いや、『おそらく』なんていう曖昧なものなんかではない。ゲームでの彼の性格を考えると、彼は100%私のアレコレを知った上でこうした茶番をして反応を楽しんでいる。そうでなければ、彼はこうやって私をこの場に呼び出したりなんかしない。
彼は基本的に負け戦はしない主義だ。自分が楽しむ分にはいいが、相手にしてやられるのを嫌う。自分以外を信用することはなく、情報に関しても膨大に得られたそれらを自分で分析し、真実を見出すという非常に徹底した用心深さを持つ彼――そんな彼が、『誰か』と話す時にその『誰か』のことを調べないはずなんてない。
ちなみにこれは私の見解だが、情報に関してはその信頼性も含め、リヒトと対を張るだろうと思っている。まあ、リヒトは自分に関係がありそうな人物だけの情報に特化しているから、根本は少し違うのかもしれないが……。
とにかく、フェル様の情報源はスゴイ。何がスゴイって、情報源がどこにでも存在している精霊達や彼の下についている取り巻き(もはや部下?)達で、情報量が膨大すぎてエグイのだ。その情報を活かした彼が様々な輩とこんなふうにお茶をし、彼の退屈を紛らわす駒となるのだ。
はい、皆さん。長々とした私の説明で、もうお分かりですね?
そう、私がここに呼ばれたと言うことは、精霊王様は私に何か【面倒事を吹っ掛ける気】でいるってことなんですよ。ただただ彼の退屈を紛らわすためだけに私の学園生活が犠牲になるのだけは勘弁願いたい。もうすでにどこぞの変態ストーカーのせいで平穏から遠のいている今、これ以上の厄介事は本当にやめてもらいたいんです。結構切実に。そんなわけで、彼の調子にのせられて彼のペースに巻き込まれたら終わりだ。
私は息を調え、もうほとんどヒリつきが治った舌で、今度こそ残り少なくなってちょうどよく冷めた紅茶をグイッと一気に飲み干す。……飲んだ後に思ったんだけどね、紅茶って間違っても風呂上がりのコーヒー牛乳のようにグイッと一気に飲むものじゃないよね、うん。私、もう少し優雅さを身につけた方が良いのかも……。
思わず、自分の優雅さの欠片もない所作に肩を落としていると、隣に立っている短い黒髪の巨乳のお姉様がその黄緑色の瞳を細め、妖艶な微笑みを浮かべながら新しい紅茶を注いでくれた。お礼を言うと、余計に笑みを深めてくれ……その色気に、同性でありながらもドギマギしてしまう。
「じゃあ、落ち着いたところで、早速本題に入ろうか」
彼がゆったりとした動作でテーブルに両肘を付き、軽く指を組む。その手を口元に持っていき、上目遣いになるのが彼の癖だ。サラリと揺れる緑色の髪と薄い紫がかった瞳……うん、不覚にもキュンとしてしまったではないか。見た目中一程度なのも相まって、ついついその頭を撫でくりまわしたいという衝動に駆られる。
「『だって――友達に損得とかは関係ないでしょ?』――この間、君が言った言葉にボクは感銘を受けたんだ」
目を鋭く細めてニコリと笑った彼に、背筋がゾクッと嫌な寒気を主張する。彼のこの目は見た時がある……ああ、そうだ。ゲームで何度も見たじゃないか、彼のこの目は次のオモチャを見つけた時の――獲物を狙う目だ。
背筋をつたった汗が柔らかい風で余計に冷やされる感覚に、ハッとシアンの研究室での情景を思い出した。今、彼が発した言葉――あれはシアンの研究室で私が言ったもの……そして、あの時――
(女子学生達が騒ぐ外の音が聞こえてた――?)
そこで全てが繋がった。そう、あの時、確かに外の声が聞こえていたのだ。窓には防音効果が付いた魔力が張られているはずなのに、聞こえていたのだ。あのキャッキャッ楽しそうな声が!!!
つ・ま・り、あの時窓が開いてて私の声も外に漏れてたってことですよね!?
し・か・も! あの時外から香ってきた華やかで優しい花の香りって、よくよく考えたらフェル様の香りじゃんっていうね!!!
……とまあ、混乱しながらも気付いてしまった驚愕の事実に、口元がヒクヒクとひきつる。色々と納得できたのは良かったものの、とりあえず……私が今、非常にマズイ地雷を踏んでしまっていて、その爆発に巻き込まれている最中だっていうのはよく分かった。
え? 何故かって???
だってフェル様ってば――【愛や友情なんてモノが大嫌い☆】で【そんな事を言う輩を絶望させるのが大好き☆】なんですもん…………ね? 思いっきり地雷踏んじゃったっしょ?
(アハハ、ハハ――はあ……ねぇ、これってめっちゃヤバくない? むしろ、詰んでない!? ああ、もう、これからどうなんのさああぁぁ!?)
庭園の大きな赤薔薇のアーチをくぐり抜けた先には、アンティーク調の白い丸テーブルとそれに合うような職人芸が目立つ繊細な白い椅子が用意されていた。
辺りでは小さな妖精達が軽やかに舞い、キラキラと美しいピンク色の光を降らせ、花々の蔦で作られた両手のひらサイズの小さなステージ上では、綺麗に整列している別の妖精達がクラシック調の美しい曲を奏でてくれている。
小さな妖精指揮者が懸命に背伸びしながら指揮をする姿はなんとも微笑ましい。ステージ全体に空気振動増強効果の魔力を付加しているようで、小さな楽器から流れる音なのに耳障りではない程度に、だがしっかりと聞こえる。
音楽以外の音は普通に聞こえていることからも、魔力式の技術力の高さがうかがえる。
魔力式は魔力を継続的に使う場合に必要な式だ。
それを使うには魔力を込めた魔力文字を使用するのだが、この文字を書くときの魔力の微調整が非常に難しい。特に私は魔力が不安定なので、よく魔力爆発を起こしてしまう。そう、文字通りの爆発を起こし、使用しようとしていた物質まで壊す始末……そのせいで入学早々にクラッシャーの名がついて泣きたくなったのは苦い思い出だ。
私の頭上を妖精があっちへヒラヒラ、こっちへヒラヒラと舞う。そのたびに舞うピンクのキラキラとした粉は、よくよく見ると光の粒子のようなもので、蝶の鱗粉のようなものではないことが分かった。その粒子は綺麗なだけでなく、ふんわりと薔薇の香りがして、なんとなくゴージャスな雰囲気まで感じられる。
ぶっちゃけ、薔薇の花びらを浮かべた風呂に入ってる気分だ。まあ、実際やったことがないけど……前世ではほら、薔薇の香りの入浴剤とかあったし、それに浸かってる気分だよ、うん。小さな妖精達の可愛らしさも相まって、本当にやすらぐわー。
妖精達の大きさは人差し指程度で、人間と同じような姿形に透明な4枚の羽(トンボのようなと言えば失礼だとは思うが、それに近い気がする……まあ、たまに蝶々のような羽の妖精もチラホラ見えるが)、クリクリとした大きな瞳に尖った耳、まるで花びらのようにヒラヒラと揺れる可愛らしいノースリーブのワンピースをそのスレンダーな体で着こなしている。
私の想像する妖精そのものだ。とても可愛すぎて、やはりついつい目で追ってしまう。
……うん、猫の獣人である本能で目が追いかけてしまうわけではない――と思いたい。
そんなメルヘンな情景の中、どこぞの令嬢のように優雅なお茶会……まるで夢のようだ。
(ああ、本当に夢だったら良かったのに……)
「さあ、遠慮しないで食べてね?」
目の前に用意されているのは宝石のように輝く小さなケーキ達、焼きたてのスコーン、種類豊富なマフィン(おそらく香りから察するに一つ一つ違う紅茶の茶葉で味付けされている)、形が可愛らしいクッキーというお菓子の数々と、小さな花々と妖精の青い影絵が施された白い芸術的なティーカップに注がれた優しい香りのする紅茶……。
そう言ってそれらを勧めてくるのは、私の目の前に座っているキュートな笑顔がまぶしい精霊王様……。
(なぜこうなった?)
伝承学の講義の後、私は精霊王様に連れられてここにきてしまった。
うん、全力で拒否したかったけど、周囲のお姉様達が怖すぎて泣く泣くついていきました……はい。
それでも周囲のお姉様達の視線がやっぱり痛いっていうね、この理不尽すぎる状況……きっと、私がどういう反応を返してもお姉様達は精霊王様と関わった時点で眉をつり上げるのだろう。
思わずため息が出た。
(うん、とりあえず、本題に入ろう)
「ところで、フェル様。私はどうしてここに呼ばれたのでしょうか?」
私の態度が気に入らなかったのか、精霊王――フェル様の後ろに控えていた少々きつめの印象の金髪美少女様(親衛隊の中で一番小柄でスレンダーなボディのため、年齢的には美女でも見た目からの印象で美少女と呼ばせてもらいたい)が眉根を跳ね上げ、その黄緑色の瞳に鋭い光を宿して一歩前に出た。思わずこちらも臨戦態勢に入るが、フェル様がサッと片手を上げ、彼女を後ろに下げる。
「そうだね。いきなり呼び出したら誰でも警戒してしまう。でも、このテーブルに出した物に毒なんかは入ってないから安心して。あと、これを食べたからといって君に不利になるようなことも何もないよ。だから、まずは紅茶が冷める前に飲んだらどうかな?」
彼の物言いに、金髪の美少女様が機嫌を損ねた理由が分かる。彼女はフェル様が出した物を警戒しながら話を進めようとしたことに怒ったのだ。
「あ、はい……その、すみません」
申し訳なく思いながら、白い湯気が漂うロイヤルな香りがする紅茶(ふだん、紅茶なんていう優雅な物を口にしないから、これが何の種類だかはまったく分からない)をグイッと飲む。
「ゥアッチィィ!!!」
(動揺のあまり自分が猫舌なの忘れてたッ――)
「ああ、ごめんごめん。熱いのは苦手だったかな?」
そう言い、爽やかに笑う彼を見て、謀ったな!? と言いたくなったが、舌がヒリヒリして痛すぎて何も言えない。思わず、ニコニコと微笑む彼――いや、ニヤニヤと笑う精霊王を涙目で睨みつけてしまう。
おそらく、フェルは完全に知っていてやっている。いや、『おそらく』なんていう曖昧なものなんかではない。ゲームでの彼の性格を考えると、彼は100%私のアレコレを知った上でこうした茶番をして反応を楽しんでいる。そうでなければ、彼はこうやって私をこの場に呼び出したりなんかしない。
彼は基本的に負け戦はしない主義だ。自分が楽しむ分にはいいが、相手にしてやられるのを嫌う。自分以外を信用することはなく、情報に関しても膨大に得られたそれらを自分で分析し、真実を見出すという非常に徹底した用心深さを持つ彼――そんな彼が、『誰か』と話す時にその『誰か』のことを調べないはずなんてない。
ちなみにこれは私の見解だが、情報に関してはその信頼性も含め、リヒトと対を張るだろうと思っている。まあ、リヒトは自分に関係がありそうな人物だけの情報に特化しているから、根本は少し違うのかもしれないが……。
とにかく、フェル様の情報源はスゴイ。何がスゴイって、情報源がどこにでも存在している精霊達や彼の下についている取り巻き(もはや部下?)達で、情報量が膨大すぎてエグイのだ。その情報を活かした彼が様々な輩とこんなふうにお茶をし、彼の退屈を紛らわす駒となるのだ。
はい、皆さん。長々とした私の説明で、もうお分かりですね?
そう、私がここに呼ばれたと言うことは、精霊王様は私に何か【面倒事を吹っ掛ける気】でいるってことなんですよ。ただただ彼の退屈を紛らわすためだけに私の学園生活が犠牲になるのだけは勘弁願いたい。もうすでにどこぞの変態ストーカーのせいで平穏から遠のいている今、これ以上の厄介事は本当にやめてもらいたいんです。結構切実に。そんなわけで、彼の調子にのせられて彼のペースに巻き込まれたら終わりだ。
私は息を調え、もうほとんどヒリつきが治った舌で、今度こそ残り少なくなってちょうどよく冷めた紅茶をグイッと一気に飲み干す。……飲んだ後に思ったんだけどね、紅茶って間違っても風呂上がりのコーヒー牛乳のようにグイッと一気に飲むものじゃないよね、うん。私、もう少し優雅さを身につけた方が良いのかも……。
思わず、自分の優雅さの欠片もない所作に肩を落としていると、隣に立っている短い黒髪の巨乳のお姉様がその黄緑色の瞳を細め、妖艶な微笑みを浮かべながら新しい紅茶を注いでくれた。お礼を言うと、余計に笑みを深めてくれ……その色気に、同性でありながらもドギマギしてしまう。
「じゃあ、落ち着いたところで、早速本題に入ろうか」
彼がゆったりとした動作でテーブルに両肘を付き、軽く指を組む。その手を口元に持っていき、上目遣いになるのが彼の癖だ。サラリと揺れる緑色の髪と薄い紫がかった瞳……うん、不覚にもキュンとしてしまったではないか。見た目中一程度なのも相まって、ついついその頭を撫でくりまわしたいという衝動に駆られる。
「『だって――友達に損得とかは関係ないでしょ?』――この間、君が言った言葉にボクは感銘を受けたんだ」
目を鋭く細めてニコリと笑った彼に、背筋がゾクッと嫌な寒気を主張する。彼のこの目は見た時がある……ああ、そうだ。ゲームで何度も見たじゃないか、彼のこの目は次のオモチャを見つけた時の――獲物を狙う目だ。
背筋をつたった汗が柔らかい風で余計に冷やされる感覚に、ハッとシアンの研究室での情景を思い出した。今、彼が発した言葉――あれはシアンの研究室で私が言ったもの……そして、あの時――
(女子学生達が騒ぐ外の音が聞こえてた――?)
そこで全てが繋がった。そう、あの時、確かに外の声が聞こえていたのだ。窓には防音効果が付いた魔力が張られているはずなのに、聞こえていたのだ。あのキャッキャッ楽しそうな声が!!!
つ・ま・り、あの時窓が開いてて私の声も外に漏れてたってことですよね!?
し・か・も! あの時外から香ってきた華やかで優しい花の香りって、よくよく考えたらフェル様の香りじゃんっていうね!!!
……とまあ、混乱しながらも気付いてしまった驚愕の事実に、口元がヒクヒクとひきつる。色々と納得できたのは良かったものの、とりあえず……私が今、非常にマズイ地雷を踏んでしまっていて、その爆発に巻き込まれている最中だっていうのはよく分かった。
え? 何故かって???
だってフェル様ってば――【愛や友情なんてモノが大嫌い☆】で【そんな事を言う輩を絶望させるのが大好き☆】なんですもん…………ね? 思いっきり地雷踏んじゃったっしょ?
(アハハ、ハハ――はあ……ねぇ、これってめっちゃヤバくない? むしろ、詰んでない!? ああ、もう、これからどうなんのさああぁぁ!?)
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