48 / 50
第3章 呪縛で歪む愛故に
第48変 精霊のお茶会(前編)
しおりを挟む
新世校の3000mほど上空(下の景色を見た感じではおそらくそれくらい)にまるでラ〇ュタのように浮かんでいる庭園には、色とりどりの様々な形の花々が穏やかな陽の光の元、その美しさを輝かせていた。
庭園の大きな赤薔薇のアーチをくぐり抜けた先には、アンティーク調の白い丸テーブルとそれに合うような職人芸が目立つ繊細な白い椅子が用意されていた。
辺りでは小さな妖精達が軽やかに舞い、キラキラと美しいピンク色の光を降らせ、花々の蔦で作られた両手のひらサイズの小さなステージ上では、綺麗に整列している別の妖精達がクラシック調の美しい曲を奏でてくれている。
小さな妖精指揮者が懸命に背伸びしながら指揮をする姿はなんとも微笑ましい。ステージ全体に空気振動増強効果の魔力を付加しているようで、小さな楽器から流れる音なのに耳障りではない程度に、だがしっかりと聞こえる。
音楽以外の音は普通に聞こえていることからも、魔力式の技術力の高さがうかがえる。
魔力式は魔力を継続的に使う場合に必要な式だ。
それを使うには魔力を込めた魔力文字を使用するのだが、この文字を書くときの魔力の微調整が非常に難しい。特に私は魔力が不安定なので、よく魔力爆発を起こしてしまう。そう、文字通りの爆発を起こし、使用しようとしていた物質まで壊す始末……そのせいで入学早々にクラッシャーの名がついて泣きたくなったのは苦い思い出だ。
私の頭上を妖精があっちへヒラヒラ、こっちへヒラヒラと舞う。そのたびに舞うピンクのキラキラとした粉は、よくよく見ると光の粒子のようなもので、蝶の鱗粉のようなものではないことが分かった。その粒子は綺麗なだけでなく、ふんわりと薔薇の香りがして、なんとなくゴージャスな雰囲気まで感じられる。
ぶっちゃけ、薔薇の花びらを浮かべた風呂に入ってる気分だ。まあ、実際やったことがないけど……前世ではほら、薔薇の香りの入浴剤とかあったし、それに浸かってる気分だよ、うん。小さな妖精達の可愛らしさも相まって、本当にやすらぐわー。
妖精達の大きさは人差し指程度で、人間と同じような姿形に透明な4枚の羽(トンボのようなと言えば失礼だとは思うが、それに近い気がする……まあ、たまに蝶々のような羽の妖精もチラホラ見えるが)、クリクリとした大きな瞳に尖った耳、まるで花びらのようにヒラヒラと揺れる可愛らしいノースリーブのワンピースをそのスレンダーな体で着こなしている。
私の想像する妖精そのものだ。とても可愛すぎて、やはりついつい目で追ってしまう。
……うん、猫の獣人である本能で目が追いかけてしまうわけではない――と思いたい。
そんなメルヘンな情景の中、どこぞの令嬢のように優雅なお茶会……まるで夢のようだ。
(ああ、本当に夢だったら良かったのに……)
「さあ、遠慮しないで食べてね?」
目の前に用意されているのは宝石のように輝く小さなケーキ達、焼きたてのスコーン、種類豊富なマフィン(おそらく香りから察するに一つ一つ違う紅茶の茶葉で味付けされている)、形が可愛らしいクッキーというお菓子の数々と、小さな花々と妖精の青い影絵が施された白い芸術的なティーカップに注がれた優しい香りのする紅茶……。
そう言ってそれらを勧めてくるのは、私の目の前に座っているキュートな笑顔がまぶしい精霊王様……。
(なぜこうなった?)
伝承学の講義の後、私は精霊王様に連れられてここにきてしまった。
うん、全力で拒否したかったけど、周囲のお姉様達が怖すぎて泣く泣くついていきました……はい。
それでも周囲のお姉様達の視線がやっぱり痛いっていうね、この理不尽すぎる状況……きっと、私がどういう反応を返してもお姉様達は精霊王様と関わった時点で眉をつり上げるのだろう。
思わずため息が出た。
(うん、とりあえず、本題に入ろう)
「ところで、フェル様。私はどうしてここに呼ばれたのでしょうか?」
私の態度が気に入らなかったのか、精霊王――フェル様の後ろに控えていた少々きつめの印象の金髪美少女様(親衛隊の中で一番小柄でスレンダーなボディのため、年齢的には美女でも見た目からの印象で美少女と呼ばせてもらいたい)が眉根を跳ね上げ、その黄緑色の瞳に鋭い光を宿して一歩前に出た。思わずこちらも臨戦態勢に入るが、フェル様がサッと片手を上げ、彼女を後ろに下げる。
「そうだね。いきなり呼び出したら誰でも警戒してしまう。でも、このテーブルに出した物に毒なんかは入ってないから安心して。あと、これを食べたからといって君に不利になるようなことも何もないよ。だから、まずは紅茶が冷める前に飲んだらどうかな?」
彼の物言いに、金髪の美少女様が機嫌を損ねた理由が分かる。彼女はフェル様が出した物を警戒しながら話を進めようとしたことに怒ったのだ。
「あ、はい……その、すみません」
申し訳なく思いながら、白い湯気が漂うロイヤルな香りがする紅茶(ふだん、紅茶なんていう優雅な物を口にしないから、これが何の種類だかはまったく分からない)をグイッと飲む。
「ゥアッチィィ!!!」
(動揺のあまり自分が猫舌なの忘れてたッ――)
「ああ、ごめんごめん。熱いのは苦手だったかな?」
そう言い、爽やかに笑う彼を見て、謀ったな!? と言いたくなったが、舌がヒリヒリして痛すぎて何も言えない。思わず、ニコニコと微笑む彼――いや、ニヤニヤと笑う精霊王を涙目で睨みつけてしまう。
おそらく、フェルは完全に知っていてやっている。いや、『おそらく』なんていう曖昧なものなんかではない。ゲームでの彼の性格を考えると、彼は100%私のアレコレを知った上でこうした茶番をして反応を楽しんでいる。そうでなければ、彼はこうやって私をこの場に呼び出したりなんかしない。
彼は基本的に負け戦はしない主義だ。自分が楽しむ分にはいいが、相手にしてやられるのを嫌う。自分以外を信用することはなく、情報に関しても膨大に得られたそれらを自分で分析し、真実を見出すという非常に徹底した用心深さを持つ彼――そんな彼が、『誰か』と話す時にその『誰か』のことを調べないはずなんてない。
ちなみにこれは私の見解だが、情報に関してはその信頼性も含め、リヒトと対を張るだろうと思っている。まあ、リヒトは自分に関係がありそうな人物だけの情報に特化しているから、根本は少し違うのかもしれないが……。
とにかく、フェル様の情報源はスゴイ。何がスゴイって、情報源がどこにでも存在している精霊達や彼の下についている取り巻き(もはや部下?)達で、情報量が膨大すぎてエグイのだ。その情報を活かした彼が様々な輩とこんなふうにお茶をし、彼の退屈を紛らわす駒となるのだ。
はい、皆さん。長々とした私の説明で、もうお分かりですね?
そう、私がここに呼ばれたと言うことは、精霊王様は私に何か【面倒事を吹っ掛ける気】でいるってことなんですよ。ただただ彼の退屈を紛らわすためだけに私の学園生活が犠牲になるのだけは勘弁願いたい。もうすでにどこぞの変態ストーカーのせいで平穏から遠のいている今、これ以上の厄介事は本当にやめてもらいたいんです。結構切実に。そんなわけで、彼の調子にのせられて彼のペースに巻き込まれたら終わりだ。
私は息を調え、もうほとんどヒリつきが治った舌で、今度こそ残り少なくなってちょうどよく冷めた紅茶をグイッと一気に飲み干す。……飲んだ後に思ったんだけどね、紅茶って間違っても風呂上がりのコーヒー牛乳のようにグイッと一気に飲むものじゃないよね、うん。私、もう少し優雅さを身につけた方が良いのかも……。
思わず、自分の優雅さの欠片もない所作に肩を落としていると、隣に立っている短い黒髪の巨乳のお姉様がその黄緑色の瞳を細め、妖艶な微笑みを浮かべながら新しい紅茶を注いでくれた。お礼を言うと、余計に笑みを深めてくれ……その色気に、同性でありながらもドギマギしてしまう。
「じゃあ、落ち着いたところで、早速本題に入ろうか」
彼がゆったりとした動作でテーブルに両肘を付き、軽く指を組む。その手を口元に持っていき、上目遣いになるのが彼の癖だ。サラリと揺れる緑色の髪と薄い紫がかった瞳……うん、不覚にもキュンとしてしまったではないか。見た目中一程度なのも相まって、ついついその頭を撫でくりまわしたいという衝動に駆られる。
「『だって――友達に損得とかは関係ないでしょ?』――この間、君が言った言葉にボクは感銘を受けたんだ」
目を鋭く細めてニコリと笑った彼に、背筋がゾクッと嫌な寒気を主張する。彼のこの目は見た時がある……ああ、そうだ。ゲームで何度も見たじゃないか、彼のこの目は次のオモチャを見つけた時の――獲物を狙う目だ。
背筋をつたった汗が柔らかい風で余計に冷やされる感覚に、ハッとシアンの研究室での情景を思い出した。今、彼が発した言葉――あれはシアンの研究室で私が言ったもの……そして、あの時――
(女子学生達が騒ぐ外の音が聞こえてた――?)
そこで全てが繋がった。そう、あの時、確かに外の声が聞こえていたのだ。窓には防音効果が付いた魔力が張られているはずなのに、聞こえていたのだ。あのキャッキャッ楽しそうな声が!!!
つ・ま・り、あの時窓が開いてて私の声も外に漏れてたってことですよね!?
し・か・も! あの時外から香ってきた華やかで優しい花の香りって、よくよく考えたらフェル様の香りじゃんっていうね!!!
……とまあ、混乱しながらも気付いてしまった驚愕の事実に、口元がヒクヒクとひきつる。色々と納得できたのは良かったものの、とりあえず……私が今、非常にマズイ地雷を踏んでしまっていて、その爆発に巻き込まれている最中だっていうのはよく分かった。
え? 何故かって???
だってフェル様ってば――【愛や友情なんてモノが大嫌い☆】で【そんな事を言う輩を絶望させるのが大好き☆】なんですもん…………ね? 思いっきり地雷踏んじゃったっしょ?
(アハハ、ハハ――はあ……ねぇ、これってめっちゃヤバくない? むしろ、詰んでない!? ああ、もう、これからどうなんのさああぁぁ!?)
庭園の大きな赤薔薇のアーチをくぐり抜けた先には、アンティーク調の白い丸テーブルとそれに合うような職人芸が目立つ繊細な白い椅子が用意されていた。
辺りでは小さな妖精達が軽やかに舞い、キラキラと美しいピンク色の光を降らせ、花々の蔦で作られた両手のひらサイズの小さなステージ上では、綺麗に整列している別の妖精達がクラシック調の美しい曲を奏でてくれている。
小さな妖精指揮者が懸命に背伸びしながら指揮をする姿はなんとも微笑ましい。ステージ全体に空気振動増強効果の魔力を付加しているようで、小さな楽器から流れる音なのに耳障りではない程度に、だがしっかりと聞こえる。
音楽以外の音は普通に聞こえていることからも、魔力式の技術力の高さがうかがえる。
魔力式は魔力を継続的に使う場合に必要な式だ。
それを使うには魔力を込めた魔力文字を使用するのだが、この文字を書くときの魔力の微調整が非常に難しい。特に私は魔力が不安定なので、よく魔力爆発を起こしてしまう。そう、文字通りの爆発を起こし、使用しようとしていた物質まで壊す始末……そのせいで入学早々にクラッシャーの名がついて泣きたくなったのは苦い思い出だ。
私の頭上を妖精があっちへヒラヒラ、こっちへヒラヒラと舞う。そのたびに舞うピンクのキラキラとした粉は、よくよく見ると光の粒子のようなもので、蝶の鱗粉のようなものではないことが分かった。その粒子は綺麗なだけでなく、ふんわりと薔薇の香りがして、なんとなくゴージャスな雰囲気まで感じられる。
ぶっちゃけ、薔薇の花びらを浮かべた風呂に入ってる気分だ。まあ、実際やったことがないけど……前世ではほら、薔薇の香りの入浴剤とかあったし、それに浸かってる気分だよ、うん。小さな妖精達の可愛らしさも相まって、本当にやすらぐわー。
妖精達の大きさは人差し指程度で、人間と同じような姿形に透明な4枚の羽(トンボのようなと言えば失礼だとは思うが、それに近い気がする……まあ、たまに蝶々のような羽の妖精もチラホラ見えるが)、クリクリとした大きな瞳に尖った耳、まるで花びらのようにヒラヒラと揺れる可愛らしいノースリーブのワンピースをそのスレンダーな体で着こなしている。
私の想像する妖精そのものだ。とても可愛すぎて、やはりついつい目で追ってしまう。
……うん、猫の獣人である本能で目が追いかけてしまうわけではない――と思いたい。
そんなメルヘンな情景の中、どこぞの令嬢のように優雅なお茶会……まるで夢のようだ。
(ああ、本当に夢だったら良かったのに……)
「さあ、遠慮しないで食べてね?」
目の前に用意されているのは宝石のように輝く小さなケーキ達、焼きたてのスコーン、種類豊富なマフィン(おそらく香りから察するに一つ一つ違う紅茶の茶葉で味付けされている)、形が可愛らしいクッキーというお菓子の数々と、小さな花々と妖精の青い影絵が施された白い芸術的なティーカップに注がれた優しい香りのする紅茶……。
そう言ってそれらを勧めてくるのは、私の目の前に座っているキュートな笑顔がまぶしい精霊王様……。
(なぜこうなった?)
伝承学の講義の後、私は精霊王様に連れられてここにきてしまった。
うん、全力で拒否したかったけど、周囲のお姉様達が怖すぎて泣く泣くついていきました……はい。
それでも周囲のお姉様達の視線がやっぱり痛いっていうね、この理不尽すぎる状況……きっと、私がどういう反応を返してもお姉様達は精霊王様と関わった時点で眉をつり上げるのだろう。
思わずため息が出た。
(うん、とりあえず、本題に入ろう)
「ところで、フェル様。私はどうしてここに呼ばれたのでしょうか?」
私の態度が気に入らなかったのか、精霊王――フェル様の後ろに控えていた少々きつめの印象の金髪美少女様(親衛隊の中で一番小柄でスレンダーなボディのため、年齢的には美女でも見た目からの印象で美少女と呼ばせてもらいたい)が眉根を跳ね上げ、その黄緑色の瞳に鋭い光を宿して一歩前に出た。思わずこちらも臨戦態勢に入るが、フェル様がサッと片手を上げ、彼女を後ろに下げる。
「そうだね。いきなり呼び出したら誰でも警戒してしまう。でも、このテーブルに出した物に毒なんかは入ってないから安心して。あと、これを食べたからといって君に不利になるようなことも何もないよ。だから、まずは紅茶が冷める前に飲んだらどうかな?」
彼の物言いに、金髪の美少女様が機嫌を損ねた理由が分かる。彼女はフェル様が出した物を警戒しながら話を進めようとしたことに怒ったのだ。
「あ、はい……その、すみません」
申し訳なく思いながら、白い湯気が漂うロイヤルな香りがする紅茶(ふだん、紅茶なんていう優雅な物を口にしないから、これが何の種類だかはまったく分からない)をグイッと飲む。
「ゥアッチィィ!!!」
(動揺のあまり自分が猫舌なの忘れてたッ――)
「ああ、ごめんごめん。熱いのは苦手だったかな?」
そう言い、爽やかに笑う彼を見て、謀ったな!? と言いたくなったが、舌がヒリヒリして痛すぎて何も言えない。思わず、ニコニコと微笑む彼――いや、ニヤニヤと笑う精霊王を涙目で睨みつけてしまう。
おそらく、フェルは完全に知っていてやっている。いや、『おそらく』なんていう曖昧なものなんかではない。ゲームでの彼の性格を考えると、彼は100%私のアレコレを知った上でこうした茶番をして反応を楽しんでいる。そうでなければ、彼はこうやって私をこの場に呼び出したりなんかしない。
彼は基本的に負け戦はしない主義だ。自分が楽しむ分にはいいが、相手にしてやられるのを嫌う。自分以外を信用することはなく、情報に関しても膨大に得られたそれらを自分で分析し、真実を見出すという非常に徹底した用心深さを持つ彼――そんな彼が、『誰か』と話す時にその『誰か』のことを調べないはずなんてない。
ちなみにこれは私の見解だが、情報に関してはその信頼性も含め、リヒトと対を張るだろうと思っている。まあ、リヒトは自分に関係がありそうな人物だけの情報に特化しているから、根本は少し違うのかもしれないが……。
とにかく、フェル様の情報源はスゴイ。何がスゴイって、情報源がどこにでも存在している精霊達や彼の下についている取り巻き(もはや部下?)達で、情報量が膨大すぎてエグイのだ。その情報を活かした彼が様々な輩とこんなふうにお茶をし、彼の退屈を紛らわす駒となるのだ。
はい、皆さん。長々とした私の説明で、もうお分かりですね?
そう、私がここに呼ばれたと言うことは、精霊王様は私に何か【面倒事を吹っ掛ける気】でいるってことなんですよ。ただただ彼の退屈を紛らわすためだけに私の学園生活が犠牲になるのだけは勘弁願いたい。もうすでにどこぞの変態ストーカーのせいで平穏から遠のいている今、これ以上の厄介事は本当にやめてもらいたいんです。結構切実に。そんなわけで、彼の調子にのせられて彼のペースに巻き込まれたら終わりだ。
私は息を調え、もうほとんどヒリつきが治った舌で、今度こそ残り少なくなってちょうどよく冷めた紅茶をグイッと一気に飲み干す。……飲んだ後に思ったんだけどね、紅茶って間違っても風呂上がりのコーヒー牛乳のようにグイッと一気に飲むものじゃないよね、うん。私、もう少し優雅さを身につけた方が良いのかも……。
思わず、自分の優雅さの欠片もない所作に肩を落としていると、隣に立っている短い黒髪の巨乳のお姉様がその黄緑色の瞳を細め、妖艶な微笑みを浮かべながら新しい紅茶を注いでくれた。お礼を言うと、余計に笑みを深めてくれ……その色気に、同性でありながらもドギマギしてしまう。
「じゃあ、落ち着いたところで、早速本題に入ろうか」
彼がゆったりとした動作でテーブルに両肘を付き、軽く指を組む。その手を口元に持っていき、上目遣いになるのが彼の癖だ。サラリと揺れる緑色の髪と薄い紫がかった瞳……うん、不覚にもキュンとしてしまったではないか。見た目中一程度なのも相まって、ついついその頭を撫でくりまわしたいという衝動に駆られる。
「『だって――友達に損得とかは関係ないでしょ?』――この間、君が言った言葉にボクは感銘を受けたんだ」
目を鋭く細めてニコリと笑った彼に、背筋がゾクッと嫌な寒気を主張する。彼のこの目は見た時がある……ああ、そうだ。ゲームで何度も見たじゃないか、彼のこの目は次のオモチャを見つけた時の――獲物を狙う目だ。
背筋をつたった汗が柔らかい風で余計に冷やされる感覚に、ハッとシアンの研究室での情景を思い出した。今、彼が発した言葉――あれはシアンの研究室で私が言ったもの……そして、あの時――
(女子学生達が騒ぐ外の音が聞こえてた――?)
そこで全てが繋がった。そう、あの時、確かに外の声が聞こえていたのだ。窓には防音効果が付いた魔力が張られているはずなのに、聞こえていたのだ。あのキャッキャッ楽しそうな声が!!!
つ・ま・り、あの時窓が開いてて私の声も外に漏れてたってことですよね!?
し・か・も! あの時外から香ってきた華やかで優しい花の香りって、よくよく考えたらフェル様の香りじゃんっていうね!!!
……とまあ、混乱しながらも気付いてしまった驚愕の事実に、口元がヒクヒクとひきつる。色々と納得できたのは良かったものの、とりあえず……私が今、非常にマズイ地雷を踏んでしまっていて、その爆発に巻き込まれている最中だっていうのはよく分かった。
え? 何故かって???
だってフェル様ってば――【愛や友情なんてモノが大嫌い☆】で【そんな事を言う輩を絶望させるのが大好き☆】なんですもん…………ね? 思いっきり地雷踏んじゃったっしょ?
(アハハ、ハハ――はあ……ねぇ、これってめっちゃヤバくない? むしろ、詰んでない!? ああ、もう、これからどうなんのさああぁぁ!?)
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる