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しおりを挟む「アルリナ」
初めて名前を呼ばれた気がする。ずっと「お前」とか「おい」とか冷たい呼び方しかしてもらえなかった。
妄想の中ではシュルト様はいつも優しく私を呼んでくれたけれど、本物の破壊力というのはすさまじい。
こんなひどい事をされているのに、諦めきれない恋心が胸を苦しくさせる。
「シュルトさ、んっ」
名前を呼ぼうとした口を塞がれる。するりと入り込んでいた生暖かいぬるぬるしたものがシュルト様の舌だと気が付いた時には、口の中を舐めまわされていた。
「んっ、、んんんっ!!」
あまりの事に頭が追い付かない。
生暖かい舌が私の舌を絡め取る。舌の上下を撫でるように舐められて、歯や唇の裏側という敏感な粘膜を刺激されると頭の奥がくらくらしてきた。
流し込まれた唾液のせいで呼吸がままならなくて、私は必死でそれを飲み込む。
気が付けばキスの勢いのままに私の身体はシュルト様の腕の中だ。
上から覆いかぶさるように抱きしめられていて、彼の腕が私の背中や腰のあたりを撫でまわしている。
キスをやめる事は許さないとでも言うように後ろ頭に差しこまれた手が結い上げられた髪を解くようにまさぐって、長い指が首筋や耳を撫でる。
「んうぅんんぅ!!」
苦しさと口の中を犯されている衝撃から逃げたくて、彼の腕の中で暴れてもがく。力の入らない手で、とんとんとシュルト様の胸板を叩くが、まったくもって効果が無い。
そのうちに私の背中を撫でていた手が、まくれあがったスカートの中、丸見えになっている下着の上から私のお尻を撫で始めた。
肉付きを確かめるように撫でまわされて、割れ目を指先でなぞられると、背中が震えて、私は塞がれた唇の中から悲鳴を上げた。
ずっとキスで言葉や呼吸を奪われているせいでだんだん体に力が入らなくなっていく。
薄眼で見る真正面のシュルト様の顔はやっぱり綺麗で胸が苦しい。
これは夢かもしれないなんて考えまで浮かぶしまつだ。
だって、私を嫌いだと公言していたシュルト様が私の部屋にやってきて私のベッドでキスをしている。
恋心を拗らせすぎて都合のいい夢を見ているのかもしれない。
「んんぅ!!!」
しかし現実はどこまでも私に甘くない。
お尻を撫でていたシュルト様の手が私の下着をずり下げたのだ。
肌が空気に触れるのと同時に、シュルト様の大きな掌が素肌のお尻を撫でた。下着越しとは違う直接的な刺激に私が腰を引かせて逃げようとするが、足の間に入り込んだシュルト様の足はそれを許さない。
あろうことが、器用にも片足を使って私の足をひらかせたのだ。
既に足首まで下ろされていた下着は意味をなさずに私の身体からはなれた。
自分だってちゃんと触れたことが無い体の中心にすうすうと空気が流れる。
お尻を撫でていたシュルト様の手がするすると這うように伸びてきて、私の割れ目を撫でた。
ぬる、とした感触に目の前が真っ白になるくらいの羞恥がこみ上げる。
キスをしながらシュルト様が小さく笑った気がした。
「・・・・んっ、やぅ、やだぁぁつ」
限界だと私は力いっぱいシュルト様の胸板を押してキスから逃れる。
飲み込みきれなかった唾液で口の周りはお互いべっとり濡れている。
「やめて、やめてぇ」
突然抵抗を強めた私に驚いたシュルト様は一瞬だけ拘束の力を弱める。
私は必死で身体をくねらせ、彼に背中を向けてベッドから抜け出そうとするが、腰に回された腕によって簡単に拘束されてしまった。
「逃がすとでも思ったのか」
「やだ、はなして、はなしてくださいっ」
悲しくて恥ずかしくて涙が止まらない。
婚約破棄を言い出しただけで、なぜこんなことまでされなければいけないのか。
そんなに私の事が嫌いなのだろうか。
「大人しくしていろ。騒ぐと人が来るぞ」
「っ!!」
今更にここが寮の自室である事を思いだす。
角部屋で個室とはいえ近くにはクラスメイトの部屋がある。大きな声で騒げば寮監が来てしまうかもしれない。
「それとも、こんな恥ずかしい姿を見られたいのか」
「ひっ」
ばり、と嫌な音がして制服のシャツのボタンが弾け飛ぶ。
大きくシャツが開かれ、胸元が下着を残して露わにされた。
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