余命宣告病棟

逢之 十神

文字の大きさ
3 / 12

余命宣告病棟第3話「それぞれの余命宣告

しおりを挟む
余命宣告病棟第三話「それぞれの余命宣告」


彼についてだが正直彼女ほど記憶にはない。
ただ、よく本の話をしていた。
色んな本を見ている彼は医学書も読んだことがあると言っていたがあぁいうものは頭のいい人が読むものだと妙に納得していた。
私はそんな意味もあるのか、彼は周りの人より多く話してくれた。

彼に友達はいないのかと聞いたことがあったが、彼は淡々と居ないとと答えた。
これからも作るつもりはないと……。
死んでいく人間に今更友達などいらないと言っていた。

それはどうなんだろうと診察後考えていた。
死んでいくからこそ人は誰かに依代して生きようとするものなんじゃないかと……。
それがないということは本当にいつ死んでもいいと思ってるんだろうか?

彼の手紙のも書いてあったが、
「あの頃の僕は何かを遺そうとも、なにかを思ってほしいとも思わなかった」
と、書いてあった。
実際最初の頃の彼には何もなかった。
心をどこかに置き去りにしてしまったかのようだった。

笑わない彼と笑う彼女。
一人きりの彼とみんなに囲まれてる彼女。
それが私は苦しかった。

二人に余命を宣告した時の事思い出す。
家族は泣き崩れた。
残された日数はそう多くはなく子どもの彼らにはとても衝撃的なものだったと思う。

彼は静かに瞼を閉じたのを覚えてる。
とても静かで静かに独りきり受け止めた。
家族は泣き崩れて
「そんなこと嘘だ」
と何度も言っていた。
しかし、彼はそんな家族に静かに言った。

「しょうがない。そう言う運命なんだよ」

しょうがないのだろうか?
本当にそれで納得してしまっていいのだろうか?
彼の選択は延命治療を続け長く生きることだった。
手紙にもあったが
「なにかしたかったわけではなくすぐ死ぬことを選択出来なかった」
と書いてあった。
誰だってそうだ。
何かあるわけではない。
でも、死ぬことは怖いはずだ。
突然の「死」は受け止められないはずだ。
だから、彼が取った選択肢はみんなが取る当たり前のことだった。

しかし、彼女は違った。
余命宣告を受けたとき唖然としていたがすぐに苦笑いに変わった。
「うん、そんな気がしてた」
そう言って笑った。
家族を慰めていた。
「大丈夫だから」
そうしきりに言って笑っていた。

そして彼女が取った選択肢は延命治療はしないで自然のまま死ぬことだった。
私はかなり衝撃を実は受けた。
やりたいことだってあるはずなのに延命治療をしないということは限りなく「死」に近いということだ。
「私は生かされた。愛された。たくさんの人と笑いあえた。だから、この死はそのまま受け入れたい」
彼女の強さを私は見た。
わははと笑って言うその姿が愛おしくさえ思えた。
だから、最期まで私が出来ることをしようと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...