6 / 12
余命宣告病棟第6話「紫陽花と写真」
しおりを挟む
余命宣告病棟第六話「紫陽花と写真」
「で、屋上なわけ?」
私たちはと言うと病院の屋上へと来ていた。
何故かと言うと彼女の言った通り紫陽花を見に雨の中来ていた。
どこへも行くことの出来ない彼らの為に屋上は緑で生い茂っていた。
そこの紫陽花を見に来ていると言う訳だ。
彼女が気が済むならそれくらいなら良いと思ったが何故かメンバーは私と彼、そして発案者の彼女だった。
流石にこの雨じゃ外に出るものはいない。
当り前だ。
わざわざ濡れて病気を悪化させかねない。
しかし私はそう長くない彼女に着いて行くという形で許可した。
そして本ばかり読んでないで、と彼も連れていかれることになった。
彼女は紫陽花を見てはしゃいでいたが私たちは鬱陶しい雨にうんざりしていた。
だが、この雨がなければ彼は彼女を知ろうとはしなかっただろう。
知りたいと思わなかっただろう。
「もう、二人ともちゃんと見てる?紫陽花だよ?紫陽花!」
彼女はむすーっとして私たちに話しかける。
彼はそんな彼女の濡れた肩をタオルで拭く。
「そうだね。君はバカぽいから言っておくけど、紫陽花は酸性とアルカリ性で色が決まってくるんだよ」
「なにそれ~。あれでしょ。アルカリ性は青くなるんでしょう?」
「へぇ意外に知ってたんだ」
えっへんと言った感じで言うも彼は苦笑いした。
「どうせ某スポーツ飲料が青いのがアルカリ性だからとかそんな覚え方でしょう?」
「あ、バレた?」
彼と彼女はそんな他愛もない話をしながら並んで紫陽花を見ていた。
私はと言うと少し離れたとこから二人を見つめていた。
そういえば、と思い私は彼らに携帯を向けた。
「二人ともこっち」
そう声をかけると二人は振り向いた。
私はすかさず、ぱしゃっと、カメラで二人を撮った。
「いいツーショットだ」
「あーあーあー!!先生ひどーい!」
彼女は慌てて走り寄り消すように言って来たが私は笑って保存をした。
残り少ない彼女と彼を忘れないために……。
何時かその日が来たとき彼女にも彼にも渡そうと思う。
こんな日々があったということを思い出して欲しいから。
「先生、子供じみたことするんですね…」
「いつか君たちにも渡すよ。私は君たちの記録係だ」
そう言って笑って見せた。
彼女はそれに笑い「いっぱい撮ってよ」と言って来た。
これは仕事を増やしてしまったな、と思った。
それでも今笑うなら、と思い頷いた。
彼は不満そうだったが彼女が笑っているのを見て何も言わなかった。
彼なりに納得してくれたんだろう。
それから私は何枚か彼女の希望に添い写真を撮った。
笑ってる彼女。
どこまでも純粋で曇りなく笑う。
彼はそんな彼女の横で笑いもせず立っていた。
1時間ほど居ただろうか?
身体も冷え始めてるので帰る様に私は声をかけた。
「楽しい時間ってあっという間。ずっと続けばいいのにね」
そう言って紫陽花の花に触れた彼女をこっそりと撮ったらなんだか女優の写真集ようなものになっていた。
彼はそう言った彼女の横まで行くと
「楽しいことも苦しいことも半々なんだって。神様はそういう風に僕たちを創ったんだって」
「へ~、神様信じるんだ?」
「例え話だよ。信じてるわけじゃない」
彼なりに励ました、と言った形だろうか?
それでも二人は前より仲良くなれただろう。
「さぁ、二人とも。病棟内へ」
それぞれ濡れた服を着替えるため自分の部屋へと戻った。
私も濡れた白衣脱ぎ新しい白衣へと着替えていた。
「先生なんかいいことありました?」
着替えているとナースから声がかかった。
私はそれに吃驚した。
「いや?散々な目に逢っているがな……」
「とても嬉しそうに見えましたけど勘違いでしたか?いつも感情を出さないからいいことあったのかと思いましたが気のせいでしたか」
嬉しそう?
私が?
この病棟に来てそんな事忘れていた。
いや、忘れなければきっと私が壊れてしまうだろう。
ここは『死』しかないのだから……。
彼の手紙にも紫陽花を初めて見に行った日のことが書かれていた。
『紫陽花を見に行った日のことを覚えていますか?あの日あんなにはしゃぐ彼女を見て僕も内心楽しく思ってました。
まだ、僕たちは笑って過ごして行けるんだと嬉しく思いました。
そして、先生が撮ってくれた写真も楽しみで仕方なかった』
「で、屋上なわけ?」
私たちはと言うと病院の屋上へと来ていた。
何故かと言うと彼女の言った通り紫陽花を見に雨の中来ていた。
どこへも行くことの出来ない彼らの為に屋上は緑で生い茂っていた。
そこの紫陽花を見に来ていると言う訳だ。
彼女が気が済むならそれくらいなら良いと思ったが何故かメンバーは私と彼、そして発案者の彼女だった。
流石にこの雨じゃ外に出るものはいない。
当り前だ。
わざわざ濡れて病気を悪化させかねない。
しかし私はそう長くない彼女に着いて行くという形で許可した。
そして本ばかり読んでないで、と彼も連れていかれることになった。
彼女は紫陽花を見てはしゃいでいたが私たちは鬱陶しい雨にうんざりしていた。
だが、この雨がなければ彼は彼女を知ろうとはしなかっただろう。
知りたいと思わなかっただろう。
「もう、二人ともちゃんと見てる?紫陽花だよ?紫陽花!」
彼女はむすーっとして私たちに話しかける。
彼はそんな彼女の濡れた肩をタオルで拭く。
「そうだね。君はバカぽいから言っておくけど、紫陽花は酸性とアルカリ性で色が決まってくるんだよ」
「なにそれ~。あれでしょ。アルカリ性は青くなるんでしょう?」
「へぇ意外に知ってたんだ」
えっへんと言った感じで言うも彼は苦笑いした。
「どうせ某スポーツ飲料が青いのがアルカリ性だからとかそんな覚え方でしょう?」
「あ、バレた?」
彼と彼女はそんな他愛もない話をしながら並んで紫陽花を見ていた。
私はと言うと少し離れたとこから二人を見つめていた。
そういえば、と思い私は彼らに携帯を向けた。
「二人ともこっち」
そう声をかけると二人は振り向いた。
私はすかさず、ぱしゃっと、カメラで二人を撮った。
「いいツーショットだ」
「あーあーあー!!先生ひどーい!」
彼女は慌てて走り寄り消すように言って来たが私は笑って保存をした。
残り少ない彼女と彼を忘れないために……。
何時かその日が来たとき彼女にも彼にも渡そうと思う。
こんな日々があったということを思い出して欲しいから。
「先生、子供じみたことするんですね…」
「いつか君たちにも渡すよ。私は君たちの記録係だ」
そう言って笑って見せた。
彼女はそれに笑い「いっぱい撮ってよ」と言って来た。
これは仕事を増やしてしまったな、と思った。
それでも今笑うなら、と思い頷いた。
彼は不満そうだったが彼女が笑っているのを見て何も言わなかった。
彼なりに納得してくれたんだろう。
それから私は何枚か彼女の希望に添い写真を撮った。
笑ってる彼女。
どこまでも純粋で曇りなく笑う。
彼はそんな彼女の横で笑いもせず立っていた。
1時間ほど居ただろうか?
身体も冷え始めてるので帰る様に私は声をかけた。
「楽しい時間ってあっという間。ずっと続けばいいのにね」
そう言って紫陽花の花に触れた彼女をこっそりと撮ったらなんだか女優の写真集ようなものになっていた。
彼はそう言った彼女の横まで行くと
「楽しいことも苦しいことも半々なんだって。神様はそういう風に僕たちを創ったんだって」
「へ~、神様信じるんだ?」
「例え話だよ。信じてるわけじゃない」
彼なりに励ました、と言った形だろうか?
それでも二人は前より仲良くなれただろう。
「さぁ、二人とも。病棟内へ」
それぞれ濡れた服を着替えるため自分の部屋へと戻った。
私も濡れた白衣脱ぎ新しい白衣へと着替えていた。
「先生なんかいいことありました?」
着替えているとナースから声がかかった。
私はそれに吃驚した。
「いや?散々な目に逢っているがな……」
「とても嬉しそうに見えましたけど勘違いでしたか?いつも感情を出さないからいいことあったのかと思いましたが気のせいでしたか」
嬉しそう?
私が?
この病棟に来てそんな事忘れていた。
いや、忘れなければきっと私が壊れてしまうだろう。
ここは『死』しかないのだから……。
彼の手紙にも紫陽花を初めて見に行った日のことが書かれていた。
『紫陽花を見に行った日のことを覚えていますか?あの日あんなにはしゃぐ彼女を見て僕も内心楽しく思ってました。
まだ、僕たちは笑って過ごして行けるんだと嬉しく思いました。
そして、先生が撮ってくれた写真も楽しみで仕方なかった』
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる