余命宣告病棟

逢之 十神

文字の大きさ
7 / 12

余命宣告病棟第七話「夕陽」

しおりを挟む
余命宣告病棟第七話「夕陽」


あれから、彼女に誘われ色んな所を散歩に付き合わされた。
それは些細なところから隠れ家的な場所まで……。
本当によく知っているな、と思うとこまで付き合わされた。

それは一種の冒険的なものさえ感じ始めてた。
勿論写真は撮らされたが…。
それは些細な彼女と彼の日常だった。
笑う彼女、不満げな彼。

そんな当たり前がどれほど続いていただろうか?
とても長く感じたが、きっと日数はそんなでもないんだろう。
その代わり、写真は山のように撮らされた。

溢れる写真を机に広げる。
いつの間にこんなに撮ったんだろうかと思うほどだった。
そしていつものように彼女に呼び出されて屋上へと向かう。
足取りは軽かった。

「先生遅いー」

「私にも仕事と言うものがあるんだから我慢しなさい」

2人が花壇で何かやってるのを見て近くに寄る。

「先生~夏になったら楽しみにしててよね!」

「なんの話だ?」

「吃驚させたいらしいよ。めんどくさいから付き合ってあげてよ」

そう言うと二人は花壇で作業をする。
私は少し離れれたベンチに座り写真を撮る。

文句を言いながらも笑ってる彼に少しは彼女の影響を受けているんだろうかと考える。
自分らしく生きているんだろうかと思い見守る。
今まで見せたことのない顔で笑って楽しんで、そんな姿を見せてくれている。

そんな梅雨が明ける頃だった。
晴れ間を見せる空を見上げ彼女は今日も元気そうにしている。

「せんせー。ねぇねぇ夏になったらみんなで花を見よう。大きなお花!」

「花火とかもいいね」

「それ賛成!」

2人は盛り上がっていたが本当はそんな時間が彼女たちに残されているのか疑問でもあった。
笑って過ごせる日々に終わりは近づいていた。


「あれ?先生お出かけですか?」

「少し出かけてくる。なにかあれば連絡してきてくれ。急いで戻る」

私は一人買い物に来ていた。
正直あんまりこういうとこで買い物には来ないので迷う。
お目当てのものを見つけてもまだ悩む。
なぜなら種類が色々あるからだ。
彼女が喜びそうなものや彼なら好きかもしれない物とか考えるとなかなか選びきれない。

「お探し物ですか?」

急に店員に話しかけられ慌てる。

「あ、いや大丈夫です」

店員はお「お困りならお聞きください」と言って下がった。
私は長居は無用だなと思い適当に選びささっと店を出た。
慣れないことはするものではないなと思った。
しかし、買えた満足もあった。
二人の顔が浮かぶ。

急ぎ足で私は病院へと戻った。
いつもより赤い夕陽を二人は見ているだろうか?
何気なく写真を撮る。
見えてるだろうか?
この景色を……。
君たちのその瞳に……。

「すまない、戻った…が、何故君がいる?」

「せんせー遅いよ~」

「すみません、どうしても先生を待ちたいと言うものですから…」

「我儘なんだよ、君は」

そう言いながらも彼もちゃっかりとお茶を飲んでいる。
全く頭が痛くなる子どもたちだ。

「先生写真撮るの下手過ぎるよー。これなんか私ぶれてるじゃん!」

机に広げた写真を一枚取り文句を言う。
隠しておくのを忘れていた。
まさかここまで来るとは思わなかったが彼女ならあり得なくもない。

「じゃぁちょっと待ってくれ」

私はそう言うと二枚写真をコピーした。
そして2人に渡した。

「綺麗!」

「夕陽ですか?」

「もう沈んでしまったが今日の夕陽は一段と綺麗だったからな」

二人は顔を合わせて笑う。
まるで小さな子どもが小さな事で喜んで笑いあってるようだった。

私は白衣を着て夜の診察の準備を始めた。
と、言っても私の担当はこの二人なのだが……。

今日も2人が生きてることが私は嬉しかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...