余命宣告病棟

逢之 十神

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余命宣告病棟第8話「花火大会」

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余命宣告病棟第八話「花火大会」


夕方に事前に二人には検査をしてもらっていた。
私はその結果を見ていた。

-危うい-

そう、結果が思わしくない。
段々悪くなっているのは当たり前なのだが今はそう悠長に構えてる場合ではないのかもしれない。
【死】は近いと判断していた。

だが、だからと言って2人にそのことを告げても意味はないだろう。
そう言う二人なのだから。
私はカルテに少し書き込みをしてしまった。

「先生、今日は帰らないのですか?」

私は既に帰るはずの時間を数時間過ぎても部屋にいた。
勿論意味があるから残っていた。

「あぁ、約束があって今日は遅くなりそうだ」

「あら、珍しいですね」

どうやら私が約束があって残ってることは看護師には珍しいらしい。
私は気にせずにただ時間が過ぎるのを待った。
暗くなり辺りは静かになり患者たちも就寝をし始めたころ私は袋を片手に屋上へと向かった。

「せんせー最後ー」

そこにはあの2人がいた。
それぞれ準備は出来てるようだった。

「私にも予定と言うものがあってだ。カルテの処理やら……」

「おおー流石大人!面白そうなの選んでる~」

私が話してるというのに彼女は私が持って来た袋を覗き込んだ。
全くと言っていいほど私の話は聞かない彼女に彼はクスクスと笑った。

「先生完全に彼女のペースですね」

全くだ。
今回の事も許可を取るのにどれほど大変だったか……。
しかし、私はそれだけこの二人の先を知りたかった。
この先の未来を見てみたかった。

言い方は悪いがどんな風に死んで行くのか見届けたかった。
だから、それまでは出来る限り自由にいて欲しかった。

「さぁ、三人揃ったし始めよう」

彼女がろうそくを立てて火をつけた。
そう、私たちは花火の約束を守ろうとしていた。
時期的には少し早いがそれでも残された時間を考えれば早めがいいに決まってる。

私たちはそれぞれ用意した花火を見せ合いどれからやるか話しあったりしながら小さな『花』を楽しんだ。
彼女は大はしゃぎだった。
彼も笑ってくれていた。
私はそれだけで満足だった。
花火なんかより今は彼と彼女が笑ってることがなにより嬉しかった。

「最後はやはりこれですよね」

彼はそう言うと線香花火を出して渡し来た。

「じゃぁ誰が最後まで残るかだね!負けないぞ~」

「早く落ちたら早く死にそう」

「悪い冗談だな…」

そんな冗談さえ今の楽しさには敵わないらしい。
私たちは一斉に火をつけた。
正直どんな結果でも構わなかった。

一番先に落ちたのは彼女だった。
次に彼。
そして私はと言うと…。

「……これは私は死なないと言うことか?」

彼女は爆笑した。
彼は笑いを堪えてるようだった。

「あ、でもなんかジンクスあったよね?なんだっけなぁ……」

「落ちなかったら…幸せなことが起こる、だ」

私が答えると二人は吃驚した様にこちらを見た。
私にも願い事があった頃は多くの線香花火をしたものだ。

「不思議な顔をしてるな。とりあえず撮っておくか」

そう言うと二人は慌てて花火に戻った。

「でもー私が先に落ちたから私が一番先に死ぬんだね」

儚い顔で彼女は言った。
落ちた花火はもう消えて光ってはいないはずが私にはそれはまだ輝いてるようにさえ見えた。

「冗談だよ?僕が先に入院したから僕からかもよ?」

「分かってる」

彼なりにフォローを入れたんだろう。
だが、彼女はヘラっと笑い残った線香花火を続けた。

「いつかみんなで大きな花を見ようね!」

そう彼女は言って私たちの花火大会は終った。
しかし、彼女の言葉は叶うことはなかった。

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