異世界に召喚された高校生、最弱勇者認定されたので料理人にジョブチェンジ!

苺姫 木苺

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嫌いな奴と遭遇

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「思った以上に寝てもうたわ……多分、11時位やな。宿の朝食は10時までやから外で食べることにするしかないな」
ゼンガに起こされた事など忘れ波音は準備をして外に出た。
「あ!ナオさん!おはようございます!」
波音が泊まっている宿の女将の娘に「おはようさん」と挨拶し、波音はお腹をぐーぐー鳴らしながら宿から出た。




もうすぐお昼もあって外は人が沢山いる。波音は宿のすぐ側の露店で肉焼きを購入し、道の端により串焼きをもぐもぐし始めた。
「ん、中々美味いやん。焼き鳥に似てるなあ」
波音がもぐもぐと肉焼きを食べていると路地の入口から、ボロボロな獣人の子どもが波音が食べている肉焼きをじーっと見ている。
波音は少し考えてから「……こっちに来ぃ。乱暴はしないから」と手をちょいちょいと手招きして獣人の子どもを呼んだ。




「これ、食べてええよ」
路地の入口に近い人達が波音の行動に驚いている。どの国でも獣人を蔑むのが当たり前な所が多い中、波音はそれを気付いていたが気にすることなく食べ物を与えたのだ。
「お兄さん、いいの?あの、僕獣人だよ?僕のお耳見えてるよね?」
「ええよ、お食べ。僕なお金沢山持っているんよ。君にご飯あげたくらいで困らへんからこの肉焼き食べな」
獣人の子どもはえぐえぐと泣きながら、波音から貰った肉焼きを頬張っている。
「おい、しいな……ひっく、こんなに美味しい、ひっく、ご飯食べたの初めて!ありがとう、お兄さん!」
獣人は露店で野菜でさえ買えるのが珍しい為、肉焼きなど食べたことがない者が多い。その為、獣人は自給自足を強いられているのだ。




「あ!!柊!!!何でここにいるんだ?!ずっと探してたんだぞ!」と大声が聞こえる。
「うわ、面倒いやつ」と波音は声を落とさず発したが、相手には聞こえていなかったようだ。
「相沢何でここにおるん?」
「お姫様から俺達ものすごい頑張っているからって外出許可貰えたんだ!」
「な!!」と相沢は子分1号、2号に話しかけた。どうやら街に出てきているのは子分だけのようで、相沢を惚れている1号、2号はいない。
「柊、その汚い子どもなんだ?お姫様が言っていたが獣人は病気とか持ってるし、忌避されるべき人種だから近づいたら危ないんだぞ!」
獣人の子どもは猫耳としっぽをペショっとし項垂れた。
「あ?うっさいわ!ぼけ!!この子は僕の家族や!そんなこと言うならいてこますぞ」と波音は相沢達に怒鳴り、獣人の子どもの手を握ってその場を離れたり





「ごめんなあ、僕の知り合いが」
「う、ううん!あ、あの僕の事家族って、あの」
波音は獣人の子どもの目線に合わせてしゃがみ、「もし、君に家族がいないんやったら……だったら僕の家族にならない?僕な料理人なんよ、君に美味しいご飯沢山作ってあげられるんよ」と関西弁と標準語が混ざりながら喋った。
「い、いいの?僕獣人だよ?力が強い獣人でもないよ?ただの猫なんだよ?そ、それでも家族になっても、いいの?」
「ええから言っているんよ。それに僕な猫ちゃん好きなんよ。僕、ナオっていうんよ。君は?」
「えと、ミオル」
波音はミオルを抱き上げ「ミオル、これからよろしゅうな」と微笑んだ。




波音はそのままミオルを抱き上げたまま宿に戻った。宿の人達はミオルのことを見て驚いていたが、差別意識は無いようで快く出迎えてくれた。



波音とミオルは借りている部屋に入った。



「あの、ナオさん」
「ちゃうちゃう。ナオにぃて呼んでくれへん?」
「チャウチャウ……えと、ナオ、にぃ」
波音はミオルが兄呼びして照れているのを見て、萌えて悶えている。
「あの、ナオにぃの喋り方って」
「ああ、僕のこと喋り方はな故郷の喋り方なんよ。ミオルには分からないことも多いだろうし普通に喋るな」
「ううん!ナオにぃに合ってていいと思うから、そのままでいいよ!分からないことは何回も聞いちゃうけど、それでも迷惑じゃなければ教えて、欲しいな」とミオルは喋りながら、しっぽを波音の脚に巻き付けた。猫は好きな人にはしっぽを巻き付け愛情表現をするのだ。
「ありがとぉな。ならこのままいくわ。ミオルは何歳なん?今のは何歳なの?ってことだよ」
「えっと、5歳!」
「そうなんやね。僕は17歳なんよ……話す前に汚れ落とすのが先やな」
波音が借りている部屋は湯船は無いがシャワー擬きだけはある為、ミオルの汚れをお湯で洗い流した。



汚れを洗い流したミオルはとても綺麗になり、耳の模様まで分かるようになった。そしてなんと、ミオルは男にしては珍しい三毛猫の獣人だったのだ。




この世界でも雄の三毛猫は珍しく、それどころか地球よりも価値は高く奴隷狩りに狙われやすい。








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