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藍祐介と神野樹

初めの

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あれから、何日が経っただろう。

「おはよう、樹」

「……」

藍君の挨拶に、軽く頭を下げる。

言葉では返せないけど……ある程度藍君とはお話出来るようになった。


藍君はあの時、僕のせいで友達が離れてしまったけど……

二ノ宮さんや尾上君といった、藍君に親しくする人も現れてきた。


藍君とその二人の会話を聞いていると、今度の休みには映画にいくみたい。


羨ましいなあ……藍君と映画行けるなんて。


僕も藍君と二人で映画……ってそれデートじゃないか。


あ……藍君と……デート。



か、顔が熱い。



「朝礼初めるぞー!」



僕の思考が暴走し初めた時、先生の声で覚める。


「……」


僕は、相変わらず中々喋られないけど。

藍君と出会ってから、藍君にその、恋をしてからの僕は……ずっと明るくなれた。

学校も、すごく楽しい。


楽しい理由の殆どが藍君なんだけど。

……って、授業始まってるのになに考えてるんだ、僕は。集中しなきゃ。


―――――――


あっと言う間に1日は過ぎて、僕は……藍君と学校を帰る。

だけど、藍君は明日の事について少し話しているようだ。あ、終わったかな?


教室の扉辺りで僕はうろうろとして待っていると、藍君が僕に向かって来てくれる。


「ああ、ごめんな。待たせ――」


その時だった。


教室に見慣れない魔法陣のような何かがが浮かび、光る。


その光を見て、何か悪い予感がして逃げようとしたけど、動けない。


やがて光は爆発するように消えて、同時に僕達も……この教室から消えた。


「――樹!」


藍君のその声が、この世界で聞く最後の音。



―――――――――――



気付けば……僕は、クラスメイトは見慣れない場所に居た。


そこからは僕はよく覚えていない。


この世界はどうとか、僕達が勇者一行で喚ばれたとか、これから僕たちは戦わなければならないとか。


どれも現実味が無くて、頭がおかしくなりそうだった。




それでも……何か、僕の身体は、前と少し違う感覚なのは分かる。

この感覚が、僕に違う世界に来たという実感を少しだけ与えてくれた。

同時に、言い知れぬ不安感が、僕を包む。


僕は、これからどうなってしまうんだろう?


―――――――――――――――――――――――


自分の部屋に案内されてからも、それは続いた。



その、もしかしたらこれは……夢なのかもしれない。

そうだ。


これは夢、そうにちがいない。



こんな非現実な事、起こるわけない。


コンコン。




僕の思考が変な方向へ向かっていった時。


ドアから、ノックの音が木霊する。


僕の部屋……だよね。


もしかして……あ、藍君かな?



鍵を開けると、藍君が居た。


藍君を部屋に手で案内して、僕は床に座る。

藍君も、床に座り話を始めて。


「ほんと、夢か何かだと思ってる」


ふふ、僕と同じこと考えてるんだね。


夢か現実か頭が混乱しているせいか、僕は……藍君の頬を、つねった。


「はは、これは夢じゃないな」


なんて、反応を返す藍君。

はは、こんな事して怒らないって、やっぱり夢かな?



「……」



――もし、これが夢ならば。現実じゃないなら。




「………その………」



僕が……しゃ、喋れた。



夢でも嬉しい。藍君に向かって始めて喋れたんだから!



「ど、どうした」



そう言う藍君。

夢なら、いつか覚める。それなら、終わってしまう前に……一番言いたい事を藍君へと。



「……」



僕を助けてくれて。

僕の隣に居てくれて。



本当に……





「…………あ……ありがと……う」




い、言えた……




同時に、胸が、心臓の鼓動が早くなる。


顔も赤く、頭が真っ白になって、混乱は解けた。



この胸の動悸は紛れもなく……現実のもの。

さっきまで見ていた藍君の顔が、見れなくなって。



僕はやっと……ここが『現実』と気付くのだった。




――これが現実ならば。夢じゃないなら。



僕は、今藍君に、僕の声を……


僕はこれまでにないぐらい恥ずかしくなっちゃって、赤くなって。


このままじゃ、僕、おかしくなっちゃうよ……



「――!」



藍君が何か言ってから部屋から出て行く。



千鳥足で移動し、ベッドへダイブ。



僕は、まだ頭が冷めずに思考が出来なくて、ベッドに顔を埋めていた。



―――――――――――――――――


何分そうしていただろうか。




僕は冷めた頭を上げて、思考する。







…………僕、藍君と喋ったんだ。あの、藍君と。




「……ぅ……」




嬉しさと恥ずかしさが無くなるまで、僕はまた、顔を埋めるのだった。


……コンコン



……え、あ、あ……藍君?



駄目だよ、まだ僕……心の準備が全然――




「失礼します、晩餐会の案内に……どうしました?」




……メイドさんだったみたいで。



び、びっくりしたあ……


「……」


僕は黙って首を振り……格好を直して、メイドさんについて行く。



晩餐会か、本当に……違う世界に来たんだね。





異世界の晩餐会というものに興味がありつつも。

次藍君に会った時どんな顔すれば良いんだろう……とか考えてしまう。




そんな思考が巡り巡って、気付けば僕は……会場に着いていた。
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