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向合。
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みんなが忙しなく準備を初めている。僕は座りながら本日の予約リストを指でなぞり始めていた。
(今日の患者さんは午前の部が4名。 午後の部が6名…と。んー、今日はかなり多いな。)
我々が行っているカウンセリングは全ての障害を障害とは捉えないことが主だ。僕も心臓に障害を持ってはいるものの、他の子達の様に前線でカウンセリングするのには向いていないと考えた。過去には前に出てカウンセリングをしていたこともあったが、それぞれの子達にはそれぞれの違う障害がある。しかし適材適所という言葉があるように、その障害がこの仕事では同じ悩みを持つ人たちの架け橋にもなれる。もちろん僕も障害を持っているから僕が必要とされるところもあるだろうとは思うが、目に見える障害がある訳ではないし、あの子達は僕よりももっともっと辛い思いをしてきたから、僕は退くことを決めた。その結果、現在は事務作業や受付業務がメインとなっている。
僕は鈴音くんが入れてくれたコーヒーを持って受付に座り、マックブックの電源ボタンを押した。ディスプレイの立ち上がりを待つ間に仕事用のスマートフォンを確認すると、不在着信が届いていた。名前を見ると、『社長』とあった。掛け直してみる。
「あぁ!俺だけど!」
「あ、先輩。お疲れ様です。」
やけに先輩の声が明るかった事を考えると、アメリカでの勧誘は上手くいっていないんだろう。彼は頑なに断る客や女性に目がないしつこい人間だ。勧誘を諦めないと言う点ではこの人以上に向いている人はあまりいないとは思うが。これはいいように捉えすぎだと思った。
「何かご用でしたか?」
「あぁ。4時間ぐらい前に電話かけてた。てめぇさっさと出やがれ。」
「勘弁してくださいよ先輩。そっちとの14時間なんですから時差考えてください。」
いつもの事だが呆れる。
「るっせぇな。社会人なら仕事用のケータイぐらいいつも持ってるもんだろうが。」
「それを言うならあなたも社会人でしょう。」
すると突然電話が電話が途切れた。
(切ったな・・・)
こちらからかけ直すのも癪なので掛け直さないことにした。すると30秒もしないうちに、また電話がかかってくる。
「俺だコラァ!」
「切ったのはあなたでしょう!!」
「知るかぼけぇ!!!」
こっちのセリフですと言おうとした時、みんなが心配そうにこちらを見ていることに気付いた。中でも海くんが呆れたような怒ったような複雑な顔をしていたのを見て、心配ないよ、と微笑み返してやる。なんとなく先輩のペースにズブズブとハマっている気がして可笑しかった。
「そんなことはどうでもいいです。要件はなんでしょうか。」
「あぁお前のペースに巻き込まれちまったな。」
(こっちのセリフです・・・)
「用ってのは新しい患者の件と、海の件だ。どっちから聞きてぇ?」
「じゃあ新しい患者さんの件の方を先に。もし海くんに話があるなら先輩から直接言ってあげてください。」
「んん。なんつうかな。海の件に関してはできれば海と直接話してぇと思ってんだ。だからお前からは言わなくていいが、お前は知っとく方がいいと思ってな。」
声には出さなかったが少し驚いた。そんな事を僕が知っていていいものなのかわからなかったし僕に話す理由がよく分からなかった。電話口では言えないということはおそらく真剣な話なのだろう。とはいえなんの意図もなくそんな事を言い出すとも思わなかったし、これ以上聞くのは野暮だろうと思う。なによりこれ以上は家族の話になってくる。そこまでは僕が踏み込むのはよくないだろう。僕は言いかけた言葉は飲み込むことにした。
「分かりました。その代わり、あんまり海くんに心配させてあげないでくださいね。いつもの事とはいえ彼なりにとっても心配しているようですから。」
「わかってる。今回の件が終わったらすぐそっち戻るわ。そのまま海に直接話しに行くつもりだからよ。」
「そうですね。それがいいと思います。
「んで新しい患者の件だけどな、今度の子は海に担当させようと思ってんだ。」
「はぁ。それで?」
「・・・」
「・・・どうしました?」
「あー・・・」
電話口でなぜか先輩は少し黙り込んだ。それは時間でいうとほんの数秒だっただろう。しかしその間だけでも普段とは違う、何か言い出しにくい空気になったのを僕はなんとなく感じ取っていた。
「・・・んでな。カウンセリングの場所なんだがよ。・・・患者の事情で事務所ではやれねぇことになった。」
「・・・はい?」
ここではやれないと一体どういうことなのだろうか。アメリカでやるということだろうか。もしもそうなのだとしたらさすがに先輩の言うことでも納得はできないし、勝手だとかそういう話ではなかった。さすがに強引すぎる。というよりも意味がわからない。毎回カウンセリングの度に国を移動している余裕なんてどこにもない。というか勧誘に行ったんじゃなかったのか。
「・・・あの・・・意味がわかりませんが。というか事務所でできないって、じゃあどこでやるんです?」
「あぁそこは安心しろ。場所は別にある。もちろん日本国内でな。」
それを聞いて僕は安心した。心配しすぎだった。幾ら先輩でもさすがに毎回毎回国を横断させるわけはなかった。
「ただまぁな。その場所ってのが最大の問題なんだがなぁ。」
「まぁそりゃそうですよね。でも事務所でやれないだけだったら患者さんがこっちに引っ越してくることになるでしょうし、そこに訪問してっていうのも可能なんじゃないですか?」
「訪問・・・っていうか。・・・なんつうのかね。」
また先輩は言い淀む。今度ばかりはなぜ言い淀むのか分からない。ただの訪問だけなら海くんにかかる負担もあまりないだろう。いざとなれば僕が海くんの送り迎えもできるから、海くんも少しは休めるだろう。そのぶん他の子にも負担がかかるかもしれないけど、そこは予約の日程をずらせばフォローできることではあるからなんとか出来るだろう。そう考えればさほど問題でもないと思う。
「大丈夫ですよきっと。僕にフォローできそうなら頑張ります。今事務所で一番負担がかかってるのは海くんですから、海くんも少しは休ませられるだろうし。なんとかなりますよ!」
「ん!?そうか!頼まれてくれるかぁ!?んじゃあ心配ねぇかな!!」
「はいきっと!それでどこなんです?」
「おう!海ん家!!アメリカから移住してお前らに任せっから!!!んじゃな!」
そこで電話が切られた。そしてそれから表情が凍りつく。 みんなが賑やかに準備をしている声だけが部屋に響いている。
(・・・・・・・・は?)
~Shift~
すばるさんが話している相手が父さんだというのはすぐに分かった。あのマイペースなすばるさんをあんなに振り回せるのは僕の父さんぐらいだから。あの神楽 真一(かぐら しんいち)という男は罪悪感を感じているのだろうかとよく考えてしまう。僕はすばるさんの負担になってるんじゃないかと思うと心配と申し訳なさが入り混じった複雑な心境になった。かなり心配だったけどそれでも父さんの良き理解者だ。伊達に長い時間父さんの身勝手に付き合わされているわけではない。そういう意味ではすばるさんは僕たちの会社で父親のような立ち位置だと思う。
みんなが座敷に戻ってきて名札を首からかけ始めているようで、僕も春義くんに名札を下げてもらう。後は患者さんが来るまで待つだけだった。うちの事務所は患者さんの面談室が一つしかないみたいで、誰かが担当の患者さんのカウンセリングをしている間は、こんな風に座敷に集まってお茶を飲んでたり話題に花を咲かせている。涼音さんはピアノが得意で、よく音楽を聞かせてくれる。春義くんは桜さんのことを弄って遊んでたり涼音さんを弄って遊んでいたりと、だいたい誰かを弄って遊んでいる。桜さんは可愛いものが好きで、みんなに可愛いお化粧をして遊んでたり、最近の楽しみは涼音さんに可愛らしい服を着せたり、春義くんに女装をさせたりと、なんだか変わった趣味をしている。
患者さんを待っていると、唐突に春義くんが口を開いた。
「よくよく考えたら、すばるってすげぇ我慢強いよな。海の親父さんのあの自由奔放な感じ、ぶっちゃけ男としては憧れる。まぁでもちょっと罪悪感でいっぱいになりそうだけど。」
「そうよね!自由奔放な男って感じで憧れる!春義と違ってね!」
桜さんはそれに同意した。
「うるせぇなぁ。ていうか俺もまぁまぁ自由奔放だっつうの!」
「自分で自由奔放って言ってるうちはまだまだ全然男って感じしないからね。」
(・・・お前こそ女の魅力のかけらもないガサツ女のくせに・・・)
春義くんは小声でボソッと言ったのを桜さんは聞き逃さなかった。
「・・・なんて?」
「なんでもないです。」
声がガタガタと震えていた。桜さんはきっと僕には分からないくらい怖い顔をしているんだろう。春義くんの声の震えだけでそれが感じ取れた。すると僕の手に点字の紙が握らされる。
「・・・んと。涼音さんが、春義くん自業自得だって。」
「うわ・・・涼音までそんなこと言うのかよ・・・。」
春義くんはうなだれてるみたいだった。でも僕そもそも父さんに憧れて欲しくない。
「なんか水差すようで悪いけど、僕はあの父さんのことを憧れの眼差しを向けられるのが不思議でしょうがないな。」
「まぁ実際そうかもしれないけどな。でも親っさんはパッと見もワイルドでいいんだぜ?」
「それ以前の問題だよ・・・別に嫌いなわけじゃないんだけどさ。」
僕は頭を抱える。父さんの身勝手に憧れちゃダメだと思うんだけど、世の男性からするとどうも父さんみたいな生き方は憧れの対象みたいだ。僕はそう言うことに疎いからよく分からないけど、あの人は憧れられるほどいい性格してないし、そこまで深いこと考えてないだろうと思う。やれと言われたことだけやれば何も言われないから従っているだけで。すると春義くんケラケラと笑う声が聞こえた。
「まぁそんな風に悪い方にばっか考えんなって。お前の悪い癖だぜ?いろいろ感じることは多いと思うけど、実際そんだけ心の広いお前だから安心して親っさんも自由にできんだろうからな。」
それはそうだなと思う。うん。実際いいところではあるんだろう。『自由』っていうのも。
『あ、こんにちは!』
受付の方からすばるさんの声が聞こえた。患者さんが来たみたいだった。
「最初の面談の予約は海くんだよ!海くーん!」
「あ、はい!わかってます!今行きますね!」
遠くに向かって叫ぶと、春義くんが僕の体を支えて立ち上がらせてくれた。これから今日の最初の面談が始まる。
(今日の患者さんは午前の部が4名。 午後の部が6名…と。んー、今日はかなり多いな。)
我々が行っているカウンセリングは全ての障害を障害とは捉えないことが主だ。僕も心臓に障害を持ってはいるものの、他の子達の様に前線でカウンセリングするのには向いていないと考えた。過去には前に出てカウンセリングをしていたこともあったが、それぞれの子達にはそれぞれの違う障害がある。しかし適材適所という言葉があるように、その障害がこの仕事では同じ悩みを持つ人たちの架け橋にもなれる。もちろん僕も障害を持っているから僕が必要とされるところもあるだろうとは思うが、目に見える障害がある訳ではないし、あの子達は僕よりももっともっと辛い思いをしてきたから、僕は退くことを決めた。その結果、現在は事務作業や受付業務がメインとなっている。
僕は鈴音くんが入れてくれたコーヒーを持って受付に座り、マックブックの電源ボタンを押した。ディスプレイの立ち上がりを待つ間に仕事用のスマートフォンを確認すると、不在着信が届いていた。名前を見ると、『社長』とあった。掛け直してみる。
「あぁ!俺だけど!」
「あ、先輩。お疲れ様です。」
やけに先輩の声が明るかった事を考えると、アメリカでの勧誘は上手くいっていないんだろう。彼は頑なに断る客や女性に目がないしつこい人間だ。勧誘を諦めないと言う点ではこの人以上に向いている人はあまりいないとは思うが。これはいいように捉えすぎだと思った。
「何かご用でしたか?」
「あぁ。4時間ぐらい前に電話かけてた。てめぇさっさと出やがれ。」
「勘弁してくださいよ先輩。そっちとの14時間なんですから時差考えてください。」
いつもの事だが呆れる。
「るっせぇな。社会人なら仕事用のケータイぐらいいつも持ってるもんだろうが。」
「それを言うならあなたも社会人でしょう。」
すると突然電話が電話が途切れた。
(切ったな・・・)
こちらからかけ直すのも癪なので掛け直さないことにした。すると30秒もしないうちに、また電話がかかってくる。
「俺だコラァ!」
「切ったのはあなたでしょう!!」
「知るかぼけぇ!!!」
こっちのセリフですと言おうとした時、みんなが心配そうにこちらを見ていることに気付いた。中でも海くんが呆れたような怒ったような複雑な顔をしていたのを見て、心配ないよ、と微笑み返してやる。なんとなく先輩のペースにズブズブとハマっている気がして可笑しかった。
「そんなことはどうでもいいです。要件はなんでしょうか。」
「あぁお前のペースに巻き込まれちまったな。」
(こっちのセリフです・・・)
「用ってのは新しい患者の件と、海の件だ。どっちから聞きてぇ?」
「じゃあ新しい患者さんの件の方を先に。もし海くんに話があるなら先輩から直接言ってあげてください。」
「んん。なんつうかな。海の件に関してはできれば海と直接話してぇと思ってんだ。だからお前からは言わなくていいが、お前は知っとく方がいいと思ってな。」
声には出さなかったが少し驚いた。そんな事を僕が知っていていいものなのかわからなかったし僕に話す理由がよく分からなかった。電話口では言えないということはおそらく真剣な話なのだろう。とはいえなんの意図もなくそんな事を言い出すとも思わなかったし、これ以上聞くのは野暮だろうと思う。なによりこれ以上は家族の話になってくる。そこまでは僕が踏み込むのはよくないだろう。僕は言いかけた言葉は飲み込むことにした。
「分かりました。その代わり、あんまり海くんに心配させてあげないでくださいね。いつもの事とはいえ彼なりにとっても心配しているようですから。」
「わかってる。今回の件が終わったらすぐそっち戻るわ。そのまま海に直接話しに行くつもりだからよ。」
「そうですね。それがいいと思います。
「んで新しい患者の件だけどな、今度の子は海に担当させようと思ってんだ。」
「はぁ。それで?」
「・・・」
「・・・どうしました?」
「あー・・・」
電話口でなぜか先輩は少し黙り込んだ。それは時間でいうとほんの数秒だっただろう。しかしその間だけでも普段とは違う、何か言い出しにくい空気になったのを僕はなんとなく感じ取っていた。
「・・・んでな。カウンセリングの場所なんだがよ。・・・患者の事情で事務所ではやれねぇことになった。」
「・・・はい?」
ここではやれないと一体どういうことなのだろうか。アメリカでやるということだろうか。もしもそうなのだとしたらさすがに先輩の言うことでも納得はできないし、勝手だとかそういう話ではなかった。さすがに強引すぎる。というよりも意味がわからない。毎回カウンセリングの度に国を移動している余裕なんてどこにもない。というか勧誘に行ったんじゃなかったのか。
「・・・あの・・・意味がわかりませんが。というか事務所でできないって、じゃあどこでやるんです?」
「あぁそこは安心しろ。場所は別にある。もちろん日本国内でな。」
それを聞いて僕は安心した。心配しすぎだった。幾ら先輩でもさすがに毎回毎回国を横断させるわけはなかった。
「ただまぁな。その場所ってのが最大の問題なんだがなぁ。」
「まぁそりゃそうですよね。でも事務所でやれないだけだったら患者さんがこっちに引っ越してくることになるでしょうし、そこに訪問してっていうのも可能なんじゃないですか?」
「訪問・・・っていうか。・・・なんつうのかね。」
また先輩は言い淀む。今度ばかりはなぜ言い淀むのか分からない。ただの訪問だけなら海くんにかかる負担もあまりないだろう。いざとなれば僕が海くんの送り迎えもできるから、海くんも少しは休めるだろう。そのぶん他の子にも負担がかかるかもしれないけど、そこは予約の日程をずらせばフォローできることではあるからなんとか出来るだろう。そう考えればさほど問題でもないと思う。
「大丈夫ですよきっと。僕にフォローできそうなら頑張ります。今事務所で一番負担がかかってるのは海くんですから、海くんも少しは休ませられるだろうし。なんとかなりますよ!」
「ん!?そうか!頼まれてくれるかぁ!?んじゃあ心配ねぇかな!!」
「はいきっと!それでどこなんです?」
「おう!海ん家!!アメリカから移住してお前らに任せっから!!!んじゃな!」
そこで電話が切られた。そしてそれから表情が凍りつく。 みんなが賑やかに準備をしている声だけが部屋に響いている。
(・・・・・・・・は?)
~Shift~
すばるさんが話している相手が父さんだというのはすぐに分かった。あのマイペースなすばるさんをあんなに振り回せるのは僕の父さんぐらいだから。あの神楽 真一(かぐら しんいち)という男は罪悪感を感じているのだろうかとよく考えてしまう。僕はすばるさんの負担になってるんじゃないかと思うと心配と申し訳なさが入り混じった複雑な心境になった。かなり心配だったけどそれでも父さんの良き理解者だ。伊達に長い時間父さんの身勝手に付き合わされているわけではない。そういう意味ではすばるさんは僕たちの会社で父親のような立ち位置だと思う。
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患者さんを待っていると、唐突に春義くんが口を開いた。
「よくよく考えたら、すばるってすげぇ我慢強いよな。海の親父さんのあの自由奔放な感じ、ぶっちゃけ男としては憧れる。まぁでもちょっと罪悪感でいっぱいになりそうだけど。」
「そうよね!自由奔放な男って感じで憧れる!春義と違ってね!」
桜さんはそれに同意した。
「うるせぇなぁ。ていうか俺もまぁまぁ自由奔放だっつうの!」
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「なんか水差すようで悪いけど、僕はあの父さんのことを憧れの眼差しを向けられるのが不思議でしょうがないな。」
「まぁ実際そうかもしれないけどな。でも親っさんはパッと見もワイルドでいいんだぜ?」
「それ以前の問題だよ・・・別に嫌いなわけじゃないんだけどさ。」
僕は頭を抱える。父さんの身勝手に憧れちゃダメだと思うんだけど、世の男性からするとどうも父さんみたいな生き方は憧れの対象みたいだ。僕はそう言うことに疎いからよく分からないけど、あの人は憧れられるほどいい性格してないし、そこまで深いこと考えてないだろうと思う。やれと言われたことだけやれば何も言われないから従っているだけで。すると春義くんケラケラと笑う声が聞こえた。
「まぁそんな風に悪い方にばっか考えんなって。お前の悪い癖だぜ?いろいろ感じることは多いと思うけど、実際そんだけ心の広いお前だから安心して親っさんも自由にできんだろうからな。」
それはそうだなと思う。うん。実際いいところではあるんだろう。『自由』っていうのも。
『あ、こんにちは!』
受付の方からすばるさんの声が聞こえた。患者さんが来たみたいだった。
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「あ、はい!わかってます!今行きますね!」
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