運極さんが通る

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魔法を覚えよう

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そろそろ私は魔法を覚えたい。
【時空魔法】で、今使えるのは

・ミニテレポート
・時間停止(タイムストップ)  小…一秒だけ、相手を止める。

これだけでも充分強いのだが、私はもう少し派手な魔法を使ってみたい。
【時空魔法】はなんというか、地味なのだ。
強いんだけども、地味なのだ。
バーンッとかビュッとかの効果音も、色もない。
でも、ロマンなスキルなので重宝はしている。
という訳なので、新しい魔法を覚えたい。
だから、私は今ギルドクエストの掲示板に張り付いている。
クエスト報酬でスキルの書っていうやつがあるらしいんだ。
だがしかし、流石にDランクとCランクの掲示板には貼っていない。
あるとしたらAランクの掲示板だけだ。
くそー。
クエスト以外の魔法の取得方法は分かんないんだよな…。
てことで、ググります。



結果
1.自分の中に流れている魔力(オルゴン)を感じる。
2.それを使って繊細なイメージを持つ。
3.上記を繰り返す。
4.一つの属性の魔法を取得するのに3時間かかる。(人によってかかる時間は左右する。)
5.根気だ、ファイト。

 でした。
 時間がかかること以外は頑張れる。
【鑑定】を覚えるには3日続けて人間観察しなくちゃいけないらしいし、3時間なんて短いもんだ、という人はいっぱいいるだろう。
でも、私は【鑑定】持ってるし、魔法を覚えるために使う時間はかなり辛いのだ。
ここでうんうん考えていても何も変わらないから取り敢えず、街の外に出ようと思う。



「ジン、ウォッカ、今日は狩りはしないで、魔法を覚えるために瞑想しよう。」
「まほー?いいよー。」
「魔法か。かっこよさそうだな。」
2人は乗り気のようだ。
「まず、身体に流れている魔力(オルゴン)を感じるらしいの。魔力(オルゴン)は言って見れば生命のエネルギーみたいなものなんだってさ。」
「むむむ…。」
「魔力(オルゴン)…。」
言うのは簡単だが、実際に身体の中の魔力(オルゴン)を感じるのは難しい。
リアルでそういうのって感じないからね。


身体中に神経を張り詰めてみる。
魔力(オルゴン)
魔力(オルゴン)
魔力(オルゴン)
魔力(オルゴン)
……
…。
駄目だ。
分からん。

「なんか、あったかいものを感じたよー?」
「俺もだ。」
早いですね?
とても羨ましいです。
2人が若いからでしょうか。
「そのまま、炎とか、水とかを想像して。そしたら、魔法を使えるようになるらしいから。」
「「おぉー。」」
早速イメージし始める2人。
私も感じなくちゃ!



むむむ…。
むむむむむ…。
だはーー!
感じられぬっ!
「ジン…何かコツでもあるの?」
「フィーリング?」
「フィーリング…。ウォッカは?」
「考えるな。感じろ。」
「…。」
この2人は多分天才肌なんだね。
感覚派だ。
私には感覚は無理だ!
私は天才じゃない、ただの一般人だ。
ちゃんと、説明を…感覚じゃなくてさ…。



開始から3時間。

ピロリん。
『“ジン”がスキル【火魔法】を取得しました。』
『“ウォッカ”がスキル【雷魔法】を取得しました。』

「おー!魔法出てきたよ!炎だー。熱っ!」
見るとジンの手の平に小さな火の玉が。
「お!俺も出来たわ!」
見るとウォッカの手の平に、パチパチと光る電気が。
…。
「るしー。るしはまだ出来ないの?」
「馬鹿っ。るしは今瞑想してんだよ。そっとしといてやろうぜ。俺らは俺らで魔法の練習しようぜ?」
「うー。分かった。」
…。
このやろー!
私はまだ温かいものを感じられてない。
Googolの馬鹿っ!
全然3時間で取得出来ないじゃないかっ。
話が違うぞっ。
ふっ…私は偽の情報に踊らされたってことか。
もし本当だったのなら、私がアホだってことになってたね。
危ない危ない。



さらに1時間たち。
周りが暗くなってきたな。
ジンとウォッカは和気あいあいと自分の魔法をぶつけている。
いいなぁ…と、そう思った時だった。
ほんのりと身体の内側に何かを感じたのだ。
それを逃さないように慎重に、慎重に身体中のそれを感じようとする。
少しだけだが、それが心臓と一緒に脈を打ちながら身体の中を流れているのが分かった。
これが魔力(オルゴン)か。
実感出来た時、不意にも涙が零れ落ちてきそうになった。
素早く涙腺を抑える。
最近、涙脆くなったものだ。
この次は想像だ。

私はイメージする。

どんな魔法がいいのか分からないけど、ひたすら何かをイメージする。

最初にポッと出てきた漠然なイメージは空に昇っていた2つの太陽。

温かくて、目を向けると、直射日光に目が焼けそうになる。

次にイメージしたのは暗闇。

真っ黒で先が見通せない程の闇。

だけど、そこに小さな明るい光。

野球のボールくらいの大きさの光が宙に浮いている。

それは希望のように見える光。

迷った者に光という希望を灯すもの。

夜を照らすもの。

寂しさを暖かさで包むもの。

人をさらに先に進化させるもの。

絆を繋ぐもの。

ジン。

ウォッカ。

今までにお世話になった人の顔が浮かんでは消えていく。

あ、走馬灯みたいだ。




ピロリん。
『スキル【光魔法】を取得しました。』


「るしっ。何か光ってる!」
「ま…眩しい!!光を消してくれっ。目がぁ…目がぁぁあ。」

パッと目を開けると、私自身が発光しているのに気がついた。
身体の中の魔力(オルゴン)が熱い。
これが魔法を使う感覚なんだ。
凄く楽しい。
4時間粘った甲斐があった。

「るしっ!眩しー。」
「目がやられた!早く光を…魔法を消してくれぇぇ。」
「あっ…ごめん。どうやって消すの?」
2人に近づくと2人が離れる。
近づくと、離れる。
面白い。
近づくと離れる。
近づくと…。
「おい、るし。拳骨欲しいか?」
「すいません。調子乗ってました。」
「魔法は、自分で消したいって思ったら消えるから。」
「へー。そっか、ありがと。」
近づく。


ゴンッ
「~~~っぅ!!」
「消せって言ってるだろ!?」
「るしー。消してー。」
「はい。」
消えろと念じると、発光が消えた。
おー、凄いもんだ。
…頭が痛いな。
ヘルムを被ってるはずなんだけど…。
外して横に置いとこ。
ずっと被っているのは息苦しいからね。
ウォッカがとことこ近付いてきた。
今だっ!

ピカッ
「ぐおぉぉぉ。るしぃぃ。俺になんの恨みがぁぁ。」
「ふっふっふっ。私の強さにひれ伏すが良いわっ!」
「いい加減にしろよ?」
コキコキと指を鳴らすウォッカ。
ふっ、私はもう怯まないっ!
私の【光魔法】には近づけまいっ。
「ま…眩しっ!」
「るしー。眩しーよー。」
あっ…ジンごめんね。
少し光を弱める。
あ、やべ。
その隙にウォッカの力一杯の拳骨が頭に振るわれる。



ゴンッ
「~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛頭がぁぁぁあ。」
「はっ。これで懲りたならもうやんなよ?」
「るしー。だいじょーぶ?」
「ジンんん。ううっ…。ウォッカが怖いよぉ。」
「愛の拳って言うな。」
ウォッカ恐るべし。
HPが3割削られたよ。
頭が痛いよ。
脳内細胞がいっぱい死んじゃったよ。    
もう1回…。
「次やったら、分かるよな?な?」
「はい。存じております。」
…ウォッカ。
私よりも位が高くなっているのは気のせいかな?
「るしー、僕頑張って火をうまく使えるようになったから見てみてー!」
おー、私が3時間頑張って温かさを探していた時に練習してたもんね。
「是非是非見せてください!」


ジンが手のひらにポッと一つの炎を出す。
それを上に投げて、その間にもう一つ出現させて、それも飛ばす。
ま…まさかっ。
また一つ出現させて飛ばす。
それらをキャッチして投げるキャッチして投げるを繰り返す。
「えへへ!どうー?」
「凄いっすごいよー!」
「俺のも見てぇ!」
ウォッカもバチバチと電気のような雷を手のひらに出現させてそれを丸く凝縮させて、ジンのようにポンポンとジャグリングする。
「おぉ。ビリビリしないの?」
「慣れればしないぞ?」
へー。
それは凄い。
雷耐性でも着いたのかな。
じゃあ私もやろうかな。
「「るしはダメ。」」
そんな必死に止めなくてもいいじゃん。
私も披露したいのに。

あ、そうだ、ギムレットに披露しよう。
そうしよう。
まだ見せてないしね。
「るし、ギムレット姉さんに見せようとしても無駄だからな。俺の愛の鉄拳が飛ぶぞ。」
…。


今日のウォッカはものすごく恐かった。

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