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葛藤
しおりを挟むグロ注意です。
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「フラッシュ!!」
「影縛りっ!!」
現在、カマッキリー逆ハー達と絶賛戦闘中。
これに遭遇するのは今日でもう、3回目だ。
お腹いっぱいです。
【残月】を5振りすると、【確率死】が発動し夫達の生命を刈り取っていく。
「師匠!♀は僕がっ!!」
「分かった!無理はしないでね!」
セタンタが夫がいなくなって無防備になった妻に向かって槍を突き刺す。
「爆散ッ!!」
妻の身体が内側から身体が破裂した。
まさに爆散。
内蔵とかが辺り一面に飛び散ってるよ。
ピロリん。
『“ベルモット”のLvが上がりました』
『NPC“セタンタ”のLvが上がりました』
ベルモットのLvは6。
セタンタはLv9になった。
Lvが上がった影響か、ベルモットの身体が2回りほど大きくなり、成長の早さを感じさせた。
「ん~その竜ちゃんは何で私ばっかに攻撃するのかなぁ。ちゃんと蟷螂野郎にも攻撃して欲しいんだけどぉ」
そう、ベルモットは何故かちょこちょことセスに攻撃を当てている。
もしかすると、路地裏での件の事を私の代わりに怒ってくれてるのかもね。
でも、味方からも攻撃されるのは致命傷だ。
ベルモットだからと言っても許されることではない。
「ベルモット、セスに攻撃するのはメッ。いくら変態だからって、仲間を攻撃したら駄目だよ」
「きゅ…」
ベルモットはパタパタとセスの所まで飛び、ごめんね、とでも言うかのように頭を下げた。
「いい子だね。ベルモットおいでー」
頭をナデナデしてあげると、嬉しそうに鳴いて定位置に戻った。
「師匠っ!!森を抜けますっ!!」
ん?
セタンタは何を言っているんだ?
まだこの先もずっと森が続いているというのに。
一歩踏み出した瞬間、景色が変わった。
「はっ……?」
「馬鹿っ。るし隠れろ!」
言われるがままに向日葵の茂みに隠れる。
空は鉛のような重い曇天が太陽を遮り、光が地面に差さず、ムッとした血の匂いが辺を漂っていた。
木造建ての建物は壊れ、無残な姿に変わっていた。
「ここ、どこ?」
「ここはお前が探していた場所だ。王様が追放された者のために秘密裏につくった村だと俺は推測する。…空間をまるごと入れ替え、かつ、外からは分からないように超強力な幻術が掛けられている。現にセタンタが言うまで俺らが気づかなかったからな。」
「そのセタンタは何処に?」
「あぁ、あいつなら…」
スッと近くの茂みを差す。
「おぇ…」
顔色を悪くしたセタンタが下を向いて吐いているのが見えた。
幼い子供にこの匂いは流石にキツすぎるだろう。
私も吐きたい衝動が喉までせり上がって来ているのだから。
ーブゥン
壊れた建物からモンスターが出てきた。
そのモンスターは蝿と蚊を合体させたような体型をしていた。
口は蚊のようなストロー状。
目は網目が入った蝿。
足は鋭く細い蚊。
羽は蝿で胴体も蝿。
体長は3mほど。
遠目から【鑑定】を行う。
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種族 モスキーバエト ☆3…イベント M 待機中
Lv8
HP 公開不可 MP 公開不可
パッシブスキル
・群れる(常時群れを作って移動している)
アクティブスキル
・増殖(自らの体液を相手に流し込むことで、相手の種族を自身と同じにし、姿形さえも変える。元に戻ることはない)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もういったい建物から出てきた。
手に持っているのはグッタリとした赤い頭巾を被った女の子。
「助けに行かないとっ!!」
「待てっ!」
場を動こうにもセスが手を掴んで離さない。
「なんでっ!?離して!!」
「シーッ、静かにっ。アイツらに気付かれるだろ?それに、あのモスキーバエトとかいう奴らは群れで行動しているようだから、あれを仕留めずに先延ばしにしておけば、他の住人達がいる場所に案内してくれるかもしれないだろ。分かったなら馬鹿な真似は止めろ」
セスに窘めされ、冷静さが戻ってくる。
「分かった。ごめん」
「ならいい。奴らのあとをつけるぞ」
「うん」
その様子を見ていたジン、ウォッカ、青い顔のセタンタ。
「アイツ、二重人格なんじゃね?」
「るしが変態の尻に敷かれてるよ」
「…お兄さんと師匠は仲良いのかな」
ジンとウォッカはクワッと目を大きく開く。
「「そんなことないっ!!」」
「うっぷ…分かってるよ……おろろろ…」
彼らはモスキーバエトの後を追う。
「や、やめてくれっ!!もう十分じゃないかっ!!だから家族をぎゅふ………」
「お父ざん!!」
「ゾットさん!!……うわぁぁぁ!!」
「誰か助けて…」
「神様!!」
背中にモスキーバエトの口を刺された獣人のオジサンはボコッボコッと不吉な音を立ててその体を作り替えられていく。
内側から何かが盛り上がり、外皮が裂け、血がとどまることなく噴き出す。
眼球は盛り上がりに耐えられず、外に飛び出す。
歯はポロポロと抜け、髪も抜け落ち、人から何か別の生命体に変わっていく。
「ひぎゃぁぁぁああああ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃいいいいい!!!!だずげでぐれぇぇぇぇえええええええ!!!!aaaaaAAAAAAAAAA!!!」
叫び声は人でないものへと変わりゆく。
「あなだぁぁ~っ!!いやぁぁぁぁぁ!!!」
一斉に周りに集めていた人達に口が突き立てられ、慟哭にも似た悲鳴が上がる。
やがて、体が作り替えられ、6体ものモスキーバエトが産声を上げた。
その光景を見て、恐怖で足が竦んだ。
すぐ側でセタンタの嗚咽が微かに聞こえる。
セスが口に手を当て、目に涙を溜めているのが見える。
喉まで来ていた吐き気は遂に口から出てくる。
「おぇぇ…」
モスキーバエトは黒きもの。
国の近隣の村を襲い、仲間を増やす。
ツンとした吐瀉物の香りが鼻を突く。
「いやっ!!止めてぇ!!お父さん!お母さん!助けてぇぇ!!!元に戻ってよぉっぎょつかまかぶ……」
かつて、両親であったものに生命を作り替えられていく少女。
「ゾット!!俺だよ!!元に戻って…ひぎゃぁぁぁああああ!!!」
かつて、友人であったものに生命を作り替えられていく男。
「あなたっ!!助け……きゃあああああああああああ!!!!」
かつて、夫であったものに生命を作り替えられていく女。
「アドラー様ツ!!アドラー様が助けてくれるはずじゃ!!皆…いぎでぐゅぷぅうふる……。」
昔話を信じ、その生命を作り替えられていく老人。
その様子を見て、嬉しそうに前足を叩く黒きものたち。
それは地獄絵図。
「た…助けなきゃ…」
口元を拭い、震える足を叩き、何とか立ち上がる。
「それでこそ、るしだ」
「そろそろ行くー?」
この2人はかつてはモンスター。
弱肉強食の世界で生きてきたからこそ、その状況を受け入れることが出来る。
「るしーあの子ー」
ジンの指差す先にはグッタリとした赤い頭巾の子。
その顔は全てを諦めた顔。
虚ろで空虚なその目はどんよりとした曇天を映すのみ。
希望を、光を失った少女。
村最後であろう唯一の生き残り。
「助けなきゃ」
手の届く範囲は守らなければ。
むざむざと零すことは許されない。
だが、わたしにモスキーバエトを殺せるのか?
いや、この世界の人だったモンスターを殺せるのか?
この世界の人は死んだら生き返ることはない。
なら、私は今から人を殺すのか?
「覚悟を決めろ」
PKの言葉が耳に響く。
この世界の住人も殺したことがあるのだろう。
重い響きだった。
「君が動かなければあの子は死ぬ」
そんなことは分かっている。
でもッ…。
「何、迷う必要は無い。あのモスキーバエトはもう人じゃあない。それに、彼らを殺してやることが彼らにとっての救いになるんじゃないかな?割り切れ。君はこの世界の人じゃない。君はプレイヤーなんだ。あまり感情移入しすぎると、戻れなくなるぞ」
甘い甘い彼の言葉が聞こえる。
「君は自身の迷いと目の前の消え入りそうな人の生命を天秤にかけることが出来るのかい?」
それは出来ないっ。
「なら行け。君があの子の希望になるんだ」
ピロリん。
『○黒龍の軍服一式を装備しました』
手には神槍を。
「セス、君にはセタンタを守ってもらう。いいね?」
「ふっふっふぅ。任せたまえ♡」
それと、とスッとセスの耳元で囁く。
「ありがとう」
セスは呆けた表情でこちらを見た。
頼もしいジンとウォッカの方を向く。
「さぁ、殲滅を齎そう」
「流石、僕の認めた人だ」
「任せろ」
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