64 / 127
ユニオンメンバーと顔合わせ
しおりを挟む赤い睫毛が揺れ、赤頭巾の少女が起きた。
「ここっどこ!?お父さん?お母さ…」
昨日のことを思い出したのか、言葉を詰まらせた。
「大丈夫。ここは「シナンティシ」の中にある宿屋だよ。私はるし。君は?」
「…私は……エドです。…軍服さんはるしさんです?助けてくれてありがとう…です」
小さいのによくここまで耐えたと思う。
普通は発狂しててもおかしくはないのに。
ポンポンと頭を撫でる。
「…っ」
エドの身体が小さく揺れた。
「うぅ…何で…です?何で…なんで…エドだけ…」
小さな華奢な身体を抱き寄せる。
「…辛かったね。怖かったね。ここはもう安全な場所だよ。…私がここにいる。もう、泣いていいんだよ」
「うわぁぁぁああああああん!!」
緊張の糸が切れたように少女は泣き出した。
私にはもう、この子に掛けられる言葉が思い浮かばない。だから、せめて泣き疲れて眠るまで、一緒にいよう。
コンコン
「るし様。宜しいでしょうか?」
「はい」
デヒテラさんが高価な服を着た婦人を連れてきた。
「おはようございます、るし様。昨日はお世話になりました。改めて、私の名はフラン・ダンテ。エドを引き受けにまいりました」
フラン・ダンテはエドの祖母で、エド達家族が薬を届ける旅に出るまで一緒に暮らしていたらしい。
エドモンにとっては唯一無二の家族になる。
昨日、国に戻った際、エド達家族を探すフラン・ダンテにバッタリと居合わせた。
聞くに、この国周辺に黒きものたちが現れたという噂を聞き、自分の息子と娘、孫がその場所に向かったことを思い出して、3人の消息を確認するために早馬でここまで走ってきたのだとか。
エドだけしか助けられなかったと話した時、彼女は大粒の涙を零していた。
…幸いにも、フラン・ダンテは辺境の領主らしく、エドが家や食べ物にに困ることはないと思われる。
だけど、こんなにタイミングよく会えるものなのだろうか、と疑った私は門番さんに直接フラン・ダンテについてのアレコレを聞いた。
結果、フラン・ダンテその人に間違いなかった。
悪い噂もなく、貴族階級にも申し分ない。
これなら安心してエドを託すことが出来る。
「フラン様。エドのことを頼みます」
「はい。息子と娘が命を賭してまで守ったエドを、今度は私が2人に変わって守り続けていきます。るし様。この子を、そして息子と娘を救けて頂き、誠にありがとうございました」
腰を90度に折り、誠意な姿勢はとても高く評価出来た。
この人がエドの叔母で良かった。
そっとエドの頭を撫で、部屋を後にした。
「るしーセタンタはー?」
「セタンタは今日は気分が悪いって言って寝込んでるよ」
昨日の今日だから仕方の無いことだ。
あの光景はあまりにも凄惨過ぎた。
現に私も気分が優れない。
セスは意気揚々に鼻歌を歌っている。
「セス、何でそんなに元気なの?」
「ふっふっふぅ。今から新しいユニオンハウスに向かうんだよぉ?元気いっぱいになるに決まってるじゃあないかぁ」
そう、今から私達は新しいユニオンハウスに行くのだ。
今日の朝、ギムレットからテレパシーメッセージが届いた。
テレパシーメッセージとは、いわゆる念話の様なものである。
『るし様、お久しぶりです。ギムレットですよ?ふふふ。遂にるし様のユニオンハウスが完成しましたので、一度、私達の家に帰ってきて下さい。…ユニオンメンバーの方々も連れてきて下さいまし。…私としては家に入れたくはないのですが、るし様のため、ここは私が折れましょう。今日の12時までに帰ってきて下さい。私ヴィネと2人きりで寂しくて、寂しくて狂い死にそうです。それでは、お待ちしております。
貴方のギムレット』
早速ユニオンメンバー達に「第一の街に集合」とメールを打っておく。
久しぶりに家に帰れると思うと、心が温かくなる。
皆、元気にしてるかなぁ。
「…るし…お久…」
ガンッと胸にNoelが飛び込んできた。
上目遣いがまた可愛い。
「Noel、私鎧着てたけど、その、おでこ痛くなかった?」
「…大丈夫…ドラゴン…いい…」
Noelがベルモットに触れようと手を伸ばすが、一蹴りしてしまう。
「…むぅ…るし…ずるい…」
「ベルモットは人見知りなんだよ。ゴメンね?」
「Noelちゃぁん。久しぶりだねぇ♡」
「…死ね…」
右手に光を溜め始めるNoel。
あかん、アカンよ。
今からユニオンハウスに行くんだから死闘を始めたらアカン。
「あら?何処からか穢れた声が聞こえてきますね」
「ジャンヌ!!」
「おぉぅ…ジャンヌゥ」
「るし、Noel、お久しぶりです。そこの悪しき変態は私が責任をもって葬…見張るので、これから起こることは気にしないでください。神が、この変態だけは許してはならぬと仰ったものですから」
身も凍るような笑みを作るジャンヌ。
頼りになります。
変態は頼みました。
「お、皆早いなぁ。どうやら僕達が最後みたいだね」
「だな。久しぶり……って変態ッ!!」
「カインじゃないかぁ。もう1回 私と殺ら ごふっ…」
ジャンヌの拳がセスの鳩尾に入った。
「あぁ、気になさらないでください。穢れた者を浄化しただけですので」
セスを大きな袋に詰め、ヨイショと担いだ時の彼女の顔はまるで聖女の様でした。
「るしさ~ん!!」
この懐かしい声はっ!
「アルザス!久しぶりー!!」
2人でハイタッチを交わす。
「…るし…この人…誰…?」
「ん?あぁ、皆は初めましてだよね。この人はアルザス。我らがユニオンの鍛冶士だ」
「俺はアルザス。こんなに凄いメンバーの中でちょっと肩身が狭いが、いずれアンタらに追いついて並べるようになってみせる。皆、よろしくお願いしやす」
「変態がうちの最低ラインですから、アルザス、貴方はそんなに畏まらなくてもいいのですよ?ふふっ。私はジャンヌ。こちらこそよろしくお願いします」
「…よろしく…Noel…」
「僕はヴェティヴィエルズ。気軽にヴェティって呼んでね」
「俺はカイン。宜しくな」
「…」
アルザスはジャンヌが担いでいる袋に詰められた人を不思議そうに見た。
「あ、その人は変態のセス。気をつけてね?」
「お、おう」
これで全員揃ったみたいだ。
「じゃあ、そろそろ行こか」
「「「「「おう!」」」」」
「おい、何だあの豪華なメンバーは!」
「軍服様の頭の上に乗ってるのって、ドラゴンじゃねえか?」
「今からどこ行くんだろ」
「握手して欲しい」
「おい、あの袋に詰められてんのセスじゃねえか!?」
「うわぁ。手を出して返り討ちにされた感じだわ」
「hshs」
一行は野生のスライムを蹴りながら森?を目指す。
「あれ?アルザス、その子は?」
ジンの頭の上にいる小さなスライムを指さす。
「あぁ、こいつはシュウ。ミニスライムで、スライムの進化系なんでさ。出会った経緯は長くなるんでまた今度で。そういや、るしさんとこのジンとウォッカも随分と可愛らしくなったじゃねぇか。そんでその頭の上に乗ってるドラゴンもかなり強そうだ」
「そうかな。今度是非シュウと出会った経緯を聞きたいところだ!」
シュウはビュッビュッとジンの頭の上からモンスターに酸を吐いている。
強酸の威力が強く、グリーンワームの皮膚が溶けてかなりグロッキーな事になっている。
スライム…いいな。
ぷにぷにしてるし。
「きゅっ」
ペシペシと頭を叩くベルモット。
「ベルモットも可愛いよー。うりうりー」
「きゅ~!」
あぁ、竜も可愛いなぁ。
大きくなったら背中に乗せてね?
「あっ!るしさん。今度イベントクエストが終わったらモンスターオークションに行きやせん?帝国ザバブルクにある闇市で開かれてるらしいですぜ。何でも、特殊なスキルを持ったモンスターがわんさかいるとか」
なるほど。
興味はある。
「よし、行こう。私もテイムモンスターの枠が丁度2枠空いてるからね」
モンスターオークション…楽しみだ。
「愛しのるしぃ♡助けてぇ」
ジャンヌの担ぐ袋の中からテノールの甘ったるい声が聞こえてきた。
ふっ、君は今からの行動を改めるべきだ。
「ジャンヌ。私、セスにセクハラされたんだ…」
これはセスにとっていい薬になるだろう。
「まぁっ。穢らわしい手がるしを穢そうとするなど、許し難いです」
ドゴッ
「あんっ…♡」
袋が大きく跳ね、死んだように動かなくなった。
これでセスのセクハラは無くなるだろう。
主に、ジャンヌ様のおかげで。
「ついたよー」
「「「「「「えっ?」」」」」」
「ここって、イベントの為に建設されたところじゃなかったのか?」
「ん?我が家」
我が家はたった2日空けただけで激変していた。
なんということでしょう、最初は暗い森という印象の強かった場所が、今や木に囲まれた小さなお城に。
確かにこれはイベントに関係あると思われても仕方ないわ。
扉を叩く。
「ギムレット、ヴィネ、スピリットの皆、ただいま~」
バタンッと勢いよく扉が開き、双球が顔に飛び込んできた。
「るし様!おかえりなさいませ!」
「ぐぉ…苦し…」
い、息が出来ぬっ!
このお胸さんめっ!何でそんなに大きいのだ!
解せぬ。
「あの、失礼を承知して言いますが、るしが窒息死しそうなので、離してもらってよろしいですか?」
「…えぇ。私、少し興奮していたようです。すみません。るし様」
バチバチとジャンヌとギムレットの間で火花が散る。
「お、るしか。おかえりなさい」
ヴィネはお風呂上がりなのか、半裸になってお出迎えしてくれた。
そのまま、おかえりのハグをされた。
「ヴ…ヴィネ!その、皆いるから、恥ずかしいっ!!」
「む?そうか?…おや?汝の頭の上にいるそれは竜か?いやはや珍しい」
ベルモットはヴィネの手を振り払わずにされるがままになっている。
ほぅ、珍しい。
今までは私以外の誰かに触れられまいとしていたのに。
何か妬いちゃうぜ。
「る…るし、その褐色イケメンは誰?」
「この半裸はヴィネ。すっごく強い。ギムレットもそうだけど、【鑑定】しても殆どがハテナマークになる」
どうだ、凄いだろう?とニヤリと笑うヴィネ。
6人はポカンとした顔で玄関に佇む。
「るし様、そして皆様方、ユニオンハウスについて詳しく説明致しますので、立ち話も何ですから、中に入ってください」
「そうだね。皆、行くよ」
「…るし…やばい…」
「だな」
「るしだぜ?」
「るしさん、かっけぇ」
「流石僕のるしぃ」
「「はぁ??」」
ジャンヌとギムレットの声が重なり、早速セスの悲鳴?が家に響き渡った。
1
あなたにおすすめの小説
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる