運極さんが通る

スウ

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ユニオンと会議

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紅い眼鏡をかけ、スーツを着たギムレット。
何故着替えたのかと尋ねると…。

「雰囲気って、大事ですよね?」

と妖しく微笑んだ。
これに、アルザスとカインが鼻血を垂らして撃沈した。

「どうですか?るし様?」
「凄くいいね!妖しい感じがするよ」

張り切ってますね。
凄く似合ってます。

各々がソファーに腰掛けたのを確認すると、ユニオンハウスについての説明が始まった。

「皆様から徴収したお金で土地を買い、我らがユニオンハウスを一から急ピッチで創りました。そのユニオンハウスは何処に?と思われた方、浅はかで…んん!今からわかりますので、近くの柱に張り付いて下さい」

 ゴ
 ゴ
 ゴ
 ゴ
 ゴ

「ふあっ!?」

突如地面が揺れ、身体を浮遊感が襲った。
床に倒れそうになるのをギムレットが支えてくれた。

「ふふふ。まだ少しわたくしに支えられていて下さい」
「おろ…」

ジャンヌの顔が真っ青になり、ゲロりそうになるのを必死に食い止めている。
もしゲロれば、ギムレットの顔が般若と化すだろう。



浮遊感がやっと治まり、平衡感覚が戻ってきた
他の皆はソファーでグッタリとして、約1名を除いて顔を青くさせている。

「あれ?皆根性ないなぁ。僕とるしは平気だったのに」

約1名とはヴェティの事である。
実はリアルでパイロットなのだとか。

「さて、説明を再開しますね。まず、今回 わたくしが買った土地は、この森をぐるりと囲む半径2キロの土地です。そして、ヴィネとわたくしが少々弄り、買った土地を地面から切り離し、空に浮かせて空中要塞(仮)を作りました。その空中要塞がユニオンハウスになります。まだ発展途上でこの城の外は草原ですが、皆様が旅に出ている間にコツコツと開拓していくので、どうぞ長い目で待っていて下さい。次に、この城もとい、ユニオンハウスのことについてですが、皆様方の自室は既に創ってありますので、後程話し合うなり争うなりしてお決めになってください。あ、るし様のお部屋はもう決まっていますよ?さて、自室の次に設備についてですが、ここには大浴場、鍛冶場、厨房、訓練場、湖、リビングがあります。こちらは自由に使ってもらって構いません。あぁ、大浴場の方は混浴となっております」

「「「混浴っ!?」」」

そこ、男3人!食いつかない!
目を輝かせない!
目尻に涙を溜めない!

「はい、混浴です。大浴場には、るし様は知っておられますが、ここにしかない仕掛けが用意されているので、ご満喫いただけると思います。場所はここをまっすぐ行って突き当たりにあります。1人でゆっくり入りたいと思われている方は、自室にお風呂を設置してあるので、そこでお入りください。ご飯に関しては、わたくしとスピリット達とで朝、昼、晩と創りますので、お楽しみにしていて下さい。最後に、これを」

1人ずつに黒いカードが配られた。

「そのカードは、ここ、ユニオンハウスにに来るために必要なものです。ユニオンハウスに行きたいと念じればここに来れますし、下界に戻りたいと念じればここに来る前の場所に戻ることが出来ます。紛失はしないように、十分に気をつけてください。何か質問はありませんか?」
「…」
「ないようですね。では、ごゆっくり、ユニオンハウスをご堪能下さい」

 あまりの高機能ハイスペックさに一同は固まる。

 る「…皆、まずは部屋割りをしなよ」
 ヴ「そ、そうだね」
 ア「大浴場…」
 カ「混浴」
 セ「いいっ」
 N「…お風呂…お部屋…」
 ジ「ベッドはふかふかですか?」

皆が部屋割りしているうちに自分の部屋を見に行こう、とリビングを出ようとしたところ、笑顔のギムレットとヴィネに捕まった。

「「一緒にお風呂に入ろう(りましょう)」」
「え…?」

2人に両腕を掴まれ、大浴場に連れていかれた。


その様子を見ていた6人。

 N「…るし…大変…だね…」
 ヴ「え…ヴィネさんと一緒に入るの!?」
 ジ「不純です。ですが、これも神の試練一つなのでしょう。私、大浴場のお風呂に入ってきます」
 ア「待てっ!待て待て!ジャンヌさん…落ち着いて…」
 カ「…俺も行くっ!」
 セ「…ジュルり」
 N「…皆で…行けば…怖く…ない?」
 カ「俺たち仲間だしな。」
 ジ「裸の付き合いというものですね?」
 ア「…ここはゲームの世界だけどそれで本当にいいのか?俺は…って男子陣!何でもう行こうとしているんだっ!」
 セ&カ「…」ニヤリ



この後、皆でお風呂に入りました。
ある意味での戦争も勃発し、楽しい時間になりました。
その際の話は後程語りましょう。






楽しい戦争が終わり、再びリビングに集合した。
もちろん、明日から始まるイベントクエストについて語るためである。
ちなみに、全員装備は外し、街で買ったラフな格好をしている。

「るぅしぃ?胸がないというのもまだ愛おしいねぇ」

 ドゴッ
「あっ…♡」

ギムレットとジャンヌの拳が飛んだ。

「ジャンヌさん、わたくし、貴女とは仲良くなれそうです」
「ふふ。奇遇ですね。私もです」

王と聖女は互いに手を力強く握りあった。きつくきつく。爪がめり込むほどに。





「これより、明日から始まるイベントクエストについての作戦会議を始める。まずはイベントモンスターについてなんだけど、名前はモスキーバエト。特徴は、蚊と蝿の合体バージョン的な感じ。それで、持ってるスキルは、パッシブとアクティブで一つずつあって、まずはパッシブ。スキル  群れる  は常時群れを作って移動する。次にアクティブ。スキル  増殖  は自らの体液を相手に流し込むことで、相手の種族を自身と同じにし、姿形さえも変える…だ。このスキルを使われた相手は、元に戻ることはない」
「ん?」

カインが疑問の声を上げた。

「質問?」
「おう。何でるしはイベントモンスターのスキルとか姿とかを知ってるんだ?」 
「あぁ、第二の街周辺のフィールド探索をしていたら、村があったんだ。そこで…ね…」

あの光景を思い出し、言葉に詰まってしまう。それを見て、俺が代わりに言うよ、とセスが立ち上がる。
セスって、たまに頼りになるんだよね。
株をすこーしだけ上げてやろう。

「俺達は昨日、向日葵の森にて言述で囲われた村を見つけた。その村には血の匂いが充満しており、建物が倒壊していた。また、戦闘の痕跡も見られた。中を進むと村人達がイベントモンスターであるモスキーバエトにスキル  増殖  を使われて、身体を作り変えられていくところだった。…るしはそれを見てゲロってたな。あれは見ていて嫌悪しか抱かない光景だった」

ゲロった情報をさり気なく入れないので欲しいのですが。
ジロっとセスを睨む。
そのセスは何処吹く風でニマニマ笑っている。
変態セス。貴方、普通に喋れるじゃないですか。これからもそれでお願いします」
「えぇ~。おれがここまでするのはるしが困っている時だけさぁ」

と言って、ぽふぽふと頭を撫でてくる。
止めれ。
ギムレットとジャンヌの顔が凄いことになってるよ。


「セスの言った通り、村は酷い状態に陥ってた。これが第二の街で起こるとなると…皆、分かるよね?」

一同が重く頷く。
もし第二の街にモスキーバエトの侵入を許してしまえば、多くの人が死ぬよりも恐ろしい目にあうのは目に見えている。
それだけは何としてでも避けたいところなのだ。

「なぁ、親玉を叩いちまえばいいんじゃねぇですかい?群れで行動してるってこたぁ、頭のいい親玉がいるってことだろ?」
「…アルザス…頭いい…それ…賛成…」
「だけどさ、その親玉さんがどこにいるか分かんないじゃないか?」

その通り。
親玉を倒す前に、まず何処にいるかが分からない。
そこで、このユニオンの出番って訳だ。

「私的には、交代交代で手分けして探せばいいと思う。要するに、4人が街の東、西、南、北に行って、残りの3人が親玉の探索」
「おー!それいいな!」
「でも、親玉が必ずフィールドにいるとは限らないんじゃないかな?」

ん?
それはどういう…。

「僕が前やってた『Potential of the story』では、モンスターを一定数倒すとボスが出てくるっていうイベントがあったんだ。だから、このイベントも、もしかするとそういう仕様になってるかもしれないんだよね」

なるほど。
そういう感じのもある訳か。
一定数というと、どれぐらい倒せばいいのかが問題なんだよね。

「ふふっ。『Potential of the story』懐かしいですね」

ジャンヌさん、貴女やってたんですか。
道理で強い訳だ。

「うーん、るしさんの案もヴェティさんの案もどっちともいいんだよなぁ」
「俺もそう思う。あ、なら作戦AとBに分けて、Aをるしで、Bをヴェティの案にする。まず、最初の3日間作戦Aで動く。次の3日間を作戦Bで動く。これを交互にやればいいんじゃないか?」

カインの案に、皆が静かになった。
リビングに静寂が訪れる。

「え…えっ!?俺なんか変なこと言った?」
「あ、いや、カインがまともな案を言ったから」
「…見直し…た…」
「カインん~いいねぇ」
「じゃあ、カインの案に賛成の人挙手!」

全員の手が上がった。
反対の人がいないみたいで何よりだ。

「今作戦は、カインの案に決定しました。拍手ー。パチパチ。作戦名はどうする?」


「カインと愉快な仲間達っ!!」

これこれカインや。
調子に乗ったらあきまへん。
自重を学びなさい。

「聖女の行進がいいですっ!」

なんでやねん。

「…圧殺作戦…」

Noel…それはカインの2つ名を入れただけだよね?

「大人の階段をの…」

 ドゴッ
あ、ご愁傷様です。

「ここは無難に黒きもの掃討戦でいいんじゃないかな?」
「採用っ!」
「「「えー」」」
「ネーミングセンス皆無な3人は論外なので、作戦名は、ヴェティの「黒きもの掃討戦」になりました」
「やったー!」

項垂れる3人と、気絶した1名を尻目に、作戦会議は幕を閉じた。



今度こそ自室に戻れるっ。
おもむろに立ち上がるが、皆はソファーから動く気配は無い。

「あれ?何で動かないの?」
「だって…まだこのユニオン名とユニオンマークを決めてないだろ?」

そうでしたーー!!
完っ全に忘れてました。自室に戻るのはまだ先になりそうだ。と思っていると、ジャンヌが真剣な顔をこちらに向けてきた。な、なんだろう。

「私、ユニオン名とマークはるしに決めてほしいと思っているのです」
「えっ何で?…他の皆は?」

折角の名前決めなんだから皆でワイワイつけるとかそういう感じだと思ってたんだけど…。
他の皆も、そうだな、と一様に頷く。
私がこのユニオンの名前とマークを決めるのか…。
責任重大だ。

一応名前の案は考えてきてあった。
さて、まずはユニオン名。
どれにしようか…。

 →▲デストロイ
    ▲エレメンタル
    ▲スピリタス
    ▲ワイン

悩むけど、ここはこれでいこうと思う。

    ▲デストロイ
    ▲エレメンタル
 →▲スピリタス
    ▲ワイン
    
「ユニオン名はスピリタスっていうのはどうかな?スピリタスは、お酒の中で1番アルコール度数が高くて、世界最高純度なんだ。だから、これ以上の純度を求めることは出来ない。つまり、私達以上の素晴らしいユニオンはないっていう意味。…どうかな?」
「…スピリタス…いいんじゃないかな」
「…いいよ…」
おれ、飲んだことあるよぉ。初めはねぇ、刺すような痛みと強烈な焦熱感を感じるんだけどねぇ、それを何故か過ぎると甘く感じるんだよぉ。まぁ、飲酒や味覚の嗜好によっては、最初から甘く感じることもあるらしいけどねぇ」

へー、そうなんだ。
お酒を飲めるなんて、大人はずるいや。
私もあと2年とちょっとで20歳だから、もう少しの辛抱だ。


次に決めるのはユニオンマークなのだが、流石にこれは1人で決めるものではないと思う。

「皆の意見も聞きたいなぁ」
「るしさんは大の酒マニアだから、グラスのマークを入れたらどうですかい?」

おぉっ、いいねぇ。

「…三日月…好き…グラスを…囲む…感じ…?」

冴えてますのぅ。
ワインを三日月で囲む。
カッコイイ…。

「このユニオン、スピリタスのマークをこれにしようと思うけど、皆、いい?」
「いいです!」
「感動もんだ…」
「流石、王」

ん?王?

「何故に?」
「大会の時に、偽勇者VSるしの試合があったじゃないですか?その時に魔王に見えたからですよ」

あの時か。
確かに、結構ノリノリでやってたもんなぁ。

「王よ…ププッ」

カイン!
何で吹くのかな?お姉さんに教えてくれない?

「…王…いい…響き…」
「るしさん、カッコイイですぜ?王…」
「王よぉ。是非とも今夜はおれと添い寝」

ジャンヌとギムレットの拳がセスを捉えようとするが、【影移動】を使ったのか、いつの間にかヴィネの後ろに移動していた。

「ヴィネ!そのセスとかいう者をこちらに渡しなさい!」
「む?ギムレット、その顔はちと怖いぞ?ここは大人しく後ろの者を渡すしかないようだ」
「やっばぁ♡」

【影移動】を使った鬼2人と逃亡者1人の鬼ごっこが始まった。



「…皆、今日は解散ね。明日から始まるイベントの為に早く寝ようね」
「おう!」
「あぁ、王よぉ。添い寝をぉ」
「おやすみ」
「いい夢見ろよっ☆」
「…眠…」
「セス、大人しく捕まるのがるしさんの為だと思いやす」
「悪しきものには制裁を…魂の断罪っ!!」

光る十字架がセスに迫るのが見えた。



はぁ、やっと自室に戻れる。
部屋に戻ったら、少し早いけどログアウトしよう。
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