運極さんが通る

スウ

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イベントクエスト④

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「今日は全員でモスキーバエト狩りです!!誰が一番狩れるか勝負ですっ!!」

朝からジャンヌの気合が物凄いです。
ジャンヌは仕事とかないのかな?聖職者みたいなんだけど…。
アルザスとカイン、セス、ヴェティはリアルのお仕事があるらしい。
参戦は夕方頃からだと言っていた。
正月明けの社会人って大変だ。
私はまだ子供でいたい!けど、大人になればお酒が…くっ…。

「…ジャンヌ…皆…仕事…だから…全員…いない…」
「構いません!午前は私とNoel、るしの三人勝負です。あの人達は夕方からの参戦ですので、夕方からのモスキーバエトの総討伐数を勝負しましょう!」
「…それ…いい…」

はぁ、一番マトモなアルザスがいないとジャンヌとNoelの暴走が止まらないよ。







「セタンター!門の前に行くよー!」
「わー待ってください!師匠!!」
「ふふっ行ってらっしゃい」

デヒテラさんに女神のような笑顔で見送られ、4人と1匹はモスキーバエト退治に向かう。
チラリと後ろを振り返ると、まだ手を振っていてくれているのが見えた。…何としてでも守らなきゃ。
最悪、デヒテラさんとセタンタだけでも。





地上で戦うプレイヤー達の中で一際活躍している役職がある。
それはズバリ、「生産職」だ。
空中戦が出来ないプレイヤーの為に、投石機を作ったり、仮プレハブ小屋を作ったり、ご飯を作ったりとなかなかにいい仕事をしている。
そんな生産職の人から沢山の美味しいおにぎりをもらったから、元気いっぱいだ。…ユニオンメンバーには鍛治職人のアルザスがいるけど、もう1人生産職が欲しいと思った。



「終焉のラッパ」

広範囲のモスキーバエトが沈んでいく。
このスキルを使うのは何回目だろう。
多分、2桁は行ったはずだ。
それなのにどこからともなく湧いてくる。
MPをカラにしないよう【蹴り技】や【剣術】を使って消費を抑える。
確実に羽を削ぎ落とし、地面に落とす。
地面に落ちてもなお生きているものには、セタンタやジン、ウォッカが止めを刺す。
ジャンヌは自慢の巨大なハンマーを空に投げ、血の雨を降らせている。
…何と恐ろしい。
ジャンヌ様はスキップしながら空を見上げて狙いを定めておりますわ。
余程、楽しいとお見受けします。
私に当てないようにして頂ければ幸いです。

一方、Noelは【衝撃光】や、【終焉のラッパ】を使ってモスキーバエト達を倒している。
そして、時折私を見て首を傾げている。
多分、私が【終焉のラッパ】を使えることを不思議に思っているのだろう。


うじゃうじゃと湧いてくるモスキーバエトを狩り続けていると、頬を「何か」が掠めた。
「何か」の正体は矢だ。誤飛かもしれないが、それはまずないだろう。何せ、ここは向日葵の森に一番近く、街に一番遠い場所。更に、この近くで他のプレイヤーが戦闘をしていないことは確認済み。
だとすればこれは…PKの仕業だろう。気配を消してモスキーバエトを狙わず、私を狙撃してきた。
私達がこんなに頑張っているというのに、なんだって邪魔をするんだい!!
解せぬ。
空中戦をベルモットに任せて、地上に降り立つ。

「あら?るし、どうしたんです?」
「PKに攻撃された。…今から犯人探しに行こうかと。私が抜けた分はベルモットが完璧に埋めてくれるから心配はご無用。ジャンヌは引き続き楽しんで」

そうですか、と言って、ジャンヌはハンマーを空に投げた。




以前、セスからPKを見極める方法について教えて貰った。
彼曰く、【鑑定】を使って、ステータスが一瞬でもボヤけたらPK確定らしい。
何でも、【偽装】スキルのようなものを使っているとか。
厄介な奴らだ。
【鑑定】を使い、近くにいる人に怪しまれないように1人ずつ凝視していく。
すると、まぁなんということでしょう。
近くにいる人10人中3人もPKが混じっているではありませんか。
3人のPKがちゃんとイベントクエストに参加しているかもしれないので、隠れて観察する。

1人は白だった。
パーティーを組んでいると思わしき人と一緒にモスキーバエトを狩っている。
残りの2人は黒。
真っ黒。
観察中に近くのプレイヤーに不意打ちを仕掛けた。
大事な戦力を削ぎに来るとは…PK許すまじ。

「ひっ、お前らPKだったのか!?」
「あん?誰がお前らの味方だって言ったんだよぉ?」
「経験値寄越せやぁ!!」

全く、プレイヤーは支えあって行くべきだというのに。
早く襲われている人を助けてあげないと。

『PKKが可能です』

「おい、PK。貴様らはこのイベントクエストにおいて何よりも邪魔だ」

突然の軍服の登場にPKと襲われているプレイヤーが固まった。
その隙に【残月】を放つ。

「貴様らかは分からんが、私はPKに攻撃された。受けた攻撃は倍返しにする主義でな。よって、そこにいる貴様らPK2人でちょうど倍。だから、大人しく殺されて私を空中戦に戻らさせろ!」
「そんな理不尽なぁっ!!」
「ぎぃやぁぁぁあ!!」

Lv差があったのか、将又【確率死】によるものなのかは分からないが、PKは四散した。
エグいな…。

「ふむ。何が要因だったのやら。そこのプレイヤー、PKには気をつけるんだな」
「は、はひぃ!た、助けてくれてありがとうございまっいっつ~!!」

慌てすぎて舌を噛んだようだ。
それ、結構痛いよね。ドンマイ。
苦痛に身をよじるプレイヤーの頭をポンポンと撫で、周りにPKがいないか確認し、再び空中に舞い上がる。







「ベルモット!ただいまー!!」
「きゅっ!」

モスキーバエトの群れの中、抱き合う1人と1匹。
それはとてもほのぼのとした光景だ。
…虫に囲まれていなければ、だが。
その横を巨大なハンマーが横切っていく。

「るし、サボリは禁物ですよ!」
「ん、ごめん!」

回復したMPで【終焉のラッパ】を使う。
一気に殲滅。
そして、一気にその穴が補充されていく。
…これだけ戦っているというのに一向に減らない。
こいつら、いったいどこからやって来ているんだ?
もしかして、自然発生とか?
いや、それはないか。
今のところはそういうのは見てないから。

「おーい!王さまー!俺も参戦するぜ!」
「カイン!その呼び方恥ずかしいから!」
「僕も参加するよ!王!」
「二人共ォ!!」

カインとヴェティがニマニマしながら、してやったりという顔で戦闘に加わった。
戦略アップは有難いんだけども、お巫山戯は大概にしてね?
恥ずかしすぎて顔が発火しそうだよ。

向かってくるモスキーバエトを難なく切り伏せていく。
さて、ここでこいつらに【運盗みスティールラック】を使ったらどうなるのだろうか。
いざ実験だ!

「スティール・ラック!」

近くにいた実験台モスキーバエト1号を【蹴り技】を使って蹴り上げる。

「jktpkgagamt!?」

1号は真っ直ぐ飛んでいき、進行方向にいたモスキーバエト達を巻き込んで地面に墜落していった。
スキルと一蹴りで5体ものモスキーバエトが地に落ちた。

「ヒュ~」

これは大きな実験成果だ。
殆どMP消費のないスキルでこんなにも落とせるのは素晴らしいことである。
では、サクサク行こうか。
翼を最大限に生かし、空を舞う。

「スティール・ラック!!」
「スティール・ラック!!」
「スティール・ラック!!」
「スティール・ラック!!」

大きな虫を蹴って落として蹴って落としての繰り返し。







気づけば今日のイベントクエストは終わっていた。

『今日の総討伐数…5362体
 イベントクエスト総討伐数…10325体
 報酬…金貨26枚  銅貨6枚』

「るし、どうでしたか?因みに私は1万体超えてました!」
「おおぅ、私は5300体ほどかな。ジャンヌは凄いねー!!」
「ふふっ今日は私の勝ちです!」

今日の後半は蹴って蹴ってを繰り返して地面に落としてたからあんまり数は稼げなかったんだよね。
あ、そういえば気になることがあるんだった。

「ジャンヌ、モスキーバエトって、どこから湧いてくるか分かる?探す前に空がヤツらで埋まっちゃうから…」
「そうですね…私は地上戦なのであまり遠くは見渡せないんですよね。Noelはどうです?どこから湧いてくるか見たことあります?」
「…わかん…ない…虫…気持ち…悪い…から…殆ど…無心…使ってる…」
「ありゃ、Noelお疲れ」
「…こんな…イベント…早く…終われ…私…活躍…出来ない…」

いや、貴女は十分に活躍してますよ?
2人は負けず嫌いだから、Noelは今日の総討伐数がジャンヌに負けたから悔しいんだろうなぁ。
競争心はいいと思います。
行き過ぎるとアレですが。

ヴェティが盛大な溜息をついて、ソファーに倒れ込んだ。
余程虫との相手が疲れたのだろう。
頬がゲッソリしてる。

「イベント4日目なのに、ボスの影すら掴めないってのは悔しいね。『Potential of the story』だったら毎回五日目でボス戦だったんだけど…」

あ、そっちですか。
疲れたんじゃなくて、ボスが出てこないから萎えてる的な感じのですか。
…五日目にボス戦って早すぎません?
そう思うのは私だけ?

「ですよね。私、早くボス戦をしたいです」

ジャンヌさんや…貴女はどれだけ戦いたいんですか。
戦闘狂ですね。
称号に狂戦士バーサーカーとかあるんじゃないでしょうか。

「ないですよ」
「ですよねー」

ジャンヌの顔が怖い。
ポキポキと指を鳴らしている音が聞こえるのは気の所為でせうか。

「るしぃ、セタンタは何か言ってなかったァ?」
「うーん、森が不気味だって言ってたなぁ。でも、探しても探しても見える範囲では何にもないんだよね。あ、今日はPKに攻撃されたから倍返ししてきた」
「…余程そのPK達は死にたいらしいねぇ」

セスは凶悪な笑みを作る。
それを見て、Noelが若干引いてるのが見えた。
分かる。
分かるよ、その気持ち。

「よし、早くても明日、遅くても明後日と明明後日を入れたこの2日間が山場だと思うから皆気張ってこー!!」

そうして今日のミーティングは終わった。












ー何処かで「何者か」が渇望していた。
ーそれはゆっくりと、ゆっくりと進む。
ー何かに抵抗しながらも、ゆっくりと。


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