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花の縁
しおりを挟む早朝からログインし、◈黒龍の軍服一式に着替えて全速で飛ぶ。
「おぶぶぶ」
頬がぶるぶると揺れ、目が乾燥する。今時速何キロで飛んでるんだろうか。景色がすごい速さで変わっていくよ。…皆は無事に逃げきれたのだろうか。もしかすると村の人口が少し増えてるかもしれないな。
向日葵の森の頭上を飛び越え、フィールド3に出る。時刻は10時頃だろうか。ここで翼を仕舞い、下に降りる。
何故翼を仕舞ったのかって?そんなの言わなくても分かるよね。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」
走りながら「ゾンビ」共を倒してLvを上げながら帝国に向かうために決まってるじゃないか。ジン達は秘密の特訓とやらで密かに技術力を上げているんだから私がここでLvを上げても文句はないよね!うん、ないない!
【残月】を使って遠くに見える「ゾンビ」達を斬って斬って斬りまくる。
傍から見たら変人だ。
ありえない速度で走って斬って走って斬ってを繰り返しているのだから。
さっき何パーティーかを追い抜いたから掲示板に書かれるかもしれないね。
チラリとマップを見ると帝国に近いところまで来ている。
ピロリん。
『Lvが上がりました』
『2ポイント獲得しました。任意で振り分けてください』
よし、これでリーチだ。
あと一つ上げたら存在進化だね。
ここらで「アッシー」が来てくれればLvがアゲアゲなんだけど。あ、そう言えば【挑発】っていう素晴らしいスキルがあったんだった。
忘れてたよ。
「る~るるるるっ。る~るるるるっ!」
ボコッボコボコッ
・・・大量のゾンビが現れた・・・
・・・アッシーが現れた・・・
「ゾンビ」にプラスして「アッシー」が現れたのは有難いね!美味しいわ。
「経験値置いてけぇぇ!!」
【残月】を使い、頭だけ地面からでている「アッシー」に集中攻撃を浴びせる。
「きゅーん」
ごめん「アッシー」。スイカ割りみたいなノリで倒すことを許してね。だって君、【俊敏力上(スピードアップ)】を使って逃げ足早くするじゃん。まぁ、軍服装備で逃がすことはないけど、そのまま地中に潜られでもしたら追いかけられないからね。経験値が高いモンスターは逃げ足が早いのなんの。
わらわらと寄ってくる「ゾンビ」達を難なく蹴散らし、帝国に向かって走り続ける。
走りながら殴るというのは初めての体験だ。リアルではこんなことしたことないからね。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「そぉい!」
風の鎧と違って軍服は殴った瞬間に「ゾンビ」の頭が粉砕するため、全くと言っていいほど感触がない。感触はないが、金色の粉に変わっていっているので、そこでやっと倒したという実感が湧く。
運がいいことに前方にもう一体「アッシー」が地面から生えているのが見えた。
ラッキー。
「アッシー」を地面から引き抜き、【蹴り技】を使って思いっきり蹴る。物凄い速さで「アッシー」は飛んでいき、徘徊している「ゾンビ」を貫通していく。
ピロリん。
『Lvが上がりました』
『2ポイント獲得しました。任意のステータスに割り振ってください』
『存在進化が可能です』
ついに来たぜ。これも全ては「アッシー」様のおかげでございます。
さて、二度目の進化は何になれるのかな?
『堕天使:子爵 ☆8
…男爵の一つ上の貴族。これになれば社交場では馬鹿にされない。
存在進化しますか?Yes/No.』
え、男爵のまま社交場に出たら馬鹿にされるの?そんなの初耳なんですけど。
とにかくYesを押そう。一択しかなさそうだしね。
光の繭が無くなり、進化した自分の姿を見るため、アイテムボックスから立て掛け鏡を取り出す。
「あ…角?」
鏡に映る自分の頭から漆黒の二本の角が蜷局を巻いていた。それくらいしか大きく変わっていないようだが、自分の頭に角が生えているというのは新鮮さを感じるね。
試しに自身の角に手を延ばすと、確かにそこにある。さわり心地は滑らかで、少しひんやりしている。
角からビームが出たら面白そうだ。
軍帽をかぶり直すとちょこんと片方の角が出てくる。
これはこれでいい。
ピロリん。
『存在進化が完了したため、スキル【魅了】を習得しました』
【魅了】…自身のMNDが相手を上回っている時、自身の魅力で相手を惑わせる。
…これを使うことはないと思いたい。【魅了】する相手がいないしね。もしここで使ったら「ゾンビ」に愛されるのだろうか。…それは嫌だ。「ゾンビ」ハーレムとかそんなの望んでない!誰得?需要がないわ!
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「嫌だ!ゾンビハーレムなどいらん!」
【魅了】を使わずとも集団で襲ってくる「ゾンビ」。Lvも20になったことだし、そろそろこことはおさらばだ。
「ゾンビよ!アデュー!」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そんなに私と離れるのが嫌なのかい?それなら私の愛のビンタを食らうがいい!
全速力で走りながら通り過ぎる「ゾンビ」にビンタを食らわせる。たまに崩れずに何回転もして地面に打ち付けられる「ゾンビ」がいるのだが、そいつはもしかすると「ゾンビ」に成り立てなのかもしれない。
「ゾンビ」の強襲を避け続け、なんとか帝国に着いた。時刻は午後4時。
流石私。
昨日は丸1日かかった移動がたったの7時間でここまでこれるなんて天才だね。装備のお陰もあって途中から走ってこの時間なのだから飛べばもっと早くついたのかもしれない。
「るーしー!おーい!」
名前を呼ばれ、振り向くとジンが大きく手を振っていた。その横にアルザス達もいて、苦笑いをしていた。
「るしさん、あの奴隷達は一応ヴィネさんの作った村に住まわせたんだが、良かったでげすか?」
「うん、ありがとう」
「るし、なんか頭から角が生えてるぞ?」
「さっき進化してね。どうだぁ、凄いだろう?」
「すげぇ!カッコイイぜ!」
目をキラキラさせるウォッカ。君の進化ももう少しだから焦らずゆっくり行こうね。
「るしさん、ここでいい情報と悪い情報どっちから聞きたいでげすか?」
え、その二択を選ばないといけないの?良いことを聞いてから悪いことを聞き落ち込むか、それとも、悪いことを聞いてから良いことを聞いてモチベーションを上げるか。これは普通に後者を取るしかなかろう。
「悪い情報から」
なんだ…?奴隷をかっさらった事が国家反逆罪になったとか?それとも素性がバレてやばいとか?
「悪い情報は、モンスターオークションは今日じゃなくて2日後にあるということでげす。毎日やってると思ってたんでげすが…。俺の思い違いだったようだ。すまねぇ」
なんだ、そういうことなら別にオーケーだ。さて、いい情報は何かな?
「いい情報は、もう少しでCランク昇格試験があるということでげす。実は昇格試験は1ヶ月に1回しかないらしくて、それがあと5日後に控えているでげす。確か、受けれる条件はDランクとCランクのクエストを計10個クリアしなければ行けない、だった気がしやす」
お、それなら私、Cランク昇格試験受けられるね。
「ただ、テイムモンスターは参加出来ないらしいんでげすよ」
そっか。己が力をしめせ、なんだね。了解であります。ピシッと敬礼をする。
「なんで敬礼してるんですか。しかも、左手じゃなくて、上げるのは右手でげすよ?」
「え、そうなの?」
「はい。右手は武器を持つ方の手なので、それを上げることによって相手への敬意に当たるんでげすよ。もし左手を上げれば酷い仕打ちをされますよ?」
「はいはい、そのくらいにしておこう!アルザスはもしかして軍人さんだったの?」
「いや…あはは…そっちのことについては詳しいだけでげすよ」
そのうちこの世界で拳銃とか作り出したりしてね。黒と白の二丁拳銃とか。…カッコイイ。そのうち作ってもらおう。
それにしても、オークションが始まるのが2日後だから空いた時間は何をしようか。クエスト受けたりとか?そういえば、帝国にストーリークエストがあったっけ。それを受けてもいいかもしれない。ただ、2日では終わらせられないから、フリークエストとかを受けてみてもいいかもしれない。ギルドクエストでもいいかもね。あ、Lvを上げる作業を行うという手もあるな。あぁ、捨てがたい。
空を仰いで考え事をしながら仲間達について行っていると、
「きゃっ」
小さな少女とぶつかってしまった。
「あ、ごめん。大丈夫?」
「い、いえ!あ、あの、お花は要りませんか?」
ピロリん。
『フリークエスト「花売りの少女」が受注可能です。受けますか?Yes/No.』
おっと、こんな所にフリークエストが転がっていたとは。思わぬ拾い物だ。
どうせ今からやることを探しに行くところだったのだし、受けよう。あ、受ける前にアルザスの了承を取っておかないとね。
「アルザス、今からこの娘のフリークエストを受けようと思うんだけど、一緒にどうかな?」
「うーん。正直今からやることないからなぁ。俺も受けることにするでげす」
アルザスの前にクエスト画面が出てきたようで、Yesの方にタップしているのが見えた。
「アドラー様方、ありがとうございます!」
「いいえ。あ、ちなみに花の種類を聞いてもいいかな?」
「はい!」
少女は腕にかけている籠の蓋を開ける。
「えーと、この青いのがイロアス。左にある赤い色の花が特徴的なのがアイブリス。その隣がー」
籠いっぱいに花が敷き詰められており、鼻に優しい香りが周りを満たす。いい香りだ。
「じゃあ、俺はイロアスを五本買うよ」
お、アルザスや、決めるのが早いのう。私は優柔不断だから迷っちゃうよ。どれにしようかなぁ。うーん…。取り敢えず全種類1本ずつ買っていこうかな。
「全種類1本ずつくれないかな?」
「はい!ありがとうございます!」
お金を渡したその時、籠の中にある1輪の花に目が止まった。
「あ、もう1本いいかな?」
「はい!」
迷わずにその花を選ぶ。
「あれ?この花はなんだろう…。どこかで紛れたのかな…?」
少女は首を傾げながら1輪だけある花を売ってくれた。
その花はどこにでも咲いているような白い儚い花。名は「リヴァイブ」。その花は儚げながらも存在感があった。見た瞬間絶対に買わなければいけない気がした。
「あ、るしさんずるいでげす。今調べたんだが、それ滅多に咲かない花らしいぞ?」
へー、そうなんだ。これをゲットできたのはラッキーだ。枯らさないようにすぐアイテムボックスに入れておこう。
ピロリん。
『フリークエスト「花売りの少女」をクリアしました。報酬として、以下のものが譲渡されます。
◈花の種 (ランダム)
銀貨1枚。』
早速花の種をアイテムボックスから取り出すと、小さな袋が出てきた。どうやら袋の中に手を入れて、掴んだ5粒が自分のものになるようた。
ガチャガチャをしている気分だぜ。
隣でアルザスも袋から種を取り出している。
おし、私もいっちょいい種を引こうじゃないか!
『◈リヴァイブ、イロアス×2、ディサブレッド、ディザイアを取得しました』
おー。強そうな名前の花の種たちをゲットしたぜ。もう空も暗くなってきたし、ユニオンの戻ろうかな。明日は村の畑仕事を嗜んでいる人たちに頼んで畑の隅にでも花の種を埋めさせてもらおう。
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