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100.わたくし、百話も続くと思いませんでしたわ
しおりを挟む東宮殿下をバリバリ働かせよう作戦は、割合、功を奏したと言える。
わたくしは、相変わらず、二条邸の主上の側付の女房などをやっている。手狭な二条邸のことなので、あれこれ、立ち行かず、主上の周りも雑然としているのがむさ苦しいけれど、家中で一番良い丁度で整えたので……まあ、なんとか、見られた感じにはなって居る。
「しかし、あなたも、大胆なことを考えるね」
肩を震わして笑っておいでなのは、主上である。つまり、『ばれないように』なんて言ったけど、主上はすべてお見通しなのだ。だから、わたくしも、深くは気にしない。
香散見さんが、黙っていてくれれば良いし、わたくしとしたら、夜を過ごしてしまった手前、なんとしてでも香散見さんの室におさまらなければ気が済まない。まあ、正室なしの、その他大勢だけれども。
だったら、わたくしが目指すのは、女御クラスよ!
「あなたも、中々面白いことを考えるね。これならば、東宮が高御座に上っても、安心だよ。あなたの他に、あなたの兄も居るし、関白も居るからね」
はは、と主上は笑ってから、小さく咳をなさった。
「あら、主上……」
「ん、なんだい?」
「最近、空咳がつづきますのね。典薬をお呼びしましょう」
わたくしが、御簾の外に控える家女房に声を掛けると、主上は、苦々しい顔になった。
「典薬は好かない」
「まあ、そんな童のような事を仰せにならずともよろしゅう御座いましょう? ただでさえ、当家に来てからは、毎日のお医者にも見て頂かないのですから……典薬位はお呼びしますわ」
どうも、主上は、医者嫌いとのことだった。
ふつうは、こうした仮の内裏であっても、折々、お脈をとったりするものだけれども。それが『医者は好かぬ』などと仰せになって、まともにお脈も取らせて下さらずに、医者達が参っている。
万が一、なにかあったら、医者のせいですものねぇ。
それに、我が二条邸滞在ということだから、わたくしは、二条関白家のせいにされるのも困ると言うことで、無理やり、医者に診せているので、主上からは睨まれる。
「まったく、そなたでなければ、こうもやすやすと言うことなど聞かぬものを」
などと忌々しげに仰せになる前に、お身体をなんとかして頂かなければ困るのだ。
「まあ、嬉しゅうございます。……わたくし、畏れ多くも、将来、父さまとなる方には、長く健やかに居た貰いたいのです。だって、夫は、そこそこ戦力にならなさそうなのですもの」
そうなると、大切にすべきは、義父である。
「さすがに、あの関白の娘だな」
苦笑する主上のもとに、典薬と医者が現れて、お脈を取ったり、舌の色や目を診断している。ここぞとばかりに診察されているので、主上は嫌そうな顔だった。
ご譲位の噂を流していることもあって、主上の御許を、医者が出入りしているのは、信憑性を高めることだろう。なにせ、医者嫌いだったのだ。
そして、わたくしは、御所が復旧するまで、このようにして、主上のお側にお仕えしたのです。
香散見さん?
そう、あの方は、唐菓子片手に寝転がりながら、どこぞの女房が書いたという物語などを暢気に読破していらしたのです(なんと全六十巻もあった)。しかも、わたくしの部屋で!
わたくしは、この方に身を任せたことを心底後悔しつつ……それでも、憎めない方だし、大好きなのだから仕方がないか、といろんなことを諦めて掛かるように致しましたわよ!
願わくば、香散見さんが、ぽっちゃりになりませんように。
現代男性でいったら、ぽっちゃりのほうが好まれているのだけれど、わたくし、ぽっちゃりよりも、精悍なほうが好きなのよーっ!(だって、閨事の時、重そうですし……)
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