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第三章 千年に一度のモテ期到来?
2.千年に一度のモテ期
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陰陽師から説明を受けること実に半刻(多分千年後の感覚で言ったら、一日の二十四分の一くらいよ)。
とにかく、御簾越しに現れた男が陰陽師だということは、よく解った。
「わざわざ、京の陰陽師さまに来て頂いて、恐縮ですわ」
早蕨も、顔を引きつらせながら言う。
「それで、何の怪異があって、陰陽師をお呼びになったのです。そもそも、この邸自体が、験の悪いところに立てられているような気がしないでもありませんが……、なにやら、気が淀んでいるような感じがするのですよ。鬼でも憑いていそうな感じがして、かなり辛気くさいですよ。まずは、毎日お掃除をして、しっかりと掃き清めるところからなさった方がよろしいのではないでしょうかね」
早蕨の笑顔が引きつる。
あー、陰陽師のお兄ちゃん、それ以上の暴言は、君の出世に関わるぞー、と私は、助言してあげたくなったが、とりあえずは『姫らしく』黙っていることにした。
「そんなことより、早く見て下さいませ。こちらも、陰陽師のような方がおいでだと、怖ろしくって。……だって、かの有名な晴明様とかいう方は、狐の血を引いておいでだとか、お邸には人が寄りつかずに小鬼を使役しているだとか、もう、そういう怖ろしい方が側に居ると思うと、怖くてたまりませんもの」
その言葉に、陰陽師もカチンと来たようだった。
「何ですか、女房殿。我が陰陽寮を愚弄するおつもりか?」
「いいえ、私は、自分の感じたことを感じたままに言いましたの。だって、怖いんですもの」
「ああ、そうですか。……それでは、姫さまの生まれ年と生まれ日、属星と……」
とりあえず、お仕事で来ていることをお忘れなかったようで、早蕨の挑発にも乗らなかったのは、お見事。
なにやら難しい顔をしながら、簀で書き物をしたり本を繰ったりしている。
めんどくさい系とは思ったけど、中々、真面目な人なんだわ。
「えー……まず、こちらの姫君ですが、八年ほど前に、おそらく、運命的な『出会い』をしているはずです。その『出会い』の影響があって、今年、様々な混乱が起きるようですね」
「混乱って、何?」
「こちらのような山奥にお住まいの姫君に、こういう占いの結果が出るのは妙なのですが」と前置きしてから、陰陽師は、くい、とすこしずり落ちた烏帽子を押し上げて直した。
「―――この国の行く末に関わる、未曾有の大事件の中心に、こちらの姫さまが巻き込まれる暗示です」
「ええっ? だって……、身分だって、高くないし、この通り顔だって十人前よ?」
私は思わず立ち上がって叫んでしまった。
早蕨が小さく「姫さま……」と呟いてこめかみを押さえているけれど、こうなったら、気にしない!
「陰陽師さま。……その占い、本当なの?」
御簾の向こうで、陰陽師は、ゆっくりと頷いた。
「我々は、そもそも、この国の行く末を占うことも仕事の一つです。ですから、あたるかどうかなどと聞かれるのは、心外の極みですね。
かといって、あなたのような、振る舞い一つ弁えぬ姫が、一体、何で、この国の行く末に関わる等と言うことになるのか、全く、理解しがたいものがありますが……この私の! 占いの結果は、そう出たのです」
「それは、気持ちが悪いわね……私、小袖を盗まれたのよ。それも、なにか関係あるかしら」
「小袖を……」と陰陽師は呟いて、紙と本に向かう。「小袖を盗まれたのは、いつどこで?」
「えーと、二日前の夜、京のさるお邸で。とても高貴な方の邸だけど、口外しないことになって居るの」
ふうん、と興味なさそうに呟いた陰陽師は、「二条、関白邸」とぽつりと呟いた。
「えっ? なんで解ったの?」
さすがに、不気味な気分になって、私は問い掛ける。すると、陰陽師は、ふふん、と笑った。
「星回りを見れば解るのだ」
「そ、うなんだ……」
「ちなみに、姫。あなたは、今から千年に一度のモテ期に突入する。こんなド田舎で、大して身分も高くない下級公家の姫のあなたが、もしかしたら、もの凄い相手から求婚されたりするかも知れない」
「私は千年も生きないわよ!」
「つまり、あなたの、前世からの分と、来世分のモテ力が、この一年間に、凝縮されるというわけだ。解るか? 千年に一度だぞ? あなたが望めば、おそらく、どんな男も、たちどころにあなたの虜になるだろう」
なーにそれ、まったく、理解しがたい事態だわよ。
それが正しかったら、私、向こう何百年か、牛車に轢かれて転生したって、非モテまっしぐらじゃない!
「へーえ。じゃあ、私が、あなたに好きになって貰いたいなんて言ったら、あなたも、私を好きになるのね?」
御簾の向こうの陰陽師の動きが、ピタリと止まった。
とにかく、御簾越しに現れた男が陰陽師だということは、よく解った。
「わざわざ、京の陰陽師さまに来て頂いて、恐縮ですわ」
早蕨も、顔を引きつらせながら言う。
「それで、何の怪異があって、陰陽師をお呼びになったのです。そもそも、この邸自体が、験の悪いところに立てられているような気がしないでもありませんが……、なにやら、気が淀んでいるような感じがするのですよ。鬼でも憑いていそうな感じがして、かなり辛気くさいですよ。まずは、毎日お掃除をして、しっかりと掃き清めるところからなさった方がよろしいのではないでしょうかね」
早蕨の笑顔が引きつる。
あー、陰陽師のお兄ちゃん、それ以上の暴言は、君の出世に関わるぞー、と私は、助言してあげたくなったが、とりあえずは『姫らしく』黙っていることにした。
「そんなことより、早く見て下さいませ。こちらも、陰陽師のような方がおいでだと、怖ろしくって。……だって、かの有名な晴明様とかいう方は、狐の血を引いておいでだとか、お邸には人が寄りつかずに小鬼を使役しているだとか、もう、そういう怖ろしい方が側に居ると思うと、怖くてたまりませんもの」
その言葉に、陰陽師もカチンと来たようだった。
「何ですか、女房殿。我が陰陽寮を愚弄するおつもりか?」
「いいえ、私は、自分の感じたことを感じたままに言いましたの。だって、怖いんですもの」
「ああ、そうですか。……それでは、姫さまの生まれ年と生まれ日、属星と……」
とりあえず、お仕事で来ていることをお忘れなかったようで、早蕨の挑発にも乗らなかったのは、お見事。
なにやら難しい顔をしながら、簀で書き物をしたり本を繰ったりしている。
めんどくさい系とは思ったけど、中々、真面目な人なんだわ。
「えー……まず、こちらの姫君ですが、八年ほど前に、おそらく、運命的な『出会い』をしているはずです。その『出会い』の影響があって、今年、様々な混乱が起きるようですね」
「混乱って、何?」
「こちらのような山奥にお住まいの姫君に、こういう占いの結果が出るのは妙なのですが」と前置きしてから、陰陽師は、くい、とすこしずり落ちた烏帽子を押し上げて直した。
「―――この国の行く末に関わる、未曾有の大事件の中心に、こちらの姫さまが巻き込まれる暗示です」
「ええっ? だって……、身分だって、高くないし、この通り顔だって十人前よ?」
私は思わず立ち上がって叫んでしまった。
早蕨が小さく「姫さま……」と呟いてこめかみを押さえているけれど、こうなったら、気にしない!
「陰陽師さま。……その占い、本当なの?」
御簾の向こうで、陰陽師は、ゆっくりと頷いた。
「我々は、そもそも、この国の行く末を占うことも仕事の一つです。ですから、あたるかどうかなどと聞かれるのは、心外の極みですね。
かといって、あなたのような、振る舞い一つ弁えぬ姫が、一体、何で、この国の行く末に関わる等と言うことになるのか、全く、理解しがたいものがありますが……この私の! 占いの結果は、そう出たのです」
「それは、気持ちが悪いわね……私、小袖を盗まれたのよ。それも、なにか関係あるかしら」
「小袖を……」と陰陽師は呟いて、紙と本に向かう。「小袖を盗まれたのは、いつどこで?」
「えーと、二日前の夜、京のさるお邸で。とても高貴な方の邸だけど、口外しないことになって居るの」
ふうん、と興味なさそうに呟いた陰陽師は、「二条、関白邸」とぽつりと呟いた。
「えっ? なんで解ったの?」
さすがに、不気味な気分になって、私は問い掛ける。すると、陰陽師は、ふふん、と笑った。
「星回りを見れば解るのだ」
「そ、うなんだ……」
「ちなみに、姫。あなたは、今から千年に一度のモテ期に突入する。こんなド田舎で、大して身分も高くない下級公家の姫のあなたが、もしかしたら、もの凄い相手から求婚されたりするかも知れない」
「私は千年も生きないわよ!」
「つまり、あなたの、前世からの分と、来世分のモテ力が、この一年間に、凝縮されるというわけだ。解るか? 千年に一度だぞ? あなたが望めば、おそらく、どんな男も、たちどころにあなたの虜になるだろう」
なーにそれ、まったく、理解しがたい事態だわよ。
それが正しかったら、私、向こう何百年か、牛車に轢かれて転生したって、非モテまっしぐらじゃない!
「へーえ。じゃあ、私が、あなたに好きになって貰いたいなんて言ったら、あなたも、私を好きになるのね?」
御簾の向こうの陰陽師の動きが、ピタリと止まった。
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