44 / 186
第三章 千年に一度のモテ期到来?
4.モテ期と故・女御様
しおりを挟む陰陽師の言った『千年に一度のモテ期』というのを私が噛みしめるのは、そう、時間が経ってからではなかった。
「鬼ちゃんのことが懐かしくて、訪ねてきちゃった!」
と、私の幼なじみ、源陽が訪ねてきたところに、関白殿下と帝から文が届いたのだった。
いまは客が来ているからあとで返事をする………などといえないお相手だし、なんというか、文使いが、『お返事を頂けるまで帰りませんから』というスタイルでジト目で見ているので、もぅ、本当に、笑えない。
「鬼ちゃんは、入内するの?」
帝からの文を抱えて途方に暮れている私に、陽が言う。
「私がするはずないでしょう! あそこは、身分が低い女が入って行ったら、末代までいじめ抜かれる場所よ!」
「そうだよね、良かった。それで、関白殿下は?」
「……あそこも、勘弁して欲しい」
「でも、恋文なんだよね、それ」
陽の追求は激しい。
仕方がなく、文を解いてみると、意外な文面だった。
『この間はいろいろと焦って済まなかったね。あなたはきっと、沢山の縁談が来ているだろうから、年甲斐もなく焦ったのがいけなかった。
たびたび、こういう文を出すので、その際には、返事を頂けると有り難い。
ところで、陰陽師を呼んだそうだけど、山科では昔、鬼にあったと聞きました。また、鬼が出てくると、今度はあなただけでなく家人に危害が及ぶことも考えられますから、しばらくの間、京で過ごすと良いでしょう。
香子もあなたに会えるのを楽しみにしているようだから、京に来て下さると嬉しいね』
まあまあ、いいひとじゃない! と思ったら二枚目があった。
『そういえば、あなたのお父上の伊予介殿は、次の任地が決まっていないのだったっけ?』
前言撤回!
こいつは、割と、やんわり権力を傘に着てくるタイプだ。
「……父様の就職のことを言われると、辛いよねぇ……」
「えっ? 関白殿下、そんな事を仰有っているの? ―――そんなのって、卑怯すぎる! 僕、関白殿下に直訴してくるよ!」
「わーっ、やめなさいってば陽! 自分の出世の道が閉ざされるわよ!」
「じゃあ、帝にお話しする」
「まあ、無茶を……」
とおもったけど、帝の最愛の女御様ってば、陽の姉君なのよね……。
「ねぇ、そんなことより、陽。私、亡くなったあなたの姉君様のことを聞きたいわ。帝が、一途に思っていた方なのでしょう?」
「え? うん……八年前に、急に亡くなったんだ。僕は、まだ小さかったけど、童殿上していたからね。よく、女御様のところへ伺っていたよ。だけど―――子供心には、帝が、女御様をご寵愛なさっていたというようには見えなかったよ。お渡りも少なかったし、東宮殿下のお顔を見に来ることも少ないように思えたけれど」
なんだか、妙ね。
だって、あの時、帝は、桜の木を見つめながら、女御様を恋しがっていたのよ? あれは、私の見間違いではないわ。
「でも、本当に、女御様は、唐突に亡くなったんだ。……僕は、その日の朝に女御様にご挨拶に伺ったけれど、お体が悪いというようなこともなかったし、産後のことも、悪いことはなかった。……けど、夜になって、薨去されたんだ」
「朝まで、普通にしていらしたのに?」
「うん。全く、普通だったらしいよ。だから……嫌な話だけど、毒殺の噂もあった」
「毒殺っ……!」
「一応、毒ではないようなことを聞いているけどね。毒だと、身体にまだら模様の痣が出たり、酷く苦しんだりするみたいだけど……、眠るように、すっと亡くなったということだから」
それが、『八年前』。
なんだか、嫌な感じだけど……、丁度その頃なのよね。私が、鬼の君にお会いしたのは……。
そして、帝が代わっているのも、丁度、八年前。
「―――本当に、姉君も、女御様でいらっしやったのは、ほんの一瞬だったなあ」
「どういうこと?」
「前の帝が退位されたのが、その年の二月で、すぐに今の帝が即位されたでしょう? それが四月だったから。東宮殿下がお生まれになったのが五月で、女御様が亡くなったのが、九月なんだよね。激動の一年だったよ」
そして、私が鬼の君に出逢ったのは、三月。
三月の上旬。
桜の満開の中だ。
10
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる