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第三章 千年に一度のモテ期到来?
6.新しい邸のセキュリティは万全でした
しおりを挟むとにかく出家! と私は大騒ぎをしつつ陽を返してしまって、溜息を吐いた。
帝と関白殿下の文使いにも、素っ気ない返事をしたし、さらにはいまの大騒ぎを聞かせておいた。
これ以上、私は、厄介ごとに首を突っ込みたくはない。
―――となったら、逃げるが勝ちよ!
幸い、早蕨のおかげで、一応『縁もゆかりもない』ところに、一軒の小さな邸を確保することが出来て、私はそこでしばらく過ごすことした。
私としては、郊外………それこそ、嵯峨野だとか、桂だとかいう場所が良かったのだけれど(ズバリ、京とは随分離れているはずなので)、早蕨が用意したのは、三条にある小ちんまりとした邸だった。
京の街というのは、御所のほうから南へ向かって、一条、二条、三条……と九条まである。
一条のあたりが一番格式の高い貴族の邸宅が建ち並んでいるので、私の実家、八条とまでくると、京とは思えないほどの雑然とした雰囲気になるのだ。
周りには、市が立ったり、物売りの声がしたりと……ようは、下々の暮らしぶりが聞こえて来るような場所だ。
流石に、そういう八条とかだと、女だけで住まうのには少々不安があることだし、郊外が良いなあと思っていたら、三条ですもの。
この界隈と言ったら、大臣だとか大納言だとか言う方々がお住まいの場所じゃない。
いったい、どうやって、ここを借りることが出来たのか、不安でたまらずに、
「ねぇ、早蕨。ここは、どういう素性のお邸なの?」
と聞くと、早蕨は、私を邸の母屋の一本の柱の前に案内した。
「これを御覧下さいませ」
みれば、その柱には、和歌が書かれている。
意味としては、『ここをはなれることになりましたけれど、私は何千年でもあなた様をお待ちします』というようなもので、流麗な女文字で書かれていたことを見ても、宮中にでも女房仕えしていたような身分の女が書いたものなのだろうと容易に想像が付いた。
「父親の任地にでも同行した方の邸なの?」
「いいえ? その楠に紐を掛けて首をくくった女人の住んでいた邸で、それ以降、怪異に悩まされるだとか出、全く人が寄りつかなかったんですよ。それで、容易く入ることができました」
「えーと……早蕨、つまり、ここは、出るの?」
「出る……とは?」
早蕨は、きょとん、とした顔をしている。
「もちろん、その女人の霊よっ!」
「ああ、勿論出ます。でも、大丈夫ですよ。この女人、男とみれば襲いかかって恨みを晴らそうとするだけのようですから」
ある意味万全なセキュリティー………。
「この京で、『鬼憑きの姫』と呼ばれた姫さま以外に、この邸に相応しい姫はおりませんわ!」
早蕨は……早蕨は……純粋に、心の底から、そんなことを言っているのだろうけど。なんというか、ある意味、ディス感ハンパ無い感じ。
私ってば、ステータスは『鬼憑きの姫』にさらに『女人の霊』がオプションとして付く感じ?
「ねー、早蕨はそれで良いの?」
「私は構いませんわよ。女人の霊とだって、私仲良くやれる自信が有りますから」
「いや、どうよ、それ!」
思わず、私は、突っ込んだわよ。
けれど、これでセキュリティーは万全。あとは、とりあえず、帝とか、関白殿下とか、あの陰陽師の人とかが諦めるまで待とうじゃないの。
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