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第三章 千年に一度のモテ期到来?
22.スイーツ男子 関白
しおりを挟むマズイ、見つかってしまう!
と思ったその時だった。関白殿下が、やおら立ち上がる。当然、私ではなく、帝は関白殿下を見ているはずで。
今だ! と思ったわよ。
私は、とにかく、帝の横をそそくさとすり抜けて、関白殿下の部屋の片隅に蹲った。丁度、束帯が脱ぎっぱなしになって居たので(皺になったらかっこわるいのに)、袍にすっぽり包まれる形でなんとか身を隠す。
「いきなり、衾を奪われるなんて、酷いなさりようですね」
「なにかを隠していただろう」
「ええ、隠していましたよ」
と関白殿下は、しれっという。
「やっと、認めたか」
「あなたには、渡しませんよ!」
「いや、それは、私のものだ! さあ……っん?」
帝は関白殿下の褥を御覧になったようすだ。勿論、私は居ない。
「これは……なんだ」
「唐菓子ですよ。本来ならば、主上にも振る舞うのが臣の務めでしょうが、どうせ、主上は甘いものなどお嫌いでしょうし……と、私は、これを食べながらゆっくり休むつもりで褥に連れ込んでいたのです」
敢然と言い放つ関白殿下。
帝は、
「あ、ああ……たしかに、そなたは、甘いものが好きだったね……」
と、多少引いているご様子だ。
「そうなのです。この唐菓子は、私の妹が、わざわざ、作ってくれたものなので、申し訳ありませんが、差し上げるとなれば勅命でも頂きませんと」
「いや、私は、甘いものは」
「なので、これは、私一人のものですので。……と言うわけで、主上、私は、朝餉を食べたきりで、腹が空いているのです。今から、褥で、ゆっくりと寛ぎの時間を過ごしたいのですが」
割と、帝相手に、もの凄い要求をしていると言うことに、多分、関白殿下は気付いていない。
いまの言葉は、端的に言うなら『とっとと帰れ』以外の何物でもない。
「解ったよ。明日は、管絃なのだし、そなたも来るのでしょう。唐菓子を用意するように言っておこう」
「いえ、急に命じられても、膳所の方も迷惑でしょうから……我が邸自慢の唐菓子をお持ちいたします」
「うむ、楽しみにしておこう」
そのまま、帝はすんなりと引き下がって、帰って行った。
私は、しばらく、関白殿下の袍に包まれていたけれど、程なくして、「山吹、出ておいで」と声を掛けられたので、袍を羽織ったままで、関白殿下の元へ向かった。
関白殿下は、褥の上で、唐菓子をパリポリと食べている。折角の美形が台無しだよなぁとは思ったけど、言わないことにした。
何はともあれ助かったのだ。
「関白殿下の仰せだった、十年前の夜というのは?」
「せっかちだねぇ。空腹の私を労りなさい」
「でも、早く帰らないと、私の女房が心配するといけないので」
「確かにそうだね……では、言おう。十年前の夜、登華殿の女御様が亡くなったのだ。あの方は、私の叔母上でね。今の私と同い年だから……薨じられたときは、二十八歳。そもそも、十二歳で入内して、十三歳で皇子を上げておいでという方だから……とても、若く、美しくおいでだった」
「そうなんですか……」
「実は、前の帝は……、実の母親である、登華殿の女御様を呪殺したという話が上がってね。前の帝は、廃帝になったのだけれど……、そもそも、登華殿の女御様は、十年前の雷の夜、怖ろしい思いをしたらしくて、そのまま、正気を失って仕舞われて、そのまま、薨じたのだ」
「帝が……母上様を、呪うなんて……」
あまりにも、気分の悪い話に、私は腕を抱いた。
「けれど、私は、なにか妙な気がしてならなくてね。こっそり調べていたんだ。だが、手がかりも掴めぬままに、八年が経ってしまったのだ」
「それで、関白殿下は、私に、興味を持った」
私は、関白殿下に訪ねる。
関白殿下は、薄く笑みながら、答えた。
「そう。君と―――君の薫りに、ね」
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